コンピテンシーとは?意味や採用面接・人事評価への活用法を簡単解説! COLUMN

公開日:2020.10.14

更新日:2023.06.01

コンピテンシーとは?意味や採用面接・人事評価への活用法を簡単解説!

近年、コンピテンシーを採用活動に採り入れた「コンピテンシー面接」が注目されています。しかし、以前からコンピテンシーという言葉は耳にするものの、「どのような意味なのか」「採用活動にも生かせるのか」と疑問を持つ採用担当の方もいるでしょう。

今回は、コンピテンシーの概要のほか、採用面接や人事評価で活用するメリット、コンピテンシー面接やコンピテンシー評価の導入手順を紹介します。

目次

コンピテンシー(competency)とは?

まずはじめに、コンピテンシーの意味や注目される背景、活用シーンを説明します。

コンピテンシーの意味

コンピテンシー(competency)とは、直訳すると「能力」「適格性」ですが、人事分野では 高い業績を上げている社員の行動特性をいいます。行動そのものではなく、行動の基となる思考や価値観などの行動特性に着目します。

例えば、優れた成績を残している社員が「顧客に商品理解を深めてもらいたい」といった思考のもと、自社商品をアピールするためのオリジナル資料を作った場合、この「オリジナル資料を作った」行動特性がコンピテンシーになります。

ただ上記の例のように、オリジナル資料を作るという行動を起こすには、「顧客に商品理解を深めてもらいたい」という思考も関係します。思考に加え、「オリジナル資料を作れるほどの商品知識」や「オリジナル資料を作成できるスキル」なども必要になるでしょう。よって、コンピテンシーは「成果を出した行動」の背後にある「思考」「スキル」「知識」なども包括する概念ととらえることができます。

コンピテンシーが注目される背景

日本の人事分野でコンピテンシーが注目される背景には、1990年代における成果主義へのシフトが挙げられます。

この成果主義へのシフトにより、旧来の年功要素が強い評価軸を変更するため、評価基準のひとつとしてコンピテンシーが採り入れられました。また、近年では、労働人口減少とともに経営環境が目まぐるしく変化するなか、限られた人数で生産性を高める評価を通じた人材育成手法として、再び注目を集めています。

コンピテンシーの活用シーン

コンピテンシーは、客観的に対象者の状況を把握できる指標として活用できるため、適正な判断が求められる採用面接や人事評価でしばしば活用されます。ここでは、採用面接と人事評価におけるコンピテンシーの活用シーンを紹介いたします。

【1】採用面接

採用面接のシーンでは、採用基準の指標として活用されています。

自社のハイパフォーマーを基準としたコンピテンシーを採用基準にすることで、活躍人材を見抜くことが可能です。結果に至るまでの行動や思考に着目し、行動特性を評価する「コンピテンシー面接」によって深堀りし、活躍人材を見極めます。

【2】人事評価

人事評価のシーンでは、人事評価方法のひとつとして活用されています。

人事評価方法には、目標管理制度であるMBO(Management By Objective)やOKR(Objectives and Key Results)、360度評価などがありますが、コンピテンシー評価は、他の評価方法では困難な業務プロセスの評価基準を明確化できるため、客観的に評価が可能です。また、自社のハイパフォーマーが評価基準となるため、社員から納得を得やすいメリットもあります。

コンピテンシー面接の活用メリット

ここではコンピテンシーを面接に採り入れるメリットを2つ紹介します。

採用ターゲットが分かりやすくなる

「優秀な社員の行動特性=コンピテンシー」が明らかになると、自社が求める人物像を具体的にイメージしやすくなるため、自社が求める人物像に合致する候補者つまり採用ターゲットがつくりやすくなります採用ターゲットが明確になると、面接を担当する社員全員が共通認識を持って取り組みやすくなるでしょう。

担当者による評価のブレを抑える

コンピテンシーをもとに高いパフォーマンスを発揮できる理由を分析・整理すると、採用ターゲットの特徴を細かく設定できるため、より具体的な評価軸を作れます。

面接は複数の社員に協力してもらうケースが多く、評価が面接官の主観や感情に影響されることがあるのではないでしょうか。評価軸が具体的になれば、より適正な評価がしやすくなるだけでなく、入社後のミスマッチを最小限に抑えることも期待できます。

コンピテンシー面接の課題

自社にハイパフォーマーが存在しない場合は、次章で触れる「理想型モデル」によって求める人物像を作り上げるため、上層部や各部門など多方面へのヒアリングが必要になるでしょう。また、職群毎に求める人材像が異なる場合は、職群毎のコンピテンシーモデルを作る必要もあります。

