採用費用や工数は増加しているが、伸び率は鈍化傾向
就職白書2020に掲載されていたグラフに、前年(就職白書2019)の同データをカッコ書きで併記しております。
ご覧いただいた通り、採用に関わる「人数」「労働時間」「総費用」は、引き続き増加してはいますが、昨年よりも伸び率は鈍化傾向です。
もともとのトレンドが鈍化傾向であるのに加えて、消費増税やコロナウイルスによる景気後退の影響を鑑みると、2020年4月以降の予算では、これまでの反動もあり、大幅な予算縮小となる企業も出始めそうです。
各社の採用数が一斉に減少する切り替わりのタイミングは、学生さんにとっては辛いことになり社会的にはよろしくないのですが、企業にとっては採用の機会にもなり得ます。
仕掛けるタイミングを見極めるためにも、景気の動向には、引き続きご注目ください。
6月以降の学生接点にも、やっぱりチャンスはある?!
こちらは学生さんの入社予定の企業が、当初、第一志望だったか、第二志望以下だったか、そもそも志望していなかったか、を集計したグラフです。
売手市場のため、第一志望群に内定する学生さんが50%を超えているのは昨年度と同様です。ご注目いただきたいのは、「当初は志望していなかった」企業への就職が23%もあること。
売手市場となった2019年卒から顕著ですが、学生は第二志望群(いわゆる、すべり止め企業)を準備しない傾向があります。
※本来、売手市場であれば、第一志望群の増加に伴い、第二志望群への入社割合も増えるはずですが、むしろ減少傾向にあります。
学生さんが第一志望群の選考に落ちたり、フィーリングが合わず第一志望群の企業を辞退した場合には、50%近い確率で、志望外の企業にも獲得チャンスが回ってくるのです。
そう考えると、大手企業が内定出しを行う6月以降のアプローチにも、トライする価値は十分ありそうです。
実際、取りくまれている企業様も多いと思いますが、その施策の正しさが読み取れるデータなのではないでしょうか。
売手市場すぎて、第二志望群までもが難関企業になってしまっている可能性
上記とは少し異なる解釈ですが、関連もある考え方なので記載しておきます。
売手市場にも関わらず第二志望群への入社が少ないのは、学生が選ばないからではなく、第二志望群にも不採用になっているからではないか、という考え方もできます。
第一志望群は当然ながら、多くの学生さんはチャレンジして難しい企業を選ぶと思います。でも、もしも学生さんが、第二志望群にまでハイレベルな企業を選んでいたとしたらどうでしょう。
たとえるなら、東大のすべりどめに早稲田と慶応を受験するようなことをしている学生さんが多いのではないかということです。
実際、6月以降からのアプローチでも、MARCHクラス以上の学生さんを採用できている企業様が多いのは、こんな実態もあるのではないか…と考えさせられます。
インターンシップの早期化も、着々と進行中
次はインターンシップの話題に移ります。
誰もが予想する通り、インターンシップの早期化が急激に進行しております。
以下は、学生さんがインターンシップに初めて参加した時期を集計したグラフです。
ご注目いただきたいのは、大学2年生と大学3年生の4~6月の数値です。
それぞれ、大学2年生9.1%、大学3年生の4~6月合計20.81%となっています。
合わせるとほぼ30%に達します。
次に比較対象として、前年、就職白書2019の同様の資料を掲載します。
大学2年生は5.4%、大学3年生の4~6月は8.1%となっています。
合わせても13.5%しかありません。
この一年で、大学2年生から大学3年の4~6月にかけての、インターンシップ初参加者が2倍以上に拡大しています。
かつては、早期のインターンシップは意識の高い学生のもの、優秀な学生の参加するもの、というイメージがありましたが、このデータから一般の学生層にも早期のインターンシップは根付きつつあることが伺えます。
通年採用の流れのなかで、インターンシップはアルバイト化していく
これまで早期のインターンシップに対しては、学業の妨げになるとの意見もあり、また採用に直結させづらいことからも積極的な実施が見送られてきました。
