少子高齢化による労働人口の減少により、企業を取り巻く採用環境は年々厳しさを増しています。行き当たりばったりの採用では、想定以上のコスト増やミスマッチを招き、結果として経営リスクにつながる可能性もあります。
こうした状況だからこそ、採用を「人事施策」ではなく「経営戦略の一部」として捉え、計画的に進める視点が欠かせません。本記事では、採用計画の基本的な考え方から、実務に落とし込むための具体的な7つのステップ、成功させるためのポイントまでを整理して解説します。採用計画の立案にお困りの方は、ぜひ参考になさってください。
【この記事で分かること】
- 採用計画が必要とされる背景と重要性
- 採用計画の立案7ステップ
- 採用計画の立案を成功させるためのポイント
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採用計画とは?
採用計画とは、事業計画や経営方針を実現するために「いつ」「どの部署に」「どのような人材を」「何人」採用するのかを整理した行動指針です。単なる採用スケジュールや人数調整ではなく、企業の成長戦略と連動して設計される点が特徴です。
具体的には、求める人物像や選考基準、採用手法、予算、スケジュールなどを体系的にまとめることを指します。これにより、採用活動の判断軸が明確になり、社内での認識ズレを防ぐことが可能となります。
なお、採用計画は一度立てたら終わりではありません。市場や事業状況の変化に応じて見直し、柔軟に更新していく前提で運用することが重要です。
採用計画を立てる重要性
現在の採用市場は売り手市場が続いており、企業は「選ぶ側」ではなく「選ばれる側」に立たされています。採用計画がないまま活動を進めると、理想の人材を逃す機会損失や、ミスマッチによる早期離職を招きかねません。
また、採用計画の欠如は効果の見えにくい媒体出稿や場当たり的なエージェント活用につながり、採用コストが膨らむケースも少なくありません。さらに、現場と人事の認識がそろわないことで選考が長期化し、業務効率が低下する恐れもあります。
採用計画は、こうした無駄を抑えるためだけのものではなく、組織づくりの成果を高めるための土台となります。計画的に進めることで、採用活動を企業成長につなげることができます。
採用計画を立てる際に準備したいこと
精度の高い採用計画を立案するには、事前の情報整理が欠かせません。準備不足のまま進めてしまうと、計画が形骸化する恐れがあります。ここから、具体的に整理しておくべき準備項目を解説します。
経営戦略と事業計画の把握
採用活動は、企業の将来の成長に向けた投資です。そのため、採用計画を立てる際は、まず経営戦略や事業計画を正しく理解する必要があります。人事部門だけで完結せず、経営戦略や事業計画との整合性を図ることが大前提となります。
経営層と対話し、中長期的な事業展開や売上目標、それを実現するために必要な人員体制を共有することが重要です。
この工程を経ずに進めると、入社後に役割が不明確になったり、事業の方向性と採用方針にズレが生じるリスクが高まります。最初に全体像を正しく把握することが、計画の精度を左右します。
採用市場と競合の動向リサーチ
自社の都合だけで採用条件を決めてしまうと、市場とのギャップが生じ、応募者が集まらなかったり、優秀な人材が他社に流れてしまったりする恐れがあります。求人倍率の動向や売り手市場の状況を把握し、競合他社がどのような条件や訴求で人材を集めているのかを確認することが大切です。
併せて、ターゲットとなる人材の価値観や働き方への意識の変化にも目を向ける必要があります。自社では当たり前と考えている条件が、市場では魅力として受け取られないケースもあります。
データや情報を基に客観的に見直すことで、実態に即した条件設定が可能になり、採用成功の確率を高めることにつながります。
過去の採用活動の分析(振り返り)
採用計画の精度を高めるには、過去の採用活動をデータに基づいて振り返る視点が欠かせません。応募数や選考通過率、定着率、採用コストなどを数値化することで、感覚や経験則に頼らない判断が可能になります。
例えば、応募は多いものの通過率が低い場合は、ペルソナ設定にズレがある可能性があります。内定辞退が多い場合は、フォロー体制に課題があるかもしれません。
得られた気付きを次回の採用計画に反映させることで、より実効性の高い採用活動につなげることができます。
採用計画の立て方7つのステップ
採用計画は、正しい手順に沿って整理することで精度を高めることができます。ここからは、属人的・場当たり的な採用から脱却し、再現性のある採用を実現するための7つのステップを解説します。
