フレックスタイム制の意外なデメリットと対策を徹底解説! COLUMN

2021.08.30

2022.02.17

フレックスタイム制の意外なデメリットと対策を徹底解説!

社員に自由な出退勤を可能にするフレックスタイム制は、柔軟な働き方の実現につながり、魅力も多いですが、業務効率の低下につながるデメリットも抱えています。この記事では、フレックスタイム制にはどのようなデメリットがあるのか、導入する際に講じておきたい対策などを解説します。

目次

フレックスタイム制による企業側のデメリット&対策4つ

フレックスタイム制について、企業・経営者側から見たデメリットと対策には以下のようなものが考えられます。

コミュニケーションの不足

フレックスタイム制では、社員同士や社員と管理職が直接会う機会が減り、挨拶をはじめとするコミュニケーションが減少しがちです。時には、以前では簡単だった重要な情報共有が円滑に行えなくなる可能性があります。

対策|コアタイムを設ける

コミュニケーション不足の対策としては、コアタイムの導入が有効です。コアタイムとは、一日のうちに勤務しなければならないと定めた時間帯です。コアタイムを設定すれば社員全員が必ず勤務している時間が生まれるため、コミュニケーション不足の軽減にもつながります。

コアタイムと併せて、チャットツールなどのコミュニケーションツールの導入も有効です。社員同士が対面する機会が少なくなっても、意思疎通がスムーズに取れるツールを採用すればコミュニケーションの取りづらさをカバーできます。

時間管理の難しさ

フレックスタイム制では、働く時間帯を社員に任せているため、一人ひとり勤務時間帯が異なり、勤怠管理が難しくなります。さらに、始業時間と終業時間を一律で定めている場合は、定時以降も働いていれば残業となりますが、フレックスタイム制でその考え方は適用できません。

対策|勤怠管理システムを導入する

複雑化した勤怠管理をこれまで通りの人力で行うのは困難であり、勤怠管理システムなどのツール活用が望まれます。勤怠管理システムを導入すれば、個別の社員の勤務時間を自動集計でき、清算期間における労働時間数や残業時間を容易に把握できるようになります。

一部の社員に適用した場合の不満

フレックスタイム制を全ての業務に導入するのは難しく、フレックスタイムの適用から除外された一部の社員が嫉妬や不満を持ってしまう可能性があります。例えば、プログラマーやデザイナーといった職種にはフレックスタイムが向いています。一方で、顧客やほかの部署のメンバーとリアルタイムで連携が発生する職種の場合は向いておらず、適用すべきでないと判断される場合もあります。

対策|デメリットもきちんと説明する

フレックスタイム適用外の社員からの不満を抑えるためには、制度のデメリットについての説明が必要です。「社内のコミュニケーションが取りづらい」「労働時間の管理が大変」といったデメリットを伝えることで、フレックスタイム制を適用しない方が合理的であると理解でき、不満を持たれにくくなります。

早出・残業命令の難しさ

フレックスタイム制においては、社員に早出・残業を命じたくても基本的にNGです。フレックスタイム制は労働時間を社員が自由に決められる制度であるため、それと矛盾する早出・残業を命じられないと考えられています。

対策|就業規則や勤怠ルールを整備しておく

業務のトラブルなどにより早出・残業をお願いしなければならない可能性を想定し、就業規則や勤怠ルールに反映しておく手があります。突発的なトラブルに備えて、社員に早出・残業の協力をお願いする場合もある点を明記しておけば、協力を仰ぎやすくなります。なお、就業規則や勤怠ルールに定める上では、早出・残業の協力依頼について社員にきちんと説明し、同意を得ることが不可欠です。

フレックスタイム制による社員側のデメリット&対策4つ

フレックスタイム制には、社員側にとってもデメリットがあります。ここでは、社員におけるデメリットとその対策について解説します。

コアタイムへの業務集中

フレックスタイム制にコアタイムを設定した場合は、全員が出社している時間がコアタイムに限定されるために、打ち合わせがそこに集中し業務効率が下がる可能性があります。一方で、コアタイムを設定しない場合にも、先に述べたようにコミュニケーションが円滑に行われないといった問題が発生するため、一概にコアタイムを設定しなければ良いとは言えません。

対策|Web会議ツールを導入する

フレックスタイム制においてコアタイムへの業務集中を軽減するためには、Web会議などのコミュニケーションツールの導入が有効です。コアタイム以外の時間帯でもコミュニケーションや意見交換がしやすい環境を構築すれば、コアタイムに集中していた対面での打ち合わせの数を減らせます。

取引先対応の難しさ

フレックスタイム制では、働く時間を柔軟に選べる一方で、取引先との連絡のやり取りにおいてトラブルが発生する可能性があります。例えば、取引先から「電話を掛けたが担当者がつかまらない」「担当者からすぐ必要な返事がもらえない」といった不満が出ることも。また、無理に取引先に自身の労働時間を合わせてしまうと、結果として制度が形骸化する恐れもあります。