こうした場合、コンピテンシー面接の導入期間が長期にわたる可能性があります。

コンピテンシー評価の活用メリット

ここでは、コンピテンシー評価の活用メリットを紹介します。

ロールモデルが明確になる

一つ目は、ロールモデルが明確になることです。

ハイパフォーマーの行動特性を評価基準として社員に明示することで、成長への拠り所となるロールモデルが明確になります。このロールモデルにおける行動特性を社員が習得することで、生産性アップや価値観の変化の効果が期待できます。

評価の透明性が高まる

二つ目は、評価の透明性が高まることです。

高評価となる社員の行動特性や価値観といった定性面の評価基準が明確になるため、制度の透明性を高めるメリットがあります。具体的には、業務プロセス評価で、評価者の主観を排除し、評価のばらつきやエラーを防ぐ効果が挙げられます。

ハイパフォーマーを育成できる

三つ目は、ハイパフォーマーを育成できることです。

ハイパフォーマーの行動特性を評価基準とするため、成長の方向性を社員に示すことができます。これにより、社員の行動特性が望ましい方向に変化し、効率的・効果的にハイパフォーマーを育成することが可能です。

コンピテンシー評価の課題

コンピテンシー評価は、多くのメリットがある半面、ハイパフォーマーへのヒアリングや分析、評価基準作成など、導入時の負担が大きいデメリットがあります。また、運用時は、評価者の負担が大きいほか、人事部門における教育や管理の手間なども大きな課題です。

さらに、コンピテンシーモデルは、評価項目が多いほど効果を発揮しやすい半面、部門や職位毎にモデルの作成や運用が必要なため、導入時や運用時の負担がより大きくなることに留意が必要です。

コンピテンシー面接・評価の導入手順

コンピテンシー面接やコンピテンシー評価を行うにはコンピテンシーモデルの作成のうえで、それぞれの導入手順が必要になります。ここでは、コンピテンシーモデルの作成とそれぞれの手順について解説します。

コンピテンシーモデルを作成する

ここでは、コンピテンシー面接とコンピテンシー評価で共通して必要なコンピテンシーモデルの作成手順を解説します。コンピテンシーモデルとは、自社で定めたコンピテンシーの内容を体系的にまとめてモデル化したものです。コンピテンシーモデルは作成するにあたり、大きく4つのステップを踏みます。

【1】求める人物像を明確にする

コンピテンシーモデルを作成するには、まず、現場で求められている人物像を明確にする必要があります。求める人物像を明らかにする主な方法として、「実在型モデル」「理想型モデル」「ハイブリッド型モデル」があります。

「実在型モデル」は、社内にいる優秀な社員を例に、高いパフォーマンスを発揮できる要因を分析し、それを明文化してコンピテンシーモデルを設計する方法です。

「理想型モデル」は企業理念や事業内容などから自社が求める人物像を作り上げ、それをベースに理想の姿を実現するために必要なコンピテンシーを考える方法です。社内に理想的な社員がいない場合に有効でしょう。

「ハイブリッド型」は、「実在型モデル」と「理想型モデル」を組み合わせた方法です。「実在型モデル」をもとにコンピテンシーモデルのたたき台を作り、それに足りない部分を加えることで理想の人物像を作り上げます。

【2】コンピテンシーの項目を作成する

求める人物像が明確になったら、コンピテンシーモデルを作成するために必要な要素を洗い出します。

項目を作る際は、シグネ・M.スペンサーとライル・M.スペンサーがまとめた「コンピテンシー・ディクショナリー」が活用できます。コンピテンシー・ディクショナリーは、コンピテンシー・モデルに含まれる要素を6領域20項目に分類したものです。

コンピテンシー(領域) コンピテンシーの定義(項目)
達成・行動 ・達成思考
・秩序・品質・正確性への関心
・イニシアチブ
・情報収集
援助・対人支援 ・対人理解
・顧客支援志向
インパクト・対人影響力 ・インパクト・影響力
・組織感覚
・関係構築
管理領域 ・他者育成
・指導
・チームワークと協力
・チームリーダーシップ
知的領域 ・分析的志向
・概念的志向
・技術的・専門職的・管理的専門性
個人の効果性 ・自己管理
・自信
・柔軟性
・組織コミットメント

※参考:井上直恵「日本におけるコンピテンシーーモデリングと運用ー」を元に作成

「コンピテンシー・ディクショナリー」はコンピテンシーモデルを作成するときの指標になるものです。上記を参考に項目を追加したり省いたりしながら、候補者に求めるコンピテンシーの項目を作成しましょう。

【3】ヒアリングを行う

【1】で「実在型モデル」もしくは「ハイブリッド型モデル」を選択された場合は、【2】で作成したコンピテンシーの項目に沿って、コンピテンシーモデルになりえる優秀な社員にインタビューし、優れた働きができる背景を把握しましょう。インタビューする社員を限定せずにさまざまな社員の特徴を収集すると、比較材料が増え、より良い成果を出せる理由が明確になるかもしれません。