1. 採用の目的とゴールを明確にする
採用計画の出発点は「なぜ採用するのか」を言語化することです。欠員補充なのか、事業拡大や新規事業に向けた増員なのかで、求める人材像も採用手法も変わります。
目的が曖昧なまま「とにかく人が欲しい」で進めると、入社後のミスマッチにつながりやすくなります。
採用目的を事業戦略と結びつけた上で、採用する人材に期待する役割や成果を明確にしましょう。目的とゴールが定まると、その後の要件定義や手法選定が進めやすくなります。
2. 採用人数を算出する
採用人数は感覚的に決めるのではなく、明確な根拠を持って算出することが重要です。人数設定がずれると、採用コストや現場負荷にも影響します。
算出方法は1つに頼らず、複数の視点で検討すると精度が上がります。代表的な考え方は次の通りです。
- 財務アプローチ:生産性や売上目標から必要人数を逆算する
- 業務量アプローチ:業務量や労働時間を基に不足分を見積もる
- 要員計画:現状の人員と将来の必要人員のギャップを把握する
数字を基に整理しておくと、経営層とも合意形成しやすくなります。
3. 雇用形態を決定する
採用計画では、業務内容や期間に応じて雇用形態を選ぶ視点が欠かせません。正社員だけに限定すると、採用難易度が上がったり、コストが膨らんだりする場合があります。
選択肢には、正社員・契約社員・アルバイト・派遣・業務委託などがあります。長期的に自社の中核を担ってもらう人材を必要とするケースでは正社員が適しやすい一方、短期の人手不足対応や専門スキルの補完であれば、別の選択肢のほうが合理的であることも少なくありません。
重要なのは、「何を任せたいか」「どれくらいの期間か」「どの程度の柔軟性が必要か」を整理し、自社の状況に適した雇用形態を選ぶことです。
4. 求める人材像(採用要件)を定義する
ミスマッチを防ぐには、採用要件を具体化する必要があります。採用ペルソナを設計し、必要なスキルや経験だけでなく、価値観や行動特性、社風との相性や仕事の進め方といった適合性まで含めて整理すると判断軸が明確になります。
要件定義では、MUST(必須)とWANT(歓迎)を分けて考えるのが基本です。
ただし、要件を追及しすぎると応募が集まりにくくなるリスクもあるため、現実的な難易度とのバランスを取りながら定義することが大切です。
5. ターゲットに即した採用手法とチャネルを選定する
採用手法は、ターゲット人材に合わせて選ぶ必要があります。手法ごとに特徴があり、向き・不向きが異なるためです。代表的な手法には、求人広告や自社サイト、人材紹介、ダイレクト・ソーシング、リファラル採用などがあります。
例えば、短期間で一定数を集めたい場合と、希少人材をピンポイントで狙う場合では、適した手法が変わります。
また、1つに絞るのではなく、複数手法を組み合わせる考え方も有効です。重要なのは、ターゲット層がどこで情報収集し、どう応募するかを起点に検討することです。
6. スケジュールを策定する
採用ではスケジュール設計が競争力に直結します。採用したい人材ほど複数社から内定を得る可能性が高いため、選考スピードが遅いと機会損失になりやすくなります。
入社希望日から逆算し、募集開始から各選考工程までを整理するのが基本です。面接回数や適性検査の有無、意思決定のタイミングまで具体化しておくと、運用のブレが減ります。
ただし、スピードだけを優先すると見極めが不十分になる恐れもあります。現場担当や面接官の工数も考慮しながら、質とスピードのバランスを取った設計が重要です。
7. 選考フローと評価基準を決定する
公正で納得感のある採用を実現するには、選考フローと評価基準を事前に整えることが欠かせません。担当者の役割や選考段階が曖昧だと、判断が属人化し、評価のブレが生じやすくなります。
面接回数や担当者の役割を整理し、選考の各ステップで何を見て合否を判断するのかを明確にしましょう。評価シートを用意し、基準を統一することで、判断の透明性が高まります。
面接官ごとに評価が分かれる状態が続く場合、面接官研修を取り入れるのも有効です。個人の経験や直感だけに頼らず、仕組みで評価の再現性を高めることが、安定した採用成果につながります。
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採用計画書に盛り込むべき構成要素
採用計画を機能させるためには、採用計画書として文書化し、社内で共有することが重要です。
採用計画書があれば、人事・現場・経営層の認識をそろえやすくなり、属人化も防げます。採用途中の軌道修正や振り返りにも活用できる点というメリットもあります。
一般的に、採用計画書には次のような要素を盛り込みます。
