採用ペルソナとは?
求める人材を採用するために不可欠な採用ペルソナ。この採用ペルソナは、自社の採用活動にどのようなメリットをもたらすのでしょうか? ここでは、採用ペルソナの意味と採用ターゲットとの違いと関係性について解説します。
そもそもペルソナとは?
ペルソナとは、サービスや商品を利用すると想定される架空のユーザー像を意味するマーケティング用語のこと。実際にそのユーザーが実在しているかのように、年齢や性別、居住地、職業に加えて、価値観、家族構成、休日の過ごし方まで、リアルな設定をおこないます。
採用ペルソナとは
採用ペルソナとは、採用したい人物の年齢や性別、経験・スキルなどの情報を具体化したものです。日本では少子高齢化によって労働人口が減少しています。人材の確保が難しくなっているなか、自社の求める条件に近い人材を一人でも多く採用するため、採用分野でもペルソナの概念が取り入れられているのです。
採用ペルソナと採用ターゲットの違いと関係性
採用ペルソナと採用ターゲットの違いは、設定する人物像の具体性です。たとえば、ペルソナであれば、「21歳男性、サッカー部に所属しており、チームメイトからの信頼が厚い」というように一人の架空の人物を詳細に作り込みます。それに対してターゲットは「20代男性、運動部所属」というように大まかに設定します。このように、採用ペルソナは、求める人材像を具体的に作り上げることが可能です。
採用ペルソナ3つのメリット
採用ペルソナは、採用活動にどのようなメリットを見出すのでしょうか?ここでは、採用ペルソナ3つのメリットを紹介します。
採用ミスマッチを防げる
一つ目は、採用ミスマッチを防げることです。
採用ペルソナは、採用ターゲットのイメージを具体化し、ターゲットニーズに合った自社の魅力を打ち出すことができます。こうして自社の魅力をアピールし、自社にマッチする人材を集めることで、採用ミスマッチを防ぐことが可能になります。
採用活動を効率化できる
二つ目は、採用活動を効率化できることです。
採用ペルソナを設定し、自社にマッチした人材を集めることで、採用活動にかかる工数を削減することができます。採用活動には、「書類選考」「一次面接」「最終面接」といった選考する工程が複数ありますが、採用ペルソナを設定していないと、自社にマッチしない求職者の選考工程が大幅に増えるでしょう。採用ペルソナの設定によって、効率的な採用活動をおこなうことが可能です。
採用マーケティングを戦略的におこなえる
三つ目は、採用マーケティングを戦略的におこなえることです。
採用マーケティングの下、採用ペルソナを設定し、求める人材像の具体的なイメージを作り上げることで、求職者の目線に立った施策を検討することができます。具体的には、求職者の価値観や志向性、行動特性を踏まえて、どのようなチャネルでどういった魅力を発信すべきかなど、採用マーケテイングを戦略的におこなうことが可能になります。
採用ペルソナを成功に導く5つのポイント
採用ペルソナは、根拠もなく自己流で作成しても、採用活動を成功に導くことはできません。ここでは、採用ペルソナを成功に導く5つのポイントを解説します。
採用マーケティングの実施
一つ目は、採用マーケティングを実施することです。
人材不足を背景に採用難が深刻化する一方、ITの急速な進展により、採用市場の環境は劇的に変化しています。競合他社に打ち勝つためには、採用マーケティングによって採用市場や競争環境を分析し、求職者のニーズにあった採用ペルソナを設定することが可能になります。
コンピテンシーモデルの作成
二つ目は、コンピテンシーモデルを作成することです。
コンピテンシーモデルは、自社の求める人材を定義するために効果の高い手法のひとつです。このコンピテンシーモデルは、自社におけるハイパフォーマーの行動特性をいい、行動そのものでなく、考え方や価値観などの行動特性に着目します。このコンピテンシーモデルを採用基準とし、採用ペルソナを設定することで、効果的な採用活動を展開することが可能です。
コンピテンシーモデルを詳しく知りたい方は、「コンピテンシーとは?意味や採用面接・人事評価への活用法を簡単解説!」の記事をご参考ください。
複数パターンの作成
三つ目は、複数パターンを作成することです。
