【弁護士監修】オワハラの意味は? 違法性やリスク、対策を解説 COLUMN

公開日:2022.03.10

更新日:2022.03.10

【弁護士監修】オワハラの意味は? 違法性やリスク、対策を解説

目次

オワハラとは?

オワハラとは「就活終われハラスメント」の略称です。企業が就活生に対して、他の企業への就職活動を終わるよう強要する言葉で、ハラスメントの一種として問題視されています。内定後も就職活動の継続を決めるのは就活生本人であり、採用側の企業が何らかの形で圧力をかけるとオワハラとみなされる可能性があります。ここでは、オワハラの意味や注目され始めた背景、法律上の取り扱いについて解説します。

オワハラが注目され始めた背景

オワハラは2015年頃から注目され始めた背景には少子高齢化による労働人口の減少と選考解禁時期の後ろ倒しの2つがあります。

少子高齢化により労働人口が減少しており、人材の獲得競争も激化しています。各企業は、内定を出した就活生を逃したくないという思いから、就活を終わるように働きかけ始めました。また、2015年には経団連加盟企業による選考解禁時期の後ろ倒しがありました。中小企業や外資系企業は人材獲得のために早期に内定を出していたものの、大手企業の選考が始まると内定者から辞退の連絡がくる可能性があり、内定者を引き止めるためにオワハラを行うようになったと考えられています。

オワハラの違法性

オワハラは、パワハラやセクハラ同様に刑事事件や民事事件となる可能性のある行為のひとつです。ここでは、オワハラが起きたときに問われる可能性のある罪について解説します。

脅迫罪

オワハラは脅迫罪となる場合があります。刑法では下記のように定められており、就活生に対して自由や名誉に関わる脅迫を行うと違法です。

第二百二十二条  生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

 

2  親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

※参考:e-Gov法令検索「刑法第三十二章 脅迫の罪 第二百二十二条

例えば、就活生に対して「内定(内々定)を辞退したら、大変な迷惑を被ったと出身大学に伝える」「内定を承諾しないと損害賠償を請求する」などと発言すると、脅迫罪に抵触する場合があります。法定刑は2年以下の懲役または30万円以下の罰金です。

強要罪

就活生に対して本来必要のないことを強要すると、強要罪に該当する可能性があります。刑法では下記のように定められており、脅迫した上に就活生に義務のないことをさせた場合に強要罪で違法となる場合があります。

第二百二十三条  生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。

 

2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。

 

3 前二項の罪の未遂は、罰する。

※参考:e-Gov法令検索「刑法第三十二章 脅迫の罪 第二百二十三条

脅迫または暴行によって脅して他社の内定を辞退させる、他社の選考や内定を辞退する旨の誓約書を書かせるなどが具体例です。3年以下の懲役が法定刑として定められています。

民法

刑法上で違法性が認められなくとも、民法において不法行為とされる可能性もあります。民法では下記のように、他人の権利・名誉・保護されるべき利益等を侵害すると、不法行為にあたる場合があります。

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

※参考:e-Gov法令検索「民法第七百九条、第七百十条

刑法で違法となった場合のように懲役や罰金はありませんが、訴訟となった際には就活生から損害賠償を請求されるケースもありまます。

オワハラは4パターン

就活生に行われるオワハラは、大きく分けると以下の4つのパターンに分類されます。ここでは、それぞれのパターンの概要と具体例を紹介します。

【1】交渉型
【2】束縛型
【3】脅迫型
【4】同情型

【1】交渉型

交渉型は、内定が欲しい就活生の心理を利用してプレッシャーを与えるオワハラです。内定を出すことで、就活生に他社の選考および内定の辞退を、強い言葉を使わずに提案・交渉します。就活生にも選択権があるように見えますが、このような行為は、職業選択の自由に抵触する可能性があります。交渉型の具体例としては以下の2つが挙げられます。

●面接の場で、就職活動を終えるよう強く求める
●内定を出すことを条件に、他社の内定を辞退するよう要求する

【2】束縛型

束縛型は、内定者を対象とする研修や親睦会などのイベントを多く行い、就活生のスケジュールを埋めることで就職活動を続けにくくするオワハラです。束縛型の具体例としては以下の2つが挙げられます。

●他社の面接の時期に面接や研修を行う
●就活イベントの日程に研修や親睦会を行う
●内定者に大量の課題を出し、就職活動の持続を妨げる

【3】脅迫型

脅迫型とは、自社の内定を辞退すると損害賠償を請求すると発言するなど、就活生に対して脅迫を行うオワハラです。脅迫型の具体例としては以下の2つが挙げられます。

●内定辞退の申し出に対して罵倒する
●他社の内定や選考を辞退するよう、強い言葉で要求する

【4】同情型

同情型は、役員や先輩社員などと就活生がコミュニケーションを取る機会を多く設け、心理的に内定を辞退しにくい状況を作るオワハラです。同情型の具体例としては以下の2つが挙げられます。

