採用のAI活用とは?プロセス・目的別活用法や導入フローを徹底解説! COLUMN

採用のAI活用とは?プロセス・目的別活用法や導入フローを徹底解説!

AIのビジネス活用が著しく進展するなか、採用プロセスにおいてもスクリーニングや面接など、AIを活用した採用手法が急速に普及しています。本記事では、AI採用の概要やメリット・デメリットのほか、プロセス・目的別の活用法、検討すべきポイント、導入ステップを解説します。

目次

採用におけるAI活用とは?

はじめに、AI採用の概要を説明します。

そもそもAIとは

AI(Artificial Intelligence:人工知能)とは、人間の知能を人工的に再現するための概念であり、機械であるコンピュータがデータから学ぶ「機械学習」の技術を指します。この機械学習により、自動運転やチャットボット、医療分野の診断など、人間の知的活動にAI技術が大きな役割を果たしています。

採用におけるAI活用領域

AIは、採用プロセスのさまざまな段階で活用されています。応募者のスクリーニングや履歴書の分析をはじめ、面接の自動化、候補者のマッチングなど、採用活動の効率化や評価の公平性向上などを実現。書類選考段階では、AIによって合否判定を自動化させるほか、選考段階では、録画された面接の記録に対し、候補者の反応や回答、顔の表情を解析するAI面接など、さまざまな採用プロセスでAIが急速に浸透しています。

AI採用3つのメリット

ここでは、AI採用のメリットを見ていきます。

【1】採用活動の効率化

AI採用の最大のメリットは、採用活動の効率化です。

AI採用は、求人情報のライティングや書類選考のみならず、チャットボットによる問い合わせ対応や面接まで、あらゆる採用プロセスの効率化が可能です。膨大な数の応募を高速かつ効率的に処理できるため、効率的な採用活動を実現できます。

【2】マッチング精度の向上

マッチング精度の向上も大きなメリットのひとつです。

大量の候補者情報から、採用ポジションに適した候補者を効率的にマッチングできます。機械学習アルゴリズムによって、採用ポジションと候補者の適合度を評価するほか、人間が普段使う自然な言語をコンピュータが理解できる「自然言語処理(NLP)」によって、履歴書や求人情報からより適切な情報を抽出するなど、マッチング精度の向上が可能になります。

【3】人的バイアスの軽減

人的バイアスの軽減も大きなメリットです。

採用活動は、評価基準が明確でないと、経験や勘による無意識のバイアスが生じやすい分野です。AIは、人間のように評価基準がばらつくことなく、常に一貫した基準で候補者を評価するため、人的バイアスを排除できます。AIの判断基準が自社の評価基準にマッチしているかを留意する必要はあるものの、公平かつ効率的な採用プロセスの確保が可能です。

評価基準について詳しく知りたい方は、「【設定例付】採用基準とは?決め方やポイント、人材の見極め方を徹底解説」、採用プロセスについては「【新卒・中途別】採用プロセスとは?流れや改善に効果的なフレームワークを解説」の記事をそれぞれ参考にしてください。

AI採用3つのデメリット

次に、AI採用のデメリットを解説します。

【1】評価結果が正しかったのかを検証しにくい

AIの評価結果が正しかったのかを検証しにくいデメリットがあります。

AIの判定によって、能力ある候補者が不合格となるリスクは少なからずあります。しかし、アルゴリズムがブラックボックスになっていることが多く、AIの評価結果が正しかったのかを検証しにくいケースが大半でしょう。

【2】意図しない差別が生じる可能性

意図しない差別が生じる可能性も留意すべきデメリットです。

性別や年齢、人種など、差別的なスクリーニングの設定がされていなくても、過去の通過率に基づく機械学習から、女性や高齢者、外国人を低く評価するようなアルゴリズムになる可能性があります。こうした意図しない差別を防ぐためには、アルゴリズムの透明性が重要な要素です。

