オウンドメディアリクルーティングとは?
オウンドメディアを活用した採用活動のことを意味します。
オウンドメディアとは自社が所有(オウンド)するメディアのことで、具体的には企業のホームページのことを指す場合が多いです。
もしすでに、採用サイトを運営されていたり、自社のホームページに採用情報を掲載したりしているのであれば、オウンドメディアリクルーティングの入り口に立っていると言えます。
オウンドメディアリクルーティングは、明確な定義のあることばではありませんが、高付加価値の人材向けに実施する特別な施策であると位置づけられることもあります。
ちなみに弊社では、オウンドメディアリクルーティングを高付加価値人材に限定せず、アルバイト採用から社員採用まで、幅広い採用シーンで活用できる基本的な施策だと捉えています。本記事もその前提で書いています。
オウンドメディアリクルーティングが注目されている理由
オウンドメディアリクルーティング=採用サイトを使った採用。
だとすれば、そんな手法は昔からあったじゃないか。何をいまさら…。
と感じる方も多いと思います。しかし、改めて注目を浴びているのには理由があります。
簡潔にお伝えすると、以下の2点が、再度オウンドメディアリクルーティングが注目されている理由になります。
① 求職者の価値観が変化してきた
② 企業のWebサイトを見る求職者が増えた
以下、それぞれについて詳しく解説します。
①求職者の価値観が変化してきた
一番大きな変化は、終身雇用・年功序列という共同幻想が失われ、いわゆる「就社」の考えが薄れたことです。昭和の時代にはタブー視すらされていた転職が、いまでは当たり前になっています。
どんな理不尽があっても辞めずに我慢するしかなかった時代からすれば、労働者は自由になったと言えます。一方で、労働者はこれまで企業任せにしていたキャリア形成に、自ら取り組む必要にもせまられています。
自分は何のために働くのか、仕事を通じてどうなりたいのか…。
そんなことを考える人たちが増えていき……
以前よりも求職者が主体的に職探しをするようになった結果、終身雇用を建前に企業側の都合を優先しがちだった求人コミュニケーションは、大きな変化を迫られることになりました。
求職者の価値観が変化した例
・会社都合で仕事が変化 ⇒ 自分の納得した仕事に携わりたい
・毎年安定した定期昇給 ⇒ 職務内容に見合った金額がすぐに欲しい
・一つの会社で長く働く ⇒ いまの自分に最適な環境を選ぶ
・郷に入っては郷に従え ⇒ 自分に合う社風の会社で働きたい
・社内で評価される仕事 ⇒ 社外で評価される仕事(市場価値)
これらの変化について、メンバーシップ型からジョブ型雇用への転換といった文脈で、ニュース等を通じて目にしたことがある方も多いと思います。
ハローワークの求人票はいまだにそうですが、待遇と1行2行程度の簡単な仕事内容の説明では、もはや求職者は納得感のある就職ができません。
求職者の価値観が変化した結果、以前よりも「就業前に確認しておきたい事項」が大幅に増えているのが現状です。
企業側の意識も徐々に変化
一方、企業側の視点でも、RJP(リアリスティックジョブプレビュー)という考え方が浸透してきました。
事前に企業文化や業務の実態をせきららに開示することでミスマッチを防ぎ、入社後の定着率を高める採用の考え方です。ホンネ採用などと呼ばれることもあります。
企業にとって都合の良いことばかりをPRしていた、かつての求人広告とは対極の考え方になります。
このように求職者のみならず、企業側の採用姿勢も変化したことにより、求職者に伝えるべき情報が以前よりも格段に増えました。
結果的に、字数の制限なく自由な形式で表現できるWebサイト(オウンドメディア)の有効性が再認識され、オウンドメディアリクルーティングが改めて注目を浴びています。
②企業のWebサイトを見る求職者が増えた
昔はオウンドメディアで採用活動をしようとすると、集客にかかるコストがネックでした。なぜなら、一部の大企業を除いて、大抵の企業の採用ホームページには、何もしなければほとんどアクセスが来なかったからです。
リクナビやマイナビのような大手メディアで集客し、ナビサイト経由で自社の採用サイトに求職者を誘導するしか方法がなかったのです。
ところが現在は、採用担当者がSNSで積極的に情報発信をすることで採用候補者のフォロワーを獲得することもできますし、IndeedやGoogle for jobsのような検索エンジンに最適化することで、お金をかけずとも(あるいは安価に)一定の集客を自力で行えるインフラが整ってきました。
求職者の約90%は、企業のWebサイトを閲覧する
また、求職者の約90%が、求人広告などの閲覧と同時に企業のホームページも閲覧する、という調査データもあります。
昔は見向きもされなかった企業の採用ページが、いまでは求職者の側から積極的に探して見に来てくれる時代になったということです。
逆に言えば、Webサイトはほとんどの求職者に見られるメディアとなっているため、採用サイトで発信される情報が魅力的でなければ、その他で実施しているすべての採用活動にも悪影響を及ぼす可能性があるのです。
企業はオウンドメディアでどんな情報発信をすべきか
オウンドメディアが重要なのは理解できた。でも、実際に自社でサイトを作るとしたら、どんなコンテンツを掲載すれば良いの?
