1on1ミーティングとは?
1on1ミーティングは、米国シリコンバレーのIT企業が数多く取り入れている、組織強化に効果的なマネジメント手法です。ここでは、1on1ミーティングの意味や期待できる効果について解説します。
部下の課題や悩みを解決し成長促進を目的とした取り組み
1on1ミーティングとは、その名のとおり上司と部下が1対1で話し合う手法です。部下の抱える課題や悩みについて上司がアドバイスを伝え、部下の成長を促す目的で実施されています。1on1ミーティングの基本は部下が主体となって話すことです。部下が課題や悩みを話しているときは遮らず、受け入れる姿勢で聞くよう心がけてください。
1on1ミーティングのメリット
1on1ミーティングは企業にとってメリットのある活動です。ここでは、1on1ミーティングで得られる以下のメリットについて解説します。
・上司と部下の信頼関係が構築される
・部下のモチベーションが向上する
・離職率が低下する
上司と部下の信頼関係が構築される
1on1ミーティングは、上司と部下が定期的にコミュニケーションを取れるため、信頼関係の構築に役立ちます。新型コロナウイルス感染拡大以降、リモートワークが進み、社内でのコミュニケーションが取りづらくなっている中でも有効です。1on1ミーティングでは、仕事やプライベートなど幅広いテーマについて話しながら、部下の今後の目標や行動を確認します。部下は、上司からの丁寧なフォローに感謝し、信頼を寄せるようになります。
部下のモチベーションが向上する
1on1ミーティングは、部下のモチベーションの維持・向上にも役立ちます。部下が抱えている不安や悩みを解消できるため、仕事へのストレスが軽減され、モチベーションの維持に有効です。また、上司からの助言によって仕事がうまく進めば、より意欲的に仕事に取り組むようにもなります。モチベーションの高い社員がいると、社内の雰囲気が明るくなったり、コミュニケーションが活発になったりといったメリットが期待できます。
離職率が低下する
定期的に行われる1on1ミーティングによって上司と部下の信頼関係が深まると、離職率の低下にもつながります。
厚生労働省による「令和2年雇用動向調査結果の概要」では、20代後半~30代後半の離職理由で一番多かった回答が「人間関係が好ましくなかった」でした。上司と部下の距離が遠ければ人間関係の悩みは相談しにくく、その悩みが改善されないまま離職に至るケースもあります。人間関係を理由とした離職の防止のためにも、1on1ミーティングを活用し、早めに悩みを相談してもらう関係性の構築が重要です。
また、1on1ミーティングは、部下の不調や変化に気付く機会にもなり、体調不良による離職防止にも役立ちます。
1on1ミーティングのデメリット
1on1ミーティングはメリットだけではありません。以下のデメリットについて注意すべきポイントを解説します。
・心理的負担になる
・部下が言いたいことを言えない
心理的負担になる
1on1ミーティングが形だけになると、上司と部下の両方に心理的な負担がかかります。上司には、話を引き出しながら適切にアドバイスするスキルが必要です。上司のスキルが不十分の場合、自分の役割を果たせないことに心理的負担を感じます。また、部下は話題を自分から提供することにプレッシャーを感じたり、悩みや課題の解決方法が分からずストレスになったりと心理的負担につながります。
部下の本音を聞けない
1on1ミーティングで上司から適切なアドバイスをもらえなければ、部下は本音で話してくれない上に、1on1ミーティングの必要性も感じなくなります。
また、同じ仕事をしているからこそ相談しづらい、上司との相性が悪く言いたいことが言えないなどのケースもあります。部下が比較的相談しやすく、客観的なアドバイスももらえるため、他部署の上司との1on1ミーティングの実施もおすすめです。
1on1ミーティングの導入事例
ここでは、1on1ミーティングの導入に成功した事例3社を紹介します。1on1ミーティングを導入した目的や内容を中心に解説します。
ヤフー株式会社
ヤフー株式会社は、部下の潜在能力を引き出し、企業の運営を向上させるために、2012年から1on1ミーティングを導入しました。ヤフーでは、毎週1回30分とシンプルな形で1on1ミーティングを実施しています。上司が期待している部分と部下のやりたいことの接点にフォーカスし、希望する業務を経験できるようアドバイスしています。これにより、部下の退職防止に役立っています。
