バイトのモチベーション対策が重要な理由
アルバイトのモチベーションが低下すると、仕事の質が下がったり、離職につながってしまったりすることがあります。欠員補充や人件費抑制、生産性向上、業務効率化など、アルバイトを雇う目的はさまざまですが、期待する仕事ぶりを発揮してもらえなければ目的を果たすことも難しくなるでしょう。
日本マーケティング学会が発刊する『マーケティングレビュー』に掲載された論文(※)では、「飲食産業の非正規従業員においても働くモチベーションがサービス行動や業績に影響を与える」という検証結果が示されています。これは飲食産業を対象とした研究結果ですが、業種や業態を問わず、アルバイトを抱える多くの職場に同じことがいえるのではないでしょうか。
アルバイトのモチベーションは、仕事の質を左右する重要な要素です。期待するパフォーマンスを発揮してもらうには、モチベーションを下げないような対策を取る必要があります。
※松木知徳、中村潤「サービスチェーンにおける非正規従業員の働くモチベーションが業績に繋がるメカニズム」
バイトに行きたくない!モチベーションが下がる原因
アルバイトはどういった原因でモチベーションを下げてしまうのでしょうか。上述の論文によれば、労働条件よりも人間関係の方が働くモチベーションにより大きな影響を与えるそうです。また、労働条件と人間関係は相互に影響するという検証結果も示されています。時給が高ければ多少の人間関係の不満は軽減されるといった具合です。
それでは、アルバイトのモチベーションを下げる具体的な原因を確認していきましょう。
職場の人間関係が悪い
職場の人間関係はアルバイトのモチベーションに大きな影響を与えます。いつでも仕事の相談ができる頼れる先輩や、気軽にプライベートな雑談ができる同僚は、前向きな気持ちで働き続ける上で重要な存在です。こうした存在がいないコミュニケーションが不十分な職場では、アルバイトのモチベーションを低下させてしまう恐れがあります。
また、正社員にも同じことがいえますが、職場の人間関係が悪いと「出勤」や「労働」そのものが苦痛になる場合もあります。同じような仕事内容を同じような条件で募集している他社があるとすれば、アルバイトはそちらの環境に移ってしまうかもしれません。
ミスをして怒られてしまった
ミスをしたアルバイトを叱ること自体は、ごく自然な行いです。問題はその叱り方にあります。例えばアルバイトを叱るとき、他のアルバイトや正社員が周囲にいる状況といない状況とでは、叱られた側の「感じ方」が大きく変わることを忘れないようにしましょう。
また、感情的に怒ることとアドバイス目的で叱ることは、似て非なるものです。社員が「怒られた」と感じてしまえば、ミスを改善する気も起きず、むしろ反発心が芽生えるだけで終わってしまうかもしれません。それが人前で受けた叱責であればなおさらです。
時給が低い・昇給しない
給与は働くことの対価ですから、モチベーションに影響するのは言わずもがなです。一方、そもそもアルバイトは条件面に了承して雇用されているわけなので、「時給が低いと言われても困る」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、本人が環境に慣れてきたり、身近な人間と自らの状況と比較したりすることで、現在の給与に対する認識が変わることもあります。
例えば学生のアルバイトなら、友人と自分の仕事の時給を比較する機会もあるでしょう。最初は条件面に納得して応募したものの、友人の状況を知って「自分の時給は仕事内容の割に低いのかもしれない」という思考に変わることは当然あります。こうした思考に至った状態で、勤め先に昇給制度がなければ「できるだけ楽に働きたい」と消極的になる恐れがありますし、「もっと時給の高い職場で働きたい」と退職を検討し始めることも可能性として考えられます。
希望通りのシフトで勤務できない
アルバイトとして働く目的は十人十色ですが、中には子育て中の主婦や、学業と仕事を両立させている学生など、仕事以外の部分に重きを置く方も多くいます。そうした方の多くは「働き方の融通が利く環境」を重視しているため、残業や休日の呼び出しなどが頻繁に発生するような、希望するシフトで勤務できない状況が続くとモチベーションが低下します。
もちろん、シフトを調整しづらい状況もあるでしょう。繁忙期や急な欠勤が発生したときは、どうしても本人の希望通りにシフトを作れないこともあります。ただし、そうした状況が常態化したり長く続いたりすれば、アルバイトは職場に対する理不尽さを感じ、不満を募らせてしまいます。
仕事にやりがいを感じられない
仕事にやりがいを感じられないと、アルバイトのモチベーションは下がってしまいます。確かに、「その仕事をしたくてアルバイトをしているわけではない」という方も少なくありません。「時給が高いから」「シフトの融通が利くから」といった理由で仕事を選ぶ方が多いことも事実です。
