経歴詐称はどうやって見抜く?
応募者の中には、自分を良く見せようとして経歴詐称をする人がいます。経歴詐称をした人物を雇用すると、期待した働きをしてくれない、顧客にも嘘をついて企業のイメージを悪化させるなどのトラブルを引き起こしかねません。まずは、経歴詐称を見抜くためのポイントと回避策を紹介します。
詐称されやすいポイントを押さえる
経歴詐称を見抜くためには、学歴、職歴といった履歴書・職務経歴書で詐称されやすいポイントを押さえておくことが重要です。ここでは経歴詐称されやすいポイントとその内容を紹介します。
【1】学歴
学歴の項目では、浪人や留年を隠すために入学年に偽りがある、または中退にも関わらず卒業と記載されている場合があります。さらにひどい場合だと、学歴をよく見せようとして、入学していない学校名が記載されているケースもあります。また、公務員試験では高卒と大卒で試験内容が異なるため、大卒であるのに高卒と偽る人もいます。
学歴詐称は、新卒採用ではあまり見られません。しかし、中途採用では学歴を重視されない傾向があるため、自分の印象を良くしようと詐称する人がいます。
【2】職歴
職歴の項目では、契約社員や派遣社員として働いていたのに正社員と記載する人や、職位や在籍期間を偽って記載する人がいます。面接時に不利になりそうな早期退職を隠す、転職回数を少なく見せるなどの意図で行われます。また、経験を求められる条件のときに、職歴を詐称して選考を通過しようとする人もいます。
【3】免許・資格
免許・資格の項目では、選考を有利に進めるために、実際に保有していない免許・資格や実際の点数より高いスコア・階級が記載されている場合があります。例えば、英語ができる人材だと思われるためにTOEICのスコアを高く記載するといったものが挙げられます。特に、免許・資格の保有が応募条件となっている場合に見られる傾向があります。
【4】年収
年収の項目では、年収交渉を有利にするために、現職や前職の年収額が実際よりも高く記載されている場合があります。ほとんどの応募者は詐称しませんが、中にはばれないだろうと思って、希望する年収に近い金額を書く人がいます。
経歴詐称されるのを回避する3つの方法
応募者に経歴詐称の疑いがあるからといって、面接で単刀直入に聞くのは避けるべきです。経歴詐称の実態がなかった場合、ネットやSNSなどで悪い噂が広まり、企業のイメージダウンにつながりかねません。ここでは、経歴詐称をしているかを確認するための方法を紹介します。
【1】リファレンスチェックを行う
リファレンスチェックとは、履歴書や職務経歴書に記載されている内容が事実と異なっていないかを第三者に確認することです。応募者の書類や面接での姿と職場で見せる姿のギャップを減らせるため、経歴詐称を見抜く以外にも採用後のミスマッチや早期離職の防止にも役立ちます。
リファレンスチェックを実施する場合、応募者に事前に説明をして承諾を得る必要があります。承諾を得たあと、前職の上司や同僚などと連絡を取り、応募者の業務実績や人物像を確認します。
【2】証拠となる書類を提出してもらう
経歴詐称を回避するためには、証拠となる書類の提出を必須条件とすると効果的です。
▼証拠書類の一例
確認したい項目 | 提出してもらう書類 |
---|---|
学歴 | 卒業証書、卒業証明書 |
職歴 | 雇用保険被保険者証、年金手帳など |
免許・資格 | 免許証、スコア証明書など |
年収 | 源泉徴収票 |
学歴を確認するには卒業証書の提出を求めるのが確実です。学歴を重視する企業では提出を必須としている傾向があります。
職歴は、雇用保険被保険者証や年金手帳などで確認できます。雇用保険被保険者証には前職の会社名や入社日の記載があり、年金手帳には過去の加入履歴の記載があるので、前職の詐称や在籍期間、退職日の詐称はすぐに見抜けます。
