従業員エンゲージメント向上はメリットだらけ。 構成要素と効果を知ろう COLUMN

公開日:2019.12.24

更新日:2022.09.29

従業員エンゲージメント向上はメリットだらけ。 構成要素と効果を知ろう

組織と人材の関わりを示す概念として、近年「従業員エンゲージメント」が注目されています。会社への単なる愛着ではなく経営成績にも影響する指標であり、人材の流動性が高まる中で従業員エンゲージメント向上に関心を持つ企業は増えています。

海外に比べ、特に従業員エンゲージメントが低いとされている日本。今回は、従業員エンゲージメントとはどのような概念なのか、高めることでどのようなメリットを得られるのかを解説します。

目次

従業員エンゲージメントとは

エンゲージメントとは約束や婚約、債務といった意味を持つ単語で、ビジネスではさまざまな意味合いで用いられています。例えば企業・消費者間においてはブランドや商品への愛着度を指しています。

それでは「従業員エンゲージメント」は、どのような関係性を指しているのでしょうか。

企業理念を理解し貢献意欲がある良好な状態

「従業員エンゲージメント」とは従業員の会社に対するエンゲージメントであり、企業理念や目標を理解し、納得したうえでの貢献意欲がある状態をいいます。従業員が企業に対して信頼や愛着を持ち、自発的にパフォーマンスを発揮しようと前向きに働いていることは、組織の在り方として非常に良好だといえます。

コンプライアンス調査やストレスチェックなどさまざまな従業員調査が広まっていますが、その中でも従業員エンゲージメントは多くの海外企業が注目・改善し続けている指標です。

ワークエンゲージメントとの違い

ワークエンゲージメントは従業員エンゲージメントの前身といえる概念で、従業員自身の仕事に対する肯定的な心理状態をいいます。対して、従業員エンゲージメントはより包括的で、仕事の意欲はもちろん企業ビジョンへの共感や信頼関係も含めた、組織そのものへの心理状態のことです。

人事のマネジメント分野でエンゲージメントの概念が提唱されたのは、1990年にさかのぼります。その後2004年に、オランダの大学教授が「ワークエンゲージメント」を定義しました。これは従業員個人に着目した概念でしたが、さらに2007年にアメリカで実施された複数の調査がきっかけとなり、組織に対するエンゲージメントが広く認知されるようになりました。

従業員エンゲージメントは業績と密接に関連する

従業員エンゲージメントと営業利益率、労働生産性には正の相関関係があり、従業員エンゲージメントが向上すると比較的短期間で効果が確認できることがわかっています。

コンサルティングファームのウイリス・タワーズワトソン社の過去の調査では、エンゲージメントが低い会社に比べ「エンゲージメントが高い会社」では1年後の業績が約1.4倍、「持続可能なエンゲージメントが高い会社」では約3倍という明確な違いが出ています。

一方、かつて従業員の意識調査として主流だった「従業員満足度」は、業績との相関関係は見いだされていません。満足度は個々人の主観による部分があり、1つの事柄に満足しても別の不満が発生するなど、改善が直接業績に結びつくわけではないためです。

日本企業の従業員エンゲージメントは低い

このように企業にとって重要な要素である従業員エンゲージメントですが、海外と比べて日本は顕著に低いのが実情です。

2017年のギャラップ社(米)の調査では、日本は熱意のある(エンゲージメントが高い)社員の割合が6%にとどまっており、139カ国中132位と最下位層に甘んじています。一方、やる気のない(エンゲージメントが低い)社員の割合が70%となっており、勤勉で会社への忠誠心が高いイメージとは裏腹に、意欲的に仕事に取り組む風土が形成されているとはいえない状況です。

従業員エンゲージメントに関わる3つの要素

従業員エンゲージメントの向上・維持を目指すためには、漠然とした感情としてではなく、ポイントを押さえて理解する必要があります。

ウイリス・タワーズワトソン社によると、従業員エンゲージメントを構成するのは、以下の3つの要素です。

理解度(Rational)

