リファラル採用とは?
「リファラル採用」とは、既存社員からの知人・友人紹介による採用手法のことです。リファラルという言葉には、英語で「紹介」の意味があります。
リクルートワークス研究所の調査資料によると、アメリカでは採用経路の28%をリファラル採用が占めるほど主流の採用手法となっています。
※出典:リクルートワークス研究所|米国の社員リファラル採用のしくみ
縁故・コネ採用との違い
リファラル採用と縁故・コネ採用は、いずれも社員のコネクションを通じた採用であることは同様です。
しかし、縁故採用やコネ採用は、実力に関係なく、身内を優先する「採用を前提とした推薦」といえるでしょう。一方、リファラル採用では、紹介したあとの選考フローは通常の求職者と同様なため、「社員からの紹介」という心情的な意識が多少、合否に働くことがあっても、基本的には選考が有利になることはありません。
リファラル採用が注目される背景
少子高齢化を背景に日本の労働人口は減少し、採用市場はますます激化しています。
このような厳しい採用市況のなか企業は、従来型の採用手法だけでは必要数を充足することが困難になっています。こうした背景から、新たな採用手法が次々と開発されるなか、転職潜在層にアプローチできるなど、母集団の拡大が可能なリファラル採用が注目されているのです。
また、リファラル採用では、公募に比べて自社にマッチする人材が集まりやすく、効率の良い採用が可能です。社風やスキル面のミスマッチが起こりにくく、入社後の定着率が高いことも、リファラル採用が注目される要因となっています。
リファラル採用のメリット
ここからは具体的に、リファラル採用のもたらすメリットについてご紹介します。
自社にマッチした人材に出会いやすい
社員の友人には、同業・同職種の人も多いはずです。
その人の仕事ぶりをある程度わかった上で紹介してもらえるため、公募に比べると自社にマッチした人に出会える確率は高くなります。
転職市場に出てこない、優秀な人材と出会える
優秀な人材は、すでに組織の中で能力にふさわしい仕事や処遇を得て、それなりに満足して働いていることが多いものです。
そういった人たちは、求人広告を見ませんし、紹介会社に相談にいったりもしません。
そんな優秀な人材に「食事でもしながらちょっと話だけでも」「オフィスに遊びに来てよ」とソフトにアプローチできるのは、リファラル採用ならではのメリットです。
仮に入社が決まった場合にも、自分がより興味をもてる職場に移る「ポジティブな転職」になるため、その後の活躍・定着につながりやすい傾向があります。
コスト削減
一般的な人材採用には以下のような経費がかかります。
- 求人広告の掲載費
- 紹介会社に支払う成功報酬
- 転職イベントなどの出展費
- 多数の候補者を書類選考・面接する担当者の人件費
- 戦力化するまでの育成費
リファラル採用では、これらの費用が一切かからない、あるいは費用を抑えることができます。
- (不要)求人広告の掲載費
- (不要)紹介会社に支払う成功報酬
- (不要)転職イベントなどの出展費
- (減る)多数の候補者を書類選考・面接する担当者の人件費
- (減る)戦力化するまでの育成費
紹介してくれた社員に奨励金を出すなど、リファラルならではの費用が発生することも多いですが、広告費や紹介フィーに比べれば微々たる額ですし、奨励金は社員に対する処遇アップの一環と考えることもできます。
リファラル以外の採用力もアップ
リファラル採用を活性化させるためには、社員一人ひとりが自社で働く魅力を語れるようになることが必要です。
リファラル採用への取り組みを通じて、自社の魅力について改めて考える機会を得ることで、採用メッセージが研ぎ澄まされたり、面接官のプレゼン能力が向上したりする効果が期待できます。
リファラル採用のデメリット
企業に多くのメリットをもたらすリファラル採用。
しかし良いことばかりではなく、デメリットも存在します。
具体的には、以下のような観点に留意して取り組む必要があります。
急ぎの採用には向いていない
「欠員が出たので1ヶ月以内にこのポジションの人を採用したい!」といった緊急性の高い募集に、リファラル採用は不向きです。
リファラル採用は、通年で計画的な採用を行う際に有効な手法です。
100%すべての採用をリファラルに置き換えることは現実的ではありません。
人間関係への配慮が必要
残念ながらご縁がなく不採用になった場合、ふだんの採用以上に真摯な対応を心がけてください。紹介者とそのご友人の人間関係を壊さないことが最重要です。
紹介してくれた社員に対して、どんな点がマッチしなかったために不採用になったか、丁寧にフィードバックを行うのも誠実な方法です。
また、入社後にも注意が必要です。紹介者・被紹介者の人間関係が悪くなった場合、どちらかが退社してしまうリスクがあります。
