面接におけるアイスブレイクの目的とは?
緊張感のある雰囲気を和らげる雑談を意味する「アイスブレイク」は、社内外での会議や研修のほか、採用面接でも取り入れられています。ここでは、面接で行うアイスブレイクの目的を3つに分けて解説します。
・求職者の緊張をほぐし、面接をスムーズにする
・履歴書や面接内容ではわからない魅力を探る
・企業のイメージアップにつなげる
求職者の緊張をほぐし、面接をスムーズにする
アイスブレイクは、求職者の緊張をほぐし、面接をスムーズに実施するために行われます。面接に訪れた求職者の多くは緊張しています。緊張でうまくアピールしてもらえないと、優秀な人材を逃す可能性もあります。求職者ができるだけリラックスした状態で面接を行えるよう、アイスブレイクの活用は効果的です。
履歴書や面接内容ではわからない魅力を探る
アイスブレイクは、履歴書や面接内容では分からない求職者の人間性を見極めるために実施します。面接のメインである志望動機や自己PRといった想定される質問に対しては、求職者はあらかじめ回答を用意しています。一方で、アドリブのやり取りとなるアイスブレイクでは、回答の内容・表情・言葉遣いなどから求職者の「素」が表れやすいです。
企業のイメージアップにつながる
アイスブレイクは、企業イメージを良くする目的もあります。面接官が素っ気ない態度だと、求職者は企業にマイナスの印象を持ってしまう上に、SNSなどで悪いイメージを公表される恐れもあります。面接の結果不採用にしたとしても、アイスブレイクを上手に活用すれば求職者に良い印象を残せますし、結果的に企業にもプラスの影響を及ぼします。
面接時の効果的なアイスブレイクのポイント
これからアイスブレイクを取り入れたい、または見直しを行いたい場合に、特に意識すべきポイントを解説します。
・雑談のパターンを複数用意する
・アイスブレイクの時間は全体の5%程度を意識する
・アイスブレイクの内容は選考の合否に影響しないことを伝える
雑談のパターンを複数用意する
求職者が答えやすい質問、面接官自身が話を広げやすい質問など、いくつかのパターンを用意しておくとスムーズに実施できます。雰囲気を和ませることが目的のアイスブレイクであっても、なかなか会話が弾まないケースもあります。また会話が途切れると面接官側にも焦りが出て、その場がギクシャクしてしまうので事前準備は大切です。
アイスブレイクの時間は全体の5%程度を意識する
アイスブレイクの時間は面接時間全体の5%程度が目安です。面接が60分の場合は3分程度でアイスブレイクを終えます。面接への導入となるアイスブレイクが短いと緊張がほぐれません。会話が盛り上がって長引いてしまうと本来の面接時間が削られてしまいます。メインの面接をしっかりできるよう、時間配分は重要です。
アイスブレイクの内容は選考の合否に影響しないことを伝える
面接官は、アイスブレイクの内容が合否に関係しない旨を伝え、不要なプレッシャーを与えないよう意識してください。求職者は企業にいい印象を与えることを意識しているため、雑談であっても身構えてしまいます。アイスブレイクはあくまでも求職者の緊張を和らげ、本音を引き出しやすくするのが目的です。選考と結びつく質問は避けてください。
面接時のアイスブレイクに使えるネタと質問例
面接時に実際に使いやすいアイスブレイクのネタと質問例を5つの項目ごとに紹介します。
・天気に関する話題
・移動手段に関する話題
・面接官自身に関する話題
・趣味に関する話題
・共通点に関する話題
天気に関する話題
その日の天気や最近の気候を話題にします。天気に関する雑談は定番であり、主観による話題ではないため、無難な導入として最適です。
・最近は雨が多いですね。
・今日はこの夏一番の暑さだそうですね。夏はお好きですか?
移動手段に関する話題
どうやって面接に来たのか、また自社周辺には来たことがあるかなどを質問します。求職者の実際の行動に関する質問のため、スムーズに回答してもらえます。求職者の回答に対して、「普段から電車移動ですか?」など会話を発展させやすいメリットもあります。
・今日はどのような移動手段で来社されましたか?
・弊社までの道はすぐにわかりましたか?
面接官自身に関する話題
面接官が自己紹介を兼ねて自身のことを話すと求職者から身近に感じてもらいやすくなります。いつ入社したか、どのような部署を経験したか、また趣味・特技などを簡潔に紹介します。
・今日〇〇さんの面接を担当させていただく、××部の△△です。現在は主に□□を担当しています。
・退社後には、この近くにあるジムでひと汗流して帰ることが多いです。
趣味に関する話題
求職者の履歴書に記載されている趣味から話を膨らませます。自分の好きなことについては語りやすいため、求職者が緊張せずに回答できるメリットがあります。
・旅行が趣味とありますが、次に行きたい場所はどちらですか?
