「コンピテンシー」とは優れた社員の行動特性
コンピテンシーとは、高い業績を上げている社員の行動特性をいいます。
例えば、優れた成績を残している社員が「顧客に商品理解を深めてもらいたい」といった思考のもと、自社商品をアピールするためのオリジナル資料を作った場合、この「オリジナル資料を作った」行動がコンピテンシーになります。
ただ上記の例のように、オリジナル資料を作るという行動を起こすには、「顧客に商品理解を深めてもらいたい」という思考も関係します。思考に加え、「オリジナル資料を作れるほどの商品知識」や「オリジナル資料を作成できるスキル」なども必要になるでしょう。よって、コンピテンシーは「成果を出した行動」の背後にある「思考」「スキル」「知識」なども包括する概念と捉えることができます。
採用活動や人事評価で活用される
コンピテンシーは、客観的に対象者の状況を把握できる指標として活用できるため、適正な判断が求められる採用活動や人事評価でしばしば活用されます。例えば、自社が求める人物像の具体化や、明確な評価基準の作成などに役立つでしょう。以下、コンピテンシーを活用した採用手法である「コンピテンシー面接」のメリットとメソッドを解説します。
コンピテンシーを面接で活用するメリット
ここではコンピテンシーを面接に取り入れるメリットを2つ紹介します。
採用ターゲットが分かりやすくなる
「優秀な社員の行動特性=コンピテンシー」が明らかになると、自社が求める人物像を具体的にイメージしやすくなるため、自社が求める人物像に合致する候補者つまり採用ターゲットがつくりやすくなります。採用ターゲットが明確になると、面接を担当する社員全員が共通認識を持って取り組みやすくなるでしょう。
担当者による評価のブレを抑える
コンピテンシーを基に高いパフォーマンスを発揮できる理由を分析・整理すると、採用ターゲットの特徴を細かく設定できるため、より具体的な評価軸を作れます。
面接は複数の社員に協力してもらうケースが多く、評価が面接官の主観や感情に影響されることがあるのではないでしょうか。評価軸が具体的になれば、より適正な評価がしやすくなるだけでなく、入社後のミスマッチを最小限に抑えることも期待できます。
コンピテンシー面接のメソッド
コンピテンシー面接を行うには「コンピテンシーモデルの作成」「候補者の行動・思考の傾向が把握できる質問の作成」「コンピテンシーレベルに沿った評価」が必要になります。以下、それぞれについて解説します。
コンピテンシーモデルを作成する
コンピテンシーモデルとは、自社で定めたコンピテンシーの内容を体系的にまとめてモデル化したものです。コンピテンシーモデルは作成するにあたり、大きく4つのステップを踏みます。
【1】求める人物像を明確にする
コンピテンシーモデルを作成するには、まず、現場で求められている人物像を明確にする必要があります。求める人物像を明らかにする主な方法として、「実在型モデル」「理想型モデル」「ハイブリッド型モデル」があります。
「実在型モデル」は、社内にいる優秀な社員を例に、高いパフォーマンスを発揮できる要因を分析し、それを明文化してコンピテンシーモデルを設計する方法です。
「理想型モデル」は企業理念や事業内容などから自社が求める人物像を作り上げ、それをベースに理想の姿を実現するために必要なコンピテンシーを考える方法です。社内に理想的な社員がいない場合に有効でしょう。
「ハイブリッド型」は、「実在型モデル」と「理想型モデル」を組み合わせた方法です。「実在型モデル」を基にコンピテンシーモデルのたたき台を作り、それに足りない部分を加えることで理想の人物像を作り上げます。
【2】コンピテンシーの項目を作成する
求める人物像が明確になったら、コンピテンシーモデルを作成するために必要な要素を洗い出します。
項目を作る際は、シグネ・M.スペンサーとライル・M.スペンサーがまとめた「コンピテンシー・ディクショナリー」が活用できます。コンピテンシー・ディクショナリーは、コンピテンシー・モデルに含まれる要素を6領域20項目に分類したものです。