肩を並べてお酒を飲んでいるときは楽しくても、いっしょに仕事をすると衝突が起こるのは珍しいことではありません。逆に仲が良い場合、どちらかが退社するともう一人もつられて退社してしまうこともありえます。
紹介者以外の社員とも親しい人間関係を築けるように、配属チームを別々にするなど人事面での配慮が求められます。
人材の多様性が、損なわれる場合がある
リファラルで入社した社員は、紹介者に似たタイプの人が多くなりがちです。
そのためリファラル採用を継続していると、社内に似たタイプの人が自然と増えていきます。
既存社員の構成が多様であれば問題ありませんが、新卒比率の高い企業など、もともと似たタイプの人が集まっている組織では、人材の同質化が加速します。
人事が知るべき、リファラル採用の違法リスク
リファラル採用で紹介者である社員に報酬を支払う場合、違法リスクに留意が必要です。
ここでは、リファラル採用で留意すべき違法リスクについて解説します。
リファラル採用が違法となるケース
リファラル採用で違法となるケースは、条件を満たさずに、紹介者となる社員に報酬(インセンティブ)を与えるときです。
この条件の詳細は次章で説明しますが、「賃金や給料」として「高額」とならない程度の報酬であれば、問題にはなりません。しかし、賃金や給料でない報酬を与える場合は、職業安定法上、事前に厚生労働大臣の認可を得る必要があります。また、賃金や給料であっても、高額な報酬の場合は、無許可で有料の職業紹介事業をおこなっていると判断される恐れがあります。
このような理由から、報酬が「賃金や給料」でない、あるいは「高額」な場合は、違法リスクがあるのです。
万が一、この条件を満たさずに報酬を支払った場合は、企業だけでなく紹介した社員も違法性を問われる恐れがありますので、細心の注意を払ってください。
なぜ違法!?職業安定法における禁止事項
職業安定法では、リファラル採用に関して次の禁止事項を定めています。
リファラル採用をおこなう際には、人事が必ず押さえておくべき事項ですので、確認してください。
職業安定法第30条(有料職業紹介事業の許可)
有料の職業紹介事業をおこなうには、厚生労働大臣の許可を得なければなりません(職業安定法第30条)。
この許可を得ずに、有料職業紹介事業をおこなうと違法となります。このため、企業がリファラル採用の制度として、「賃金や給料」でない報酬、あるいは賃金や給料であっても「高額」な報酬を支払った場合、有料職業紹介事業と判断される恐れがあり、違法リスクが生じます。
職業安定法第40条(報酬の供与の禁止)
職業安定法では、原則、リファラル採用において、報酬を社員に支払うことを禁止されています。
ただし例外として、「賃金・給料またはこれらに準じるものを支払う場合」、または「報酬額を事前に厚生労働大臣の認可を得ている場合」は、リファラル採用における報酬の支払いを認めています。(職業安定法第40条)
なお、次章で詳しく説明しますが、リファラル採用の報酬を「賃金・給料」として支払う場合は、この支払いについて、就業規則に明記しなければならないことに留意が必要です。
これらを踏まえて、次章を参考に、リファラル採用の報酬額設定や規程整備をおこなってください。
リファラル採用を適法に実施するための留意点
ここでは、リファラル採用を適法に運用するための留意点を説明します。
リファラル採用の規程を整備する
リファラル採用における社員への報酬は、「賃金や給料」として支払うことが一般的です。この場合、この報酬の定めを就業規則に記載することが必要になります。
就業規則には、絶対的記載事項として、「賃金の決定、計算・支払の方法、賃金の締切・支払の時期、昇給に関する事項」を定めなければなりません(労働基準法第89条)。そのため、リファラル採用の報酬は、絶対的記載事項として就業規則の定めが求められているのです。
リファラル採用の規程を整備する際は、「リファラル採用の規程例」の章を参考にしてください。また、就業規則の絶対的記載事項を詳しく知りたい方は、厚生労働省のパンフレット「就業規則に記載する事項 2 就業規則の効力 – 厚生労働省」をご参考ください。
報酬を高額にしすぎない
リファラル採用を運用する際は、有料職業紹介事業と判断されて違法リスクが生じないよう、報酬を高額にしすぎないことが重要です。
報酬額が「高額」であるか否かの目安としては、一般的な人材紹介手数料が「想定年収の30%」であることがひとつの目安となります。この金額を超えないことはもちろん、次章で紹介する報酬相場を参考に、社会通念上の謝礼程度の範囲に押さえるべきでしょう。
実際に、リファラル採用で報酬を設定する際は、弁護士や社労士などの専門家と相談したうえで、設定することをおすすめします。
リファラル採用の報酬設定について
リファラル採用を導入するにあたって、人事の方が決めかねることが多いのが、紹介者に支払う報酬の設定額です。
ここでは、リファラル採用の報酬について要否や相場、設定方法を解説します。
紹介者に報酬は払うべき?
