人材要件とは?設定する目的や作成のフレームワークを具体的に解説 COLUMN

公開日:2020.02.05

更新日:2023.04.17

人材要件とは?設定する目的や作成のフレームワークを具体的に解説

採用活動をおこなうための骨子となるものが「人材要件」です。

「人材要件という言葉は聞いたことがあるけれど、設定するメリットがあまりわからない」

「昔から同じ人材要件を使っており見直したいが、作成方法がわからない」

このような戸惑いの声も、採用担当の方からは聞かれます。

実は採用活動の成否は、人材要件にかかっているといっても過言ではありません。

採用活動が狙い通りにいかないという課題を抱えている場合、人材要件を設定しようとお考えの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、人材要件を設定する目的や基礎的な作成方法をあらためて振り返り、流れをまとめています。作成経験のある方は復習用として、初めて挑戦される方は予習や全体像の把握にぜひご活用ください。

目次

人材要件とは

あらためて、人材要件の定義や似たような言葉である「採用ペルソナ」との違いをまとめます。

人材要件の定義

人材要件とは、企業の理念や今後の事業展開を踏まえて、「どのような人材が必要か」を明確化したものです。

一般的に「求める人材像」などと表現され、所有しているスキルや資格をはじめ、経験・属性・人柄などを多角的に定義していきます。

採用活動において、優秀な人材の獲得は会社の成長に欠かせませんが、人材要件がないと「優秀な人材」のとらえ方が担当者によって変わってしまうリスクがあります。

会社として共通認識を持ったうえで採用活動を実施するためにも、人材要件の定義は必要不可欠でしょう。

採用ペルソナとの違い

人材要件と似たようなものとして「採用ペルソナ」が挙げられます。

人材に対し、自社が求めるスキルや経験などを明らかにした人材像が「人材要件」であるのに対し、「ペルソナ」は人材要件をもとに、人物像をより具体化したものを指します。

つまり、人材要件で設定したスキルや経験などをもとにして、架空の人物プロフィールを描いたものがペルソナです。

ペルソナでは、家族構成や出身大学、所属部活などの情報のほか、週末の過ごし方なども具体的に設定します。

ペルソナを設計することで、採用したい人物像のリアリティをさらに高められるでしょう。

人材要件を設定する目的

人材要件がなかったとしても、採用活動そのものの実施は可能です。ただし、採用活動の本質的な成功のために人材要件は不可欠といえるでしょう。

ここでは、あらためて人材要件を設定する目的を解説します。

経営戦略と採用戦略の一貫性が保てる

人材要件は、経営戦略と連動した採用活動を進めるためにも必要不可欠です。

企業の資源とされている「ヒト・モノ・カネ・情報」のなかでも特に、「ヒト」は代替が効かない唯一無二の資源といえるでしょう。

経営戦略に合わせた人材を獲得することは、企業のビジョン実現や目標達成に近づくことに他なりません。

企業が求める条件に合致する人材を獲得できるかどうかは、経営戦略推進のカギを握る要因のひとつといえるでしょう。

採用ミスマッチや早期退職の防止

人材要件があることで、採用ミスマッチや入社直後の離職防止につなげられます。

人材要件がない場合、時間をかけて採用した人材が早期退職に至るケースがあります。会社が求める条件と人材が持っているスキルや経験、考え方の不一致が原因です。

人材要件が明確であれば、条件を絞ったうえで自社に適した人材を採用できるため、採用ミスマッチのリスクを減らすことができます。採用ミスマッチの防止により、早期退職の抑制にもつながるでしょう。

人材要件で定義する項目

人材要件の設定をするには、まずは何を定義するかを決めなければなりません。

企業や職種、職位によって定義すべき項目は異なりますが、以下のような項目は共通して必要です。

【ソフト情報】
・属性(年齢・性別など)
・性格/人柄/志向性

【ハード情報】
・職務経験
・保有スキル/能力/資格

【職務・待遇について】
・求めること/期待する行動
・給与

このような項目を定めておくことで、求職者の選定がスムーズになり、採用活動の効率化にもつながります。

採用関係者間での共通認識も生まれやすいため、まずは上記の項目を定義してみてください。

人材要件の作り方・フレームワーク

人材要件に盛り込むべき要素は多岐にわたります。

要件を固めていくにはスケールの大きな段階から細かい段階へと落とし込み、具体化するよう意識しましょう。なお検討初期に、幅広いアイデアを出す作業方法としては「ブレインストーミング」などの手法があります。

企業理念・経営戦略を確認

まずは、企業理念や経営戦略を確認して、自社の方向性と採用計画が連携し、矛盾や非現実的な設定が生じていないか精査しましょう。

採用の背景と目的の明確化も重要です。

たとえば、新規事業開発や社員の退職によるリソース減少などが背景にある場合、長期的な増員や短期的な人員の補充などが目的になります。

条件をMUST/WANT/NEGATIVEに分類

最初に整理した採用の目的、採用を通した経営戦略を達成するには、どのようなスキルや経験を持った人材が必要か、これまでの採用実績や現場へのヒアリングを通してピックアップします。

一通り条件が挙がったら、それらに優先順位をつけるようにしましょう。

欠かせない条件は「MUST(必要条件)」、あると望ましい条件は「WANT(十分条件)」、評価する必要のない項目は「NEGATIVE(不要)」として分類すると、条件の優先度が明確になります。

また、個々の条件は無難なレベルでも、条件の数が増えすぎると、複数もしくは全てを持ち合わせている確率は下がってしまいます。

業務に不可欠なスキルを持っているのに、条件の一部を満たしていないからと採用を見送ると、機会の損失を生み出してしまうかもしれません。

優秀な人材の見逃しを回避できるよう、条件の優先順位付けは不可欠です。

望ましい性格・人柄を設定

スキルとその優先度を決定したら、定量的には測りにくい「性格・人柄」についても検討を進めます。人柄も含めることで、条件面が合致する候補者のなかから、社風に合うタイプの人を選びやすくなるでしょう。