【3】求職者における公平性の不安

求職者における公平性の不安もデメリットのひとつです。

機械学習に基づいた判断は、差別が生じる可能性があります。そのため、AI採用による公平性について、候補者が不安を抱くことがあります。人の目を通すべきところとAIに任せることを明確にし、候補者に自社のポリシーを理解してもらうことが重要です。

【プロセス・目的別】AI採用の活用手法・ツール11選

ここでは、プロセス別・目的別に、AI採用の活用手法・ツールを紹介します。

母集団形成段階

【1】ChatGPTなどの生成AI(求人情報の作成)

ChatGPTなどの生成AIは、プロンプト(命令文)を入力することで、自然な文章の生成が可能なAIツールです。

生成AIは、膨大な学習データをもとにクオリティの高い文書を生成できるため、高品質の求人情報を効率的に作成できます。自社の魅力や社員インタビューの記事の作成も可能です。ただし、生成された文書は、正確性や適切性が保証されているものではありません。また生成された文書の著作権が利用者に譲渡される場合であっても、機械学習の元となるWebコンテンツに対して著作権侵害が生じる可能性があります。そのため、内容の正確性や著作権の侵害について、必ず確認をしてください。また、生成した文書に引用が発生していないかなども注意しましょう。

生成AIは、与えられた情報やコンテキストから、高品質で自然な文書を生成できる便利なツールではあるものの、正確性や権利性を確保するためには適切な検証や編集が必要です。

採用活動におけるChatGPTの活用法を知りたい方は、「採用活動におけるChatGPTの効果的な活用方法」の記事を参考にしてください。

【2】AIソーシング(候補者の探索)

AIソーシングは、AIを活用して求人情報を分析し、自社にマッチした候補者を自動的に探索する方法です。

採用媒体が持つデータベースやLinkedIn、FacebookなどのSNSから自動的に分析し、適切な候補者の抽出が可能です。AIソーシングの活用により、人為的な検索作業の工数を削減し、効率的に候補者を見つけ出すことができます。

【3】AIマッチング(候補者とのマッチング)

AIマッチングは、候補者のスキルや経験、志向などのデータを分析し、求人要件とマッチする候補者を見つけ出す方法です。

事前に登録した要件や機械学習による予測により、活躍が期待できる人材や定着率の高い人材とのマッチングが可能になります。ただし、企業文化との適合性や価値観など、内面に関わる評価を適切に評価できない可能性もあるため、人間の判断を入れるなど、AIに全てを委ねない姿勢も重要です。

【4】AI人材データベース管理(タレントプール管理)

AI人材データベース管理は、人材情報を収集、整理、分析し、最適な人材選定やタレントプールの構築にAIを活用する手法です。

いままで選考してきた候補者や退職者を対象に、履歴書や応募書類、入社後の活動記録などのデータを収集し、自動的にタレントプールを構築。このタレントプールから、適切な候補者を特定するためのマッチングが可能なほか、自動更新された登録情報から、候補者の転職意欲を察知することもできます。こうしたデータベースの機能は、ATS(採用管理システム)に搭載されていることもあります。

ATS(採用管理システム)について詳しく知りたい方は、「採用管理システム比較の決定版!料金、メリット、効果は?」の記事を参考にしてください。

【5】AIチャットボット(FAQ対応)

AIチャットボットは、チャット上で候補者の質問や相談にAIが自動で回答する対話プログラムです。

自社に興味を持った候補者からの質問や相談に24時間体制で応えることができるため、迅速なフォロー体制を実現できます。ただし、一貫した情報に基づく回答が可能な一方で、複雑な相談や感情面の考慮が困難なケースもあります。そのため、AIチャットボットで解決できない場合には人間が介入する仕組みを講じることが重要です。

【6】AIによるソーシャルメディア分析

AIによるソーシャルメディア分析は、ソーシャルメディア上の投稿などをAIが分析する手法です。

大量の情報をAIで処理することで、タレントプールの拡大や企業文化への適合性、市場動向の把握が可能です。また、問題行動などで候補者が企業にリスクをもたらす可能性がある場合、その候補者をスクリーニングすることもできます。

選考段階

【1】AIスクリーニング(書類選考)

