自社のアピールポイントを把握する
採用活動を戦略的に行うには、まず自社のアピールポイントを整理することが大切です。自社の押し出すポイントを見つけるには、自社理解・自社が求める人物像の明確化・競合他社理解が欠かせません。
自社を理解する
まず、企業理念と経営理念を把握することで、会社の考え方や目指す方向、存在意義などを理解しましょう。理念が社員に浸透していると、社員の一体感を強めたり、事業活動を促進したりします。求職者が理念に共感できるよう、採用担当者自身が理念を理解しておくことが最低条件です。
また、求職者にとっては「実際にどのような仕事を担当するのか」も非常に気になるポイントです。採用を担当される方は、必ず業務内容も把握しておきましょう。求職者が自社で働く姿を具体的に想像できるよう、必要なスキルや経験などもあわせて、各部署の責任者などに確認してください。
自社が求める人物像を明確化する
自社を理解したら、ペルソナを作成しましょう。ペルソナとは自社が求める人物の年齢や性別、地域、行動習慣などを細かく設定した像を指します。ペルソナを設定すると、採用に関わる全社員が共通認識をもって採用計画の作成や面接などに取り組むことができるだけでなく、事業計画を遂行するために必要な人材を的確に定めることが可能になります。
ペルソナを作成するときのポイント
ペルソナを作成するときは、現在必要としている人材だけではなく、自社が将来目指している姿を実現するためにはどのような人材が必要になるかを考えることがポイントです。「自社の理念を実現させるために、共に尽力してくれる人材」を具体的に設定しましょう。
会社の中で自社が求める人物像に近い社員を複数人ピックアップし、共通する行動特性を分析していくと、より具体的で現実味のあるペルソナを作成することが可能です。行動特性を分析する際は、能力やスキル、属性、性格、勤務条件などに着目してみると良いでしょう。
会社が必要としている要素を全て兼ね備えた人はなかなかいないため、最低限求める要件は何かを整理しておくことがポイントです。
ペルソナ設計に役立つワークシートをダウンロードしたい方は→「ペルソナ設計シート」
競合他社を理解する
採用戦略を立てる上で、競合他社の理解も大切になります。他社と比較すると、新卒市場・転職市場での自社の立ち位置を確認するときに役立ちます。
採用競合に該当するのは同業だけとは限りません。自社と採用ターゲットが重複するすべての企業が採用競合になり得ます。また、既存社員に就活や転職活動中に志望していた会社名をヒアリングすれば、求職者視点の情報を収集することもできます。
競合他社がわかったら、自社と競合他社との差別化ポイントを整理しましょう。
以下の項目ごとに比較してみてください。
- 理念
- 企業風土
- 規模
- 事業内容
- 顧客層
- 福利厚生などの就業条件
- 社長、社員
例えば異業種の競合他社の場合は、従業員の特色や企業規模、サービス内容などを比較することをおすすめします。同業かつ同規模の場合は、従業員の特色や理念、会社の風土、顧客層などを比べましょう。競合他社の特徴によって臨機応変に比較項目を設定するのがポイントです。
アピールポイントの分析に使えるフレームワーク
自社のアピールポイントを整理する際は、マーケティング分野で活用されているフレームワークを使うと便利です。自社や競合他社の分析に活用できるフレームワークとして、「3C分析」と「SWOT分析」があります。
3C分析
3C分析とは、「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合他社)」「Company(自社)」の3つの角度から分析すること。3つの角度から分析することで、自社の課題や立ち位置が明確になります。採用戦略では、「顧客」の部分を「求職者」に置き換えて活用します。
SWOT分析
SWOT分析とは、「Strength (強み)」「Weakness (弱み)」「Opportunity (機会)」「Threat (脅威)」の4つを軸に、自社の現状と外部環境を分析することを指します。強み・機会の生かし方や、弱み・驚異の改善方法を考えることができるのがメリット。対象者をターゲットとなる求職者に置き換えることで、自社の強みをどのようにアピールすると良いのかを考える際に役立ちます。
求職者を理解する
続いてご紹介するポイントは求職者の理解です。採用を戦略的に行うには、求職者に関する確かな情報を掴んでおくことが必要です。新卒と中途では動向が異なるため、それぞれの特徴をきちんと把握してみてください。
新卒の場合
新卒の就活生はタイプによって動向が変わります。大きく「先行タイプ」「普通タイプ」「出遅れタイプ」の3種類に分類できます。
先行タイプ
3タイプの中で最も就職活動の動き出しが早い先行タイプ。3年生の6月ごろからインターンシップに参加、翌3月から4年生の5月にかけて選考会参加・ES提出、選考、内定をもらう流れになります。
人によっては大学1年生から長期インターンシップに参加しています。早い段階から積極的に就活の準備を始めていることから、働く目的ややりがい、アピールできる自分の経験などがはっきりしている特徴があります。
普通タイプ
普通タイプの就活生は、インターンシップには参加せず、3年生の3月から4年生の6月にかけて説明会参加・ES提出、4年生の5月ごろから選考、4年生の8月から9月に内定をもらう人が多いです。
普通タイプの就活生は3年生の夏ごろから「どの業種が合っているのか」「どんな仕事内容が良いのか」と考え始めるものの、動けないでいることがほとんど。エントリーが解禁される3月から、本格的に就活を開始する傾向にあります。
出遅れタイプ
