内定辞退理由ランキングを紹介 企業がすべき対策や事例を解説 COLUMN

公開日:2022.03.16

更新日:2022.03.16

内定辞退理由ランキングを紹介 企業がすべき対策や事例を解説

選考を重ねて内定を出した求職者から辞退の連絡が来ると、採用コストが無駄になり企業にとっては大きなダメージを受けます。内定辞退の理由は内定者によってさまざまですが、理由の傾向が分かると企業側で辞退を防ぐ対策を行えます。

この記事では、近年の求職者の内定辞退の理由ランキングとともに、辞退率を下げるための具体的な対策と企業が行っている事例を解説します。

目次

求職者の内定辞退の実態

求職者が内定を辞退する背景には、選考の途中で企業や就労条件に不安を感じたり、考え方に変化があったりといった原因があります。内定辞退を減らして人材を確保するためには、求職者の心理を理解し寄り添って対応することが重要です。

内定辞退の理由ランキング

エン・ジャパンが求職者2,200人を対象に行った2020年の調査によると、内定後に辞退する理由は下記となりました。(複数回答)

1 勤務地・給与など条件の折り合いがつかなかった 44%
2 社風が自分に合わないと判断した 34%
3 求人情報や面接時の条件と齟齬があった 33%
4 他社での選考が通過した・内定が決まった 17%
5 企業の担当者の対応が悪かった 16%
6 最終選考の面接官の行動や態度が悪かった 12%
7 転職に関して家族の反対があった 9%
8 入社日の調整がつかなかった 7%
9 在職中の会社から引き止めにあった 3%
10 オンラインではなく対面の面接だったため(コロナ対策されていないため) 2%
10 オンライン面接だったため 2%
その他 13%

※参考:エン・ジャパン「辞退の心理 [2020年版]」を基に作成

内定辞退の理由ランキングトップは、「勤務地・給与など条件の折り合いがつかなかった」というものです。例えば、志望した当初に予想していた条件が、面接で詳しく話を聞いていくうちに合わないと判明したケースが挙げられます。3番目に多かった理由の「求人情報や面接時の条件と齟齬があった」と似ていますが、こちらは企業側が提示していた条件と認識が異なっていたことが原因です。

2位の「社風が自分に合わないと判断した」は実際に面接を受ける中で求職者が思い描くイメージと異なっていたことが理由で、説明会などで丁寧にすり合わせる必要があります。また5位の「企業の担当者の対応が悪かった」、6位の「最終選考の面接官の行動や態度が悪かった」は企業側が即時改善できる点です。

新卒の内定状況と内定辞退率

リクルートキャリア就職みらい研究所が大学生・大学院生を対象に行った「就職プロセス調査 (2021年卒)2021年3月度(卒業時点) 内定状況」によると、就活生の就職内定率は96.1%でした。49.2%だった5月時点から大きく数値を上げ、12月の93.4%からは2.7ポイント増となりました。

一方で、就職内定辞退率(※)は57.5%となっており、ピークだった12月の60.9%と比べると3.4ポイント減でした。半数以上の就活生は内定を辞退しており、企業は就活生から選ばれるための対応が必要と言えます。
※就職内定辞退率=就職内定辞退人数÷就職内定取得人数

内定辞退率を下げるために取り組むべき対策9選

内定辞退率を下げるためには、内定者へのさまざまなフォローが重要です。ここでは、内定辞退の防止に役立つ9つの取り組みとポイントを解説します。

【1】職場見学の実施
【2】社内報の送付
【3】内定者研修の実施
【4】内定者アルバイト・体験入社の受け入れ
【5】内定式の開催
【6】社員との座談会の開催
【7】経営陣との交流会・セミナーの実施
【8】e-ラーニングの導入
【9】面接官トレーニングの実施

【1】職場見学の実施

入社後に実際に働く職場を見学してもらうツアーを実施し「イメージしていた職場環境と違う」というギャップを小さくします。特に近年ではオンライン面接の実施により、職場を見ずに内定が決まるケースもあります。入社前の職場見学は、働く環境への不安を払拭し、内定辞退防止に有効です。

また内定者の近い将来の姿である先輩社員を見せると、働くビジョンを明確に持てます。担当者の対応や社内の雰囲気の悪さを内定辞退の理由として挙げる声もあるため、活気のある職場か、挨拶は行われているかなども重要なポイントとなります。

【2】社内報の送付

社内報は、企業が力を入れている取り組みや、働いている社員の考え方、ちょっとした社内ニュースなど、内定者が企業を身近に感じながら社風に触れられるツールです。内定者はまだ企業の「外側」の人間ですが、社内報を通じて企業の「内側」を見てもらえます。企業の一員としての自覚を持ってもらいながら、入社へのモチベーションを高めます。

【3】内定者研修の実施

内定者向けの研修は、社会人として知っておくべきマナーや仕事における基本のスキルを身に付ける場です。入社に向けた準備段階のイベントであるため、企業に所属する意識を改めて持ってもらえます。また内定者同士でコミュニケーションをとりながら研修に取り組むことで、同期との仲間意識を高める効果も期待できます。

【4】内定者アルバイト・体験入社の受け入れ

内定者アルバイトや体験入社は、先輩社員と一緒に働きながら実際の仕事やチームの役割を理解し、入社意欲を高められます。短時間の体験であっても、説明や見学よりも業務への理解を深める効果が期待できます。また「この会社に決めていいのか」「自分に仕事が務まるのか」という漠然とした不安を持っている内定者が、実際の業務に関わることで入社後の具体的なイメージを持てるようになり、内定承諾につながります。

