トライアル雇用とは?
トライアル雇用とは、どういった雇用の仕方・働き方を指すのでしょうか?まずは、トライアル雇用の概要やメリット・デメリットについて解説します。
就職に不安のある人材を試行的に雇用する手法
トライアル雇用とは、経験や知識が少ない人や障がい者、育児で離職した女性など、常用雇用するには不安がある人を一定期間試行的に雇用し、求職者と企業が相互に安心して働く・雇うための手法です。トライアル雇用実施後には、約8割の人が常用雇用に移行しています。トライアル雇用を実施するためには、ハローワークや特別に認められた職業紹介事業者から対象者を紹介してもらう必要があります。
また、こういった安定的な就職が困難な人材の雇用機会を創出するために、国はトライアル雇用を実施する企業に助成金を支給しており、この助成金制度を「トライアル雇用」「トライアル雇用制度」と呼称するケースもあります。
トライアル雇用期間と試用期間との違い
トライアル雇用期間と試用期間の違いは、本採用を前提とした雇用契約であるかどうかです。トライアル雇用期間は原則3カ月の有期雇用です。トライアル雇用期間中に適性や能力が足りないと判断すれば、期間満了後に解雇できます。一方で試用期間は、長期雇用を前提として無期雇用契約を締結しているため、経歴詐称や勤務態度不良などの正当な理由がない限り、簡単に解雇できません。
トライアル雇用のメリット・デメリット
企業がトライアル雇用を実施する場合、メリットだけでなく、デメリットも存在します。企業側から見たトライアル雇用のメリット・デメリットを見ていきます。
メリット1|ミスマッチのリスクを軽減できる
トライアル雇用のメリットは、企業と求職者が実務を通して互いを見極める時間ができるため、ミスマッチのリスクを軽減できることです。通常の採用のように履歴書や面接のみの選考では、お互いを知る上で不十分であるケースもあります。トライアル雇用の場合は、期間終了後に企業と応募者が話し合った上で採用・不採用、または入社・辞退を決められるので、企業・応募者双方の想像と現実とのギャップが少ない状態で雇い入れられます。
メリット2|採用コストを抑えられる
トライアル雇用には、採用コストを抑えられるというメリットもあります。そもそもトライアル雇用は、主にハローワーク経由で応募者と接点を持つことから募集自体のコストがかかりません。加えて受給要件を満たしていれば助成金を受け取れるので、採用にかかる負担を軽減できます。
デメリット1|人材育成に時間・コストがかかる
トライアル雇用のデメリットは、採用後に人材育成の時間・コストがかかりやすいことです。トライアル雇用は就業経験が少ない人やブランクのある人が対象となっており、場合によっては社会人としてのマナーや業界の基礎知識などの教育が必要になります。そのため即戦力の人材を獲得したい場合には向いていない手法と言えます。
デメリット2|助成金の受給申請に手間がかかる
トライアル雇用には、助成金を受け取れるメリットがある一方で、受給するための申請が必要で、ある程度の手間がかかるというデメリットもあります。助成金を受け取る前提であれば、各種手続きや申請書類の種類・書き方などを事前に把握しておきたいところです。助成金受給の流れや申請方法については、「3.トライアル雇用助成金受給までの流れ」で詳しく説明します。
トライアル雇用助成金の4つのコースとは?
