会社説明会の資料の役割とは?
会社説明会は、参加者に自社理解を促し入社意欲を高めてもらう、いわば「採用選考の入り口」のような行事です。参加者は会社説明会で興味を抱かないとその後応募には至らないため、非常に重要な機会となります。
そのため会社説明会で使用する資料は「その場で理解や興味関心を促す」「持ち帰って思い出してもらう」という大きく2つの役割があります。
特に新卒採用の場合は、学生は多くの会社説明会に参加するため、説明会の記憶が曖昧になりやすい傾向があります。説明会当日はもちろんのこと、後日見返した際に魅力がある資料であれば、応募する確率が上がりやすくなります。
就活生が会社説明会に求める内容とは?
会社説明会資料を作るうえで重要なことは、就活生のニーズを知ること。これを怠ると、就活生が本当に知りたいことを説明できません。
2022年卒の学生に実施した株式会社マイナビのモニター調査によると、個別企業セミナーで聞きたかった内容は「具体的な仕事内容」が54.4%で最多であり、次いで「社風・社内の雰囲気」が46.1%、「企業が求める能力・人材像」が36.0%と続いています。また、この調査で注目すべき点は、聞きたかった内容が聞いた内容を上回っている項目です。これは、学生が聞きたかったが実際に聞けなかった項目であり、主に、「入社後のキャリアモデル」「入社後の待遇」「社風・社内の雰囲気」などが挙げられます。
就活生が会社説明会で何を聞きたいのかを知り、特に「聞きたかった内容」が「聞いた内容」を上回る項目に着目し、会社説明会資料を作ることが重要です。
(※引用・参考)株式会社マイナビ:「マイナビ 2022年卒 学生就職モニター調査 4月の活動状況」
会社説明会資料に掲載すべき9の項目
会社説明会資料は、概要から詳細までストーリー立てて説明できるように作成することがポイントです。ここでは、このストーリーに沿って、就活生が知りたい情報を説明できるよう、会社説明会に掲載すべき項目を次のとおり紹介します。
- 【1】会社紹介・概要
- 【2】企業理念(MVV)
- 【3】事業内容
- 【4】仕事内容
- 【5】募集要項
- 【6】入社後の待遇
- 【7】社員のキャリア形成について(キャリアモデル)
- 【8】社風・企業文化(社員インタビューなど)
- 【9】よくある質問/回答
【1】会社紹介・概要
はじめに説明すべきは、会社紹介・概要です。
自社のサマリーを冒頭に説明することで、就活生に概要をつかんでもらいます。単に項目を説明するのではなく、社名の由来や自社商品・サービスがどのように世の中に貢献しているかなど、就活生が興味を持てる「つかみ」を訴求すると良いでしょう。
【盛り込むコンテンツ例】
- 社名
- 創業者名/代表者名
- 事業内容
- 事業所/拠点数
- 従業員数
- 上場市場
【2】企業理念(MVV)
次に、自社の価値観を示す企業理念、MVV(Mission Vision Value:・ミッション・ビジョン・バリュー)を説明します。
自社の価値観にマッチする就活生を集めるためには、企業理念やMVVを訴求することが重要です。これによって、自社の理念・価値観に共感する就活生を集めることができます。
【盛り込むコンテンツ例】
- 企業が果たすべき使命や存在意義
- 企業のあるべき姿
- ミッションやビジョンを達成するためにすべきこと
- 創業ストーリー
【3】事業内容
続いて、自社の事業内容を説明します。
ただし、ストレートに事業内容を説明しても、就活生に事業内容を理解してもらうことは困難でしょう。自社の属する業界構造などのマクロ環境の説明から入り、自社の事業内容や商品・サービスなどのミクロ環境を解説すると、わかりやすい説明が可能です。
【盛り込むコンテンツ例】
- 業界構造
- 業界における自社の立ち位置
- 事業領域
- 主な商品・サービス
- ビジネスモデル
- 自社の競争優位、強み
【4】仕事内容
会社の概要説明のあとは、仕事内容を説明します。
ここで重要なことは、仕事内容を具体的に説明すること。「総務」「経理」「製造」などのように職種名のみ列挙するだけでは、就活生が聞きたい具体的な仕事内容を把握できません。職種や仕事内容はもちろん、やりがいやキャリアパスを示すほか、先輩社員インタビューや一日の流れなどを盛り込むと良いでしょう。
【盛り込むコンテンツ例】
- 職種
- 仕事内容
- 仕事のやりがい
- キャリアパス
- 先輩社員インタビュー
- 一日の流れ
