コロナウイルス拡大による採用活動への影響
新型コロナウイルス感染拡大による採用活動への影響は大きく3つです。
1.イベント等の中止により、母集団確保が困難になる。
2.対面コミュニケーションの減少により学生が企業を選びきれず、就活は長期化する。
3.コロナ不況による、売手市場の終焉
以下、順に整理していきます。
1.イベント等の中止により、母集団確保が困難になる。
こちらは現在進行形で発生している問題です。
リクルートの合同説明会イベント中止を皮切りに、各社がイベント自粛を発表。
多くの企業に影響が出ていますが、中でもイベントに依存した母集団形成をしている企業にとっては大打撃となりました
企業の魅力には、Web上で伝えやすいものもあれば、Web上だと伝えにくいものもあります。
特に、知名度の低い企業やサービス系の企業、学生に不人気の業界などは、対面で伝えてこそ魅力が光り輝くことが多いため、イベント参加で初回の接点を持つことができないと、非常に苦しい展開になります。
あせりは禁物。得意な土俵で勝負することが大事。
状況への対応策としては、消極的かもしれませんが、「コロナ騒動が終息するのを待つ」が一番だと考えます。
採用各社は、イベント中止で予算が浮くことを見越して提案を出してくると思います。
しかし、非対面の施策はすべてお断りされたほうが賢明です。
同じように広告予算を増額する企業が増えれば、当然、競争は激しくなります。あせって準備不足のまま参画したところで、まず成果は出ないでしょう。
一方、コロナウイルスの影響で採用活動が出遅れたぶん、今年度は例年よりも、秋採用・冬採用が盛り上がるのではないかと見ています。
不慣れな領域に無理して投資するよりも、コロナウイルスの拡大が終息したタイミングを見計らって、規模が小さくても良いのでリアル接点が持てるイベントに積極投資することをおすすめします。
2.対面コミュニケーションの減少により学生が企業を選びきれず、就活は長期化する。
このままコロナの自粛ムードが続いてしまうと、対面コミュニケーションが不足したまま選考が進む企業が増えてきます。
Web面接は便利なツールも出ており問題なく実施できるのですが、学生さんの性格や雰囲気といった定性情報、カルチャーフィットを判断するような要素については、判断がやや難しい、というのが現段階での印象です。
企業側はこれまで学生さんを見てきた経験値があるからまだ何とかなりますが、初めて就職活動する学生さんにとっては、ただでさえ難しい企業選びが、より一層難しくなることが予想されます。
実際、こんなデータもあります。
こちらは学生さんが何によって入社意欲が高まっているかを調査したもので、上位にランクインしているのは、対面コミュニケーションばかりです。
面談や説明会が、企業・学生の双方にとっていかに重要な場であったかを改めて感じさせられます。
こちらのコロナウイルスの影響についての緊急調査資料(DISCO調査)を見ても、半数以上の企業が、採用活動の終了時期は遅くなる見込みと回答しています。
企業側も、いつかは対面で接さざるを得ないが…、Xデーはいつか。
コロナウイルスが終息したタイミング、もしくは5月末から6月にかけて、自粛している企業も、学生と直接接点を取り始めると思われます。
内定を出すためには志望度を高める必要があり、志望度を高めるためには接点を持たざるを得ないからです。
多くの企業は、例年であれば6月に向けてコツコツ積み上げていた志望度を、今年度に限っては、内定出し直前で急上昇させる必要に迫られます。
6月の前後は、学生さんのスケジュールを抑えづらくなるのが常ですが、今年度は、その傾向は一層強まりそうです。
ただ、いくら企業が猛烈なラストスパートをかけたとしても、選考を受ける学生さんは身一つ。スケジュールのやりくりにも限界があります。
結果、志望度があがりきらない中での内定出しが増え、就活終了のタイミングがつかみきれない学生さんが増え…ダラダラと就活が続いていく。そんな可能性も否定はできません。
一方、大手企業に限って言えば、こんなご時世だしせっかく内定を得たのだから、と潔く入社を決める学生さんが増える可能性もあります。