性格・人柄を含めた人物像の設計には、以下のような方法があります。

ペルソナ設計

前述したように、ペルソナとは仮定の人物像(の設定)で、主にマーケティングで使われる手法を採用に応用したものです。

ここまで整理した条件を足がかりに、性格や興味関心、家族構成、学校や前職での経験、仕事や生活に対する価値観、趣味や休日の過ごし方など「キャラクター」を作り上げるように設定します。

実際に活躍できる人物像とずれないよう、現場の社員に作成やチェックの協力をしてもらいましょう。

パターン数や更新の頻度は必要に応じて決定してください。

ペルソナが設計できたら、面接の質問を考えたり、選考で通過者を絞り込んだりするときに活用しましょう。

コンピテンシーモデル

コンピテンシーとは、「優秀な人材が持つ考え方や行動の特性」のことです。

企業においては、高いパフォーマンスを発揮している社員の行動・考え方=仕事の進め方がコンピテンシーとなります。

ヒアリングやアンケートなどを通じて行動特性を集約・整理し、採用する職種に合わせてモデル化したのが「コンピテンシーモデル」です。

コンピテンシーモデルを作るには、対象の社員本人や上司、同僚にヒアリングやアンケートをおこない「ある状況でどのような考えに基づきどのような行動をとるか」を探ります。採用においては、「このような状況のとき、あなたはどのような行動をとりますか」などと質問し、コンピテンシーモデルに近いかどうかで適性を判断できるでしょう。

<行動特性の例>

Q.営業先で提案した商品の導入を断られた場合、どのようにフォローするか?

A.そのまま押し続けても印象が悪化するだけと考え、同じ商品で食い下がることは控える。

「それではこのような困りごとではお役に立てるのではないかと思います」と別の商品を案内し、その場で契約に至らずとも「いざというときに相談できる」相手として覚えてもらえるように話題を切り替え、後日の訪問につなげる。

そのためにも、業界研究や商材理解は怠らないようにしている。

訴求点を明確化する

人材の必要十分条件、人柄や行動特性をまとめることで、採用ターゲットに届きやすい訴求ポイントをより明確にできます。

ターゲットなら自社のどのような点に魅力を感じそうか、人材要件に照らし合わせて取捨選択しましょう。

自社の強み・弱みをまとめ、相手の人柄によってはあえて弱みを見せることが「この会社はよい面だけでなく、課題も含めて伝えてくれる」と好印象にとらえてくれる可能性もあります。

人材要件を作成するときのポイント

続いて、新卒採用、中途採用の人材それぞれで、人材要件を作成するときに気をつけるべきポイントを紹介します。

新卒採用では伸びしろを重視する

新卒は基本的にポテンシャル採用となるため、多くの「条件」を満たす人材を探すのは困難です。

条件を極力絞ったうえで「先天的な要素」を重視し、「後天的な要素」はハードルを下げて採用に臨みましょう。先天的な要素が人材要件と合致していれば、その他の部分は入社後の教育で伸ばせますが、逆は難しいためです。

たとえば研究職やアナリストを採用する場合、専門分野の学力が高く研究に没頭できるような人は、ビジネスマナーや業務知識を教えることで育成できます。一方で、研究所にこもることが苦手で、人と話すのが好きという人には苦痛になってしまいます。

後者のケースは先天的な要素となるため、入社後の育成では開発が難しいでしょう。

適材適所の配置ができるようにするためにも、「最初から備わっていてほしい素質」と「後から育てられるスキル」を見極めることが重要です。

中途採用はスキルと意欲のバランスをとる

中途採用の場合は、即戦力としての活躍を期待することが一般的です。

そのため仕事の経験、理解度などのスキルが人材要件と合致していて、かつ自社で働くことへの熱意が強い人を選ぶようにしましょう。

新卒と異なり、スキル面の条件にある程度合致する人材の数は増えるでしょう。しかし同時に、他社を経験している分、「社風と合わない」と感じると離職してしまう可能性があります。欠かせないスキルと社風とのマッチの両方のバランスをとるように意識してください。

効果検証をおこないPDCAを回す

採用活動は、毎回効果と検証を実施することが大切です。振り返りの際には、人材要件についても効果検証をおこなってください。

設定した人材要件でどのくらいの応募があったのか、面接を実施できたのは何人かといった検証をおこないましょう。同時に、目標に達していない場合は改善を重ねていくことが重要です。

どんなに効率的な採用方法を用いたとしても、人対人の採用は一筋縄ではいきません。PDCAを回しながら、少しでも理想の採用活動を確立できるように努めましょう。

まとめ

人材要件作成の流れとポイントを紹介しました。一つひとつプロセスを踏んで人材要件を作成していくことが重要ですが、それだけではどうもうまくいかない…と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ターゲット像を作る過程で発生する悩みを解決するためのヒントを、「欲しい人材からの応募がこない」を解決する方法。で紹介しています。こちらもあわせてご覧ください。

よくある質問

Q1.人材要件とは?

人材要件とは、企業の理念や今後の事業展開を踏まえて、「どのような人材が必要か」を明確化したものです。

一般的に「求める人材像」などと表現され、所有しているスキルや資格をはじめ、経験・属性・人柄などを多角的に定義していきます。

Q2.人材要件のフレームワークとは?

「企業理念・経営戦略を確認」→「条件をMUST/WANT/NEGATIVEに分類」→「望ましい性格・人柄を設定」→「訴求点を明確化する」の4つのステップを経ることが、人材要件を設定するフレームワークです。

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