【5】募集要項
次に募集要項を説明します。この募集要項は、就活生が求人に応募するうえで、必ず見る項目です。
勤務条件や募集職種、給与情報などの基本情報のほか、求める人材像や福利厚生、選考フローなど、選考に関わる情報を開示します。なお、就活生は煩雑な選考フローを避ける傾向があるため、母集団を高めたい場合は、選考フローを簡略化すると良いでしょう。
【盛り込むコンテンツ例】
- 勤務条件
- 募集職種
- 給与情報
- 求める人材像
- 福利厚生
- 選考フロー、スケシュール
【6】入社後の待遇
続いて、入社後の待遇を説明します。
給与や福利厚生などの待遇情報は、就活生からも質問しづらいため、企業側から説明しないと情報を得にくい項目です。基本給や各種手当のほか、法定福利、法定外福利などの待遇をしっかりと説明することで、就活生ニーズに応えることができます。
【盛り込むコンテンツ例】
- 給与(基本給や各種手当、賞与など)
- 法定福利(健康保険や厚生年金などの各種社会保険)
- 法定外福利(各種手当や保養所、財産形成、確定拠出年金など)
【7】社員のキャリア形成について(キャリアモデル)
次に、社員のキャリア形成(キャリアモデル)を説明します。
就活生は、入社後にどのようなキャリアを積み成長していけるかを知りたいものの、キャリア形成について会社説明会で触れていない企業が多いことが実情です。雇用のミスマッチを防ぐためにも、自社のキャリアモデルを策定して会社説明会で説明することをおすすめします。
【盛り込むコンテンツ例】
- キャリア形成の考え方
- キャリア形成手段
- コース別のキャリアモデル・キャリアパス
【8】社風・企業文化(社員インタビューなど)
次に、社風や企業文化を説明します。
これらの項目は、単に言葉だけで説明しても就活生には響きません。社員インタビューや画像を掲載するなど、リアルな声を伝えることで社風や企業文化の具体的なイメージを訴求することができます。QRコードを埋め込むなど、社員インタビュー動画に導線を設けることも有効でしょう。
【盛り込むコンテンツ例】
- 当社の価値観、企業文化
- 〇〇な当社の社風
- 先輩社員インタビュー(社風、入社の決め手、取り組んでい社外活動など)
【9】よくある質問/回答
最後に、よくある質問のQ&Aを説明します。
このQ&Aは、過去に就活生から多かった質問や、就活生の関心が高い項目をピックアップしてください。特に、「女性活躍」や「SDGs」への取り組みのほか、「在宅勤務」や「フレックスタイム制」、「育児・介護休業」などの状況など、社会貢献や働きやすさに関する事項を掲載することが望ましいでしょう。
【盛り込むコンテンツ例】
- 社員データ(男女比率、平均年齢、年代構成)
- 新卒・中途の割合
- 転勤の有無
- 社会貢献(CSRやSDGs)
- ダイバーシティ(女性活躍や障碍者雇用)
- 働き方(在宅勤務やフレックスタイム制)
- 育児・介護休業の取得状況
会社説明会資料の作り方
会社説明会資料は、適切な情報を選び、業界の説明から選考に関する細かい連絡まで、自然な流れで参加者が理解できるよう構成します。以下の要領で情報を整理してみてください。
説明会資料に盛り込む内容を選定する
まずは、説明会のプレゼンテーション内で紹介する内容を選びます。
前章で紹介した「会社説明会資料に掲載すべき9の項目」をベースにピックアップしてください。特に、就活生が聞きたい「仕事内容」「社風・社内の雰囲気」「企業が求める能力・人材像」のコンテンツは厚く盛り込むほか、「入社後のキャリアモデル」「入社後の待遇」など、会社説明会で説明されにくい項目も積極的に掲載しましょう。
現場の声や紹介する事業に関するこぼれ話など、親しみやすさを持たせるエピソードは発表者用のメモ(スピーカーノート)に盛り込みます。募集職種の説明などのように、必須事項と同じレベルで扱う必要はありません。
スライド以外の資料との重複をチェック
プレゼンで紹介する項目を挙げたら、会社案内や採用パンフレットなど当日配布する資料との重複がないかを確認します。
紙の資料の記載内容と同じ情報を読み上げるだけでは、せっかく対面でコミュニケーションが取れる説明会の時間を活用しきれません。
スライドには要点のみ記載し、詳細を確認したい参加者のために適宜パンフレットのページ数を案内するなど、情報のすみ分けを工夫しましょう。
マクロ→ミクロの視点で構成する
スライドに記載する情報の粒度は、大きいものから小さいものの順序でまとめましょう。
