母集団形成は採用活動の効率化に直結する
母集団形成は本格的な採用選考がスタートする前の重要な取り組みです。選考前に適切なターゲット層にアプローチできているかどうかは、その後の採用活動に大きな影響を与えます。
母集団は「量より質」にシフトしている
かつては最終的な採用人数を起点に、その50~100倍の人数を母集団の目安としていました。例えば20人採用する場合、母集団を1000~2000人に設定し、説明会参加や就活サイト登録数の目標を設定するという方法です。
このように分母を大きくすることで一定の採用数を確保していましたが、最近では数を重視する「量」よりも、スキルや志向がマッチしており採用の可能性が高い「質」を重視するアプローチが注目されています。合同説明会で偶然ブースに立ち寄るといったランダムな「採用候補」の数を増やすより、人数は少なくても自社への関心が高く、適切な能力を持つ人材の中から選考を進める方が、採用効率の面で優れるためです。
母集団の人数の決め方
母集団の人数の決め方としては、以下のような方法があります。
母集団積み上げ方式
採用計画数をもとに、選考の各段階の歩留まり率や辞退数を考慮して母集団の数を割り出す方法です。一般的に用いられていますが、採用計画数よりかなり大きな数が想定されやすく、企業規模によっては適していないケースも考えられます。
採用実績を元に設定
前年までの採用実績を基準に母集団の人数を決める方法で、退職者数や人員計画が例年と大きく変わらない場合に有効です。ただし少子化により若手の人材が減少しているため、社内の状況が安定的であっても、市場動向には常に注意を払う必要があります。
ダイレクトリクルーティングなどを行う場合
ダイレクトリクルーティングとは、企業から直接、人材要件に近い人物にコンタクトを取り、就職・転職先の候補として意識してもらう方法です。上記2つの方法よりも確度が高いため、母集団の人数を少なく設定できます。ただし、個別のアプローチを行うノウハウが要求されます。
詳しくは、2.母集団形成の手法とメリット・デメリット「ダイレクトリクルーティング」で解説しています。
母集団形成の手法とメリット・デメリット
採用候補となる人数を拡大する方法はさまざまで、すでに複数の手法を組み合わせて実行されていることが多いでしょう。ここでは手法を分類し、メリット・デメリットを比較していますので、施策を検討するときの参考にご覧ください。
採用広報
求人広告
求人媒体に広告を出稿する方法です。有名な媒体であれば多くの人が目にしているため、自社の求人を広くアピールできます。求人の件名や紹介文を自社で検討し複数パターンを試すことで、応募数が増えるパターンを見極めやすくなります。
掲載料は無料、有料どちらのサービスも展開されています。費用対効果や信頼性を踏まえてサービスを選びましょう。
採用動画
応募者に向けて、自社を紹介する動画を公開する方法です。企業ホームページや採用サイトに掲載したり、説明会で資料の一つとして活用したりできます。映像制作のノウハウが必要なため、無理に社内で制作するよりも、外部サービスを依頼するのがおすすめです。
SNSでの情報発信
SNSの企業アカウントを作り、定期的な情報発信を行う方法です。ターゲットや自社の業務内容に合わせて写真とテキストを使いこなせば、社風や業務への理解、関心を高めるツールになります。無料でアカウントを作成できるのも大きな魅力です。
ただし、金銭面のコストは少なくても、継続的な運用はそれなりに負担になるのも事実です。ターゲットや発信するコンテンツの検討、消費者向けの広報とのすみ分けなど、念入りに計画してから取り組むようにしましょう。
※SNSをはじめとした採用広報のノウハウについては「採用広報のノウハウ解説!トレンド、手法、ツール選択の秘訣も」で詳しく解説しています。
オウンドメディア
採用サイト
外部の媒体に頼らず、自社の採用サイトを開設する方法です。応募を検討している人が情報を調べたとき、最初に接する「顔」となるサイトであり、投資の効果が大きい施策です。募集要項だけでなく社風や社員の人柄が伝わるようなコンテンツを盛り込み、母集団形成に役立てましょう。
現在ではWebサイト制作に力を入れている企業も多く、既存のホームページにコンテンツを付け足すだけでは競争を勝ち抜くのは難しいでしょう。場当たり的な対応ではなく、長期的な視点での計画が必要です。
Web説明会
Web上で説明会を中継・放映し、採用サイトや応募用のマイページなどからアクセスして閲覧してもらう形式です。録画であれば繰り返し活用することができ、何より場所を問わず実施できるのが企業、応募者双方にとってメリットです。
参加のハードルは低くなりますが、画面越しのため実際の会場と比べ盛り上がりに欠けることは否定できません。リアルタイムの質疑応答も会場内ほどスムーズにはいかないため、対面での説明会と併用するなど工夫しましょう。
イベント
企業説明会
社内、合説会場での説明会開催は、やはり母集団形成の主要な方法であるといえます。母集団形成を強化したい場合、回数や内容を充実させアプローチの質と量を増やしましょう。
