新入社員研修の目的
初めに、企業が新入社員研修を実施する目的を確認します。
学生から社会人へ意識を変化させる
社会人は学生とは異なり、組織の一員として、責任を持って行動する必要があります。学生と社会人の違いを理解するとともに、キャリアデザインやコンプライアンスなどに関する正しい知識を身に付けることで、仕事を円滑に進めるための土台をつくります。
企業の理解を深める
企業理念や事業目的、商品・サービスの特徴、組織体制などを学ぶことで、自社の理解を深め、現場で働くための土台をつくります。また「何を目指している企業なのか」「社員はどんな役割を担うべきなのか」といった点を理解することで、モチベーションの向上や、早期離職の防止につなげる狙いもあります。
仕事に必要なスキルを身に付ける
社員として求められる役割を果たすために、必要なスキルを身に付けます。業種や職種に関わらず必要なスキルとしては、ビジネスマナー、ビジネスライティング、ロジカルシンキング、チームビルディング、PCスキルなどがあります。他にも営業職であればプレゼンテーションや商談の進め方、マーケティング職であれば統計調査や市場分析など、業種や職種に応じて必要なスキルを身に付ける必要があります。
新入社員研修の計画と実施の流れ
新入社員研修の準備から実施、振り返りまでの流れと、研修の効果を高めるためのポイントを解説します。
【ステップ1】研修目的の整理
初めに研修を実施する目的を整理します。企業の経営戦略や人材育成方針などに基づき、新人に身に付けてもらいたいスキルや知識を洗い出します。方針が明確でない場合は、経営者や配属先の上司にヒアリングを行い、新人に求めるスキルの程度を確認しておきましょう。 研修目的をまとめる際は、具体的な基準や期限を設定しておくことも重要です。「いつごろまでに、何を、どれくらいできるようになるか」という形で明確な目標を設定しましょう。
【ステップ2】研修プログラムの作成
ステップ1で設定した研修目的に沿って、具体的なプログラムを作成します。研修目的が「入社後3ヶ月までに商品の営業ができるようになる」であれば、必要なプログラムは「ビジネスマナー」「プレゼンテーション」「商品理解」などに分解できます。その上で、誰が、どんな形式で研修を行うのが効果的かを検討し、プログラムをスケジュールに落とし込みます。
スケジュールを作成する際は、企業理念や業界について広く学ぶ研修を先に、ロールプレイングやOJTなど実践的な研修を後に設定すると、受講者が内容を理解しやすくなります。また60~90分ごとに10分前後の休憩時間を設け、1日の終わりに振り返りの時間を設けると、学んだ内容が定着しやすくなります。
【ステップ3】会場の確保
ステップ2で作成したスケジュールに基づき、研修会場を確保します。講義、グループワーク、eラーニング、合宿など、研修の形式によって必要な設備も異なります。社内に会場がある場合は、研修期間中、会場を利用しても支障がないかを確認します。社内に会場がない場合は、公共の研修施設や、民間の貸し会議室などを借りる手続きを行います。
【ステップ4】資料の作成
ステップ2で作成したプログラムに基づき、必要な資料を準備しておきます。研修のテーマに合わせて、講義内容をまとめたレジュメや、理解を深めるための資料を用意しておきましょう。また研修日時、場所、準備物などをまとめた確認書を用意しておくと、連絡漏れを防ぐことができ便利です。
【ステップ5】オリエンテーション
新入社員研修が始まったら、初めにオリエンテーションを行います。受講者が主体的に研修に取り組めるように、研修目的や心構えなどを説明します。受講者が緊張しているときは、初めに自己紹介などでアイスブレイクを行い、リラックスしてから研修に入るのが効果的です。
【ステップ6】研修の実施
作成したスケジュールに沿って研修を実施します。集中力が落ちていたり、理解が遅れていたりする受講者がいるときは、休憩時間などを活用して積極的にフォローしましょう。
【ステップ7】効果測定、振り返り
研修期間が終わったら、ステップ1で整理した目的が達成できたかを振り返ります。研修の効果を確認するには、受講者へのアンケート、受講者との面談、配属先の上司や顧客へのアンケート、理解度テストなどの方法があります。研修の効果はすぐに現れないことも多いため、長期的に受講者や配属先の上司とコミュニケーションを取りながら、研修の内容が十分だったかを検証することが大切です。