トライアル雇用制度には、以下の4つのコースが設けられています。ここでは、4つのコースについて、対象者や受給要件、受給額を紹介します。
【1】一般トライアルコース
【2】障害者トライアルコース
【3】障害者短時間トライアルコース
【4】若年・女性建設労働者トライアルコース
上記のほかに、特例として新型コロナウイルスの影響によって離職を余儀なくされた人をトライアル雇用する「新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース」「新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース」もあります。
※2021年8月時点の情報であり、次年度以降は条件や受給額が異なっている可能性があります。利用を検討している方は厚生労働省のサイトやハローワークでもご確認ください。
【1】一般トライアルコース
一般トライアルコースは、経験やスキル、知識などを理由に就職に不安のある求職者全般の雇用を促進するためのコースです。
対象者
一般トライアルコースの対象者は、以下のいずれかの要件を満たした上で、ハローワークや職業紹介事業者から職業紹介された日に、トライアル雇用を希望した人です。
(1)紹介日の前日から過去2年以内に2回以上離職や転職をしている。
(2)紹介日の前日時点でパートやアルバイトを含め就労していない期間が1年を超えている。
(3)妊娠、出産、育児を理由に離職し、紹介日の前日時点で安定した職業に就いていない期間が1年を超えている。
(4)55歳未満でハローワークや職業紹介事業者などで担当者による個別支援を受けている。
(5)就職の援助を行うにあたり、特別な配慮が必要となる。生活保護受給者や日雇労働者などが該当する。
紹介日時点で、自営業や役員、ほかの企業でトライアル雇用を実施している最中の人などは対象者にはなりません。
主な受給要件
対象者に該当し、以下の要件をすべて満たさなければ助成金を受給できません。
(1)ハローワーク、職業紹介事業者などに提出した求人内容で、ハローワーク、職業紹介事業者などの紹介により雇い入れる。
(2)原則3カ月のトライアル雇用を実施する。
(3)1週間の所定労働時間が30時間を下回らないようにする。対象者が日雇労働者、ホームレス、定住する住居を持たずに不安定就労する人である場合は20時間を下回らないようにする。
このほかにも、雇用関係助成金共通の要件があります。共通要件について知りたい方は「【採用助成金】の種類一覧 障害者・高齢者の場合も」をご覧ください。
受給額
一般トライアルコースを適用した企業には、対象者一人あたり月額4万円が支給されます。対象者が母子家庭の母、父子家庭の父である場合は一人あたり月額5万円を最大で3カ月分受給できます。
【2】障害者トライアルコース
障害者トライアルコースは、障がい者の雇用を促進するためのコースです。障がい者雇用の義務化などに対応すべく、トライアル雇用を活用して採用活動を展開する企業もあります。トライアル雇用期間は原則3カ月ですが、障がい者のテレワーク勤務のニーズの高まりを受けて、テレワークを適用する場合に限り最長で6カ月まで延長できます。
ただし、延長期間分は助成金が支給されません。
対象者
障害者トライアルコースの対象者は、障害者雇用促進法に規定する障がい者のうち以下のいずれかに当てはまる人で、障害者トライアル雇用について理解した上で、障害者トライアル雇用による雇い入れを希望する人です。
(1)紹介日において就労経験のない職業に就くことを希望している。
(2)紹介日の前日から過去2年以内に2回以上離職や転職をしている。
(3)紹介日の前日時点で離職している期間が6カ月を超えている。
(4)重度身体障がい者、重度知的障がい者、精神障がい者のいずれかに該当する。
主な受給要件
障害者トライアルコースにおける助成金の受給要件は、対象者をハローワークや職業紹介事業者などの紹介によって雇い入れ、トライアル雇用期間について雇用保険被保険者資格取得届を届け出ることです。
受給額
障害者トライアルコースの受給額は、一般トライアルコース同様、対象者一人あたり月額4万円です。最大3カ月分を受給できます。
精神障がい者を雇用する場合、原則6~12カ月間をトライアル雇用期間に設定でき、6カ月分が受給可能です。最初の3カ月分は一人あたり月額8万円、その後の3カ月分は月額4万円が受給できます。
【3】障害者短時間トライアルコース
障害者短時間トライアルコースは、精神障害や発達障害で週20時間以上の就業が難しい方の雇用を促進するためのコースです。週10時間以上20時間未満の範囲での施行雇用を開始し、期間中に20時間以上勤務してもらうことを目指します。
対象者
障害者短時間トライアルコースの対象者は、継続雇用する労働者としての雇入れを希望しており、障害者短時間トライアルコースについて理解した上で障害者短時間トライアル雇用を希望する精神障害または発達障害の方です。
主な受給要件