他にも、免許・資格の詐称を見抜くために免許証やスコア証明書の提出を必須にする、前職の年収の詐称を見抜くために源泉徴収票の提出を必須にするといった方法もあります。採用選考時に応募者がこれらの書類を提出する義務はないため、基本的には提出されません。企業側が欲しい情報を決めておき、応募者に提出を促すことが必要です。
【3】業務に必要な情報を面接で確認する
業務で必要となる情報や書類で気になった点について面接で詳しく質問すると、応募者のスキルや知識を確認できるので経歴詐称の回避につながります。ただし、応募者が意図的に経歴詐称している場合、書類に記載されている内容への返答を準備している可能性があります。相手が想定していない質問をすると、話に矛盾が出たり、応募者の本音が浮かび上がったりするので経歴詐称を見抜くのに効果的です。
経歴詐称が発覚したときの対処法
経歴詐称が発覚したときに企業はその社員を解雇できるのでしょうか?ここでは、解雇の可否基準や解雇しない場合の措置について説明します。
解雇できる場合
入社後に経歴詐称が発覚したときに解雇できる可能性があるのは、その詐称が重大な詐称に該当する場合です。重大な詐称に当たるかは、その詐称が「採否の判断に影響を及ぼしたか」「企業の秩序を乱すものだったか」「能力の判断に影響を与えたか」などが判断基準となります。ここでは、解雇できる可能性がある詐称について紹介します。
学歴の詐称
学歴の詐称は、本来の学歴を知っていれば採用しなかったという事例があるように、採否の判断に影響を及ぼすため、解雇できる可能性があります。また、企業によっては、最終学歴で賃金を変えており、学歴を詐称して高い給与を受け取ろうとする行為は、重大な経歴詐称と判断され、解雇が妥当です。
しかし、採用条件に大卒以上や高卒以上のように学歴の条件を明示していなければ、学歴を詐称していても重大な経歴詐称と判断されず解雇できないケースもあります。
職歴の詐称
職歴の詐称は、採否の判断に影響を及ぼすだけでなく、入社後のポジションや業務内容などの労働条件にも大きな影響を与えるため、重大な経歴詐称と判断される場合が多く、解雇できる可能性があります。
ただし、採用条件に未経験者歓迎や経験不問などの文言がある場合は、経歴詐称があっても大きな影響を及ぼさないと判断され、解雇できないケースもあります。
許容できる内容であれば解雇しない
経歴詐称が発覚しても、現在の業務に大きな支障がなく、許容できる内容であれば解雇しないという選択も可能です。解雇しない場合、経歴詐称を見過ごすのではなく、本人に事実確認した上で反省を促します。
経歴詐称していた事実を社内全体に報告するか、経歴詐称した従業員の賃金を下げるかなどの対応については、今後の業務への影響を考慮してからの判断が必要です。例えば、経歴詐称を社内全体に知られ、肩身が狭くなって退職する場合もあるので、自社に残しておきたい人材であれば、詐称の事実を一部のみにとどめておく対応もあり得ます。
まとめ
経歴詐称を入社までに見抜くために、書類で詐称されやすいポイントを押さえる、リファレンスチェックや証拠書類の提出を求めるなどの対処が必要です。社内で経歴詐称が発覚した場合、経歴詐称が採否や業務に大きな支障を与えたか、自社の戦力となっているかなどの視点を持っての対応が求められます。また、経歴詐称をした人材を雇用すると、業務に大きな支障が出る場合もあります。そのような事態を回避するために、今回紹介した内容を参考にしてみてください。
無料ダウンロード
採用課題を解決に導く採用戦略構築のポイント
採用活動においても、パフォーマンスの要となるのは「戦略」の設計です。 コンサルティングサービス「採活力」は、貴社に最適な採用コミュニケーションを設計し、採用活動を成功へと導きます。
無料ダウンロード
採用関連法律 早引きハンドブック
「求人募集」「採用選考・面接」「採用内定」「障がい者・外国人・高校生の採用」というように、シーンごとに関連する法律と違法となるケース、罰則内容をまとめています。
セミナー情報
あわせて読みたい