【5】内定式の開催

内定式は、内定者にとって他支社や違う部署の同期と顔を合わせる重要な機会です。一緒に働く同僚とコミュニケーションをとる機会を作ることで安心感を持ってもらえます。さらに、良きライバルとなりそうな相手との出会いによって、より入社への熱意を高める効果も期待できます。

また、内定式は企業の理念や社風を経営陣から語る場でもあります。いくつもの企業で選考を受けてきた内定者に対して自社のビジョンを改めて認識してもらうためのコンテンツの用意が重要です。

【6】社員との座談会の開催

座談会は、先輩社員とのカジュアルな交流を通して、不安に思っていることを相談してもらう場です。業務内容や職場環境のほか、新人だったころの話や仕事の楽しい面などを語ってもらうと、内定者が自身の働く姿をイメージできます。先輩社員をアサインする際は、内定者と出身大学が同じ、目指すポジションが同じなど、共通点を持った人材を選ぶよう工夫が必要です。

【7】経営陣との交流会・セミナーの実施

企業トップとの交流会やセミナーを通して、企業理解を深めて入社後の期待値を高めます。説明会や面接でも選考担当者から企業理念や事業の展望、新入社員への期待を説明しますが、改めて経営陣から直接説明することで、内定者の企業に対する安心感を持ってもらえます。トップが一方的に話すだけでなく、内定者からの質問や相談にも応じると、お互いの認識のすり合わせや不安の払拭に効果的です。

【8】e-ラーニングの導入

自宅でも実施できるe-ラーニングは、社会人としてのマナーや業務上の基本知識を入社前に学べる便利なツールです。e-ラーニングでの学習によって入社前から業務理解を深めてもらうと、入社後の教育にかかる時間の短縮が期待できます。

【9】面接官トレーニングの実施

面接官トレーニングでは、面接における適切な言葉遣いや態度を担当者に教えます。例えば、パワハラ・セクハラ・オワハラに当てはまる言動はないか、NG質問をしていないかなどの内容です。

内定辞退の理由の中には、社員の対応や面接官の態度なども挙げられています。職場の活気も内定者によっては重視するポイントのため、気持ちのいい挨拶や対応を心掛けるよう、社内全体の姿勢を見直す必要もあります。

内定辞退を防ぐ企業の事例

内定辞退を防ぐため、多くの企業でさまざまな取り組みが実施されています。ここでは、企業での取り組み事例を4つ紹介します。

クックパッド株式会社

クックパッドでは、内定者同士のコミュニケーションを目的として、内定者研修でトランプカードを使ったワークを導入しています。内定者に加えて、内定者と年の近い先輩社員も参加しており、既存社員とのコミュニケーションにも効果的な取り組みです。

トランプカードにはそれぞれ「クリエイティブに働く」「同僚同士で評価し合う」などのキーワードが書かれており、参加者は働く際に重要だと思うキーワード10枚を選択します。どのようなカードを選んだかで自分や他の人の価値観が可視化され、初対面同士でも会話の糸口になります。手軽なビジネスゲームを利用することで、チームワークの醸成を図っています。

SanSan株式会社

SanSanは、候補者一人ひとりの志向性に合わせた選考体験を設計することで、採用難易度が高いとされる新卒エンジニア採用を成功へと導きました。同社では以前、メガベンチャー企業や外資系IT企業などの競合他社への内定を理由に、内定辞退が相次いでいました。そこで就活生が重視しているポイント、自社に期待している点と今足りていないことを設計した上で、個々へのアクションを行い、人材確保へとつなげました。

企業と求職者が気軽にコミュニケーションをとれるビジネスSNSを活用して、新卒スカウトにも積極的に取り組んだ結果、内定辞退の防止に役立っています。

MHソリューションズ株式会社

内定辞退者の多さから内定者フォローに課題を感じていたMHソリューションズは、SNS機能がついた教育アプリを導入しています。内定者が同期とコミュニケーションをとりながら、入社前に身に付けておきたい「身だしなみ術」「電話対応」「論理的思考力」など、あらゆる研修をモバイルで受けられます。

内定者それぞれの学習状況を共有することで、ライバル意識・仲間意識を持たせる狙いもあります。導入後には内定辞退の大幅な減少を実現しました。

マルホ株式会社

マルホでは、内定者に対する情報発信ツールを導入し、入社前の不安の払拭に役立てています。仕事に関わる免許取得の支援や社宅制度などのあらゆる情報を開示し、気軽に相談できる環境を整備しています。また以前の内定者へのアンケートの結果を取り入れながら情報発信の形式を変えるなど常にアップデートを図っています。

内定者向けに行っている他の取り組みとして、「選考結果の個別フィードバック」があります。個別フィードバックを通じて、面接の中で感じた印象や強み、また今後クリアしてほしい課題などを一人ひとりに伝えることで、入社を迷っていた内定者の入社意識を高める効果がありました。

まとめ

内定を辞退する背景には、さまざまな理由があります。企業が提示する条件と求職者の希望が合わない場合、選考を重ねていく中で丁寧にすり合わせれば齟齬を防げます。また内定後のきめ細かいフォローの実施も、内定辞退防止に効果的です。企業の事例を参考にしながら、自社に合った対策を行うことが重要です。

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監修/中森規仁(中小企業診断士)

コピーライター、人事(採用担当)を経て、大手人材会社でディレクターとして、クリエイティブ企画や経営戦略にひもづいた人材採用・活用のコンサルティング業務などに従事。現在はIT企業勤務の傍ら、マーケティング・人材採用の領域を専門に中小企業支援を行っている。

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