たとえば、最初に業界や市場などの「前提情報」、次に会社の立ち位置や事業概要、その後部署や職種ごとの仕事内容、などと推移させていきます。
粒度の小さい情報から先に紹介してしまったり、程度がバラついてしまったりすると、説明のなかで「そもそもこの業界は……」などと流れが逆戻りしてしまいます。内容がきちんと整理されていないプレゼンは、聞き手にとってなかなか理解しにくいものです。スライドの順番を考えるときは、話題の粒度を意識しましょう。
会社説明会資料パワポ・スライドの作成ポイント【事例付き】
ここからは、説明会資料の作成でクオリティを高められるポイントを紹介します。
説明会資料の好例として、当社のクライアントである「株式会社スリール様」のスライド事例をお見せしながら、パワーポイント作成のポイントを解説しますので、ぜひ参考にしてください。
1スライド1テーマを徹底する
1つのスライドに盛り込むテーマは必ず1つにし、2つ以上の話題を混在させないようにします。
手元で読む文書と異なり、スライドではあまり多くの情報を盛り込むと、非常に読みにくくなってしまいます。話題の推移とページめくりを連動させることで、聞き手に情報をインプットしてもらいやすくなります。
文字数は極力減らして見える大きさに
会場の広さやスクリーンの大きさにもよりますが、スライドの文字が小さすぎると、後方の座席に座っている人が内容を読めなくなってしまう懸念があります。
なるべく文字を大きくするために、情報を全て書き連ねるのではなく、話題の骨子や強調したい点の記載に絞り込みましょう。スライドが見えにくい、読めない状態では、聞き手の関心や集中力を大幅に下げてしまいます。
図や写真を用いてイメージさせる
スライドには文字だけでなく、図や写真などを要所要所に入れるようにしましょう。
文字ばかりのスライドでは参加者は目が疲れるだけでなく、情報を理解する労力が強いられます。画像を用いることで、テキスト文字だけでは伝えにくいイメージや雰囲気を、直感的に参加者に届けることもできます。
ページ数は「総時間」と「1枚に使う時間」から設定する
スライドのページ数は「説明に使える総時間」と「1枚のスライドに使う時間」から考えましょう。
このとき、1枚のスライドに使う時間を1~3分程度で考えると、全体のページ数を設定しやすいです。
たとえば、説明の時間がトータル30分で、1枚のスライドに1.5分使うとすれば、20枚が目安となります。もちろん、スライドのページ数設定にルールはありません。
次から次へと高速でページをめくったり、スライド1枚に対して情報を詰め込んだりする方法もあります。ただし、「参加者が十分に理解できるか」というポイントを忘れてはいけません。
アニメーションを多用しない
スライドを作成するときについ使いたくなるアニメーションですが、やりすぎには注意が必要です。
何度もアニメーションが入ると動きに慣れて強調の意味が薄れたり、人によっては動きの方を注視してしまったりと、あまり良い影響がありません。
文章を順番に表示するようなシンプルなものは問題ありませんが、大きな動きを伴う派手な印象を与えるものは、ここぞというときだけ使うよう心がけましょう。
社内の雰囲気を伝える
会社説明会の資料で必ず伝えるべきポイントは、社内の雰囲気です。
代表的な部署の仕事の進め方など業務プロセスが伝わる内容や、職場の画像などのスライドを盛り込むようにしてください。また、社内イベントなど業務から離れた催しの紹介などもおすすめです。
学生のメモスペースがある
意外と忘れてしまいがちですが、資料には参加者がメモをとるスペースを設けるようにしてください。
参加者は自ら手を動かしてメモを取ることで、聞いた内容を記憶しやすくなったり、後から読み返すことができたりします。副次的な効果としては、「聞き手側への配慮が行き届いた会社」など、自社の印象アップにつながる可能性もあります。
会社説明会のプレゼンで意識すること
会社説明会の資料が完璧だったとしても、当日のプレゼンテーションが準備不足であれば、効果も半減してしまいます。ここからは、プレゼンテーションで意識すべきポイントを紹介していきます。
プレゼンターや司会は活躍している若手社員を選ぶ
プレゼンターや司会は参加者からの注目が集まりやすいため、活躍している若手社員を選ぶようにしましょう。
