成果主義とは?
成果主義とは、アメリカで発達した企業における人事評価の考え方の一種です。代表的な特徴としては、以下の3点が挙げられます。
・社員一人ひとりの仕事の成果が報酬や待遇に直結する
・勤続年数や年齢、学歴、経験は評価の対象とならない
・成果に加えて成果に至るプロセスも評価対象の一部となる
まずは、成果主義が日本企業にも取り入れられるようになったタイミングや背景、年功序列・能力主義といった別の評価体系との違いについて解説します。
成果主義が日本に導入されたのはいつから?
成果主義が日本に導入されたのは、バブルが崩壊した1990年代以降です。それまでは、高度経済成長期から日本企業に取り入れられていた年功序列による評価が主流でした。年功序列とは、勤続年数に応じて役職と賃金が上昇する評価制度で、終身雇用と並ぶ日本の代表的雇用慣行です。しかし1990年代以降、年功序列の体制を取る企業は、業績が低くなるにつれて人件費の負担が大きくなりました。そこで、社員一人ひとりの成果に応じて給与を決定できる成果主義の合理的な側面が注目され、導入する企業が増え始めました。
成果主義と年功序列・能力主義の違いとは?
成果主義と年功序列では、給料を決める評価基準が異なります。成果主義の評価基準は仕事の成果やそのプロセス、年功序列の評価基準は勤続年数や年齢です。年功序列は、社歴を重ねるごとにスキルアップし、業績にも貢献できるという前提で画一的に評価できるため、成果主義よりも人事考課の負担が軽いとされています。一方で、勤続年数を積み上げなければ評価が上がらず、努力して成果をあげようとする意識が醸成されづらくなります。
成果主義と混同されやすい能力主義とは?
能力主義の評価基準は社員の能力です。年功序列の画一的な評価によるデメリットの部分を解消するために一部の企業で取り入れられた考え方です。年功序列の代替手法という観点で成果主義と混同されることがありますが、成果が評価の対象外である点が成果主義との大きな違いです。
能力主義のメリットは、業務に対する知識やスキル、取り組む姿勢などが評価されるため、社員の積極性を引き出しやすい点です。デメリットは社員の能力を定量的な指標に置き換え、さらに評価者が誰であろうと適切に評価される基準を設定するのが難しい点です。成果や勤続年数に比べると定量化しづらいため、評価者によってばらつきが出て不公平感が生まれるリスクがあります。
成果主義のメリット・デメリット
成果主義には生産性の向上といったメリットがある一方、成果による評価が難しい部門や人がいるなどのデメリットもあります。成果主義の導入検討の前に把握しておきたい、メリット・デメリットを解説します。
成果主義のメリット
成果主義には、大きく以下の2つのメリットが挙げられます。
(1)生産性・モチベーションの向上
(2)年功序列による不満の解消
(1)生産性・モチベーションの向上
成果主義を導入するメリットは、社員の生産性・モチベーションの向上につなげられる点です。成果主義では成果と評価が連動しているため、より大きな成果をあげるために生産性を高めようとする動きが期待できます。また、頑張って成果をあげた分が評価に還元されることから、個人やチームにおける日々の業務へのモチベーションアップも狙えます。
ただし、このメリットを享受するためには社員の成果を適正に評価できる体制の構築が不可欠です。得られる評価と達成すべき成果の関係性を社員が理解・納得できていなければ、生産性やモチベーション向上の根源となるやる気が引き出しづらくなるためです。
(2)年功序列による不満の解消
成果主義は、それまでの年功序列制度における不満の解消にも役立ちます。特に優秀な若手社員の中には、成果をあげたとしてもそれに見合った給料や待遇が得られない仕組みに不満を持つ人もます。こういった優秀な社員の成果をきちんと評価し、給料や待遇に還元すれば人事評価や働きがいに対する不満が解消され、離職の抑制にもつなげられます。
事業の発展においては成果を生み出すことに意欲的で優秀な社員が不可欠です。そうした人材を逃さないための方策としても成果主義の導入は有効と言えます。
成果主義のデメリット
成果主義を導入するときには、以下の3つのデメリットも把握しておく必要があります。
(1)安心して働ける環境の消失
(2)結果ばかりでプロセスが評価されない
(3)成果の評価は難しい
(1)安心して働ける環境の消失
成果主義を導入するデメリットは、社員の性格によっては不安要素を強く感じてしまい、安心して働けなくなる可能性がある点です。成果主義では主に成果が評価基準となるため、思うように成果があがらなかった場合、その結果は給料や待遇など何かしらに反映されます。成果が査定に直結することでプレッシャーが大きくなり、社員の働きづらさにつながるリスクもあります。
実際は成果主義に向いている社員ばかりではなく、強引に切り替えてしまうと、結果的に業績やモチベーションの低下にもつながりかねません。失敗しても次があるという安心感を醸成し、成果主義の基盤として安心してチャレンジできる組織づくりも重要です。
(2)結果ばかりでプロセスが評価されない
成果主義を導入するデメリットには、成果に至ったプロセスが適切に評価されないことによる社員のモチベーション低下が挙げられます。成果主義では、成果のプロセスを定量化しづらく、成果のみが評価対象となってしまうケースがあります。成果でしか評価されない状況では、「やりがいが感じられない」「成果が見えづらい業務に就いているので不公平に感じる」といった不満が生じかねません。そのため、会社のために人を育てるという長期的な観点で成果のプロセスまで評価対象とすることが重要です。
(3)成果の評価は難しい
成果主義による評価は、総務や人事、経理といった数値化しにくい部門の評価が難しいというデメリットもあります。営業職のように成果を可視化・定量化しやすい職種と比較しても、成果主義が向いていない部門の社員が不公平に感じないような評価方法を検討する必要があります。例えば、成果の評価が難しい部門に対しては、これまでの評価体系を引き継ぐという選択も一つの方法です。
成果主義を失敗せず導入するためには
成果主義をスムーズに導入するためにはどのような点に気をつければ良いでしょうか。以下では成果主義の導入前に考えておくべきポイントを解説します。
制度の背景を社員に説明する
成果主義を導入する際は、制度を導入する背景を社員に伝えて、目的を理解・納得してもらうことが重要です。例えば、成果と給料を連動させて合理的な報酬制度を作りたい、成果が認められる土壌を作り優秀な社員の離職を抑制したい、などです。現代では、出世よりも働きがいやプライベート、家庭、趣味を大事にする、といった価値観の多様化も進んでいます。そうした状況で一方的に競争を押しつけられた社員はモチベーションが低下してしまいます。成果主義を導入するメリットや目的を伝えた上で、デメリットについても対策している点を説明できると社員の納得感も得やすくなります。
評価方法を明確にする
成果主義を成功させるためには、給料に直結する評価の仕方を誰もが納得でき、かつオープンな形での公開が望ましいです。評価基準や算定方法が曖昧だと、社員は頑張りに応じてどれくらいの報酬をもらえるのかをイメージできず、評価結果によっては会社への不信にもつながります。社員の納得感を得るためには、成果主義による評価制度を導入する前に社員も交えた話し合いを行い、評価方法を決めるプロセスを設けることが重要です。
まとめ
アメリカで生まれ、近年日本にも導入されている成果主義はこれまでになかったメリットを持ちながら、失敗につながりかねないデメリットも複数抱えています。導入を検討する際にはそうしたデメリットを前もって把握し、対策しておくことが重要です。
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