採用ブランディングとは?
企業が、自社の提供するサービスや仕事に取り組むスタンスなどについて発信することで、求職者からの共感や信頼を獲得するマーケティング戦略のことです。
企業らしさを発揮しながら、求職者と高いマッチングを実現できる点が評価され、導入企業は増加。
採用コミュニケーションとして主流になりつつあります。
採用ブランディングは、企業規模に関係なく実施できる。
ブランディングと聞くと、アップルやナイキのような知名度のある大手企業が取り組む、イメージ戦略だと考える方も多いと思います。
ですが、採用ブランディングは中小企業にとっても有効な取り組みです。
むしろ中小企業の利点を活かしやすい施策でもあります。
たとえば、知名度の高い企業の例として百貨店を例に説明します。
百貨店に対する学生のイメージはどんなものでしょう。
デパ地下やアパレルといった印象を持つ学生は多いのではないでしょうか。
実際には、営業やマーケティングなど、販売以外の仕事もたくさんあるのですが、学生の凝り固まった先入観を打破するのは、そう簡単ではありません。
結果的に、エントリーが女性に偏りがちで、男女のバランスをとるのに毎年苦労するようです。
その点、中小企業には、良くも悪くも特定のイメージがありません。
いちから学生との関係を構築し、自分たちが伝えたい会社のイメージをPRしていくことが可能です。
採用ブランディングなしに、中小企業が優秀な若者を採用するのは困難!?
出典:リクルートホールディングス 第35回ワークス大卒求人倍率調査(2019卒)
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pdf/20180426_01.pdf
図は、従業員規模別にみた新卒の求人倍率のグラフです。
従業員300人未満の企業が突出して、求人倍率が高くなっています。
ここ数年の「売手市場」と言われる、採用難の影響を最も強く受けているのは中小企業です。
求人倍率は9.91。
学生一人を企業10社が取り合いしている状況です。
大手企業に勝つ以前に、同じように新卒採用を行っている中小企業に勝てなければ、スタートラインに立つことすらできない厳しい採用環境なのです。
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採用の通年採用が浸透すると採用マーケットに何が起こるのかを解説しています。
本記事とあわせてご覧いただくと、採用ブランディングの重要性をより感じていただけます。
⇒経団連と大学が「通年採用」に合意。就活はさらに早期化・長期化へ。
採用ブランディング実施のメリット。
ここからは具体的に採用ブランディングのメリットをご紹介していきます。
採用ブランディングを実施すると、具体的に、以下のような変化が起こります。
選考の歩留まりが良くなる。
採用ブランディングによって、学生に対して明確な魅力を発信できるようになり、以前よりも一段深い共感を得られるようになります。
会社に合わない人は自然と離れていき、会社に合う人が残りやすくなります。
同じエントリー数だったとしても、以前より濃い母集団を作れます。
受かったから何となく選考に残っているのではなく、
「この企業の〇〇という点が好きだから選考に参加している」という、
志望度の高い学生が増え、選考辞退・内定辞退が減少します。
結果的に、費用対効果が改善するケースも多いです。
採用担当が自信を持って自社をアピールできる。
採用担当がうまく自社の魅力をアピールできない理由に、大手企業と比較して引け目を感じている、という事実があります。
大手企業も含めて色んな企業を横並びに比較している、目の肥えた学生に対して、自信をもってプレゼンできないのです。
いまどきの新卒採用では、人事担当者にイベントでの客引きなど押しの強い営業力を求められるシーンも増えており、自社に自信がもてないまま採用活動を続けることは精神的な負担にもなっています。
採用ブランディングにより、自社の魅力を自覚し、力強く語れるようになることで、採用の面白さに「目覚める」人事の方もいらっしゃいます。
既存社員のエンゲージメントが高まる。
採用ブランディング実施にあたり、選考に参加する先輩社員の方には、改めて自社の魅力を見つめなおしていただくことになります。
自社の提供する商品やサービス、仕事へのスタンスなどについて、魅力を再発見することで、組織への帰属意識が高まります。
先輩社員の意識は、面談で相対する学生にも伝わり、相乗効果が生まれます。
入社後の社員教育がスムーズになる。
近頃の若者は「ゆとり」と呼ばれる世代です。
社員教育に手を焼く先輩社員の方も多いと思いますが、採用ブランディングは育成の問題も解決してくれます。
会社の目指すべきビジョンが十分に教育された状態で入社した学生は、会社の事業や考え方に賛同して入社してくれています。
そのため先輩からの指導を、比較的素直に受け入れてもらいやすくなります。
実施したその年から効果を実感できる。
ブランディングというのは、時間をかけてユーザーとの関係を構築するもの。
積み重ねが大事だから、一朝一夕にはできないもの。
そんな印象を持つ方も多いと思います。