AIスクリーニングは、書類選考段階でAIを活用し、候補者を自動的にスクリーニングする手法です。

AIが履歴書や応募書類を分析し、候補者のスキルや経験、適合度を評価し、大量の応募者から最適な候補者を迅速かつ効率的に選別することが可能です。フォーマットが統一されていない応募書類であっても、自然言語処理(NLP)によってコンピュータが文脈を理解します。しかし、全ての文脈を完全に理解することは難しく、また、言語パターンから捉えられない内容もあるため、人間の判断が必要な場合もあります。

【2】AI性格診断(適性検査)

採用におけるAI性格診断は、AIを活用して候補者の性格や行動特性を評価する仕組みです。

通常、候補者が回答した結果から、性格特性を分析・評価します。AI性格診断は、心理学の理論やデータ分析技術を活用しておこなわれ、候補者のコミュニケーションスタイルやリーダーシップ能力、チームワークの適性などを評価します。これにより、客観的な評価が可能になるほか、候補者の適合度やポテンシャルをより正確に評価することが可能となります。近年、ソーシャルメディアの投稿から行動特性を推定する技術も発達していますが、意図せずプライバシー侵害とならないように留意が必要です。

【3】AIスケジューリング(選考管理)

AIスケジューリングは、AIを用いて面接の日程調整プロセスを自動化する仕組みです。

候補者や面接官の予定や会議室の予約状況を考慮し、自動的に最適な面接スケジュールを作成します。これにより、候補者や採用チームのスケジュール調整の手間を減らし、面接の日程を迅速に決定できます。

【4】AIドリブン面接(面接)

AIドリブン面接は、人間が介入することなく、AIが候補者の回答を分析する面接の形式です。

通常の面接では、面接官が候補者に質問するのに対し、AIドリブン面接では、候補者が事前に用意された質問に対して録音や動画で回答します。AIはその回答を分析し、言語パターンや発声、表情などを評価し、自動的に面接をおこないます。これにより、面接工数の削減や客観的な評価が可能となります。

【5】感情認識AI面接(面接)

感情認識AI面接は、AIが候補者の感情や表情を分析する面接の形式です。

通常の面接では、候補者の感情は面接官の判断に依存しますが、感情認識AI面接では、AIが候補者の表情や声のトーン、ボディーランゲージなどから感情を読み取り、非言語情報を判断材料にすることが可能です。

AI採用の活用で検討すべき4つのポイント

AI採用では、採用プロセスの大幅な効率化や高度化が期待できるものの、アルゴリズムの公平性や透明性を考慮しなければ、採用プロセスに悪影響を及ぼす可能性があります。

ここでは、これらを踏まえたAI採用の活用で検討すべきポイントを解説します。

【1】アルゴリズムの公平性・透明性の考慮

AI採用では、コンピューターが候補者を評価します。しかし、統計的に学習する「機械学習」の特性上、過去の統計データから意図しない不公平なアルゴリズムが形成される場合があります。そのため、自社や候補者が安心して活用できるよう、不公平な判断を抑止するアルゴリズムの仕組みや、システムデザインや運用面、アルゴリズムの透明性が重要です。

(※参考)株式会社日本総合研究所先端技術ラボ:「AI公平性・説明可能AI(XAI)の 概説と動向

【2】AIに頼りすぎない

AI採用は、あらゆる採用プロセスを効率的かつ効果的に自動化することが可能である一方、完全に信頼しすぎると問題が生じる可能性があります。AIは機械学習という特性上、データの偏りや誤った判断をおこなうこともあり、意図しない差別や採用したい候補者の見落としを引き起こす危険性をはらんでいます。人間の判断や経験も重要であり、AIに頼りすぎず、人間がおこなうべき領域とAIに任せるべき領域を区別することが成功のポイントです。

【3】AIに任せるプロセスの明確化

AI採用を活用するうえで、AIに任せるプロセスの明確化は重要です。適切なタイミングでAIを活用し、履歴書のスクリーニングや面接のスケジュール調整など、効率的なタスクを任せることで、人事担当者は候補者との接触や重要なプロセスにリソースを集中できます。AIの高速処理能力を活かし、AIソーシングやAIマッチングなどの母集団形成段階や、書類選考などの選考段階での活用が特に効果的です。