リファラル採用の報酬を支払うべきか否かについて、121社に調査したリファラル採用のインセンティブに関するアンケートを見ていきます。
※出典:株式会社リフカム|https://jp.refcome.com/insight/1257
このアンケートによると、インセンティブ0円の企業が20.7%となります(金銭以外のメリットはある)。インセンティブ設計自体がない企業の12.4%と合わせると33.1%と、約3社に1社は金銭的な報酬がない結果となっています。
このアンケート結果から、リファラル採用は、必ずしも報酬がないと機能しないものではないことがわかります。社員の帰属意識が高い企業の場合、「友人の役に立ちたい」「自社の採用に貢献したい」など、報酬以外で動機付けできることが要因と考えられます。
なお、金銭以外の主な報酬例には、紹介者と被紹介者を豪華な食事に招待する、紹介実績に応じてチームの飲み会代金に補助を出す、といったものがあります。
リファラル採用の報酬相場
次に、リファラル採用の報酬を決定するにあたって、報酬相場を見ていきます。
※出典:株式会社リフカム|https://jp.refcome.com/insight/1257
アンケートによると、報酬は0円が20.7%、1~5千円までの少額から5万円以内がそれぞれ8%前後と続き、5万円超10万円未満が14%であり、10万円以上が26.4%と最も多くなっています。
なお、正社員で要求スキルが高い(採用が困難な職種)ほど金額も高くなる傾向があり、アルバイトなどの非正規雇用であれば数千円から数万円であることが一般的です。
リファラル採用の報酬設定方法
リファラル採用の報酬は、違法とならず社会通念上の範囲の謝礼程度に収める必要があります。
具体的には、報酬相場である5千円から10万円程度をベースに報酬を設定します。たとえば、アルバイトや契約社員などの報酬を5千円〜5万円程度、正社員は10万円程度など、採用コストの高さに応じて、リファラル採用の報酬を決定するとよいでしょう。
特に、採用難易度が高い人材の報酬については、高めの金額に設定することも考えられます。この場合、違法にならないように、弁護士などの専門家に必ず相談してください。
リファラル採用の規程例
ここでは、リファラル採用の規程例を紹介します。
リファラル採用を導入する場合に、就業規則に定めるべき項目は次のとおりです。
- 支給対象者
- 支給基準
- 支給額
これらの項目について、次の例を参考に、就業規則(賃金規程や給与規程)に定めてください。
【リファラル採用の規程例】
従業員から推薦・紹介を受けた人材を会社が採用したときは、被紹介者1名につき、次の各号に応じた人材紹介手当を給与にて支給する。ただし、従業員が採用難易度の高い人材を推薦・紹介し、採用に至った場合は、◯◯の承認のうえで、別途◯万円を上限として、特別人材紹介手当を支給することもある。
(1)被紹介者をアルバイトとして採用した場合・・・◯万円
(2)被紹介者を契約社員として採用した場合・・・◯万円
(3)被紹介者を正社員として採用した場合・・・◯万円
なお、リファラル採用を実施する場合、報酬の定めは就業規則の絶対的記載事項となっています。そのため、本記事を参考にするとともに、不備のないように専門家の指示を仰ぎ、必ず規程を定めてください。
リファラル採用の導入を成功させるコツ
最後に、リファラル採用の導入を成功させるためのコツをお伝えします。
リファラル以外の採用手法も継続すること
デメリットの項目でもお伝えしましたが、リファラル採用は万能ではありません。
急ぎの採用には不向きであり、集まる人材の傾向も偏る傾向もあります。
既存の採用手法を打ち切って、一気にリファラル採用に切り替えるのではなく、まずは年間の採用計画の一部分をリファラル採用におきかえるか、+αの要素として余裕を持たせておき、基本的には、他の採用手法と併用することをおすすめします。