しかし、2022卒からは経団連が掲げていた紳士協定も失われ、就活ルールは事実上の廃止となります。
さきほどお伝えしたように、インターンシップの早期化はすでに進行しています。
今後、ゆるやかに就活が通年化していくなかで、インターンシップはどのように運営されていくのでしょうか。
その答えの一つとしてお伝えしたいのが、インターンのアルバイト化です。
この流れが進むと、1dayや〇daysなどといった短期集中のコンテンツではなく、もはやインターンですらなく、「企業内で、アルバイトとして働く」学生さんが当たり前に出てくると予想されます。
すでに「キャリアバイト」というサイトでは、
2020年3月時点で800~900件ほどの学生向けの仕事が公開されています(無給のインターンも含む件数)
今後、ニーズが増えてくれば、大手アルバイトメディアも検索項目や特集の拡充、専用アプリのリリースなどを通じて、キャリアバイト志向の学生さん向けのサービスを展開してくる可能性もあります。
企業での就労は、任される業務にもよりますが、従来のアルバイトで起こりがちだった「シフトに穴をあける」問題が起こりにくく、学業とも両立しやすくなるはずです。
もし、この仕組みが確立されれば、学生さんにも大学側にも理解を得られやすいため、一定の広がりを見せるのではないでしょうか。
従業員数別:とり組めた採用施策、とり組めなかった採用施策
ここからは就職白書2020の最後のページ(10P)について解説します。
10pには、企業がどんな採用施策を講じる予定だったか、その実際の実施率はどうだったかを示したグラフが掲載されています。
簡単に言えば、立てた施策実施目標に対して、できたか、できていないか、が一覧になっているグラフです。
本記事では、データ内容をより理解しやすくするために、弊社にて就職白書2019と就職白書2020のデータを合わせて、必要な計算処理を済ませた表を以下に添付いたします。
・全体平均
・300人未満
・300~999人
・1000~4999人
・5000人以上
の5つのグラフをご用意しています。
↓
全体平均:企業の採用の方法・形態
300人未満:企業の採用の方法・形態
300~999人:企業の採用の方法・形態
1000~4999人:企業の採用の方法・形態
5000人以上:企業の採用の方法・形態
前年との比較から見えてくること
全体の数値だけ見ると、
●職種別採用 4.7% up
●通年採用 2.8% up
●新卒の人材紹介 2.1% up
●採用直結インターン 1.4% up
●部門別採用 0.6% up
上記の5項目がUPしており、報道やニュースサイトの情報と照らしても、「まぁこんなもんだろう」とお感じになられると思います。
ただ、企業セグメントごとのグラフをご覧いただくと、その内訳はまったく色合いが異なります。
以下、特徴的な部分について、いくつかピックアップしてご紹介します。
大手・準大手は、圧倒的な取りくみ率。しかしリファラルには苦戦ぎみ。
ほとんどの指標において、大手(5000人以上)・準大手(1000~4999人)は、全体平均を上回っています。
しかし一方で、「20予定→20実績乖離」の項目を見ると、実施予定に満たない項目も多く、企画倒れになってしまっている企業も一定数あることが伺えます。
大手企業については、少しだけ個別項目にも触れておきます。
まず、リファラル採用について。
2020予定が34%で、2020実績が25%。苦戦しています。
しかし、2021予定では34.5%と、再度チャレンジする姿勢が伺えます。
通年採用はどうでしょうか。
2020予定は16.9%で、2020実績が28.6%。
当初予定よりも取りくみが進んでいることが伺えます。
そして、2021年予定はさらに伸びて、30.2%の企業が通年採用実施を表明しています。
リファラルと通年採用については、準大手も大手企業と同様にアップ目標を掲げていますので、この2つについては、2021卒以降、着実に数字を伸ばしてくるのではないでしょうか。