※ロックダウン等含め、現状以上にコロナウイルスによる外出自粛の要請が強まる・長期化した場合は、例年6月~7月にある内定出しが、秋・冬以降まで延期される可能性もあります。
志望度を上げるために企業ができること
コロナウイルスの影響下において、志望度向上のためにできることは大きくは3つの形があります。
予防に配慮しつつ、対面での選考を実施
最も効果的なのは対面での選考を実施することです。
実際、予防に配慮して対面での選考を継続している企業も数多くあります。
現段階では公式に規制されているわけではありませんので、自社の置かれている環境・CSRに照らして実施可能と判断できるのであれば、実施いただくのも選択肢の一つだと思います。
本件については、上場企業をはじめ、大手企業ほど社会からより厳重な配慮を求められる傾向があります。裏を返せば、対面選考の継続は、少人数の選考が基本である中小企業だからこそ取れる対策だと言えます。
ただし、学生さんに向けて、くれぐれも来社を強要する形にならないようには配慮ください。弊社で言えば、コロナ対応初期のころは、対面とWebを学生さんに選んでいただいていました(現在は完全にWebに移行しています)
※当初の楽観的な捉え方から一転、東京都を中心に感染拡大の懸念が広がったことにより、中小規模の企業と言えども、徐々に倫理的に実施が難しくなってきた感はあります。
Web面接の工夫
Web面接も工夫次第でコミュニケーションの質をあげることができます。
たとえば、エントリーシートに特技がギターであると書いてあったとして、学生さんが自宅にいるのであれば、その場で軽く演奏してもらうこともできます。これはむしろWeb面接ならではのコミュニケーションだと言えます。
学生さんの手元にパソコンがある場合は、自社が紹介されているネット記事や動画URLなどをリアルタイムで共有しながら、話をすることも可能です。
また、会話内容を録画している場合は内容を見返して、情報が不足していた点や誤解がありそうな点について、後ほどフォローをすることもできます。
対面と同じ状態を再現することは難しくても、対面とは違った形でコミュニケーションの質や選考の精度を高める努力をすることが大切です。
対面で伝えていた情報の補完
対面コミュニケーションが減ると、定性情報の提供量が減ります。
それを補完するために、社内の雰囲気がわかる動画を作成したり、SNS等を活用して写真を公開したりすることも有効な打ち手です。
この手のビジュアルコミュニケーションの話になると、企業によって、いわゆる「映える」「映えない」の問題が出てくると思いますが、一番良くないのは「情報がない」状態ですから、どんな企業であっても、ないよりはあったほうが良いものであるとお考えください。
ちなみに動画については弊社でも30万円~から制作をお受けしています。
スピード納品も可能です。ご興味ございましたらこちらよりお問合せください。
3.コロナ不況による、売手市場の終焉
足元の景気が徐々に悪化していたところに加えて、コロナウイルスによる世界経済の混乱・停滞。
採用意欲の一時的な低下は避けられません。
となると、ここ数年続いていた売手市場にも変化がありそうです。
2020卒のデータでは、第一志望群の企業に入社する学生の割合は54.8%となっています。
ご覧のように、半分以上の学生さんが第一志望群に入社を決めていました。
しかし、大手企業の定員数が低下すれば、この数字は逆転する可能性が高いです。
そうなると、採用したい企業にとってはチャンスが訪れるのか?とも思われますが、必ずしもそうは言えません。数年先を見越せば、日本においては労働人口減少の問題が控えています。
MARCH、関関同立以上、いわゆる採用マーケットにおいて上位校と言われる、優秀な学生さんを取り合う状況には、そこまで変化はないと思われます。
とは言え、全体を見渡せば学生さんの就職状況の悪化は確実です。
すでに内定取り消しや雇止めの報道も一部出てきています。
就職氷河期の再来を避けるためにも、体力のある企業様には、ぜひとも採用の門戸を開き続けていただきたいと思います。
コロナショックをきっかけに、Web面接は企業に定着するか?