求める人物について周知徹底する
自社にあった人材を紹介してもらうため、求める人物について周知徹底することは重要です。求める人材以外の紹介があると企業にとって非効率となり、紹介者とその友人にも不愉快な思いをさせてしまいます。そのため、リファラル採用を実施する際には、必要なスキルや経験年数、入社後に予定しているポジションなどを明確にし、周知徹底しましょう。
募集要項については、社員全員がいつでも参照できる状態にしておくことをおすすめします。
社員に「自分ゴト」として動いてもらう
ありがちな失敗例は、「リファラル採用に取り組みたいのでみなさん協力してください」と、腰を低くしてお願いしてしまうこと。
このようなスタンスだと社員は当事者意識を持てず、リファラル採用の実効性を保つことができません。
そのため、リファラル採用をしていくことの必要性やメリットなどを十分に理解をしてもらい、当事者意識をもってもらうことが重要です。これにより、「自分ゴト」として、主体的に取り組んでもらえることが期待できます。
初回接点のハードルを下げる
いきなり会社説明をするといったアプローチでは、紹介される友人は身構えてしまうでしょう。
そのため、初回接点は、たとえばランチに誘う、あるいは会社見学に招待するなどがおすすめです。
まず、軽い接点を持つところからスタートすることで、リファラル採用の裾野を広げていくことが可能になります。
紹介する際の手順をわかりやすく、紹介者に負担ない形にしておく
「どの部署、どのポジションの募集があるんだっけ?」
「紹介するときは誰に声をかければいいんだっけ?」
「履歴書や職歴書はいつ出してもらえばいいのかな?」
「面談の日程調整はこっちでやるのかな?」
このような疑問が出ると、多くの人は紹介することをためらってしまいます。
その典型がリファラル採用の制度を周知するだけで終わっているケースです。
このような場合、社員はリファラル採用を進めるにも、どのように行動すれば良いか判断がつきません。
リファラル採用の一連の手順や紹介者へのアプローチ方法、自社をアピールするための各種ツールなどをあらかじめ周知しておくことが重要です。また、疑問が出そうな点はあらかじめ明示しておきましょう。日程調整なども、できれば人事側で引き受けることが好ましいです。
従業員満足度を高める
リファラル採用で重要なことは、社員に「自社を友人に紹介したい」と感じてもらうことです。
社員から友人を紹介してもらうためには、社員自身の従業員満足度が高い状態であることが大前提です。この従業員満足度を高めるには、労働環境や待遇、人間関係、福利厚生など、対象は多岐にわたります。自社の従業員満足度を高めるためには、どのような施策が必要かについて、アンケートをとることも有効でしょう。
社員自身の従業員満足度を高めることで、リファラル採用への動機付けを行うことが成功のカギといえるでしょう。
まとめ:リファラル採用を活用して優秀な人材を効率良く獲得しよう
本記事ではリファラル採用の概要やリファラル採用のメリット・デメリット、導入に向けたポイントのほか、支援ツールを紹介しました。
リファラル採用のメリットは、自社にマッチする人材が集まりやすいだけはありません。リファラル採用を導入することで、転職市場には出てこない優秀人材に出会えるほか、従業員エンゲージメントが高まることで自社の採用力が飛躍的に向上することが期待できます。
違法リスクのないよう留意し、リファラル採用を活用して優秀な人材を効率良く獲得しましょう。
クイックでは企業のリファラル採用の成功をサポートするサービスをおこなっています。
自社の魅力を明確にして、リファラル採用を正しく活発化させたいとお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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