しかし、採用ブランディングにおいては、実施した初年度から、いきなり効果を得ることも可能です。
そもそも学生が、とある中小企業を認知してから、入社の意思決定をするまでのサイクルは1~2年間。
必ずしも5年10年かけてイメージを積み上げなくても良いんです。
ナビサイトなどの広報により自社を知ってもらい、説明会に来てもらう。
そして面接を経て内定出しへ。
この一連のフローの中で学生を魅了することができれば、確実にこれまでの採用と結果は変わるはずです。
もちろん、継続することで、よりブランディングが浸透する効果も得られます。
弊社クイックの場合は、人材ビジネス行う企業であることもあり、学生に対する面談のフィードバックを、これでもかというくらい丁寧に行っています。
それにより、一部の上位大学の学生の間で「就活に役立つ企業」という認知を獲得し、エントリー増加につながっています。
採用ブランディングの取り組み方法。
ここからは、自社も採用ブランディングに取り組みたい場合どうすれば良いのか。
具体的にその手順をご案内させていただきます。
自社のスタンス、ポリシーを明確にする。
会社によっては「理念」と言った方が、しっくりくるかもしれません。
社会人経験のない学生は、詳細な仕事内容を比較検討することができませんから、新卒採用においては特に、
「うちはこういう会社です」
という自社のスタンスやポリシーを、分かりやすく表現しておくことが大切になります。
自社のスタンスを明確にすると、ふさわしい人が自然と集まる。
上記は、弊社が作成した「採活力」という冊子の一部を抜粋したものです。
左側の人は、「みんな好き」という、当たり障りのないスタンスを表明していますが、結果的に、受け手は誰も「自分のことだ♪」とは思いません。
これを採用に置き換えると、全然エントリーされなかったり、選考辞退されてしまうということです。
一方、「背の高い人が好き」と表明した右側の人は、もしかすると背の高くない3人には嫌われてしまうかもしれませんが、求めていた背の高い人1名に振り向いてもらうことができました。
偏ったメッセージを発信することを恐れる企業は多いですが、実際には、個性をアピールしなければ誰の目にも止まらないのが現実です。
自分たちの特徴をハッキリと宣言することは、学生に好かれる第一歩なのです。
自社の特徴は、簡潔かつ具体的に、そして自社らしく表現すること。
仮に「顧客満足が第一」という理念があったとした場合。
では、顧客満足のために社員は何をしているのか、
何にこだわっているのか、
どんな意識で仕事に取り組んでいるのか…、
ぜひ一度、社内でディスカッションしてみてください。
顧客満足が第一というありきたりな言葉よりも、
さらに具体的で自社らしさのある言葉が見つかると思います。
それが採用ブランディングの核となるメッセージになります。
ビジネス上の強みを整理する。
激しい競争にさらされる中、なぜ自社は顧客から支持されているのでしょう。
たとえば競合とコンペになったとき、現場の営業の方はどうやって契約をとっているのでしょう。
中小企業であっても、むしろ中小企業だからこそ、同業の大手企業もライバルとなる競争環境の中で、生き残っている事実が重要です。
そこに貴社ならではの強みが隠されているのではないでしょうか。
ここで考えたビジネス上の強みは、事項の「採用ターゲットの明確化」にも大きく関わってきます。
採用ターゲットの明確化(ペルソナ設計)
つぎに採用ターゲットとなる人物像を明確にします。
マーケティングの世界ではペルソナ設計などとも呼ばれる作業で、広告戦略を描く上で基礎となる考え方になります。
自社の優秀者に共通する資質とは?
まずは自社の業務を遂行する上で、どんな能力が必要になるのかを言語化するところから考えをスタートします。
現在、高いパフォーマンスを発揮している社員を数名ピックアップして分析すると、考えやすいと思います。
適性検査などを活用して、人材のタイプを可視化することも有効です。
採用のMUST要件を決める。
出てきた優秀者の資質について、できれば先天的な要素と、後から鍛えれば身につくものを分けておいてください。
選考の際には、業務に必要かつ後から身に着けるのが困難な要素にフォーカスすることで、ブレない選考ができます。
採用ターゲットとなる人物像を描く(ペルソナを作成する)
ここまで挙げた、自社で活躍するために必要な資質。
それを備えた人物とはどのような人でしょうか。
どこにいる人でしょうか。
採用ターゲットというと、大学ブランド(MARCHなど)・体育会・理系などをあげることが一般的ですが、
実はその方法だと、本当に自社にとって必要な人材をしぼり込んだことにはならないケースがほとんどです。
図にすると、こんな状況が起こりがちです。
MARCHの中にも採用ターゲット外の学生はいますし、体育会系学生の中にも採用ターゲット外の学生はいるはずです。
ペルソナ設計では、貴社にとって本当の採用ターゲットとなる人物について、性格や行動習慣、生い立ちなど細部まで想定していきます。
- 休みの日の過ごし方
- 最近買ったもの
- 家族について(弟が1人など)
- 普段、出かけるところ
- 恋愛経験
- 好きな洋服や飲み物、作家や映画など嗜好について
たとえば上記のような項目について、考えます。