対策|業務の体制を工夫する

取引先対応におけるトラブルを未然に防ぐには、業務の体制を工夫する必要があります。例えば、一つの取引先に複数名で対応する体制を取り、空白の時間をできるだけ作らない、といったことが挙げられます。制度を継続的に運用するためには、社員がフレックスタイム制のメリットを享受しつつ、取引先から不満を持たれないようにするなどバランスが重要です。

社員間の連携の難しさ

フレックスタイム制では、コアタイムを除くと全社員が同じ時間に勤務している状況は珍しく、社員間の連携が取りづらくなります。例えば、午前10時までに別部署のメンバーに資料を確認してもらいたいが、その社員は出社時間が11時であるため間に合わない。あるいは、当日中に経理の処理を済まさなければならないのに、依頼時には経理担当者が帰ってしまっている、などです。

対策|制度下でうまく運用する方法を考える

社員間の連携における支障を軽減するためには、フレックスタイム制度の特徴を社員が理解した上でうまく運用する意識・行動が求められます。ほかの社員への業務の依頼が発生する場合は、事前に誰に・何を・いつまでに対応してもらいたいのかを押さえておき、前もって依頼できていれば、フレックスタイムであっても業務がスムーズに進行します。コアタイムを有効に使いつつ、こういった日々の業務での意識改善も必要です。

意欲の低下

フレックスタイム制は勤務時間を柔軟に調整できる一方で、ある程度の自由があるため、かえって労働の意欲が低下する社員もいます。特に自己管理が苦手な社員はフレックスタイム制により意欲が低下しやすく、生産性が下がる、働きづらさを感じて離職する、といった影響が出ることもあります。

対策|適用する社員を適性に応じて判断する

フレックスタイム制が合わない社員に対しては、同意の上で固定の労働時間への切り替えが有効です。フレックスタイム制の導入前後で社員にヒアリングを行い、労働時間が自由な働き方が合わない社員に対しては、固定した労働時間で勤務してもらうよう調整する手もあります。

フレックスタイム制のメリット3つ

これまではフレックスタイム制のデメリットばかりを挙げてきましたが、もちろんメリットもあります。次に3つのメリットを紹介します。

残業代の削減

フレックスタイム制では、業務の繁閑に応じて勤務時間、労働時間を柔軟に調整できるため、適切に運用できれば残業代の削減につながります。フレックスタイムにおける残業代は、清算期間(1ヶ月~3ヶ月)における法定労働時間を超えた時間を基に算出されます。例えば、従来は月曜日から金曜日まで毎日8時間という労働形態だった場合、繁閑に応じてある日は6時間だけ働いてもらい、別の日に残業代無しで10時間働いてもらう、という合理的な働き方へと変更できます。社員にとっても無駄に会社で過ごす時間が減り、労使双方にとってメリットがある働き方ができます。

通勤ラッシュの回避

フレックスタイム制を導入すると出社時間が社員に委ねられるため、通勤ラッシュにストレスを感じる場合はそれを避ける働き方ができます。リクナビNEXTジャーナルが調査した結果(※)によると、首都圏で通勤を苦痛と感じる人は56%、そのうち苦痛と感じる要素として最も多かったのが満員電車で48.5%でした。フレックスタイム制により、こういった社員のストレスを軽減でき、生産性の向上や離職率の抑制も期待できます。

※リクナビNEXTジャーナル「46.4%が通勤を苦痛に感じている! そんな通勤時間を楽しくするコツとは?

優秀な人材を得やすくなる

フレックスタイム制の導入は、採用市場においてワークライフバランスを実現できるというアピールになり、優秀な人材を獲得するための一つの要素になります。近年では、働き方の柔軟性が求められており、優秀な人材を獲得するにはそういった働き方の面でも魅力的に映るような努力が不可欠です。さらに、フレックスタイム制は自己管理能力が高い人材に向いており、そういった優秀な既存社員の離職防止も期待できます。

フレックスタイム制を導入する際の注意点

フレックスタイム制を導入する上での注意点は、一度導入すると社員の反対により撤回が難しい点です。そこで、運用してみた結果、自社には合わないと判断した場合にフレックスタイム制を廃止できるよう準備しておく必要があります。

そもそもフレックスタイム制を導入する際には、就業規則と労使協定を改訂しなければなりません。就業規則においては始業・就業時間を労働者の決定に委ねることを明記します。そして、労使協定においては主に次の5点を労使間で協議し、定める必要があります。

・対象となる労働者の範囲
・清算期間
・清算期間における総労働時間
・標準となる一日の労働時間
・コアタイム

加えて、「次のような不都合が生じた場合、廃止もありうる」という文言を記載しておき、その下部で廃止を検討する不都合の具体的条件を記載しておくと、いざというときに廃止へと移行しやすくなります。

まとめ

フレックスタイム制は魅力も多い制度ですが、他方でデメリットも多く抱えています。他社で導入しているからと安易に飛びつくのではなく、前もってデメリットを把握しておき、その上で導入すべかどうかを判断することが重要です。

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コピーライター、人事(採用担当)を経て、大手人材会社でディレクターとして、クリエイティブ企画や経営戦略にひもづいた人材採用・活用のコンサルティング業務などに従事。現在はIT企業勤務の傍ら、マーケティング・人材採用の領域を専門に中小企業支援を行っている。

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