株式会社TMJ
株式会社TMJは、2017年に社員の成長を目的に1on1ミーティングを導入しました。TMJでは1on1ミーティングで部下の成長を促すためには、上司側の傾聴や良い質問をするスキルの向上が必要と考え、毎年部長・課長層を対象に育成力向上研修を実施しています。上司側の育成力が高まった上で1on1ミーティングを実施したことで、離職率が4年間で40%も減少したという結果も出ています。
株式会社スペースマーケット
株式会社スペースマーケットは、2週間に1度、30分程度の1on1ミーティングの実施をルール化して行っています。期間中にあった仕事で気になることについて話し、一緒に解決策を考えます。IT企業で人と話さず1日中パソコンと向き合うケースも多いため、散歩しながらの1on1ミーティングを行っており、気分転換の機会になっていると社内では好評です。また、情報交換・マネージャー同士の認識のすり合わせ、スキル向上のためにマネージャー同士の1on1ミーティングも行っています。
1on1ミーティング実施の手順
1on1ミーティングを実施するまでには、いくつかのステップを踏む必要があります。ここでは、各ステップで注意すべき点について解説します。
・1on1ミーティングの目的を周知する
・1on1ミーティングの日程を決める
・1on1ミーティングを実施する
1on1ミーティングの目的を周知する
導入が決まったら社内の理解を得るために、1on1ミーティングの目的を社内に周知します。1on1ミーティングに対して「時間がもったいない」といった否定的な意見も上がります。ネガティブな印象のままだと、導入後に形だけの1on1ミーティングとなる可能性が高く、効果が期待できません。社内からの理解を得るまでに時間はかかりますが、組織強化のためには徹底的な目的の周知が必要です。
1on1ミーティングの日程を決める
1on1ミーティングは、週1回や月1回など定期的に行っていくため、計画的に日程を決めます。1on1ミーティングは部下の成長につながる取り組みであるものの、忙しいとないがしろになりがちです。2週間に1回、月に1回など、部下と十分なコミュニケーションが取れるサイクルでの実施を検討してください。
1on1ミーティングを実施する
1on1ミーティングは部下が主体となる必要があるので、上司が話しすぎないよう注意してください。当日はアジェンダに沿って上司が質問とフィードバックを繰り返して行います。また、課題や目標の確認と行動の振り返りも必ず行ってください。目標と現状のギャップを把握した上で、次のアクションプランを一緒に考えることで、部下の成長につながります。
1on1ミーティングを成功させるコツ
1on1ミーティングで部下の話を引き出し、成長につなげるフィードバックをするためのコツを2つ紹介します。
事前準備を徹底する
1on1ミーティングでスムーズに対話するために、ミーティングの内容をまとめたアジェンダを用意するといった事前準備が重要です。1on1ミーティングは、決められた時間の中で、部下が普段思っていることや仕事で悩んでいることを聞き出す必要があります。話し合う内容を決めておいた方がお互い事前に考える時間があるので、部下の意見を掘り下げて聞きやすくなります。また、部下がアジェンダを用意すると、主体的に話しやすくなるためおすすめです。
上司が「傾聴」を心がける
1on1ミーティングにおいて上司は「傾聴」の姿勢を心がけてください。傾聴とは、相手の話す内容に関心を持って耳を傾け、共感の姿勢を示すコミュニケーション方法です。部下の話を最後まで聞いてから、一度共感したうえでアドバイスを伝えると、成長を促したり、不安や悩みを解消したりといった効果が期待できます。
まとめ
1on1ミーティングは、目的を理解しお互いを受け入れ話し合う姿勢で行うことが大切です。目的が曖昧のまま実施すると意味のないミーティングになりますので、1on1ミーティングを行う場合は、上司・部下双方が目的を理解し、常に相手を尊重するよう心がけてください。部下に成長は会社の組織力アップにもつながりますので、時間をかけてコミュニケーションを取り、1on1ミーティングを続けてください。
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