【ステップ8】フォローアップ研修
現場へ配属されてから3ヶ月や半年を目安に、フォローアップ研修を行います。研修で学んだことを復習し、自身が実践できているかを確認することで、スキルや知識の定着度を高めます。配属後は悩みを抱える新入社員も多いため、同期の社員と話し合ったり、課題解決の方法を学んだりすることで、不安の解消につなげることができます。
新入社員研修の主なテーマと成功のポイント
新入社員研修の主なテーマと、効果的に行うためのポイントを解説します。
学生から社会人へ意識を変化させる研修
学生と社会人の違いを理解し、組織の一員として活躍するための土台をつくる研修です。主なテーマには以下のものがあります。
キャリアデザイン研修
職種や昇進制度を踏まえ、自身がどんなキャリアを形成したいのかを考える研修です。先輩社員のキャリアを紹介したり、他の受講者と話し合ったりしながら、客観的に自身のキャリアをイメージできるようにすることが大切です。
コンプライアンス研修
コンプライアンスを守るための知識と心構えを学ぶ研修です。社会人は学生と異なり、組織の一員として行動する責任が生じます。どのような行為がコンプライアンス違反にあたるのか、そうした行為が会社にどんな影響を与えるのかといった点を具体的に解説しましょう。
企業の理解を深める研修
企業理念や事業目的、商品・サービスの詳細、組織体制、福利厚生などを学ぶ研修です。企業理念や事業目的については社長や取締役が、自社の商品・サービスについては担当部署の社員が、組織体制や福利厚生については人事・総務担当の社員が、それぞれ解説するのが効果的です。
仕事に必要なスキルを身に付ける研修
現場への配属後、仕事に必要となるスキルを身に付ける研修です。主なテーマには以下のものがあります。
ビジネスマナー研修
仕事に必要なマナーを学ぶ研修です。あいさつや身だしなみ、敬語、名刺交換、電話対応、来客応対などについて、基本的なスキルを身に付けます。学んだことを実践して受講者同士でチェックするなど、体を動かしながら学ぶのが効果的です。
ビジネスライティング研修
ビジネス文書を作成する方法を学ぶ研修です。メールや添え状、議事録、プレゼンテーション資料など、業務に必要な文章の書き方を学びます。できるだけ実物に近い文書を作成し、添削を受けながら学ぶのが良いでしょう。
リーダーシップ研修、チームビルディング研修
チームの作り方やチーム内での役割分担、仕事の進め方などを学ぶ研修です。ワークショップなどで課題に取り組みながら学ぶのが効果的です。
プレゼンテーション研修
自分の考えを分かりやすく伝える方法を学ぶ研修です。プレゼンテーションの内容や構成を考えるスキルと、相手に魅力的に伝えるスキルを、それぞれ身に付ける必要があります。実際にテーマを決めてプレゼンテーションを行い、講師や先輩社員からフィードバックを受けるのが良いでしょう。
ロジカルシンキング研修
論理的な考え方を身に付ける研修です。初めに身近な事例を通じて、ロジカルシンキングの重要性を理解してもらいます。その後、ロジックツリーなどの手法で思考を視覚化しながら、ロジカルシンキングを実践します。実際の事例を参考に、成功や失敗の要因を考えることで、手法を分かりやすく学ぶことができます。
PCスキル研修
業務に必要な、パソコンの操作スキルを学ぶ研修です。文書作成、表計算、プレゼンテーションなどに用いる基本ソフトや、プリンターやスキャナーなどの利用方法を解説します。
この他にも、事業内容や配属先の職種などにより、必要なスキルは多岐にわたります。誰が、どのように教えるのが効果的かを考えてプログラムを作成しましょう。
新入社員研修の形式と実施のポイント
研修にはさまざまな実施形式があるため、テーマを踏まえ、身に付きやすい方法を選ぶことが大切です。それぞれの研修形式の特徴と、効果を高めるポイントを解説します。
講義
会議室などで講師の話を聞く研修です。多くの情報をまとめて伝えることができますが、受講者が受け身になり、モチベーションが下がってしまうこともあります。講師が受講者に質問したり、グループで話し合う時間を設けたりして、受講者の集中力を維持することを意識しましょう。
グループワーク
受講者が数人ずつのグループに分かれ、課題に取り組む研修です。チームでの作業の進め方を、実践を通じて学ぶときに役立ちます。ただのワークで終わらないように、講師からフィードバックを行ったり、振り返りの時間を設けたりすることが大切です。
