採用に強い会社は何をしているか
募集から選考、内定、入社までの各フェーズについて、丁寧に解説されています。
媒体の選び方、求人メッセージの考え方、ミスマッチをなくす方法、内定辞退について…等々。
全体としては、100%採用担当の方向けの本ではなく、我々のようなHR業者こそ知っておくべきことの方が、たくさん書かれていたようにも感じました。
ただ、1章の最後で解説されている人材エージェントの仕組みと活用についての項目などは、採用担当の方にもおすすめできます。自社をエージェントに売り込むための社内資料の例示もあるので、紹介会社の活用にお悩みの方は、参考にしていただけるはずです。
また、面接方法について解説している項目も参考になりそうです。採用担当を兼務されている方など、面談の経験があまりない方には特に理解しやすく有用です。面接で使える評定表のサンプルも掲載されています。
採用担当の方がインプットするには、やや守備範囲が広すぎるかもしれませんが、HR業者の握っているノウハウを(裏側を)知っておくことは、損にはならないと思います。
「最高の人材」が入社する採用の絶対ルール
採用活動の教科書的な一冊です。
事前の心構えから、集客方法、選考方法、内定者フォローに至るまで、採用のPDCAを回していくためのノウハウが易しく説明されています。
2018年度の記事でご紹介した、曽和利光氏の「人事と採用のセオリー」を読んで、やや難易度高めに感じた方には、ぜひ本書をおすすめしたいです。
本書は、人事ではなく、あくまでも「採用担当者」の目線にたって書かれているので、こちらの方がしっくり来ると感じる方もいらっしゃると思います。新しく採用チームに配属された人向けに、教育用として一冊お手元に置いておかれても役立ちそうです。
一方、生々しい実例には乏しい面もあり、ベテラン採用担当の方だと物足りないとお感じになるかもしれません。その辺りは、他の書籍で補っていただくとバランスが取れるのではないかと思います。
小さな総菜チェーンの社長さんが「募集費1/2採用数2倍」でやったこと
サービスや販売など、接客に関わる業種の方には、特におすすめしたい一冊です。
中小のお惣菜チェーンが採用で試行錯誤した内容が包み隠さず公開されています。
実際の店舗出店などの時系列に合わせて、そのとき実際に起こった問題と対処方法といった形式でノウハウが示されています。
本書では、サービス業における採用ブランディングについても触れています。
採用ブランディング、なんて言うと、壮大なものをイメージしてしまいがちですが、素敵な笑顔の社員さんの写真を採用ホームページに掲載することも立派なブランディングであり、効果を発揮する施策であることが、実績とともに力強く語られています。
採用と経営が一体に考えられている点が時流に合致しており、HR業者の語る一方通行の採用ブランディングとは、また一味違った気づきが得られます。
採用に関する内容は本書の半分ほどで、残り半分では、社長が独立してお惣菜チェーンを作り上げるまでの体験談が語られています。採用とは直接関係ない内容も多いですが、良い組織をいかにして作っていくかということが語られていますので、人事の方であれば、興味を持つ方は多いと思います。
小さな会社★採用のルール
広くビジネスで取り入れられているランチェスターの法則を採用に活用することで、中小企業の採用を成功させる。そんな趣旨の本です。
求人部分にフォーカスしてお伝えすると、「ターゲットの細分化」「募集エリアの絞り込み」「ターゲットに合わせたピンポイントのメリット」の3点がポイントとしてあげられています。
具体的に言えば、「〇〇駅から徒歩〇分圏内で、子育て中のママさんにとって、一番働きやすい会社にする」といったことです。小売業界で言われる「地域ナンバーワン店を目指す」に感覚としては近いと思います。
書籍全体としては、採用テクニックよりも組織運営や人材の扱い方に紙幅がさかれています。小手先の施策ではなく、組織のあり方から変えていくのはまさに王道です。一方、制約の多い環境で活動している採用担当の方にとっては、厳しい内容だと受け止められるかもしれません。
経営に近いお立場の方や現場と兼務している採用担当の方であれば、本書の戦略を取り入れやすいのではないでしょうか。
中小企業の新しい人材採用戦略「売り手市場」時代の人材獲得競争を生き残る!
いますぐに実行できる打ち手をお探しであれば、こちらの本がおすすめです。
考え方や理念などではなく、The手法が書かれた本です。初期投資は覚悟する必要がありますが、一発逆転の可能性を秘めた解決策が提示されています。
本書ではWeb採用サイトを出口(応募させる場所)と定義し、そのWebサイトに集客する入口として、チラシのような古典的な集客法から、Indeed、インスタグラム等のSNSまで幅広い集客手段が紹介されています。
メインで参考例にあげている企業が美容室のため、若干、偏りはあるものの、一般的なBtoBの中小企業にも転用できる部分は多々あります。
自社サイトを活用した求人を検討中の方であれば、どこかの業者に発注する前に勉強として読んでおくと、良い業者選定の助けになるのではないでしょうか。Web系の企業が出している本だけあって、Web施策がやや万能に描かれすぎている気もしますが、その点はご愛敬ということで。
人材業界の未来シナリオ
どちらかと言えば、人材業界で働く方向けの本です。
ただ、人事・採用担当として業界の変遷を知っておくことはプラスになりますので、お時間ある方にはおすすめします。
求人広告、人材紹介、オウンドメディアリクルーティングなど、多様な採用手法があるなかで、今後、自社がどこに注力していくべきか、トレンドはどちらに流れているのかを肌で感じることができる一冊になっています。
人材業界を俯瞰して捉えた内容のため、今後この手法に注力すべき、注力すべきではない、いまは注力しているが徐々に比率を落としていく、といった投資判断をする際の指針としてご活用いただけると思います。目先の課題を解決するための本ではありませんので、その点だけご注意ください。
いい人財が集まる会社の採用の思考法
採用に向き合うためのマインドセットに役立つ本です。
・なぜ、良い人を採用できないのか?