コンピテンシー(領域) | コンピテンシーの定義(項目) |
---|---|
達成・行動 | ・達成思考 ・秩序・品質・正確性への関心 ・イニシアチブ ・情報収集 |
援助・対人支援 | ・対人理解 ・顧客支援志向 |
インパクト・対人影響力 | ・インパクト・影響力 ・組織感覚 ・関係構築 |
管理領域 | ・他者育成 ・指導 ・チームワークと協力 ・チームリーダーシップ |
知的領域 | ・分析的志向 ・概念的志向 ・技術的・専門職的・管理的専門性 |
個人の効果性 | ・自己管理 ・自信 ・柔軟性 ・組織コミットメント |
※参考:井上直恵「日本におけるコンピテンシーーモデリングと運用ー」を元に作成
「コンピテンシー・ディクショナリー」はコンピテンシーモデルを作成するときの指標になるものです。上記を参考に項目を追加したり省いたりしながら、候補者に求めるコンピテンシーの項目を作成しましょう。
【3】ヒアリングを行う
【1】で「実在型モデル」もしくは「ハイブリッド型モデル」を選択された場合は、【2】で作成したコンピテンシーの項目に沿って、コンピテンシーモデルになり得る優秀な社員にインタビューし、優れた働きができる背景を把握しましょう。インタビューする社員を限定せずにさまざまな社員の特徴を収集すると、比較材料が増え、より良い成果を出せる理由が明確になるかもしれません。
インタビューが完了したら、その内容から高い実績につながる要因を分析・整理しコンピテンシーモデルを構築します。モデル化する際は、そのコンピテンシーが本当に候補者が達成可能なものなのかを意識することが大切です。
【4】自社の経営ビジョンと照らし合わせる
【3】のインタビューの内容を基に作成したコンピテンシーモデルと自社の経営ビジョンを照らし合わせ、相違があった場合はコンピテンシーモデルを調整しましょう。コンピテンシーモデルと自社経営ビジョンに乖離があると、採用後のミスマッチにつながってしまうため、経営ビジョンとの照らし合わせは重要です。
行動・思考の傾向が把握できる質問を作成する
コンピテンシーモデルの作成が終わったら、候補者の行動事実を具体的に聞き出せる質問を作成しましょう。
質問項目を作る際は、「目的を確認するための質問」「意思決定のプロセスを確認するための質問」「行動内容を確認するための質問」「結果を確認するための質問」「将来の行動を確認するための質問」の5つを含めると、候補者の行動や思考パターンなどを把握しやすくなります。
例えば、候補者が大学時代に力を入れたこととして「大学祭のイベントの企画立案」を挙げた場合、以下のような問いを投げかけると良いでしょう。
▼目的を確認するための質問
「イベントを企画しようと考えたきっかけは何ですか?」▼意思決定のプロセスを確認するための質問
「イベントの企画立案にあたり、まずどんなことをされましたか?」▼行動内容を確認するための質問
「イベントの企画立案にあたり、工夫したり、努力したりしたことはありますか?」▼結果を確認するための質問
「提案した企画は採用されましたか? 周囲の反応はどうでしたか?」▼将来の行動を確認するための質問
「その経験を今後どのように生かしますか?」
コンピテンシーレベルに沿って評価する
面接後、候補者の行動事実を把握したことで分かった行動や思考パターンなどを、5段階の「コンピテンシーレベル」に沿って評価しましょう。コンピテンシーレベルは以下の表の通りです。
コンピテンシーレベルの高い人材は自社での活躍が期待できますが、高いレベルの人材ばかり獲得する必要はありません。あくまで評価の基準として活用することが大切です。
まとめ
コンピテンシーとは、優秀な社員の行動特性のことです。コンピテンシーを採用活動に取り入れると、採用ターゲットが具体的かつ明確になり、客観的な評価基準をつくれます。より優れた成果を出せる人材を確実に見極めたい方は、コンピテンシー面接の導入を検討されてはいかがでしょうか。
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