中途採用者の給与の決め方は? 金額交渉や面接の対応策も COLUMN

2019.03.19

2022.09.29

中途採用者の給与の決め方は? 金額交渉や面接の対応策も

中途採用者の給与決定は、新卒採用と異なり、年齢や経験、スキルが個々に異なるため、企業の人事担当者にとって悩ましい問題です。
給与決定においては、中途採用者と既存社員の双方に不満を抱かせない方法を確立することが重要となります。
そのため、本記事では、中途採用者の給与の決め方や、金額交渉、面接時の対応策について詳しくご紹介します。

目次

中途採用者の給与の決め方の基本

まずは中途採用者の給与の決め方の基本を押さえましょう。ここでは給与の決め方とその決定時期についてご紹介します。

給与の決め方3パターン

給与の決め方は「自社の相場をもとに決める」「中途採用者の前職の給与から決める」「成果や業績で決める」の3パターンに分けられます。

自社の方法に適切なのはどれか検討してみてください。

自社の相場をもとに決める

日本の企業の中で一般的な決め方が、自社の給与相場をもとに決める方法です。

採用者のスキルや経験によって給与を決める場合もありますが、採用時点で中途採用者の正確な能力や、その発揮度合いを見極めることは難しいです。そこで、自社の相場をもとに給与を決定します。この方法であれば年齢や階級という客観的な指標に当てはめれば給与が決定するので、中途採用者にとっても納得性が高い決め方といえるでしょう。

また、同じ業務を行う同年代の社員の給料を参考にするのもポイントです。業務の経験年数を考慮しつつ、自社の社員と同程度またはやや低めの給与を設定することで、社員と中途採用者のどちらにも不満を抱かれないようにしてください。

中途採用者に妥当だと感じてもらうために、自社の給与テーブルなど客観的な指標をもとに給与を決定していきましょう。

中途採用者の前職の給与から決める

既に他社で活躍している中途採用者の場合、前職の給与はある意味‟本人の実績・実力の証明”と見なすこともできます。そのため、前職の給与を判断材料にして自社の給与を決定する企業は少なくありません。

一度決めた給与を上げることはできても下げることは難しいため、前職の給与をベースに決めるのは企業側にとって安心できる方法といえるでしょう。
また中途採用者にとって、「前職の給与と比較して高いか低いか」は最大の関心事項といえます。あまりに低すぎると正当に評価してもらえていないと感じ、入社を渋るケースもあるので注意しなければいけません。

会社にとって必要だと感じる人材であれば、最低でも前職の給与は保証することが求められます。

過去の成果や業績で決める

事業で一定の成果を上げることを目的として優秀な人材を採用したい場合、過去の成果や業績で給与を決定することが多いです。これに面接時の評価を加えて判断することになりますが、プレゼンが上手な求職者の場合、能力以上の評価を与えてしまうこともあるため注意しなければいけません。

この方式の場合、募集職種への経験が浅い方は給料が低くなるため、そこに不満を感じる中途採用者も出てくるかもしれません。このような場合は能力給の導入を検討すると良いでしょう。

能力給を導入すると、「入社後に十分な成果を上げることができれば給与アップできる可能性がある」と伝えられるため、未経験の中途採用者を安心させることができます。
中途採用者としてもこれまで積み上げてきた成果や業績が評価されると、仕事への意欲向上につながりやすくなります。具体的な成果や数字をもとに、中途採用者を適切に評価してください。

面接から給与決定までの流れ

ここからは、面接から給与を決めるまでの流れと、各プロセスのポイントをご紹介します。中途採用者が入社するまでの対応を円滑にするためにも、押さえるべきポイントを理解しましょう。

【1】面接時に給与についてヒアリングする

応募書類などに希望給与額が記載されていることもありますが、面接時にも直接本人にヒアリングすることをおすすめします。ヒアリングは面接の初期段階ではなく、お互いについての理解が深まる終盤段階で行うと良いでしょう。前職でのボーナスや残業代を含めた給与、役職や昇給の有無などについて詳しく聞き、適切な給与決定をするための判断材料を集めてください。

年収アップを希望する方には、具体的な数字とその根拠を示してもらうことも大切です。その情報をもとに、年収アップに見合うだけの人物かを見極めていきましょう。もし根拠が不十分だったり、キャリアやスキルに見合わない給与を求めたりしている場合は、不採用を視野に入れることも重要です。

希望する給与がもらえないと、たとえ採用に至ったとしても会社への不満が募りやすくなります。入社してから給料のことで揉めないように面接時の対話を通じたすり合わせを行い、企業と中途採用者の双方が納得できる給料を設定してください。

【2】内定通知とともに給与金額を伝える

採用が決定したら、内定通知を行う際に給与金額を伝えましょう。この段階は、企業側から「あなたを採用したい」という意向を伝える場であるとともに、本人の入社意思を確認する場でもあります。

従って、一方的な給与通知ではなく、本人の入社への意思を固めることに比重を置いてください。具体的には「給与決定の背景」「面接での評価ポイント」「入社後の活躍期待(活躍に応じて給与が上がる場合はその旨も伝える)」などを伝え、入社へのモチベーションを上げることを意識すると良いでしょう。

入社意向はあるものの、提示された給与に不満がある場合、内定者から給与金額交渉が行われることもあります。その際は後述の「オファー面談」という給与交渉の場を再度設定し、話し合いを行いましょう。

内定通知の段階で給与への大きな認識齟齬が起きないよう、できれば面接の初期段階から「自社で出せる金額はこの範囲」と伝えたり、人事評価制度や賃金テーブルなど提示したりすることがおすすめです。