・人が採れないからと言って、採用基準を下げてはいけない理由はなぜか?
・採用で重視すべき能力とは何か?
等々、コンサルタントの立ち位置から、経営と採用を関連づけながら論理的に解説されています。説明のあとに、必ず「なぜなら~」と解説が入る文章展開になっているので、採用初心者の方でも読みやすく理解しやすいです。
採用は手法の選定から入ると高確率で失敗してしまいますので、本書のような理論本は、一冊くらいは読んでおいて損はないと思います。
特に採用基準について書かれた項目は、採用目標に追われていると見失いがちな内容です。耳が痛い思いをされる方も多いのではないでしょうか。
できる社長は人が採れない
ツールや手法を変えるのではなく、まず自分たち自身が変わろう、という趣旨の採用ブランディング本です。本書内では採用ブランディングという言葉が使われていますが、感覚としては「セルフブランディング」に近い印象を持たれるかもしれません。
まず、ブランディングの第一歩として社長の服装・髪型の改造が挙げられています。
その他にも、作業着をオシャレにする、オフィスやトイレをキレイにする、総務服を廃止する…等々、見映えに関する項目が重点的に語られます。
本書の内容は、ビジュアルコミュニケーションを得意とする若者を採用するには、必須の考え方です。第一印象の大切さは、社長のみならず、学生と接するリクルーターや採用担当者にも当てはまりますので、ブランディングの第一歩としては非常に有効な手段です。
実際に、社長さんのBefore・Afterの写真が掲載されていましたが、まったく別人のように印象が良くなっていました。
着こなし方法やおすすめブランド・美容室の紹介など、序盤はファッション誌のような内容でしたが、中盤以降は、プレゼンのやり方や待遇についてなど、採用実務に関するノウハウもしっかり解説されています。
全編に共通するのは、すべてが学生目線で(受け手の立場に立って)語られていることでした。
実例も豊富に掲載されていますので、一読いただければ何かしら真似のできる部分が見つかるのではないでしょうか。採用本のなかでは、珍しい切り口の本だと思います。
0円リクルーティング
静岡にある不動産会社の経営者の方が出されている本です。
自ら新卒採用に試行錯誤した内容がせきららに語られています。
・企業理念を語っても子守唄になる
・中小企業はどこもブラック企業だと思われている
・優秀な人は、結局大手に行ってしまうのだから狙わなくて良い
など、社長だからこそ言える本音が次々と飛び出します。
私たちの立場で同じことを言うと、職務放棄とみなされてしまいそうですが、ある意味で「真理」を突いた鋭い分析(身もふたもない話とも言います)が遠慮なく書かれているので、新卒採用について「ぶっちゃけた話」を聞いてみたい方にはぜひお勧めしたい一冊です。
ここ最近、流行っている「中小企業=採用ブランディング」の傾向に懐疑的な方にも、本書は共感いただけると思います。社長の考え方がとことんリアリストなのです。後半、SNS活用についても触れられていますが、SNS活用と聞いて想像するよりも、その内容はずっと手堅いものでした。
紹介されている個別の施策内容よりも、社長の思考のプロセスに着目して読んでいただくと良い本だと思います。採用マーケットと自社のポジショニングを冷静に見つめて、現実路線の採用戦略を策定していく、社長の思考の流れを追体験できる点が何よりの魅力です。
採用本が映す、2019年の課題感
採用関連の書籍は市況を反映するものです。
売手市場により中小企業の新卒求人倍率が8.62倍※と高止まりするなかで、今年は経営リソースの少ない中小企業にフォーカスした採用本が増えた印象を受けました。
※リクルート調べ(https://www.works-i.com/surveys/adoption/graduate.html)
そして、これら書籍で語られる「求人ノウハウ」「採用テクニック」のほとんどが、単なる採用手法の提示のみならず、経営や組織運営、社長の人材観に言及するものでした。むしろそちらに紙幅をさいた書籍が多かったと感じます。
昨今、HRテックを含め様々な採用手法が乱立するなかで、魔法の杖的なものとして「採用ブランディング」が語られるケースが急増しています。
しかし、採用ブランディングとは、小手先の広告表現でもなければ、ツールの刷新でもなく、オフィスをファッショナブルにすることでもありません。なぜなら、お金で即座に買えるものは他社にも簡単に真似ができるものであり、ブランド価値が低いためです。
中小企業は、大手企業に比べると経済力や技術の希少性で勝負することが困難です。
ですが、会社を運営していくなかで時間をかけて育まれてきた風土や価値観、取引先との独自の関係性など、独自の魅力を発見して言語化できれば、大手企業にも真似のできない特別な価値を発揮することができるようになります。
僭越ながら、書籍のなかで紹介されていた企業様の多くは、試行錯誤の末、自社の採用ブランドを確立されていたように感じました。
もはや採用担当の方だけで完結できるスケールの話ではなくなりつつありますが、視点を変えれば、それだけ人事の仕事が経営に近づいてきており、重要度を増していると考えることもできるのではないでしょうか。
HR事業に関わる私たちも、ますます身が引き締まる思いです。
今回、ご紹介した書籍が、採用に関わるみなさまの助けとなりましたら幸いです。
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