出遅れタイプの就活生も、普通タイプの就活生と同じくインタ-ンシップには参加しません。ただし普通タイプと違い、説明会参加やES提出を行うのが4年生の8月ごろと遅め。内定は4年生の秋ごろにもらうケースがほとんどです。
先行タイプの就活生が次々と内定をもらう様子を見ながら、「どこかの企業が内定を出してくれるだろう」と考えている人が多い出遅れタイプ。自分がしたい仕事とは何か、どんな企業で働きたいのかが漠然としている就活生が多い傾向があります。
ただし、大学4年生の夏から就活を始める学生の中には、留学帰りの英語が堪能な学生や、公務員から一般企業への就職に進路変更した学生、体育系のサークルに打ち込んでいた学生もいるので、会社が求めている人材が隠れている可能性もあります。
中途の場合
次に、中途採用における求職者の動向をご紹介します。
求職者が増加するのは1~3月と9~11月
年度の変わり目である1~3月、上半期と下半期の変わり目である9~11月は求職者が増加する傾向があります。一方で、ボーナスが支給される7~8月、12月は求職者が少ないです。
求職者が増加する繁忙期に中途採用を行えば、自社が必要とする人材に会える可能性が高くなります。一方で、求職者が少ない閑散期はその可能性が下がりますが、競合他社が少ないというメリットがあります。
求職者の増加・減少時期について詳しくは→「中途採用に適した時期は何月? 繁忙期・閑散期のポイントも」
転職者が重視するのは労働条件、仕事内容
厚生労働省が公表している「平成 27 年転職者実態調査の概況」によると、自己都合で退職した転職者の離職理由として多かったのは、次の回答でした。
「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」(27.3%)
「満足のいく仕事内容ではなかったから」(26.7 %)
「賃金が低かったから」(25.1%)
この結果から、転職者が企業選びの際に重視しているのは労働条件、仕事内容、賃金であると考えられます。これらについて他社よりアピールできるポイントがあれば、その点もしっかりと説明するように心掛けましょう。
求職者を分析するときのポイント
新卒採用と中途採用の特徴をご紹介しましたが、求職者が自社をどのように見ているのかを分析すると、より求職者に寄り添った採用活動を行うことができます。求職者視点を分析するときは「カスタマージャーニー」を使って求職者を分析するのが効果的です。
カスタマージャーニー
カスタマージャーニーとは、顧客がどのように行動して購買したのかを把握するために用いられる、マーケティングの思考法です。購入までのターゲットの行動・思考・感情を時系列に沿って把握できるため、顧客目線で施策を考えることが可能です。採用活動に応用する際はターゲットを「求職者」に置き換えてみると、求職者の行動・思考・感情を把握することができます。
採用計画は具体的につくる
最後にご紹介したいのが、採用計画の作成ポイントです。採用計画とは、いつ、どの部署に、どのような要件を持った人が、何人必要になるのかを考えた上で、採用から入社後のフォローまでに求められる行動を計画すること。採用活動は採用計画を軸に動くため、具体的に作成することが大切です。
採用計画を作成するときのポイント
採用計画を作成するためには、採用目標数や採用担当者、求人手法などを決める必要があります。
採用目標数を設定するには、「要員計画」を作成しましょう。要員計画とは、企業が事業計画を進める際に求められる人材の採用や配置、不要な人材の整理などを計画すること。要員計画を作成すれば、事業計画を進めるために必要な採用目標数を設定しやすくなります。
要員計画の作成方法について詳しくは→「適正な採用人数の決め方とは? 要員計画の作成方法を紹介」
また、求職者を集める手法はさまざま(新卒採用ならホームページやパンフレット、企業説明会、インターンシップなど、中途採用ならホームページや人材紹介サービスでの求人など)ですが、どれを活用すると採用目標値に達することができるのかを分析すると、よりペルソナに刺さる手法を選べます。分析方法として、過去に行った取り組みごとの成果を振り返る、3C分析、SWOT分析で自社の特徴を理解し、カスタマージャーニーで集客手法を考えるなどがあります。
そのほか、採用の成功率を高めるために、会社のイメージにつながる面接官の育成を採用計画に含めておくと良いでしょう。さらに、入社後の活躍具合にも影響する内定・入社後のフォロー体制づくりなども考慮すると、定着率が高まります。
新卒採用のスケジュールの組み方について詳しくは →「【人事担当者必見】新卒採用のスケジュールの組み方のコツ」
社員が採用活動に協力する重要性
採用を成功させるためには、社員が採用に協力できる体制をつくることが鍵になります。経営者を含め、社員に「いかに採用が企業を成長させるために大切なのか」を理解してもらうことも採用担当者にとって重要な仕事です。
どのような人材が欲しいのか部署ごとにヒアリングできれば、現場の生の声を反映した、より的確な採用基準を作成することができます。また、求職者の志望する職種の社員や求職者に年齢が近い社員に面接などに同席してもらい、現場の視点で業務内容や会社の様子などを伝えてもらえば、求職者に入社後の働く姿をより具体的に想像してもらえます。
採用担当者は、「採用活動は人事だけが行うものではない」ということを意識し、ぜひ、どのタイミングでどの社員に依頼するのかを採用計画に組み込んでください。
まとめ
今回ご紹介したポイントを踏まえて採用活動を行えば、自社にとって必要とする人材をより確実に採用する可能性を高めることができます。これまで「なんとなく」採用を行っていた方は、これからの採用活動を「戦略的に」考えてみてはいかがでしょうか。
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