企業には、さまざまな特性や強みをもった人材が集まり、組織が成り立っています。また、組織毎に求める人材像が異なることもあるでしょう。そのため、採用ペルソナは1人の人物像に絞るのではなく、人の多様性や組織毎の特性を踏まえて、複数パターンを作成することが有効です。
世代の価値観に合わせた設計
四つ目は、世代の価値観に合わせた設計をすることです。
旧来の価値観のままでは、Z世代などの今の世代に共感を得ることは難しいでしょう。採用マーケティングの下、世代価値観に合わせた採用ペルソナを設計することで、求職者ニーズに適した採用活動を展開することが可能になります。
社内でのブラッシュアップ
五つ目は、社内でブラッシュアップをすることです。
設計した採用ペルソナに沿って募集しても、想定した人材が集まるとは限りません。設定した採用ペルソナが「採用市場の変化に対応していない」「要件が高すぎて、応募者が集まらない」といったことがあり得ます。定期的に、採用市場と自社の要件に乖離がないか、要件に無理が生じていないかをチェックし、採用ペルソナの設定基準をブラッシュアップすることが重要です。
採用ペルソナの項目例
ここでは、人材要件と採用ペルソナの関係性を踏まえて、採用ペルソナの項目例を紹介します。
人材要件 | 採用ペルソナ | |
---|---|---|
定量要件 | 年齢層(年齢制限該当事由に該当する場合)・募集地域など | 年齢・家族構成・性別・居住地など |
経歴 | 職務経験、現職の業界・職種・組織規模など | |
年収レンジ | 年収や給与体系など | |
保有スキル | 保有スキル、職務経験年数、保有資格など | |
定性要件 | 価値観 | 働き方の価値観、求める社風、ポリシーなど |
志向性 | キャリア志向、仕事のやりがいなど | |
人柄 | 趣味、特技、部活・サークル活動、性格など |
自社にマッチした採用ペルソナ7つの作成ステップ
採用ペルソナは、適正な作成ステップを踏むことが成功の秘訣です。ここでは、採用活動でペルソナを作るのに必要な7つのステップを解説します。
【1】採用マーケティングによる環境分析
第一ステップは、採用マーケティングによる環境分析です。
競合他社に打ち勝つため、採用マーケティングの下、求職者のニーズにあった採用ペルソナを設定するため、採用市場の環境や競争環境の分析をおこないます。
環境分析(3C分析)
まず、自社を取り巻く採用市場の環境分析を「3C分析」のフレームワークを活用して分析します。採用マーケティングにおける3Cとは、「Customer(自社のニーズに合う求職者)、Competitor(採用市場で自社と比較検討される企業)、Company(自社の強みや弱み)」を指し、自社の立ち位置を分析します。
環境分析(SWOT分析)
次に、自社の競争環境を「SWOT分析」のフレームワークを用いて分析します。具体的には、「Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)」の4つを軸に分析し、採用戦略を練ります。
【2】採用目的の明確化
第二ステップは、採用目的の明確化です。
前ステップで検討した採用戦略の下、「何のためにどのような人材を採用するか」という目的を明確にしてください。 採用の目的によって作成する採用ペルソナが異なります。たとえば、欠員が出て業務が回らなくなっている状況であればスキルや経験を重視し、事業拡大に向けて人員を増やしたい状況であれば組織に適応できる人柄を重視して採用ペルソナを作成します。
【3】人材要件のヒアリング
第三ステップは、人材要件のヒアリングです。
自社の求める人材を定義するために効果の高い手法であるコンピテンシーモデルを作成するため、各セクションを対象に人材要件のヒアリングをおこないます。ハイパフォーマーに共通する要件を抽出し、前章の「採用ペルソナの項目例」であげた定量要件や定性要件の項目を参考に、自社で必要な人材要件を抽出してください。
なお、採用ペルソナのハードルが上がりすぎないように、MUST(必要条件)・WANT(あると望ましい条件)・NEGATIVE(不要条件)に分類することが重要です。
人材要件について詳しく知りたい方は、「人材要件とは?設定する目的や作成のフレームワークを具体的に
解説」の記事をご参考ください。
【4】コンピテンシーモデルの作成
第四ステップは、コンピテンシーモデルの作成です。