・キャンプがお好きなんですね。どのくらいのペースでキャンプをされますか?
共通点に関する話題
親近感を持ってもらいやすい話題として、共通点を探るのも効果的です。履歴書を確認し、面接官自身と共通している部分を雑談のネタとして使用します。
・(求職者が在籍する)〇〇大学には講義に行ったことがあるのですが、食堂のメニューが豊富で驚きました。
・テニスサークルなんですね。私も学生時代はテニスをやっていて、当時の仲間とは今でも連絡をとっていますよ。
オンライン面接でもアイスブレイクは必要?
新型コロナウイルス感染拡大以降、オンライン面接を実施する企業が増えています。オンライン面接では求職者の雰囲気が分かりづらくなっており、応募者の普段の姿を垣間見るためにもアイスブレイクが必要です。ここでは、オンライン面接におけるアイスブレイクのコツを紹介します。
オンライン面接におけるアイスブレイクのコツ
オンライン面接を実施する際、求職者がツールに不慣れだと対面よりも緊張する場合があります。また、カメラによって双方向のコミュニケーションが可能ではあるものの、画面を通しているために、細かな表情やしぐさなど確認しにくい部分もあります。ここでは、オンラインでのアイスブレイクのコツを2つ紹介します。
音声や接続状態を確認する
声の大きさや話すスピードは適切か、最初に求職者に確認すると親切です。また接続状態によっては映像や音声が途切れる場合もあります。そのような際は遠慮なく申し出てほしいと伝えておくことも大切です。
バーチャル背景を利用する
オンライン面接ならではの会話の糸口として、あらかじめバーチャル背景を設定しておく方法があります。自身の名刺や企業の写真のほか、求職者の学部や趣味に合わせたものなどを設定しておくと、画面を通じて歓迎する姿勢を示せます。
オンライン面接に取り入れたいアイスブレイクのネタ
オンライン面接ならではのアイスブレイクとして、「今回のツールは使ったことがありますか?」という質問ができます。「弊社では最近取り入れたばかりで慣れなくて……」と親近感を持たせるような話につなげるのも効果的です。
天気に関する雑談は面接以外でもよく用いられており、オンライン面接の場でも有効です。求職者の居住地が同じエリアの場合には「先日は今年の最高気温でしたね」、遠方から参加している場合には「こちらは今雨が降っていますが、〇〇市はどうですか?」などと話を始められます。
直接来社して面接を行う場合には「今日はどうやって来社されましたか?」という質問が多いですが、オンライン面接では「弊社がある〇〇町にいらっしゃったことはありますか?」といった話題に変換できます。
アイスブレイクの注意点
アイスブレイクを行う際、質問によっては逆効果となってしまうケースや、法令違反となる可能性もあります。面接にプラスとなるアイスブレイクを行うために、注意しておきたいポイントをまとめました。
はい・いいえで終わらない質問をする
「道に迷わなかったか」「緊張しているか」といった、「はい・いいえ」のみの回答で終わりやすい質問だと、ただの質疑応答で終わる可能性があります。その後の話題につなげるためオープンクエスチョンを意識します。例えば「道に迷わなかったか」ではなく「会社まではどのルートで来たか」を聞くと自由に回答してもらえますし、話のまとめ方や相手に伝わりやすい回答ができているかなども把握できます。
NG質問は避ける
面接の質問と同様に、アイスブレイクであっても不適切な質問は避けます。質問を用意する際には、厚生労働省の「公正な採用選考の基本」を確認すると安心です。以下にNG質問例を紹介していきます。
思想(宗教、政治、考え方)に関する質問
宗教・宗派、支持政党を尋ねる質問をはじめ、選挙への参加の有無、愛読書、尊敬する人、購読している新聞といった雑談も思想に関する質問に当てはまる可能性があります。
出身地、住宅環境、家族に関する質問
「本人に責任のない事項の把握」とされる場合があります。出身地・居住地については大まかなエリアとしてとらえるなら問題ありませんが、詳細を聞くのは不適切です。
性・ジェンダーに関する質問
交際相手の有無や恋愛観など、性およびジェンダーに関する質問は選考と関係ないため不適切です。ハラスメントと認識される場合もあります。
女性の結婚・出産に関する質問
結婚予定の有無、出産後の復職希望の有無を聞くのもNGです。能力に関係のない質問で選考評価するのは基本的人権および男女雇用機会均等法の趣旨に反するため避けるべき質問です。
まとめ
アイスブレイクは緊張している求職者をリラックスさせ、面接で本来の魅力を引き出すための手法です。限られた時間の中でスムーズに面接を進行することは、優秀な人材の発掘にも効果があります。アイスブレイクのポイントや注意点を意識した上で、質問の組み立てや時間配分を行うことが大切です。
セミナー情報
あわせて読みたい