ジョブローテーションの目的は?導入が効果的な企業の特徴などを紹介 COLUMN

公開日:2021.06.04

更新日:2022.02.17

ジョブローテーションの目的は?導入が効果的な企業の特徴などを紹介

長期的な人財育成を目的として多くの企業で導入されているジョブローテーション。自社でも導入を検討しているものの、本当に効果的に実施できるのか不安を抱えている人事の方もいらっしゃると思います。

この記事では、ジョブローテーションの目的やメリット・デメリット、導入のための方法などを紹介します。

目次

ジョブローテーションは育成が目的の制度

ジョブローテーションとは、社員の能力開発を目的として、計画的に職務や職種を変える制度です。ジョブローテーションは、部署をまたいで異動する場合もあれば、部署内で職務内容を変えるだけの場合などさまざまなケースがあります。新入社員にとってジョブローテーションは、自社のサービスや商品、業務の流れを覚える機会です。中堅社員以上にとっては、視野を広げたり、リーダーとしての役割を経験したりする機会となります。

ジョブローテーションのメリット・デメリットは?

ジョブローテーションは社員の能力開発以外にも役立ちます。ここでは、ジョブローテーションのメリットだけでなく、デメリットについても紹介します。

ジョブローテーションの3つのメリット

ジョブローテーションには、社員の適性を見極められる、幹部候補となる人材を育成できる、部門間の連携が取りやすくなるなどのメリットがあります。それぞれについて具体的に説明します。

【1】社員の適性を見極められる

ジョブローテーションでさまざまな業務を経験させると、社員の強みや弱みが明らかになり、適正を見極められます。適正を見極められれば社員を効果的に配置できるので、生産性や利益の向上が期待できます

社員にとっても、さまざまな業務を経験できるので自分自身の適正が分かるだけでなく、将来のキャリアを考えるきっかけになります。将来の目標が立てやすくなり、モチベーション維持にも効果的です。

【2】幹部候補を育成できる

ジョブローテーションでさまざまな業務を経験させると、多角的な視点を持ったリーダーや幹部候補となり得る人材育成につながります。

複数業務の経験は、社内への理解が深まり、多角的な視点を持てるようになるのがメリットです。多角的な視点を持った人材は、さまざまな立場から物事を考えられるので、プロジェクトを円滑に進めたり、チームをまとめたりするリーダーとしての活躍が期待できます。また、リーダーとしての経験を積ませると、事業全体のマネジメントができる幹部候補への成長にもつながります。

【3】部門間の連携が高まり業務効率が上がる

ジョブローテーションによって社員はさまざまな部署に人脈を形成できます。その社員が橋渡し役となれば部門間の連携が高まり、業務効率の向上が期待できます。また、部門間の連携が取りやすくなれば、プロジェクトが円滑に進む、議論が活発になり新たな課題やアイデアを見つけられる可能性も高まります

ジョブローテーションの2つのデメリット

ジョブローテーションのデメリットとして、社員にかかるストレスや教育コストが挙げられます。それぞれの注意点を紹介します。

【1】社員にストレスがかかる

ジョブローテーションで配属された部署の業務が合わない、1つの業務を短い期間しか経験できないなどが原因で不満やストレスを溜めてしまう社員もいます。最悪の場合、退職するケースも考えられるので、面談を定期的に行い、モチベーションの確認や希望をヒアリングするなどのケアが必要です。

【2】異動によって教育コストがかかる

ジョブローテーションで異動した先では、一から業務を覚える必要があるので教育コストが発生します。また、教育期間は戦力とならず、一時的に業務効率が落ちる場合も考えられます。教育マニュアルを作成したり、eラーニングシステムを導入したりすると教える側の社員の負担を軽減できるため、教育コストの抑制が可能です。

ジョブローテーション導入に向き・不向きな企業の特徴

ジョブローテーションを導入したからといって、すべての企業でうまくいくとは限りません。ここではジョブローテーションの導入に向いている企業と向いていない企業の特徴を紹介します。

導入に向いている企業の3つの特徴

ジョブローテーションの導入に向いている企業には、社員数が多かったり支店や子会社を持っていたりする特徴があります。ジョブローテーションの導入に向いている企業の具体的な特徴について紹介します。

【1】社員数の多い企業

社員数の多い企業では、ジョブローテーションを実施して業務効率が多少下がっても、他の社員によってカバーできるので業務が全く回らない状況にはなりません。また、複数の部門に分かれている場合が多く、社員にさまざまな経験をさせられます。