特に新卒採用の場合は生き生きとした社員が登場することで、学生から「この人と働きたい」や「自分もこの人のように成長したい」という前向きな思いが生まれます。ただしあまりにも年齢が上の社員を選ぶと、学生は自分を重ねにくくなるため、登壇するのは若手社員をおすすめします。
イメージしやすい具体例を入れる
プレゼンテーションは、学生がイメージしやすいようになるべく具体的かつ実事例を伝えるようにしてください。
まだ働いた経験がない学生は、どうしても会社や仕事を具体的にイメージをしにくい側面もあります。なるべく学生が理解できたり興味を持ったりできるよう、リアリティがある情報を話すよう心がけましょう。
企業のビジョン・ミッションを明確に伝える
企業のビジョン・ミッションは会社説明会で必ず伝えるべき内容の一つです。
参加者は事前にWebサイトや会社案内などで文字ベースでビジョン・ミッションは見ているはずです。会社説明会はそれらを直接伝えられる絶好の機会となるため、なるべく自らの言葉で熱量高めに伝えることをおすすめします。
ビジョン・ミッションの説明だけでなく、なぜ「このビジョンにしたのか」などの背景情報や、ビジョン・ミッションがよく現れているエピソードなどを伝えると良いでしょう。
ポジティブな情報だけ伝えない
会社説明会では、ポジティブな情報だけでなく、正直に自社の姿を伝えることを意識してください。
志望度を高めてもらうためにポジティブな情報ばかりを伝えたくなりますが、参加者が知りたいのはその会社の素の姿です。失敗談や会社の課題・改善点などを伝えることで、誠実な会社という印象になるばかりでなく、風土にマッチしやすい人からの応募が期待できるようになります。
社員の属性や福利厚生なども具体的に伝える
参加者から興味・感心が高いポイントとして「どんな社員がいるのか」や「どんな福利厚生メニューがあるのか」が挙げられます。
社員の年齢層や性格タイプなどの情報は、一緒に働くイメージを持つうえで重要な情報となります。また福利厚生については、単なるメニュー紹介だけでなく消化率や人気がある福利厚生メニューを伝えると、より丁寧な情報提供となるでしょう。
【NGポイント】つまらない説明会の特徴
最後に、参加者の志望度を下げてしまうような、望ましくないパターンをまとめました。
登壇者の印象が悪く、不安を与えてしまう
親しみやすさを出そうと言葉遣いがカジュアルになりすぎたり、質疑応答などの対応が雑だったりすると、会社の印象が悪くなってしまいます。また、新入社員や人事部以外の社員などプレゼンに慣れていない人の場合、過度に緊張しておどおどしてしまうと、「この会社は大丈夫なのか?」と感じさせてしまう懸念があります。
内容が「独りよがり」
自社をアピールしたいあまり、応募側の立場を考慮せず社史や事業の優位性ばかりを延々と述べていては、参加者の関心は低下してしまいます。自社の強みは、働く環境やキャリアステップ、仕事の楽しさをイメージしてもらえるようなプレゼンをすることで、自然とアピールできるようにしましょう。
資料を読み上げるだけになっている
スライドや動画をうまく活用できておらず、企業パンフレットを読み上げるような内容では、参加者が退屈に感じてしまいます。学生にとって会社説明会は社員と直接コミュニケーションが取れる貴重な場です。多くの参加者がパンフレットやホームページの記載内容よりも密度が濃く、実感を伴った情報を求めて来ています。ただの音読にならないよう、プレゼンの構成を工夫して臨みましょう。
まとめ
本記事では、就活生が会社説明会に求める内容や会社説明会資料に掲載すべき項目のほか、作成のポイント、パワポ・スライドの作り方、プレゼンで意識することなどを徹底解説しました。
会社説明会の質は、会社説明会の作り方で大きく変わりますが、「就活生が聞きたい情報が説明されていない」「伝えているつもりでも就活生に響いていない」など、会社説明会資料の構成不足やクオリティの低さから、参加した就活生の志望度を引き下げていることもあるでしょう。本記事を参考に、就活生のニーズにあった会社説明会資料を作成し、会社説明会を成功させましょう。
また、会社説明会で資料の次に重要なことは、就活生を惹きつけるトークです。
「面接や説明会で、学生(求職者)を惹きつけるトークができない場合の対処法。」では、説明会で参加者にメッセージを届けるためのポイントと、志望度を高められない原因を解説していますので、あわせてご覧ください。
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