基本的な、採用ブランディングの型
まずは、もっともオーソドックスな採用ブランディングの型について説明します。
図のような構造になっています。
採用したい人材のスペックに対して、ポテンシャルでは優っているが、発揮できている企業力(知覚価値)が不足している場合に、そのギャップを埋めることで採用成功させるのが採用ブランディングの基本戦略です。
具体的な施策例↓
- 理念やメッセージを、共感してもらいやすい表現にブラッシュアップする
- 採用ターゲットの学生から見て、魅力になる部分(強み)を明確にする
- パンフレットや採用サイトなどの広報メッセージに一貫性を持たす
- 面接官のトレーニングや選考過程をスムーズにするなど、基礎的な採用力のボトムアップを行う
上記は一例ですが、企業の魅力を引き出すために打ち手を講じます。お客様の状況によって、何が有効な施策になるかは様々であるため、オーダーメイドの解決施策が必要になるのが特徴です。
採用ブランディングで、優秀な学生を採用できる仕組み
採用ブランディングの実施目的は「いまよりも優秀な学生を採用したい」といったものが多いと思います。ところで、なぜ採用ブランディングを実施すると、優秀な学生が採用できるようになるのでしょうか。
理由のひとつは、自社のポテンシャルを最大限発揮できることでしたが、実は、理由はほかにもあります。
人材要件を明確にすることで、選考歩留まりや入社後のミスマッチが改善する
採用ブランディングを行う際に欠かせないのが「人材要件の明確化」です。簡単に言うと、求める条件をMUSTとWANTに整理して見える化するということです。
たとえば募集する職種について、以下のような問いをしてみてください。
- その仕事は絶対に若い人でなくてはダメですか?
- その仕事は絶対に男性(女性)でなくてはダメですか?
- その仕事は絶対に偏差値〇〇以上の学卒でなくてはダメですか?
- その仕事は絶対にコミュニケーション力が高くなくてはダメですか?
- その仕事は絶対に〇〇資格がなくてはダメですか?
- その仕事は絶対に〇〇経験がなくてはダメですか?
- その仕事は絶対に理系(文系)でなくてはダメですか?
- その仕事は絶対に社員(バイト)でなくてはダメですか?
いったん余分な要素を極限までそぎ落として考えてみることで、自社の採用にとって何が重要な要素なのかを明確にすることが、取り組みの第一歩です。
もちろん、業務には無関係でも、社内のカルチャー的にコミュニケーション力が必須、といった個社事情を考慮していただいて結構です。ただ、考慮しすぎるとがんじがらめになってしまいますので…、悩ましいところではありますが。
人材に欠かせない要素が何かを明確にすることで、本来であれば合格だったはずの人を、雰囲気やカンといった曖昧な理由で不採用にしてしまうリスクを回避できます。「いい子だと思ったのに上司にあげたら落とされた」といった事態は、人材要件が不明瞭なときに起きがちです。
人材要件が明確になると、大胆な採用ターゲットの設定ができる
採用ターゲットを工夫することで、採用ブランディングの効果をさらに高めることができます。主に中小企業が採用ブランディングを実施する際には、ほぼ必須の考え方となります。
たとえばこんな方法があります。順番に3つご紹介します。
一点突破の採用
図にするとこんな構造になります。
採用ターゲットとなる学生のなかにも色んなタイプがおり、それぞれ重視している要素は異なります。自社の強みと学生の重視していることが交わる一点集中で、その1点においては期待値を120%上回るパフォーマンスを発揮することで学生を魅了します。
ただし、やみくもに強みを強調したメッセージを発信しても効果は薄いため、PRには一貫性のあるストーリーが求められます。その魅力はたまたま生まれたものではなく、会社が意思をもってそう仕向けているのである、と感じてもらうことが大切です。
たとえばスターバックスを例に挙げると、たまたま素敵な店員さんが一人いたとしてもそれだけではブランディングになりませんよね。サードプレイス(第三の場所)という共通言語があって、店員さんの接客を承認する評価制度があって、接客に対するこだわりが全店に波及することで、ブランドとして認識されるに至っています。
良い店員さんの存在ももちろん大事ですが、良い店員さんが次々に生まれる運営の仕組みまで含めて知ってもらって、初めて採用ブランディングは成立します。
一点突破の採用を行うためには、自社の人材にとって重要な要素(能力や資質)は何かを認識し、できれば評価制度と連動させるなど、その動きを加速させるための制度も確立できていることがベターです。
とがった人材の採用