問題演習、レポート
問題演習やレポートの作成を行う研修です。受講者はアウトプットを通じて、研修で学んだ内容を定着させることができます。また講師が受講者の理解度をチェックできるメリットもあります。課題を出して終わりにせず、理解の浅い箇所をフォローし、スキルの向上につなげるようにしましょう。
eラーニング
パソコンやタブレット、スマートフォンなどを使って、動画を視聴する形式の研修です。会場や講師を手配する必要がなく、手軽に導入できる反面、受講者がモチベーションを保ちづらいデメリットもあります。受講後にテストを行うなど、他の形式と組み合わせて実施するのが効果的です。
合宿
受講者が泊まりがけで行う研修です。研修に集中できること、規則正しい生活ができること、参加者同士の連帯感が生まれることなどがメリットです。初めのオリエンテーションで目的を明確に伝えることや、集中力が途切れないようにスケジュールを組むことが大切です。
OJT
On-the-Job Trainingの略称で、実際の業務を通してスキルを身に付ける研修です。集合研修が終わり現場へ配属された後は、先輩社員が付いてOJTを行うことが一般的です。目標を明確に伝え、定期的にフィードバックを行うなど、計画的に研修を進めることが重要です。
新入社員研修の事例
新入社員研修のスケジュールや実施形式は、企業によりさまざまです。自社の事業や理念に合った人材を育成するための、ユニークな取り組みを紹介します。
【事例1】JR東日本|半年間の現場実習
JR東日本の新入社員研修では、初めに約3週間の集合研修を行います。社会人としてのルールやマナー、チームワークなどのほか、事業運営の考え方、各事業分野の現状・課題・展望などを学びます。その後、実際に業務がどう行われているかを学ぶため、実地(駅や乗務員職場、車両・設備・電気などの技術職場、企画部門)で約6ヶ月の実習が行われます。
【事例2】国際自動車|42.195kmのウォーキング
国際自動車の新入社員研修では、2週間の集合研修を通じて、ビジネスマナーやグループの考え方などを学びます。研修の終わりには、一晩で42.195kmの道を歩く「kmウォーキング」が行われます。主な狙いは、成功体験を得てもらうこと、同期の絆を強めること、疲れていても相手を気遣うホスピタリティを学ぶことなどです。ドライバー職の社員には、道を歩くことで街の地理や雰囲気を感じてもらう狙いもあります。
【事例3】コニカミノルタ|学校で出前授業
コニカミノルタの新入社員研修では、中学校や高校への出前授業を行っています。授業では「コピー機の仕組み」をテーマに、実験を通して静電気の性質を生徒に教えます。新入社員は約半年間、研修や業務の空き時間を使って、チームで授業計画を作成します。事前準備や本番の授業を通じて、チームワーク、リーダーシップ、スケジュール管理、コミュニケーションなどのスキルを磨くことができます。
【事例4】ノバレーゼ|1ヶ月の合宿
ノバレーゼの新入社員研修では、約1ヶ月間、ホテルでの合宿を行います。前半2週間は全ての新入社員が対象となり、後半2週間はウエディングプランナーやドレスコーディネーターなどの総合職のみが対象となります。会社概要、婚礼衣裳や婚礼プロデュース、ビジネスマナー、コンプライアンスなどの知識を学ぶプログラムに加え、新入社員代表が新郎新婦を演じる、模擬披露宴や余興研修などのプログラムも用意されています。
【事例5】ジェイテック|オーストラリアでホームステイ
ジェイテックでは、技術職の新入社員を対象に、半年間のホームステイ研修を行っています。オーストラリアへの渡航費用は会社が負担しますが、2件目以降のホームステイ先は、自分で交渉して見つける必要があります。外国での生活を通じて語学力やコミュニケーション力を養い、グローバルに活躍する人材を育成します。
まとめ
新入社員研修の目的は、社会人としての自覚を持ち、仕事に必要なスキルと知識を身に付けた人材を育てることです。新人をできるだけ早く戦力化することが、会社の売上拡大や成長にもつながります。自社の事業や理念に合ったプログラムを作成するのはもちろん、研修中は新入社員の様子を細かく見てサポートし、終了後も振り返りやフォローアップを行いましょう。
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