ただ、実施率を見る限りでは、通年採用よりもリファラル採用のほうが、導入に苦戦されているようです。おそらくこれは、リファラルは社員を巻き込む必要があるからだと思われます。
<参考>
弊社もリファラル採用に取りくんでおり、その内容をせきららに語った記事です。
→本音で語る、中小企業のためのリファラル採用戦略と実践事例。
中小企業の勝ち筋は、職種別採用を磨き上げること
様々指標があるなかで、「職種別採用」だけは、企業規模が小さくなるほど実施率が高い施策であることが分かります。
我々は、ここに勝機があると考えています。
理由の1つは、大手企業ほど実施しづらい領域であるためです。
これは企業構造に原因があるため、小回りの利く中小企業にアドバンテージがあります。
2021年の予定数値を見る限りでは、少なくとも6割くらいの人事の意思としては、今以上に職種別採用を推進していこうという気運は感じられません。
つまり、今後も中小企業がリードできる可能性が高い領域だということです。
そして2つめの理由は、学生さんが職種別採用を歓迎しているからです。
企業選びの際に、自分のやりたい仕事ができるかを軸にしている学生さんは多く、配属リスクを嫌うことも一般的な傾向です。
具体的な考え方については以下の記事にもまとめていますが、
→中小企業が、新卒採用で大手企業に勝つための方法。
→「欲しい人材からの応募がこない」を解決する方法。
どこに配属されて、
どんな上司で、
どんな同僚がいて、
どんな仕事内容で、
どんなお客様と接するのか。
どんな成長ができて、
どんなキャリアパスがあるのか。
そして、その仕事は社会のなかでどんな役目を果たしているのか。
このようなリアリティのある事実を明確に伝えることができれば、企業は、学生に対して期待値を高めることができます。
効用(待遇や仕事内容、知名度などのスペック/その企業で働く価値)
×期待値(どの程度の実現可能性がありそうか)
=企業への志望度
一般に、企業に対する志望度は、上記のように考えることができます。
企業は、「効用」それ自体を高めることも重要ですが、「入社後の不確実な要素をどれだけ減らせるか」、つまり期待値を高めることによっても志望度を高めることが可能です。
実際、弊社(株式会社クイック)に入社を決めてくれる学生さんの中には、同業界でより会社規模の大きい企業の内定を持っている人も少なくありません。
弊社の場合は、事業部ごとに採用を行っており、入社後の仕事内容が明確に決まっていることが、学生さんの安心材料の一つになっているようです。
→リアリティのある事実を伝えるための第一歩「ペルソナ設計(ターゲットの明確化)」シート
トレンドに踊らされず、学生ファーストの施策を
データをご覧いただいたとおり、リファラル採用は大手企業でも25%の企業でしか実施できていないのが現状です。経団連や政府も巻き込み、ニュース等で話題になった通年採用ですらも、28.6%の実施に留まっています。
記事でとり上げられていたり、企業の人事担当者が取りくみを発表していたりすると、さもそれがこれからのスタンダードかのように錯覚してしまいがちです。
しかし、現実はそんなに簡単ではありません。
採用に苦戦していると、つい目新しい手法に飛びつきたくなってしまいますが、そこは気持をぐっとこらえて、学生が望むことは何なのか、という基本に立ち返った意思決定をぜひお願いしたいと思います。
本記事にてご紹介した職種別採用は、地味ながら着実に効果のある取りくみです。
つい先日も、募集する職種の仕事内容を丁寧に記載した中小のメーカー様が、3月1日オープンのナビサイトにて昨年よりも多くのエントリ―を獲得できたとご連絡いただいたところです。
しかかりに時間がかかる派手な改革よりも、簡単にできる小さな改善から手をつけるのは、施策見直しの鉄則です。
もし、気になった点がおありでしたら、まずはお付き合いのあるパートナーさんに文面の再考などをお願いしてみてはいかがでしょうか。
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