●社員との食事会など親密になる予定を頻繁に作り、内定を断りにくくする
●内定を辞退しようとした就活生に対して泣き落としを仕掛ける

オワハラは企業にマイナス

企業がオワハラを行う背景には、優秀な人材を他社よりも先に確保したいという熱意がありますが、実は大きなデメリットがあることを覚えておく必要があります。

訴えにより不利益を被るリスクがある

オワハラは違法とみなされる場合があり、罪が成立すると、懲役や罰金といった刑罰が科されます。また、告訴されなくても、就活生が受けた精神的苦痛によって損害賠償を求められる可能性もあります。

企業のイメージダウンにつながる

近年ではSNSや就活口コミサイトなど、インターネットを通じて情報が瞬時に拡散されます。就活生からオワハラが公表されることで、社会的にイメージが下がり、企業の信頼度に影響します。就活生以外にも、一般消費者や取引先企業など、各方面に悪評が広まってしまうことも念頭に置いておかなくてはなりません。

内定辞退につながる

オワハラを行ってしまうと、内定者の入社意欲が低下し、内定辞退につながります。内定者フォローは重要ですが、頻繁に他の選考の辞退を促す、拘束期間の長い研修を実施するなど、内定者にオワハラと感じられる内容では逆効果です。

企業が取り組むべきオワハラ対策

就活生にオワハラと感じられる言動がないよう、採用活動において企業が意識すべきポイントを紹介します。社内意識の共有や内定者フォローのやり方、内定辞退への対応などさまざまな対応が考えられます。

社内で注意点を共有する

面接時に就活生に対してしてはいけない質問と併せて、どういった行為がオワハラに当てはまるのかを再確認し、採用活動の注意点を共有します。オワハラという言葉や考え方に明確な定義がないため、オワハラそのものの認識は人によって異なります。選考担当者だけでなく、研修や食事会といった場面で就活生と接する機会のある社員とも認識を共有しておくとオワハラ予防に効果的です。

内定者フォローを見直す

行き過ぎた内定者フォローはプレッシャーにつながるため、就活生の気持ちの状況に寄り添った適切なフォローが重要です。
例えば内々定を出す時期は、学生によってはいくつもの企業から内々定が出ています。いざ内々定をもらうと軸がブレる学生もおり、意思が曖昧な時期です。何に迷っているかを丁寧に聞いて相談に乗ると、信頼関係を深められ内定辞退防止につながります。

また、内定者交流会や内定者用SNSなどの場も内定辞退に有効です。内定者は同じ状況の学生とのコミュニケーションを通じて、内定承諾に自信をつけることができます。正式に内定した後には、研修や社内アルバイトを通じて実際の業務に携わることで、内定者が入社後の姿をイメージできるようになります。

就活生の拘束を避ける

オワハラと受け取られないために、競合他社の選考スケジュールを把握し、就活生の負担にならない選考や研修を行うといった対策が必要です。説明会や面接を延期する、研修を泊まり込みで行うなどにより、就活生を拘束すると、他社の面接を受けられないようにしていると感じる就活生もいます。

内定承諾書を使用する際は丁寧に説明をする

内定承諾書への署名は、就活生によってはプレッシャーを感じるため、丁寧な説明が必要です。署名してもらう場合、承諾書が必要な理由や署名による法的拘束力の有無などを丁寧に説明します。強要ではなく、納得の上で署名をしてもらうことが重要です。

内定辞退の申し出があった場合も、丁寧に対応する

内定辞退の申し出があった場合、強く引き止めるとオワハラになる可能性があるため、企業側は丁寧な対応が求められます。何が原因で辞退するか、自社が工夫することで入社を再検討してもらえる余地はあるかなどを聞くことは可能です。入社の意思がまったく残っていない場合は、「辞退は残念だが、応援している」と一言添えて辞退を受け入れることで、良い印象を残せます。

まとめ

オワハラは、せっかく選考に応募してくれた就活生に嫌な思いをさせるだけでなく、訴訟や損害賠償といったトラブルの原因にもなりかねない行為です。また企業のイメージを悪化させ、価値を下げるリスクも持っています。将来にわたって優秀な人材を確保し続けるためにも、自社の選考内容や内定者フォローにオワハラにつながる言動がないか、改めて確認する必要があります。

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監修/佐々木亮(弁護士)

弁護士。日本労働弁護団常任幹事。長時間労働やパワハラなどの労働状況を支援するブラック企業被害対策弁護団顧問。民事事件・労働事件を中心に扱い、ハラスメントに関する事件を多く担当。

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