- 募集概要(職種、採用人数、雇用形態、勤務地)
- 採用背景・目標(なぜ採用するのか、いつまでに何人必要か)
- 人材要件(採用ペルソナ、必須・歓迎条件)
- 採用チャネル・予算(利用手法、概算コスト)
- 選考プロセス(面接回数、担当者)
- 評価基準(判断ポイント)
- スケジュール(募集開始から入社まで)
テンプレートをそのまま使うのではなく、自社の状況に合わせて調整することが、実務で生きる計画書につながります。
新卒採用と中途採用における計画の差異
採用計画は一律ではなく、新卒採用と中途採用では前提条件が大きく異なります。そのため、同じ考え方で計画を立ててしまうと成果に繋がらない原因となるため、それぞれの違いをしっかり理解して計画を立てることが大切です。
主な違いは、対象人材や採用基準、計画期間などです。
新卒採用は学生を対象とし、ポテンシャルや将来性、社風との適合性を重視します。採用時期は定期的で、インターンから内定、入社まで長期的な計画が必要です。内定後フォローも重要な要素になります。
一方、中途採用は社会人経験者が対象です。即戦力となるスキルや経験が重視され、欠員補充や事業状況に応じた通年・短期の計画が求められます。現場責任者との連携や、迅速な意思決定も欠かせません。
どちらが優れているという話ではなく、目的や組織フェーズに応じて計画の立て方を使い分けることが重要です。それぞれの特性を理解した上で、適切な採用計画を設計しましょう。
採用計画を成功させるためのポイント
採用計画は、作成した時点で完了するものではありません。実際の採用活動に落とし込み、運用を通じて改善していくことで、初めて成果につながります。計画倒れを防ぐためには、実効性を意識した取り組みが欠かせません。
ここでは、採用活動が長期戦になりやすい現状を踏まえ、計画を成功に導くための運用ポイントを解説します。
全社的な協力体制を構築する
採用は人事部門だけで完結する業務ではありません。現場による面接対応や求める人物像の共有、リファラルへの協力など、各部署の関与があってこそ採用の質とスピードは高まります。そのためには、経営層や人事部門が採用の重要性を全社に発信し、共通認識をつくることが重要です。
また、日頃から人事と現場がコミュニケーションを重ねておくことで、採用時の連携も円滑になります。特定の部門に負担を偏らせず、全社で取り組む姿勢が採用成功につながります。
PDCAサイクルを継続させる
採用計画は一度立てたら固定するものではなく、状況に応じて見直すことが必要です。募集ページのPV数や応募数、各選考フェーズの通過率などを定期的に確認し、計画と実態に乖離がないかをチェックします。
もし応募が集まらない場合は、採用基準や訴求内容、利用媒体を見直すといった対応が考えられます。採用市場は変化が激しいため、柔軟に計画を更新し続ける姿勢が重要です。
入社前後のフォローアップを徹底する
採用活動は内定を出して終わりではありません。内定後も、面談や交流の機会を設けて不安を解消することで、内定辞退の防止につながります。
さらに、入社後の定着や活躍状況を把握し、そのデータを次回の採用計画に生かす視点も欠かせません。フォローアップは単なる作業ではなく、相互理解を深める関係構築のプロセスとして捉えることが重要です。
外部リソースを活用する
採用業務を全て社内で担おうとすると、人的リソースやノウハウの不足に直面することがあります。そのような場合、採用代行(RPO)や採用コンサルティングといった外部リソースの活用も有効です。
ただし、外部活用は丸投げではなく、自社の課題に応じて役割を切り分けることがポイントです。煩雑な業務を外注することで、人事や経営層は戦略設計や面接といった本来注力すべき業務に集中できます。
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まとめ
採用計画は、設計から実行、改善までを一貫して考えることで初めて成果につながります。全社的な協力体制の構築やPDCAサイクルの継続、入社前後のフォローアップなどを意識することで、計画倒れを防ぎやすくなります。
一方で、採用市場の変化が激しい中では、自社だけで最適解を見つけ続けることが難しい場面も少なくありません。採用計画の立案から運用、改善までを一貫して支援できる外部パートナーを活用することも、有効な選択肢の一つです。
株式会社クイックでは、企業様ごとの課題に寄り添いながら、実行力のある採用を支援しています。採用計画に関する疑問点・ご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