【3】オファー面談を行い給与金額を確定させる

昨今はハイクラスの求人を中心として、内定を伝える場とは別に労働条件や雇用条件などを確認する「オファー面談」という場を設けることも増えてきました。内定に対して本人の入社意思が固まった場合や給与への交渉が入った場合は、オファー面談を設定するようにしましょう。

企業には雇用する人に対し、労働条件を記載した労働条件通知書を渡す義務があります。渡すタイミングは内定通知を渡すときであったり入社時であったり企業によって異なりますが、オファー面談を行う際はその場で労働条件通知書を渡します。

労働条件通知書には、給与金額とともに支払給与の決定や計算、方法や支払時期、昇給に関する事項をしっかり記載してください。きちんと情報を網羅していないと、会社側が罰則の対象となるため注意が必要です。労働基準法第15条第1項には「労働契約の締結に際し労働条件を明示しなければならない」旨が定められており、労働基準法施行規則第5条に具体的な「明示しなければならない労働条件」が記載されています。また労働基準法第120条には、これらの規定に違反した者に30万円以下の罰金が科される旨が記されています。

事前の内定通知で金額交渉があった場合は、一旦社内で審議を行い「その人材を欲しい度合い」「自社で許容できる給与の上限」「他社員からの見え方」などを複合的に加味し、給与金額を決めた上でオファー面談で提示します。出来るだけ決定の経緯は丁寧に説明し、本人とすり合わせを行うようにしましょう。

【4】試用期間終了後に正式な給与を決定

試用期間を設けている企業の場合は、当該期間終了後に正式な給与を決定するケースもあります。試用期間中の仕事ぶりを見てから判断できるため、中途採用者の本来的な能力をより適切に評価することができます。

ただし、試用期間終了後に給料変更の可能性がある場合、その旨を就業規則や雇用契約書に記載しておく必要があります。入社時の給与はあくまでも仮のものだということを中途採用者にあらかじめ理解してもらうことが大切です。

また、正式な給与額を伝える際は、今後の昇給について人事評価制度や賃金テーブルといった具体的な基準も示すと良いでしょう。今後の見通しが示されることで本人のやる気が上がり、前向きに仕事に取り組んでもらうことが期待でき、早期離職防止にもつながります。モチベーションを維持して働いてもらえるように、給与に関わる情報は具体的に伝えていきましょう。

ちなみに試用期間について法律での取り決めはありませんが、3~6ヶ月の期間で設定するのが一般的です。あまりに長い期間を設けると、中途採用者に心理的負担をかけてモチベーションの低下を招きかねません。そもそも試用期間が長すぎる企業は応募段階で求職者から避けられるリスクもあるため、3~6ヶ月以内に正式な給与を決定できるようにしてください。

給与決定に際して押さえておくべきポイント

給与を決定するとき、必要な手続きを踏んでいないと後々問題に発展する可能性があります。中途採用者はもちろん、既存社員にも安心して働いてもらうために押さえておくべきポイントについてお話ししていきます。

就業規則にしっかりと明記する

就業規則には「賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項」の明記が必須ですが、中途採用者により配慮するならば、中途入社時の給与決定方法や見直し時期、昇給の有無なども記載しておくと良いでしょう。

給与に関する疑問や不安については就業規則を見れば解消できるように、必要な情報を詳しく記載しておいてください。

公平性を保ち不満を感じさせない工夫を

自分に対する評価と給与額に乖離があると、中途採用者は給与だけでなく会社の姿勢に対し不満を抱きやすいです。

また、中途採用者の給与決定に際しては、既存社員への配慮も必要になります。自分とほとんど能力や年齢が変わらない中途採用者が高い収入を得ていることを知れば、既存社員が自社への不信感を募らせることもあるため注意が必要です。

中途採用者も既存社員も不満を感じず働けるように、給与に対する取り扱いは公平かつ透明性を保つことを心がけましょう。「どのような基準で評価されるか」「どういった方法で賃金が決定するのか」を明確にした上で、給与決定方法を全社員に知ってもらえれば、給与に対する納得性を高められます。

金額交渉された場合は具体的な基準を説明

中途採用者から金額交渉された場合、給与決定に関する具体的な基準や根拠を説明することが大切です。賃金テーブルを見せたり、人事評価制度について説明したりすることで、中途採用者も納得して給与を受け入れられるでしょう。

また、試用期間後に給与を正式決定する場合と同様、「何をしたら昇給につながるのか」など具体的な評価指標を提示することも大切です。具体的な昇給方法が明らかになっていると、入社時の給料が低くても目標とすべきポイントが見えるため、やる気を損なわずに仕事に取り組んでもらうことが期待できます。

中途採用者が納得できない給与を提示してしまうと、仕事への意欲低下につながるだけでなく、最悪の場合内定を辞退されてしまうかもしれません。給料は働く上でのモチベーションとなるため、正当な評価だと認識してもらえるようにきちんとした基準や根拠を設定しておくことが求められます。

まとめ

中途採用者の給与を適切なものとするためには、納得性を高める根拠を提示することが大切です。給与は生活していく上で必要不可欠なものであり、働く意欲に関わる重要なものといえます。
中途採用者も既存社員も自分たちの給与に納得して働けるように、客観的かつ公平な視点を取り込んだ給与制度づくりをしてください。

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コピーライター、人事(採用担当)を経て、大手人材会社でディレクターとして、クリエイティブ企画や経営戦略にひもづいた人材採用・活用のコンサルティング業務などに従事。現在はIT企業勤務の傍ら、マーケティング・人材採用の領域を専門に中小企業支援を行っている。

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