社内で開催する場合のコストはスケジュール調整や参加者の人件費が中心ですが、外部の合同説明会に出展する場合はまとまった料金がかかります。オーソドックスな手法で取り組みやすい分、コストのバランス感覚も必要です。
大学訪問・学内説明会
大学の就職支援課に訪問したり、学内説明会に参加したりなど、大学に直接アプローチする方法です。合同説明会より参加者の総数は少ないものの、学生との距離感が近く印象を残しやすいメリットがあります。就職支援課の担当者とコミュニケーションを深めることで、学生に自社を紹介してもらえる可能性も高まります。
難しさとしては、信頼関係を築くのに時間がかかることや、人気校の場合競争が激しいことが挙げられます。
インターンシップ
就職活動を開始する前の学生にインターンシップで就労体験をしてもらうことも、自社を就職先候補とするために有効です。実務を体験することでマッチング度や関心が高まり、応募を促進することができます。一日~数ヶ月と柔軟にプログラムを設計できるのが企業にとってうれしいポイントです。
インターンを実施するためには、指導役を務める現場社員の協力が不可欠です。特に長期間の場合はカリキュラムの編集や参加者へのフィードバックを丁寧に行わなければなりません。
採用イベント
説明会やリクルーティングの面談とは異なるカジュアルな採用イベントを開催する企業もあります。ワークショップや社員との交流の場をセッティングし、気軽に足を運んでもらうことで候補者に近い距離感で自社をアピールできます。
ダイレクトリクルーティング
選考辞退者やデータベース、社員の知人などに企業から直接アプローチし、就職先として検討してもらう方法です。あらかじめターゲットの人柄やスキルをある程度把握し、欲しい人材に企業から接触を図るため、ミスマッチが生じる可能性をかなり抑えられるのが特長です。転職サービスなどの第三者を介さないため、意思決定が柔軟かつスピーディーにできるのもポイント。
低コストで始められる施策ではありますが、成果が出るまで時間がかかったり、個別対応のために採用担当者の負担が増えたりする可能性も考えられます。
※効果的に導入するためには→「ダイレクトリクルーティングとは|メリットや成功例を紹介」
【一覧表】母集団形成の手法のメリット・デメリット
手法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
求人広告 | 多くの人に求人をアピールしやすい | 効果的な媒体の見極めにある程度時間が必要 |
採用動画 | 視覚的に自社をアピールでき、印象に残りやすい | 映像制作のノウハウが必要で、社内制作が難しい |
SNSでの 情報発信 |
低コストで手軽に始められる | 継続的な運用の負担が大きい |
採用サイト | 検索されやすく、目にとまり応募に誘導しやすい | コンテンツが少ないと他社に見劣りする場合がある |
Web説明会 | 場所を問わず開催でき効率的 | 臨場感が弱く質問回答などが難しい |
企業説明会 | 多くの来場者に一度にアピールできる | 費用の負担が大きく、会場によっては存在感が埋もれる可能性がある |
大学訪問・ 学内説明会 |
学生との距離が近く、コミュニケーションがとりやすい | 関係構築に時間を要することがある |
インターンシップ | 就業体験をさせることで応募の後押しになりやすい | 指導役の社員に負担がかかる |
採用イベント | 気軽な場として参加のハードルを下げられ人を集めやすい | 開催内容を一から検討する必要がある |
ダイレクト リクルーティング |
欲しい人材に直接アプローチするため、確度が高い | 継続的で丁寧な個別対応が必要なため、担当者の負担になる可能性がある |
質の良い母集団形成のためのポイント
効果的な母集団形成を行うためには、適切な手法を選んだうえで、以下のポイントを押さえることが大切です。
定期的にペルソナを更新する
市場動向や現場のニーズに即したマッチングの高い人材を集め、母集団を形成するには、求める人物像とのズレを極力なくすべきです。そのためには、元になるペルソナも陳腐化しないように定期的に更新し、現状に合った採用活動ができるよう心がけましょう。
※ペルソナの作成方法については、「採用活動にマーケティング手法を取り入れるべき理由とは?」で詳しく解説しています。
現場社員の協力を得る
応募者に必要なスキルを一番正確に把握しているのは現場の社員です。採用基準が的確であるかどうかは、母集団形成を始めとする採用活動のすべての過程に影響します。入社後のミスマッチを防ぐために、現場とのコミュニケーションを強化して認識の不一致解消に努めましょう。
まとめ
採用競争が厳しさを増していく中、従来のような数を確保するだけの母集団形成では、採用活動の良いスタートを切るのは難しくなっています。いかに効果的にマッチング度の高い人材にアプローチするか、これまでの枠にとらわれずに検討してみてはいかがでしょうか。
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