会社の進む方向性を具体的に理解、腹落ちし、それを支持できる

共感度(Emotional)

組織に対して、帰属意識や誇り、愛着の気持ちを持っている

行動意欲(Motivational)

組織の成功のために、求められる以上のことを進んでやろうとする意欲がある

さらに、これらの従業員エンゲージメントを確立・維持するためには、貢献意欲を発揮できる生産的な職場環境であることが求められます。

従業員エンゲージメント向上による効果

ここ10年従業員エンゲージメントが注目され続けているのは、業績との因果関係が不明な従業員調査や指標もある中、明確な効果が得られることが確認されているためです。意欲が増すことによるメリットは多々ありますが、端的には以下のような点に集約されます。

従業員のアウトプットの質が向上する

従業員エンゲージメントが高いということは、前向きなモチベーションが強く発揮されている状態であり、仕事の成果の向上につながります。さらにその状態を維持することで、より多くの利益を生み出すことができ好循環に入る可能性が高まります。

業績アップにつながる

前述のように、従業員エンゲージメントが特に高い企業は、低い企業に比べて3倍の業績を上げていることが確認されています。2018年四半期(10~12月)で前年の同じ時期に比べ22%増の売上高を記録したGoogleは、従業員エンゲージメントが高いことでも有名です。

離職率が低下し人材が定着しやすくなる

従業員エンゲージメント、は人材定着にも影響を及ぼします。労働政策研究・研修機構の報告書では、エンゲージメントが高い「非常に意欲的な従業員」は約6割が「退職の予定なし」であるのに対し、エンゲージメントが低い「意欲的でない従業員」では3割未満、その分転職・退職の意思がある割合が多くなっています。

従業員エンゲージメントは、経営戦略上のカギを握る指標であると同時に、採用戦略においても看過できないものであるといえるでしょう。

※引用:厚生労働省 労働政策研究・研修機構「上質な市場社会」に向けて~公正、安定、多様性~

従業員エンゲージメントを高めるには?

従業員エンゲージメント向上、ひいては組織の成長を実現するには、現状の把握と改善により、組織を活性化させる必要があります。

エンゲージメント調査(サーベイ)の実施と分析

まずは自社の従業員がどのような状況にあるのか、正確に把握しましょう。従業員エンゲージメント調査の質問としては、ギャラップ社の12の質問(参考記事:あしたの人事Online「従業員エンゲージメントを測るサーベイ(調査)の秘訣とは?」)などが有名です。もちろん国内の調査で使用されている質問でも良いでしょう。

従業員エンゲージメントは継続的に向上してこそさまざまな効果につながりますので、一度きりではなく定期的に調査を行うことが大切です。

評価制度を改善

調査結果をもとに、自社で特に改善が必要な点を洗い出します。その分析を踏まえて、ビジョンの浸透や人事評価制度の改善を図りましょう。

人事評価制度の透明性は、従業員が仕事に取り組むうえでの納得感に直結します。制度自体の改善と周知徹底により従業員エンゲージメントの向上に寄与することができます。

適切なツールやサービスの活用

調査と改善をくり返すには、それなりの手間と時間が必要になります。得られる効果は大きいかもしれませんが、取り組みが頓挫してしまっては会社にとってダメージになってしまいます。調査をアウトソーシングしたり、人事制度改革でコンサルティングを活用したりするなど、適宜サービスを活用して効率的に進めるのも有効です。

まとめ

従業員エンゲージメントは、企業の成長に大きく影響します。採用難や人材の定着度とともに業績が伸び悩んでいる場合、従業員エンゲージメント向上の観点を持つことで、さまざまな課題解決の第一歩になることもあります。人と組織の良好な関わりを形づくるひとつの要素として、知っておいて損はないといえるでしょう。

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コピーライター、人事(採用担当)を経て、大手人材会社でディレクターとして、クリエイティブ企画や経営戦略にひもづいた人材採用・活用のコンサルティング業務などに従事。現在はIT企業勤務の傍ら、マーケティング・人材採用の領域を専門に中小企業支援を行っている。

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