インタビューが完了したら、その内容から高い実績につながる要因を分析・整理しコンピテンシーモデルを構築します。モデル化する際は、そのコンピテンシーが本当に候補者が達成可能なものなのかを意識することが大切です。

【4】自社の経営ビジョンと照らし合わせる

【3】のインタビューの内容をもとに作成したコンピテンシーモデルと自社の経営ビジョンを照らし合わせ、相違があった場合はコンピテンシーモデルを調整しましょう。コンピテンシーモデルと自社経営ビジョンに乖離があると、採用後のミスマッチや人材育成方針のブレが生じてしまうため、経営ビジョンとの照らし合わせは重要です。

コンピテンシー面接の導入手順

ここでは、コンピテンシー面接の導入手順を解説します。

【1】行動・思考の傾向が把握できる質問を作成する

コンピテンシーモデルの作成が終わったら、候補者の行動事実を具体的に聞き出せる質問を作成しましょう。

質問項目を作る際は、「目的を確認するための質問」「意思決定のプロセスを確認するための質問」「行動内容を確認するための質問」「結果を確認するための質問」「将来の行動を確認するための質問」の5つを含めると、候補者の行動や思考パターンなどを把握しやすくなります。

例えば、候補者が大学時代に力を入れたこととして「大学祭のイベントの企画立案」を挙げた場合、以下のような問いを投げかけるとよいでしょう。

▼目的を確認するための質問
「イベントを企画しようと考えたきっかけは何ですか?」

▼意思決定のプロセスを確認するための質問
「イベントの企画立案にあたり、まずどんなことをされましたか?」

▼行動内容を確認するための質問
「イベントの企画立案にあたり、工夫したり、努力したりしたことはありますか?」

▼結果を確認するための質問
「提案した企画は採用されましたか? 周囲の反応はどうでしたか?」

▼将来の行動を確認するための質問
「その経験を今後どのように生かしますか?」

【2】コンピテンシーレベルに沿って評価する

面接後、候補者の行動事実を把握したことで分かった行動や思考パターンなどを、5段階の「コンピテンシーレベル」に沿って評価しましょう。コンピテンシーレベルは以下の表のとおりです。

コンピテンシーモデル

コンピテンシーレベルの高い人材は自社での活躍が期待できますが、高いレベルの人材ばかり獲得する必要はありません。あくまで評価の基準として活用することが大切です。

コンピテンシー評価の導入手順

ここでは、コンピテンシー評価の導入手順を解説します。

【1】評価項目の決定

作成したコンピテンシーモデルに基づき、自社の経営ビジョンに適した評価項目を決定します。前述したコンピテンシー・ディクショナリーをベースに、自社に合わせた評価項目を決定するとよいでしょう。なお、職種や職位によって求める人材像が異なる場合は、それぞれの評価項目が必要なことに留意してください。

これにより、自社の経営ビジョンの実現に向けて、効率的な人材育成をすることが可能です。

【2】評価基準の作成

評価項目を決定したら、達成レベルを評価するための評価基準の作成を行います。

評価は、前述した「コンピテンシーレベル」を5段階に分けて、評価項目毎に判断基準を作成するとよいでしょう。 職種や職位によって、各評価項目の重みを変えるなど、自社の価値観や経営ビジョンに合わせて、評価基準を作成してください。

【3】評価の調整

最後に、全体を俯瞰して、職種や職位毎に作成した評価項目・評価基準を調整します。ある職種だけ求めるレベルが高い、あるいは職位の高い層に求めるレベルが低すぎるなど、全体的なバランスが取れているかを調整しましょう。また、必要に応じて、職種や職位毎に個別基準を作成することも検討してください。

まとめ

本記事では、コンピテンシーの概要のほか、意味や採用面接や人事評価で活用するメリット、コンピテンシー面接やコンピテンシー評価の導入手順を紹介しました。

コンピテンシーを採用活動に採り入れることで、採用ターゲットが具体的かつ明確になり、客観的な評価基準をつくれます。また、人事評価に活用することで活躍人材を育成でき、自社の経営戦略を効率的に実現することが可能になります。本記事を参考に、採用活動や人事評価にコンピテンシーを導入し、経営戦略を効率的に実現しましょう。

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コピーライター、人事(採用担当)を経て、大手人材会社でディレクターとして、クリエイティブ企画や経営戦略にひもづいた人材採用・活用のコンサルティング業務などに従事。現在はIT企業勤務の傍ら、マーケティング・人材採用の領域を専門に中小企業支援を行っている。

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