既に、自社にターゲットに近い人物がいる場合は、その人をモデルにしてしまうのも有効です。
設定したペルソナの人物に、自社のスタンスや強みを投げかけてみる。
ペルソナを丁寧に設計しておくことで、どんなメッセージを発信すれば学生が振り向いてくれるか、チェックがしやすくなります。
試しに、ここまで予め考えていた自社のスタンスや強みについて、ペルソナの人物はどんな反応を示すでしょうか。想像してみてください。
ここでポジティブな感触を得られれば順調です。
もしも良い反応が得られそうにない場合は、打ち出す強みを再考します。
結果的に、採用のために自社の制度を変えるにしても、
「いまどきの学生は〇〇だから~」
と経営陣を説得するのと、
「自社には〇〇な人物(ペルソナ)が必要で、その人物には〇〇が重要です」
と説得するのでは、反応が変わってくるのではないでしょうか。
採用方針を、社内に浸透させる(インナーブランディング)
これまでに抽出した自社のスタンスや強み、求める人材像などを、選考に参加する社員さん達を中心に、全社に共有しましょう。
選考のフェーズで会う人が次々変わる中、どの社員と話しても軸がブレない一貫した考え方があると感じられると、学生はその企業に好印象を持ちます。
印象にも残りやすくなります。
たとえばスターバックスに行ったとして、接客の素晴らしさ、コーヒーの美味しさ、店内の快適さ、どれか一つが欠けているだけでもガッカリしますよね。
すべて揃っていることが、スターバックスの価値だと感じるはずです。
ブランドには一貫性が必要です。
採用においては、既存社員の立ち居振る舞いや面談での一言一句も、ブランドの一部(企業の価値)と認識されてしまうので注意してください。
インナーブランディングと採用は相性が良い。
弊社クイックの例を挙げますと、弊社には「関わった人全てをハッピーに」という経営理念があります。
クイックの社員は、仕事上で課題にぶつかったとき、必ずこの理念に立ち返って物事を判断します。
日頃の打ち合わせや会議の中でも「そもそも、この解決策は、お客様にとってどうなんだろう?ハッピーな解決方法なのかな?」と、自然に会話の中に出てくるくらい、社員一人ひとりに浸透している価値観になっています。
学生との面談のなかでも、この価値判断にそって、一貫した受け答えを続けることで、クイックが非常にCSRへの意識が高い組織であることが、学生に印象づけられます。
近年は、社会貢献を志向する高い学生が増えていることもあり、クイックが表明するこの考え方は、多くの学生に賛同してもらうことができています。
実際、弊社の内定者に、選考で印象に残っていることや入社の後押しになったことについて聞くと、経営理念を挙げる学生は、毎年必ず一定数います。
ナビサイトや採用ツールなどでの、一貫したメッセージ展開が重要。
ここが意外と重要で、実践の難しいところです。
せっかく採用ブランディングに取り組んでも、広報に失敗すると貴社の魅力は学生に届きません。
採用広報には、様々なツールやサービスが使用されています。
ナビサイト、パンフレット、採用サイト、映像、合説などのリアルイベント…etc。
これらの広報ツールやサービスが、どんな順番で学生に見られるのかも考えながら、統一感のあるメッセージを発信することが重要です。
失敗する企業にありがちなのは、制作物ごとにコンペを実施してバラバラの会社に発注した結果、メッセージに不整合が生じているパターン。
採用担当の方は、メッセージがブレないように、各パートナーに対して適切なオリエンテーションと進行管理を行う必要があります。
コストの制約をどう乗り越えるか?
手間を省きたい場合は、すべてを総合的にコーディネーションしてくれる会社に一任する方法もありますが、個別に発注するよりもコストは高くなる傾向にあります。
一度に予算を確保するのが厳しい場合は、初年度はパンフレット、次年度はWEBサイト…、と制作物を何年も流用することを前提に、毎年少しずつ採用ツールを刷新することを検討ください。
採用ブランディングを通じて、企業が発信するメッセージを定めることができれば、学生の動向に合わせて、毎年コロコロとメッセージを変える必要がなくなります。
計画的に採用ツールのリニューアルが行えるのも、採用ブランディングに取り組む利点ですね。
まとめ:採用ブランディングに取り組むにあたって。
今回は、採用ブランディングについて解説させていただきました。
採用ブランディングに関する情報は、世にあふれています。
しかし、いざ取り組もうとすると教科書通りに進まないのが、採用ブランディングの難しさでもあります。
- 経営者の理解が進まない
- 自社の強みを発見できない
- 求める人物像の明確化が難しい
- 社内の協力が得られない
- 広報ツールの発注が難しい
…等々。
株式会社クイックでは、企業の採用ブランディングを、積極的に支援させていただいています。
お取り組みに際して、疑問や不安などございましたら、お気軽にご相談いただけましたら幸いです。
専任のコンサルタントより、貴社の状況に適したアドバイスをさせていただきます。
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