障害者短時間トライアルコースの主な受給要件は、対象者をハローワークや職業紹介事業者などからの紹介で雇い入れ、3カ月から12カ月間の短時間トライアル雇用を実施することです。
受給額
障害者短時間トライアルコースの受給額は、対象者一人につき月額4万円です。最大12カ月分が受給できます。
【4】若年・女性建設労働者トライアルコース
若年・女性建設労働者トライアルコースは、建設業における労働力の確保や従事する若者・女性労働者の雇用安定をサポートするために設けられているコースです。受給できる企業は、基本的に中小建設事業主に限られます。ただし、一人親方や同居の親族のみで建設事業を行っている業者は対象外です。
対象者
若年・女性建設労働者トライアルコースの対象者は、35歳未満の若年者もしくは女性で、かつトライアル雇用期間中に建設工事現場での現場作業に従事する者です。
主な受給要件
若年・女性建設労働者トライアルコースの主な受給要件は、トライアル雇用の一般トライアルコース、障害者トライアルコース、新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース・短時間トライアルコースのうち、いずれかの支給決定を受けることです。ほかにも、中小建設事業主である、雇用管理責任者の選任をしている、などが挙げられます。
受給額
障害者短時間トライアルコースの受給額は、対象者一人につき月額4万円です。最大3カ月分を受給できます。
トライアル雇用助成金受給までの流れ
トライアル雇用助成金を受給するためには、以下の流れに沿って手続きが必要です。ここでは、【1】~【4】のステップ別に手続きの対応方法を紹介します。
【1】ハローワークに求人を出す
【2】対象者を雇用する
【3】書類を作成しハローワークに提出する
【4】実施後に支給申請書を提出する
【1】ハローワークに求人を出す
トライアル雇用で求職者を雇い入れるために、ハローワークや職業紹介事業者などに求人を出します。このとき、トライアル雇用を希望する旨を伝える必要があります。また、同じ求人で一般募集をしたい場合は、トライアル雇用併用求人を希望する旨を伝えてください。
【2】対象者を雇用する
ハローワークや職業紹介事業者などからの紹介を受け、面接を実施した上で対象者を雇用します。トライアル雇用で雇い入れるときは、書類選考は実施せずに必ず面接によって選考するよう規定されています。
【3】トライアル雇用実施計画書を作成し提出する
雇い入れが決定したらトライアル雇用実施計画書の提出準備を始めます。トライアル雇用実施計画書とは、雇い入れる事業所の名称や対象者の氏名などを記載する書類です。書類では、トライアル雇用期間後に常用雇用に移行する場合の要件の記載も求められます。トライアル雇用実施計画書の提出期限は、雇い入れを開始した日から2週間以内です。対象者を紹介された相手によって以下のように提出先が異なります。
紹介された相手 | 書類提出先 |
---|---|
ハローワーク | 紹介されたハローワーク |
地方運輸局 | 紹介された地方運輸局 |
職業紹介事業者 | 対象者を受け入れる事業所の地域を管轄する都道府県労働局またはハローワーク |
また、トライアル雇用実施計画書を提出するときは以下に挙げる書類を添付してください。
提出先 | 添付書類 |
---|---|
ハローワーク 地方運輸局 |
・雇用契約書などの労働条件を確認できる書類 または ・トライアル雇用期間に係る雇入れ通知書 |
職業紹介事業者 | 上記に加え ・トライアル雇用職業紹介証明書 ・トライアル雇用に関わる求人票 ・対象者労働者確認票 |
【4】実施後に支給申請書を提出する
トライアル雇用期間が終了したら、終了日の翌日から2カ月以内に支給申請書を作成し、事業所の地域を管轄する都道府県労働局に提出します。ハローワークを経由して提出できる場合もあります。提出時には以下の書類を添付してください。なお、双方の事情により常用雇用に移行できなかった場合でも、規定の手続きを適切に行えば助成金を受給できます。
(1)トライアル雇用実施計画書の写し
(2)出勤簿など対象者の出勤状況が確認できる書類
(3)トライアル雇用期間中の賃金を支払ったことが確認できる賃金台帳
(4)雇用契約書などトライアル雇用期間中の労働契約が確認できる書類
(5)雇用契約書など常用雇用への移行後の労働契約について確認できる書類(対象者が常用雇用に移行した場合のみ)
(6)その他、支給要件確認のために管轄労働局長が必要と認める書類
まとめ
トライアル雇用とは、経験や知識が少ない人や障がい者、育児で離職した女性など常用雇用への不安を抱える人を一定期間試行的に雇用できる手法です。さらに要件を満たしていれば、実施した企業は助成金を受給できます。採用難における人材不足対策の一つとして検討してみてください。
無料ダウンロード
採用課題を解決に導く採用戦略構築のポイント
採用活動においても、パフォーマンスの要となるのは「戦略」の設計です。 コンサルティングサービス「採活力」は、貴社に最適な採用コミュニケーションを設計し、採用活動を成功へと導きます。
セミナー情報
あわせて読みたい