コロナウイルスによる対面面接の自粛を受けて、Web面接ツールの導入が活況を呈しています。
これを契機に、Web面接の導入が一気に進むとする意見もありますが、現実には期待されるほどWeb面接は普及しないと思われます。
理由は以下の通りです。
まず、就活というのは市場の原理によって、企業有利の年と学生有利の年に分かれます。
コロナ不況により景況感が悪化すると、企業の募集定員は減ります。
募集定員が減ると、いまほどの売手市場ではなくなります。
求職者の立場が弱くなると、企業側の都合に求職者が合わせることが多くなってきます。
コロナが終息すれば、あえてWeb面接を選択する意味は薄れます。
もちろん、遠隔地の採用やママ採用など、物理的な制約を乗り越えるためのWeb面接は普及が進むと思います。また、企業と求職者のマッチングを高めるためのWebを通じた広報もますます加速していくはずです。
しかし、求職者の利便性だけを理由に、Web面接が全面的に受け入れられることはないと思われます(現在は感染を防ぐ、という大目的のために受け入れられている側面があります)
この件についてさらに決定的なのが、まだまだ多くの学生が対面での面接を望んでいるということです。
事実、Web面接を実施するなかで「Web面接だときちんと自己PRできるか不安」といった声も少なからず聞こえてきます。
職場の雰囲気や周囲の環境など、訪問するから体感できることもあります。
リアルの場で面接することが、企業と学生の間でwin-winになってしまっている以上、この慣習はそう簡単に崩れることはなさそうです。
スマート化する就活に、企業はどう対応すべきか
ここからはコロナと直接的には関係ない話題になりますが、全体傾向として押さえておきたいポイントのご紹介となります。
下表は、就職活動の各プロセスの実施率を調査したデータです。
※2020年卒のデータに、弊社で2019年卒のデータも追記しています
2019卒と2020卒を比較すると、下記の項目が減少していることが分かります。
・OB・OG訪問
・リクルーターとの接触
・プレエントリー数
・合同説明会、セミナーへの参加
・個別企業の説明会(Web説明会含む)
・適性検査や筆記試験の受検
一方で
・就活に関する情報を収集する
・面接など対面の選考を受ける
・内々定、内定を取得する
・インターンシップへの参加
こちらの4項目は上昇しています。
これらを素直に解釈すると、学生さんはネットやナビサイト、リアルコミュニティ等で企業情報を収集、ある程度しぼり込んだ上でインターンや選考にエントリ―し、比較的スマートに内定を獲得していることが分かります。
さらに各項目について、実施回数を測定したデータも併せて掲載したものがこちらです。
理系学生を含む平均値なので参考程度ですが、2020年卒は学生さん一人当たり、説明会参加は約16社(Web含む)、面接参加はたったの8社です。
プレエントリー社数も、2018年卒のときは約36社だったのが、2020卒では約25社にまで減少しています。
昔と比べると現在は、情報収集の段階ですでに、相当なしぼり込みを受けるようになっているということです。
コロナ騒動とは関係ないところでも、すでに学生さんの動きは相当に限定的になってきている現実があります。
中小企業ができる最大の採用対策は、インターンシップの強化
ひと昔前は新卒採用の広報解禁日(現在は3月1日)に足並みをそろえてスタートしていたために、ナビサイトを使った一斉広報が大きな集客効果を発揮していました。
ところが、いまは就活開始時期が学生さんによりバラバラです。
広報コストを集中投下できなくなったぶん、以前よりも効率的な広報は難しくなったと言えます。
前項の通り、就活において、「情報収集→知っている企業のみにアクション」という流れを辿る学生さんが増えています。これは裏を返せば、情報収集の段階で認知してもらえなかった企業は、あとから挽回するのが困難であることを意味します。
そんな中、知名度のない企業にとって、学生さんに自社を知ってもらえる数少ない機会がインターンシップなのです。
以下は、インターンシップに関する就職白書2019のデータです。
従業員300人未満の企業は、インターンシップの開催規模が小さく、内定者数が少ないにも関わらず、その中でも、45%がインターンシップ経由で採用成功をしています。
※詳しい解説はこちらの記事をご一読ください
インターンシップ成功のカギは「1day」からの脱却
現在、インターンシップの実施率は90%前後まで普及が進んでいますが、その多くは1dayの簡易なコンテンツでの実施に留まっています。
インターンシップは、社会に出る前の学生さんに就労機会を提供する貴重な場であるため、国も大学も注目をしています。
しっかり仕事体験ができて、学生さんにとって学びになるコンテンツを準備できれば、大学からも学生さんからも歓迎してもらえます。
結果的に、大学の窓口等を通じて低コストで広報することもできます。