就活において、特に大手企業の選考では、あらゆる要素が高いレベルでまとまっている能力バランスの整った人が高評価を受けることが多いです。一言でいうと、何をやらせてもできるような完璧な人です。
一方で、コミュ力がない等、1つでもネガティブ要素のある人は、他の能力が高くてもなかなか企業から内定をもらうことができずに苦しんでいます。あるいは、特定の能力だけが突出しており、他は平均か平均以下といった、個性のハッキリしている学生さんもいます。
大手企業の場合は、入社後にどこに配属されるか分からないケースが多く、そのために何でもできる人を採用しないといけなくなっていますが、配属が最初から決まっていれば、必要な能力はもっとしぼって選考しても良いわけです。
人材要件が明確であれば、捨ててもいい要素と絶対に妥協できない要素がはっきりするため、「他社の基準は満たさないけれど、自社にとっては優秀」という学生を躊躇なく採用できるようになります。
リクルート社のエンジニア採用のように、近年は、大手企業もこの採用方式を導入するケースが増えてきています。しかし一方で、旧来からのモノサシで人材採用を行わざるを得ない大手企業が少なくないのが現状です。この隙を突ければ、中小企業でも大手にひけをとらない優秀人材を採用することが可能になります。
隠れた優秀学生の採用
世の中には、不当に低い評価を受けている学生さんがいます。
たとえば女性は結婚・出産などがあるため採用を控える、といった企業はいまだに少なくありません。女性は採用しないと断言する企業すらあります。
就職後に転勤せず、ずっと地元で生活をしたい学生が、大手ではなくあえて地場の企業を選択するのもここに当てはまります。
また、地方の学生さんは、物理的な要因から就活に不利で、都会の学生さんほどたくさんの企業と接点を持つことができません。企業の視点から見れば、比較的ブルーオーシャンの市場が残されているということです。近年は理系学生を求めて地方行脚する人事担当の方も増えていますよね。
何らかの制約があって、働き方や就活の動き方に制限のある学生さんのなかに、自社にとっての採用ターゲットが埋もれていないか考えてみてください。もし当てはまる場合、採用を推進するための手掛かりになることがあります。
各論の採用ブランディング
ここまでは人材要件やターゲティングなど、比較的、大局的な視点での採用ブランディングをお伝えしてきました。最後にお伝えするのは、競合に競り勝つための各論の採用ブランディングについてのお話です。
競合と自社とを徹底比較して、自社の強みを発見する
自社の強みや魅力について、自覚している中小企業はほとんどありません。大手企業と比べてしまい、何も取り柄がないように感じている採用担当の方も多いと思います。
でも、必ずしも大手と比べる必要はありません。採用ブランディングとは、すべての企業のなかでナンバーワンやオンリーワンになるための施策ではなく、自社の採用ターゲットが比較検討する(かつ合格可能性のある)企業群のなかで、独自のポジションを築ければそれで成功するものだからです。
図にするとこんな感じです。
たとえば、何か強みがあったときに、それが必ずしも世界一・日本一である必要はなく、学生が検討している企業群のなかで一番であれば一定の効果が期待できます。
企業の魅力や強みは相対的に考えることが大事です。「大手と比較して負けているから強みにならない…」は間違いです。自社と競合を徹底的に比較して、その差を洗い出すことで独自の強みを見出すのです。
また、一つの項目で比較するだけでなく、いくつかの要素の組み合わせで考えてみる手も有効です。100人に1人のスキルを3つ持てば、100万分の1の人材になれる、といった話を耳にしたことはないでしょうか。
突き抜けた特徴のない企業の場合は、組み合わせのパターンを模索することで突破口を見つけられることがあります。
採用ブランディングの成功には、自助努力が欠かせない
採用ブランディングは、自社の持つ魅力を最大化し、求める人物との最高のマッチングを実現するための手法です。大手企業が採用するような欠点のない人材を採用する手法ではありませんし、魅力のない企業が、一流の人材を獲得できる魔法の施策でもありません。
いい人材を採用するためには、働く環境を常にアップデートしていく企業側の自助努力が欠かせません。大切なことは、現時点で採用可能な最高の人材を獲得し続けること。そして、採用した人材といっしょに、企業をより良くしていくということです。
企業の状況によっては単年で成果を得ることもできますが、制度や組織を変える必要がある場合などは、複数年の施策として腰を据えて取り組んでいただけると、より効果を実感いただけると思います。
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