なぜ人手不足なのか
帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2020年7月)」によれば、30.4%の企業が「正社員が不足している」と回答。これは前年同月と比べて18.1ポイントも低い割合になります。
このように新型コロナウイルス感染拡大の影響で人手不足感が低下しているものの、人手不足に悩んでいる業界もあります。ここでは、「人手不足が深刻な業界」と「人手不足の原因」を説明します。
人手不足の現状|人手不足が深刻な業界は?
帝国データバンクによれば、人手不足で悩んでいる業種として「建設」「メンテナンス・警備・検査」「教育サービス」などがあるようです。これらはどれも人手不足割合が4割を超えています。
【従業員が「不足」している上位5業種】
1 | 建設 | 51.9% |
2 | メンテナンス・警備・検査 | 48.1% |
3 | 教育サービス | 48.0% |
4 | 農・林・水産 | 47.1% |
5 | 自動車・同部品小売 | 46.2% |
※帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2020年7月)」を元に作成
一方で、これまで人手不足感が顕著だった「飲食店」や「旅館・ホテル」は新型コロナウイルスの影響で減少。「飲食店」は緊急事態宣言解除後、上昇傾向にありますが、「旅館・ホテル」は1割台のままのようです。
人手不足の原因は?
人手不足になる主な原因として、以下4つが挙げられます。
生産年齢人口の減少
人手不足の原因の1つに、生産年齢人口(15歳~64歳)の減少があります。1995年は8,716万人だった生産年齢人口も2015年には7,629万人に。2020年以降も減少が続く見通しです。
【日本の生産年齢人口の推移】
※総務省「情報通信白書 平成29年版」を元に作成
※2020年以降は予測値である
高い有効求人倍率
近年、日本では有効求人倍率が1.0倍を上回る状態が続いていることも人手不足の原因として挙げられます。ただ、新型コロナウイルス流行の影響で、2019年9月は1.58倍だった有効求人倍率が2020年には1.03倍まで下がっています。
【有効求人倍率(季節調整値)】
※独立行政法人労働政策研究・研修機構「職業紹介-都道府県別有効求人倍率」を元に作成
※新規学卒者を除きパートタイムを含む。
上記のグラフを見て分かるように、売り手市場から買い手市場への転換が加速傾向にありますが、2020年9月時点では1.0倍を上回っていることから、まだ求職者が若干有利となっているのが現状です。
採用コストがかかる
採用活動を行うには、求人広告費や採用に関わる社員の人件費など膨大なコストがかかります。そのため、人手を増やしたくても採用活動に取り組むのが難しく、人手不足になっている企業もあるかもしれません。
労働条件が悪い
労働条件の悪さは、「求職者が集まらない」「離職が続く」原因になり得ます。ブラック企業という言葉が定着し、労働条件を重視する求職者や社員が増えているため、「長時間労働の強制」や「業務量の不適正な配分」などが行われている場合は要注意です。
人手不足が企業にもたらすリスク
人手不足が続くと、経営面と社員に影響が出る可能性があります。最悪の場合、人手不足が原因で倒産に追い込まれるケースもあります。以下、リスクについて解説します。
経営面への影響
人手不足によって起きる経営面への影響として、「事業縮小」と「新規事業拡大の困難化」が挙げられます。
事業の縮小を迫られる
深刻な人手不足が慢性化する、採算が好転しないといった場合は、事業の縮小を迫られることがあります。事業縮小によって、人員配置の見直しや整理解雇などが必要になるかもしれません。企業への信頼性が低下する可能性もあります。
事業の新規拡大ができない
企業にとって事業の新規拡大は利益増加やリスク分散などのメリットがありますが、人手不足になると困難化する可能性があります。新規事業を拡大できれば開発できたプロダクトやサービスが提供できず、時代の流れとともに変わるユーザーのニーズに応えにくくなるかもしれません。
社員への影響
人手不足によって起きる社員への影響として「時間外労働の増加」と「ストレスの増加」が挙げられます。
時間外労働が増加する
限られた人材で業務を回すことになるため、業務量によっては、時間外労働の増加は避けられません。時間外労働が増えれば、仕事と家庭のバランスが取りにくくなり、健康障害や精神障害に至る恐れがあります。
社員のストレスが増加する
社員のストレスが増加すると、イライラ感や不安感といった心理的な影響や、高血圧や頭痛といった身体的な影響が出る恐れがあります。これらは業務ミスの増加や業務効率の低下を招くだけでなく、休職や退職につながる可能性もあります。実際、厚生労働省が実施した「平成 29 年『労働安全衛生調査(実態調査)』の概況」によると、メンタルヘルスが原因で1ヶ月以上休職をした労働者は0.4 %いることが分かっています。
人手不足で倒産することも
人手不足を放置していると、倒産のリスクがあります。帝国データバンクの調査によると、2019年度の人手不足倒産は194件となっており、6年連続で年度最多件数を更新。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で人手不足感が増した業界は、人手不倒産リスクが高まるかもしれません。
人手不足を解消する5つの方法
最後に、人手不足を解消する方法を5つ紹介します。
採用方法を見直す
人手不足の解消法の一つに、採用方法の見直しが挙げられます。「中途採用を強化する」「外国人採用を始める」など、採用方法を改めて考えれば、自社のニーズに合う人材に出会える可能性が広がるかもしれません。
※採用にまつわる助成金について詳しく知りたい方は「【採用助成金】の種類一覧 障害者・高齢者の場合も」をご覧ください。
労働環境を改善する
労働環境に課題がある場合は、リモートワークやフレックスタイム制などを導入することによって働きやすい環境をつくりましょう。その他、給与改定や福利厚生の充実などもあります。
企業イメージを刷新する
業界・業種の特性的に自社に悪いイメージを持たれている場合、企業イメージを刷新する方法があります。マイナスイメージを持たれている原因を分析した後、それを払拭するために採用サイトを一新したり採用動画をつくったりすると応募数が増えるかもしれません。
外注・アウトソーシングを活用する
社員数に対する業務量が見合っていない場合、外注・アウトソーシングを活用すれば、社員一人一人にかかる負担の軽減が期待できます。社員がコア業務に集中しやすくなるため、仕事の効率化も図れます。
ツール導入や機械化を検討する
コストはかかりますが、ツールの導入や事務作業の機械化も検討してみてください。例えば、採用管理システムを導入すると、採用に関する情報の共有効率化や採用業務の自動化などが実現できます。
採用管理システムについてより知りたい方は「採用管理システム比較の決定版!料金、メリット、効果は?」をご覧ください。
まとめ
人手不足の主な原因として、「生産年齢人口の減少」「高い有効求人倍率」「高い採用コスト」「悪い労働条件」などが挙げられます。人手不足の問題を解決しないままでいると、最悪、倒産に追い込まれる可能性もあります。本記事で紹介した解消方法をもとに、自社にとって効果的な対策を検討してみてください。
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