ヒアリングで抽出した人材要件をベースに、行動特性を集約し、評価基準を作成します。そして、この評価基準をコンピテンシーモデルに落とし込みます。なお、コンピテンシーモデルの作成方法には、実在するハイパフォーマーを基準とする「実在型モデル」、企業理念などから自社が求める人材像を作り上げる「理想型モデル」、実在型モデルと理想型モデルを組み合わせた「ハイブリットモデル」の3つがあります。自社の環境や目的に合わせた手法で、コンピテンシーモデルを作成しましょう。
コンピテンシーモデルを詳しく知りたい方は、「コンピテンシーとは?意味や採用面接・人事評価への活用法を簡単解説!」の記事をご参考ください。
【5】コンピテンシーモデルの調整
第五ステップは、コンピテンシーモデルの調整です。
コンピテンシーモデルを確定するには、経営サイドとの調整が必要になります。コンピテンシーモデルと自社の経営層の考え方や経営ビジョンと照らし合わせ、採用ミスマッチが起きないよう、コンピテンシーモデルを調整してください。場合によっては、経営層と現場、人事でコンピテンシーモデルをすり合わせすることが必要となるケースもあるでしょう。
【6】採用ペルソナの設計
第六ステップは、採用ペルソナの設計です。
コンピテンシーモデルで整理した条件をもとに、年齢層や家族構成、職務経験や保有スキル、働き方の価値観やキャリア志向性など、キャラクターを作り上げるように設計します。実際に活躍できる人物像とギャップが生まれないように、現場社員にチェックしてもらうことも有効です。
【7】採用ペルソナのブラッシュアップ
第七ステップは、採用ペルソナのブラッシュアップです。
「採用ペルソナを成功に導く5つのポイント」の章で解説したように、定期的に、採用市場と自社の要件に乖離がないかなどをチェックし、採用ペルソナの設定基準をブラッシュアップしましょう。
ペルソナを作るときの注意点
採用ペルソナの作成ステップを踏むときに注意すべき点が2つあります。ここでは、以下2つに注意すべき理由を紹介します。
自社の魅力を把握してから作る
求職者にとって自社にどのような魅力があるかを理解したうえでペルソナを作成してください。自社の魅力の理解が不十分だと、自社にマッチする人材の条件が分からず、社風にマッチしていないペルソナになる可能性があります。ペルソナの設計を誤ると、選考中に求職者にアピールすべき魅力・強みを誤り採用につながらない、入社後にミスマッチが発生するといった事態になりかねません。
他社より優れている点や自社の魅力を発見するために、新卒・中途入社にかかわらず新入社員に自社を選んだ理由についてヒアリングすることがおすすめです。
正解が一つだけではないことを意識する
ペルソナは一人の架空の人物像を作り上げることですが、採用活動におけるペルソナの正解は一つだけではありません。設計した一つのペルソナに固執していると人材の対象範囲が狭くなり、優秀な人材の採用機会を喪失するリスクがあります。
リスク回避のために、人材を配置する部署や採用するタイミングを考慮して、複数のペルソナを設定することがおすすめです。たとえば、「将来の幹部になりえる人材」「主力事業の軸となる人材」というように、活躍してほしい内容によって複数のペルソナを用意しておきます。
【新卒・中途】ペルソナ設定の具体例
ペルソナ設定の7ステップに沿ってペルソナの具体例を新卒採用と中途採用の2パターン作成しました。ここでは、ペルソナ作成時に考慮した点と併せて具体例を紹介します。
【新卒】営業職を募集する例
日用品メーカーのA社は、代理店営業の人材を増やすために新卒採用で営業職を募集することになりました。A社はチームワークを重視する企業風土で、繁忙期には残業が増える傾向があります。ここから、コミュニケーション能力が高く、ある程度体力・忍耐力のある人材になるように下記のペルソナを設定しました。
項目 | 設定内容 | |
---|---|---|
基本情報 | 年齢 | 21歳 |
性別 | 男性 | |
学歴 | 〇〇大学 □□学部(文系) | |
部活・サークル | 野球部 | |
アルバイト | ファミリーレストラン | |
趣味 | 映画鑑賞 | |
能力 | 長所 | 協調性があり、周囲を巻き込む力がある |
短所 | おせっかいと思われることがある | |
学生時代に力を入れたこと | チームメンバーに積極的にアドバイスをして、チームの基礎力向上に貢献し、全国大会ベスト8進出 | |