しかし、そういう方であっても、何のやりがいも感じられない仕事を続けていればモチベーションは下がっていきます。例えば、「どんなに真面目に働いても褒められない」「指示をもらえず何をすべきかわからない」といった、アルバイトのやる気や向上心を削ぐような対応が続けば、仕事をする充実感はどんどん薄れていくでしょう。同時に責任感を低下させる恐れもあるため、不注意ゆえのミスを招いたり、不誠実な対応がクレームにつながったりすることも考えられます。
プライベートがうまくいっていない
「仕事とプライベートを切り分けてほしい」という向きはごもっともですが、実際問題として、アルバイトのモチベーションはプライベートな出来事に左右されることがあります。正社員と比べて職場へのロイヤルティが高くないアルバイトにとっては、「恋人とケンカした」「友人とトラブルになった」といったプライベートな出来事が、働きぶりに悪影響を及ぼすことも考えられるのです。
バイトのモチベーションを上げる4つの対策
ここからは、アルバイトにパフォーマンスを発揮してもらうために重要な、モチベーションを上げる4つの対策をご紹介します。
昇給の基準を明確にする
正社員と同じく、アルバイトに対しても昇進・昇給制度を適用することで、モチベーションを高めることができます。ここで重要なのは、昇進や昇給をするために達成しなければならない明確な基準を設け、それを周知することです。クリアすべき基準をはっきりさせることでアルバイトにも目標ができ、やりがいをもって働いてもらうことができます。また、評価基準を明示することは、アルバイト同士の不公平感の解消にもつながります。
また、「手に職をつけたい」と考えているアルバイトについては、社員登用の可能性を示すこともモチベーションを上げるために効果的な手法です。もちろん可能性を示すだけでなく、実際に制度として運用する必要がありますが、優秀なアルバイトを社員登用できる機会を設けることはアルバイト本人だけでなく、人員を確保したいと考える企業にとってもメリットといえるでしょう。
※アルバイトを採用するときの注意点を知りたい方は、「アルバイト採用途中のドタキャン・辞退の防止方法」もご覧ください。
できる限りシフトの希望に応じる
シフトの融通が利くことは、アルバイトが仕事を続けるかどうかを判断する上での大切なポイントです。モチベーションが下がる原因でもご説明したように、アルバイトの中には「仕事よりも優先度の高い活動がある」という方も多くいます。
家事、育児、学業、遊び……アルバイトが重視する活動の種類は人によってさまざまですが、そうした本人にとっての大切な時間を確保できる働き方を提供することが、モチベーションの低下を防ぎます。もちろん、常に希望通りのシフトを組むことは困難ですが、できる限り希望に応えることで、アルバイトの離職防止や、より高い貢献意欲の醸成につながるのです。
適切なコミュニケーションを取る
定期的に面談をして仕事の悩みをヒアリングしたり、仕事のミスを丁寧にケアしたりすることは、アルバイトのモチベーションを高める大切な取り組みです。「正社員ではないから」とむげにせず、アルバイトが「職場から大事にされている」と感じられるようなコミュニケーションを取りましょう。
また、「褒める」「感謝を伝える」といった何気ない言葉がけも、アルバイトのモチベーションを高めるポイントといえます。「普段より良い働きをしたときは褒める」「他スタッフの欠勤により急きょ出勤してもらったらお礼を言う」、こうしたごく自然とも思えるコミュニケーションがアルバイトの職場に対する信頼感を生むのです。
得意分野が生かせる仕事を与える
アルバイト個人の得意・不得意を把握し、その能力を生かせるような仕事を割り振ることは、本人の仕事に対するやりがいの醸成につながります。反対に、不得意とする仕事を与え続けるとモチベーションが低下するので注意が必要です。
本人が得意とする仕事を割り振ることは、すなわち「仕事ぶりを評価されやすい」ということでもあります。働きに対する評価をきちんと伝えることで、アルバイトは心地よく働くことができ、仕事に対するモチベーションが高まるのです。
まとめ
アルバイトといえど、採用には時間とお金がかかります。「せっかく雇ったのに辞めてしまった」といったことを防ぐためには、モチベーションを低下させる原因を押さえることが肝心です。そして、アルバイトに職場と仕事に満足してもらい、雇用側の期待通りかそれ以上の働きをしてもらえるよう、モチベーションを高める取り組みも実践していきましょう。
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