一方で、社員の少ない中小企業では、ジョブローテーションによって業務効率が落ちると、納期に間に合わなくなる、新たに受注した案件に取りかかれないといった問題も出てくるので導入は困難です。

【2】部門ごとの業務に高い関連性がある企業

部門をまたいで業務がつながっている企業は、ジョブローテーションの導入に向いています。ジョブローテーションによって前後の業務を理解すれば自分の業務を円滑に進められるだけでなく、新たな問題点の発見にもつながるからです。

【3】企業文化を浸透させたい規模の大きな企業

店舗や支社が多い企業では、ジョブローテーションによって交流の機会を増やせるため、企業文化の浸透を進められます。企業文化が浸透すれば、社内の統一感が生まれ、生産性の向上も期待できます。

導入に不向きな企業の2つの特徴

導入に不向きな企業は、専門的なスキルや知識が必要な業務がメインとなっている企業や、中途採用社員が多い企業です。

【1】専門的なスキルや知識が必要な企業

専門的なスキルや知識を必要とする企業や業務内容であれば、ジョブローテーションのように短い期間で業務を変えていくと、業務に必要なスキルや知識を身に付けるのが難しいのでジョブローテーションには向いていません。

【2】中途採用社員の多い企業

中途採用社員が多い企業では、今まで培った経験やスキルを生かせず、本来の力を発揮するのが難しくなってしまうのでジョブローテーションに向いていません。中途採用社員は総合職として入社するケースより、持っている経験やスキルを生かせる職種に即戦力として入社するケースが多くなっています。経験やスキルを生かせない環境では早期離職のリスクも高まります。

ジョブローテーションの導入事例

ジョブローテーションに取り組んでいる企業の事例を紹介します。自社で導入を考えているであれば、参考にしてみてください。

富士フイルム株式会社

富士フイルムでは、幅広い価値観を持った人材に成長するように、入社から3年の間に、事業や職種を超えた横断的なジョブローテーションを行っています。3年目に目指すべき姿を達成するために定期的に面談を行って、今後どんな課題や仕事に取り組みたいか、実現のためにどんな知識や経験を身につけるべきかを一緒に考え、育成しています。

ヤマト運輸株式会社

ヤマト運輸株式会社では、グループ連携意識の高い人材育成を目的に、グループ内ジョブローテーションを行っています。入社時の所属会社と異なるグループ会社に配属して、グループ会社が持つ強みを理解してもらい、経営資源を組み合わせた新たな提案ができる人材育成を目指しています。

ジョブローテーション導入の5ステップ

ジョブローテーションの導入には事前準備や実施後のフォローが必要です。ジョブローテーション導入に必要な5ステップについて紹介します。

【1】活躍している社員を分析する

自社の優秀な社員がどの部署でどんな業務を経験していたかを分析すると、ジョブローテーションで活躍する人材の条件が見つかる可能性があります。また、部署や業務以外にも、優秀な社員の考え方や行動特性についてヒアリングをすると、人材の条件がより見つかりやすくなります。

【2】対象者を選定する

分析によって分かった人材の条件を踏まえた上で、年齢や勤務年数、最新のキャリア志向を確認して対象者を決めます。社員が形成したいキャリアを軽視すると、最悪の場合退職につながる恐れがあるので、最新のキャリア志向については必ず確認が必要です。

【3】配属先を決定する

対象者が決定したら、対象者のキャリア志向と候補となる配属先が欲している人材の条件を照らし合わせた上で配属先を決定します。対象者の希望だけでなく、配属先に合う人材であるかも考えると、効果的にジョブローテーションを実施できます。

【4】対象者に連絡する

配属先が決まったら、対象者に実施内容を連絡します。同時に対象者への期待についてや実施期間、目標などを伝えると対象者のモチベーション向上につながります

【5】対象者のフォローをする

ジョブローテーション実施後は、定期的に面談や連絡をして進捗状況やモチベーションを確認し、何か問題があればフォローが必要です。フォローを怠ると、社員の不満が溜まり、モチベーションの低下につながってしまいます。

まとめ

ジョブローテーションは、社員をゼネラリストに育成するのに効果的な制度です。ジョブローテーションの導入によってコストがかかり、効率が下がる可能性もあります。導入前に、自社がジョブローテーション導入に向いているかやメリット・デメリットの確認が必要です。導入の際は5つのステップを参考に、計画を立ててみてください。

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コピーライター、人事(採用担当)を経て、大手人材会社でディレクターとして、クリエイティブ企画や経営戦略にひもづいた人材採用・活用のコンサルティング業務などに従事。現在はIT企業勤務の傍ら、マーケティング・人材採用の領域を専門に中小企業支援を行っている。

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