【4】個人情報保護法における第三者提供の留意など

AI採用をおこなううえで、個人情報保護法における第三者提供(第27条 第三者提供の制限)の留意は欠かせません。

個人情報保護法では、個人情報の第三者提供をおこなう場合、あらかじめ個人から同意を得るなど、所定のルールを経ることが必要です。AIサービス事業者からAIを介した個人情報を受ける場合や、自社の情報をAIに提供する場合は、第三者提供にあたる可能性が高いと考えられます。あらかじめ定めた利用目的の範囲となっているかなど、弁護士等の専門家と相談し、個人情報の管理を徹底してください。また、生成AIで社内情報を入力する場合は、「入力したテキストを機械学習に利用しない」といった設定をするなど、危機管理を徹底しましょう。

AI採用の導入ステップ

最後に、AI採用の導入ステップを解説します。

【1】AI活用方針の策定

はじめに、AI活用方針を策定します。

アルゴリズムの公平性・透明性を考慮し、どのような特性をもったAIを用いるかなどの方針を決定します。自社方針の下、AIに任せるべき領域と人間がおこなうべき領域の明確化が重要です。AIに任せる領域は、AIが得意なタスクに特化し、人間が担う領域は、判断力や倫理的な側面を必要とするタスクに重点を置くよう配慮します。これにより、採用プロセス全体が効率化されつつ、候補者の公平な評価を確保できます。

【2】対象プロセスの選定

つぎに、AIを活用するプロセスを選定します。

大量の処理を効率的にこなしたいのであれば、ソーシングやスクリーニング、マッチングなどの母集団形成段階から選考段階が最適です。クオリティの高い求人情報を作成する場合は、たたき台として生成AIの活用も有効です。人的バイアスを軽減したいケースでは、AI面接などの選考段階が効果的でしょう。自社の環境や方針に合わせて、対象プロセスを選定してください。

【3】ツール・手法の選定

対象プロセス選定のあとは、ツール・手法の選定です。

自社の方針に沿ったツール・手法を選定します。特に、アルゴリズムがブラックボックスであると意図しない差別が生じる可能性があるため、アルゴリズムの公平性や透明性を考慮し、選定することが重要です。また、複数のツールや手法を比較するほか、カスタマーサポート体制や他システムとの連動性なども確認すべきポイントです。

【4】プロジェクトの推進

ツール・手法選定のあとは、プロジェクトの推進です。

導入前のベンダーとのすり合わせや導入計画の策定、環境の準備など、プロジェクトを推進します。AI導入によって、自社の採用プロセスがどう変わるかを把握し、AI採用にマッチした運用体制を整えることも重要です。導入後は、候補者に自社の方針を理解してもらうため、AI活用の指針を公表することも必要でしょう。

株式会社リクルートでは、AIを活用するにあたって、実現したいことや取り組みの指針を公表していますので、参考にしてください。

(※参考)株式会社リクルート:「リクルートAI活用指針

【5】データの準備やAIのトレーニング

最後に、AI採用に必要なデータの準備やAIのトレーニングをおこないます。

AI採用では、データ準備とトレーニングが重要です。データ準備では、AI採用をおこなううえで適切なデータの収集・整理が必要であり、AIのトレーニングでは、機械学習モデルの構築や最適化がおこなわれます。これにより、AIが候補者の評価をおこなうためのアルゴリズムが適切に構築され、自社にマッチした効果的な採用判断が可能となります。

まとめ

本記事では、AI採用の概要やメリット・デメリットのほか、プロセス・目的別の活用法、検討すべきポイント、導入ステップを解説しました。

AI採用を成功させるには、倫理面や価値観など、人が担うべき領域は人間が担い、AIが得意な領域はAIに任せることが重要です。また、候補者に不信感が生じないよう、AI採用の活用指針を開示することも効果的です。

本記事を参考に、AI採用を成功に導いてください。

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