中小企業には、大企業ほど部門間の垣根がなくトップダウンの意思決定が行いやすいため、部門をまたいだリアルな仕事体験を提供しやすい利点があります。
インターンシップには準備や実施が大変なイメージがあるかもしれませんが、中小企業にとっては、集客と惹きつけが一体となった効率の良い取り組みなのです。
※コロナ騒動が収まらないとインターンシップの開催はできません。今の状態だと最低でも夏のインターンシップは、オリンピックと同様、実施不可能と見たほうが良いでしょう。
最良のシナリオは秋・冬からの再開です。
→働きたいと思ってもらえる組織・チームビルディング|研修レポート
採用においても、O2Oマーケティングを意識することが重要に。
O2Oとは、「Online to Offline」のことで、オンラインからオフラインへと顧客を導くマーケティングの考え方のことです。簡単に言えば、企業を知ってもらってから、入社するまでの流れを一貫させましょう、というお話になります。
Web面接の導入をはじめ、採用活動をデジタル化するにあたって、これまで以上に求められてくる考え方です。
改めて学生行動についてのデータを再掲します。
こちらのデータからも分かるように、学生の就職活動はスマート化しています。
まず情報収集があって、その段階でかなりの企業が振るい落とされます。
学生さんは、厳選した企業に対してインターン参加や面談、社員訪問などリアル接点を通じた深い情報収集を行うことで、納得感の高い選択を決定。これがスタンダードな就職活動の動きとなります。
そんなO2Oの世界で戦うためには、企業側は、これまでと戦い方を変える必要があります。
具体的には、これまで採用サイトやパンフレット、イベント企画、説明会企画、ナビサイトといった各要素をバラバラの業者にお願いしていたとして、そこに一貫したシナリオが描けているのかを、改めて点検すべきです。
学生さんは情報収集した内容を踏まえて面接に来ますから、接する場ごとに企業の発信内容が異なっていると、何が真実か分からなくなり、企業に対して不信感を持ちます。
また、逆に情報が重複しすぎていても冗長な印象を与えてしまうため注意が必要です。よくある失敗例としては、ナビサイトの内容と採用サイト、説明会の内容がほぼほぼ全部一緒、というパターンがあります。
仮に同じ情報を提供するにしても、段階的により具体的で濃い情報を提供していくのが採用広報のセオリーです。
企業側は、学生さんが最初にどこで自社に接点を持ち、どんな順序で情報提供をして企業理解を深め、魅力を感じてもらうのか、丁寧に設計しなくてはなりません。
最終的には、対面で学生さんを口説くことももちろん大事です。
ですが、対面に至るまでに、意思決定の補助となる情報を過不足なく提供することを心がけてください。
(参考)学生さんが足りないと感じている企業情報
最後に改めて、自社の情報提供についてセルフチェックをしてみてください。
学生が情報不足だと感じている項目を示したグラフがこちらになります。
データでは39項目調査したうち、特に学生が情報の不足を感じている上位10項目が掲載されています(「知りたい」と「知れた」の乖離の大きいもの10項目)
もし可能であれば、このデータをもとにして「十分な情報が提供できていたかどうか」自社の新入社員の方に直接ヒアリングいただければと思います。
企業側は提供しているつもりであっても、学生側が認識していない可能性も考えられるためです。
たとえば、有給取得についてナビサイトや採用サイトに記載していたとしても、学生が見落としていたら、それは伝えていないのと同じです。
伝えたかった情報がきちんと学生に伝わっているのかを検証することで、メッセージの発信方法や情報を提供する各チャネルの改善・再検討の材料になります。
コロナウイルス終息に向けて、企業が備えるべきこと
長くなりましたが、最後に、採用を継続する企業が考えておくべきポイントをまとめます。
●イベント中止による母集団の不足
→不慣れなWeb広告などの集客施策に、安易に投資するのは危険
→各社が追加でリリースする(であろう)、秋・冬の小規模イベントや施策に期待
●志望度の低下(高められない)による辞退・早期退職
→感染拡大に配慮しながら最大限の採用活動を実施
→Web面接のフル活用
→動画などコミュニケーションツールの充実
●売手市場の終焉
→これまでと同様に採用意欲の高い企業にとっては採用機会となる
→優秀層については引き続き採用難
●就活スタイルの変化への対応
→広報力・惹きつけ力を高めるためのインターンシップ強化(1dayからの脱却)
→採用コミュニケーションが一貫できているか、総点検を行う
*
人口減少による人手不足とコロナショックによる不況。
相反する外部環境の変化にさらされ、一寸先も見えない状況ではありますが、こんなときだからこそ、極端な施策に走らず、堅実な対応をお願いできればと思います。
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