価値観 行動特性 |
志望業界・業種 | 業界未定、営業職希望 |
企業選びで重視している点 | ・社内のコミュニケーションが活発か ・新人のうちから活躍できるか |
ペルソナを設定する上で以下の2点を考慮しています。
- 部活やアルバイトで人とのコミュニケーションに慣れており、チームワークを大切にしていそう
- 部活にアルバイト、学業も両立しているならば、忙しさに耐性がありそう
【中途】エンジニアを募集する例
IT企業のB社では、クライアントのシステム開発に携わっていた社員が退職してしまい、欠員補充のためにSEを募集することになりました。B社は実力主義で、年齢に関係なく評価しています。また、営業と同行しクライアントに提案するケースもありコミュニケーション能力の高い人材が必要と考えています。これらの要素から、エンジニアとしての経験が豊富で、普段から相手に情報を分かりやすく伝える習慣のあるペルソナを下記に設定しました。
項目 | 設定内容 | |
---|---|---|
基本情報 | 年齢 | 36歳 |
性別 | 女性 | |
学歴 | 〇〇大学 △△学部(理系) | |
趣味 | オンラインゲーム | |
年収 | 500万円 | |
家族構成 | 夫と息子と3人暮らし | |
能力 | 現職(前職)の仕事内容 | SE |
スキル | 納期や予算を考慮して適切なシステムを構築できる | |
資格 | 応用情報技術者 | |
価値観 行動特性 |
仕事で大切にしていること | クライアントやチームとの積極的なコミュニケーション |
転職理由 | ・適切な評価を受けたい ・リモートワークと出社を柔軟にできるようにしたい |
|
企業選びで重視している点 | ワークライフバランスが取れるか |
ペルソナを設定する上で以下の3点に考慮しています。
- システム開発に関わるにあたって、必要なスキルや資格を保持している
- 子どもとのコミュニケーションで、相手に伝わりやすいように言葉を言い換える力がありそう
- 家計の管理を普段からしており、予算や工数を意識して業務を進められそう
採用ペルソナを効果的に設計するには?
採用ペルソナを効果的に設計するには、外部ノウハウを活用することがポイントです。ここでは、採用ペルソナを効果的に設計するポイントを紹介します。
フォーマット/設計シートの活用
一つ目は、フォーマットや設計シートの活用です。
単にひな形だけ取り寄せても、どのように手を付けて良いか解りづらいこともあるでしょう。また、本記事で紹介した手順で進めても、困難にぶつかることがあるかもしれません。質の良い採用ペルソナのフォーマットや設計シートを活用すれば、自社の環境や目的に合った採用ペルソナを合理的に作ることが可能です。
弊社クイックでは、採用ターゲットを明確にするための採用ペルソナを作成するための「ワークシート」を提供しています。自社の採用ターゲットにマッチした効果的な採用ペルソナを作り上げたいなどご利用ください。
ペルソナ設定に役立つワークシートをダウンロードしたい方は→「ペルソナ設計シート(求める人物像の明確化)」
採用コンサルティングの活用
二つ目は、採用コンサルティングの活用です。
本記事で紹介したプロセスに従って採用ペルソナを作成したくても、「採用活動に手一杯でリソースがない」「採用マーケティングに取り組むことが困難」といったケースがあるでしょう。効果的に採用ペルソナを設計するには、自社の求める人材像や強みを引き出すことが重要です。採用コンサルティング会社であれば、これらを引き出し、採用ペルソナを設計することが可能です。
弊社クイックでは、採用マーケティングの下で採用活動全体をデザインすることで、効果的な採用ペルソナの設計をご支援にも対応した「採用コンサルティング」を展開していますので、参考にしてください。
まとめ
本記事では、採用ペルソナの概要やメリット、成功に導くポイントのほか、項目例、作成ステップや効果的に作成する方法を解説しました。
採用ペルソナとは、採用したい人物の年齢や性別、経験・スキルなどの情報を具体化したものです。採用ペルソナを作ることで、採用活動の効率化やミスマッチ防止につながります。
本記事を参考に、自社の採用活動に効果的な採用ペルソナを設計しましょう。
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