次はこの疑問にお答えします。
世間一般ではこんなコンテンツが掲載されていることが多いです。
ざっと書き出してみます。
・社員のインタビュー記事
・経営者の考え方が伝わる記事
・働き方に関する取り組みや制度
・社内で実施している勉強会などの情報共有
・プライベートも含めたスタッフの写真 など
ただ、上記のコンテンツを考えなしに模倣したら失敗します。
ご注意いただきたいのは、オウンドメディアで何を伝えるべきかは、「貴社がどんなスキルやタイプの人を採用したいか」「貴社の魅力は何か」の2つに左右されるという点です。
以下で、オウンドメディアリクルーティングを始める際の、サイトコンテンツ作成の考え方について、順を追って説明させていただきます。
オウンドメディアリクルーティングの始め方
初めに大まかな流れを書いておきます。
①任せる職務・必要な素養を明確にする
②任せる職務を踏まえた上で、採用ターゲットを明確化する
③自社の魅力について整理する
④採用競合と自社を比較しポジショニングを明確にする
⑤コンテンツ制作・公開・運用
以下、もう少し具体的に解説します。
STEP1. 任せる職務・必要な素養を明確にする
採用成功のためには、採用ターゲットを明確にする必要があります。
しかし、その前提として、まずは任せる仕事内容(ジョブディスクリプション)を明確にすることから始めてください。
その仕事内容に見合う人材とはどんな人物か?という発想で、採用ターゲットを考えます。オウンドメディアリクルーティングでは、人材に職務をわりふるメンバーシップ型ではなく、職務に人材を配置するジョブ型の考え方が求められます。
また、職務内容を詳細に言語化することは、サイトに求職者を集めるSEOの観点でも有効です。Indeedをはじめとした検索エンジンは、ユーザーの検索したキーワードにマッチする求人を優先的に表示させる仕組みになっているため、詳細なジョブディスクリプションの記述ができているとWeb集客で優位に立てます。
STEP2. 採用ターゲットを明確化する
採用ターゲットと言うと、「上位校」「理系」「体育会系」「地頭」「コミュニケーション力」といったフレーズを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
しかし、これは間違いです。
実態として、体育会系や地頭といった切り分け方で採用した学生の多くがハイパフォーマーになっているでしょうか。早期離職する人はいないでしょうか。
採用ターゲットの決定とは、言いかえれば、活躍可能性の高い候補者を選定する作業です。
たとえば、地頭の良さ一つとっても、頭の良さには色々あります。
瞬間的な記憶力の良さが求められるのか、複雑な事象を読み解く思考力が求められるのか。それとも相手の状況を瞬時に察する力のことを地頭と言っているのか。
めんどうかもしれませんが、求める要件について、それがなぜ必要か突き詰めて言語化することで、採用ターゲットの輪郭が鮮明になります。
マーケティングの書籍などで、採用ターゲットの明確化と似たような意味で「ペルソナ設計」という言葉が用いられることもありますが、たとえ名前や年齢、趣味、出身大学などを決めて人間らしいプロフィールを作成したとしても、求める能力や性格などについて言語化ができていなければ、そのペルソナが採用活動に生きることはありません。
【関連情報】採用ターゲットを明確化するためのシート⇒ダウンロードページへ
STEP.3 自社の魅力について整理する
ここではSTEP2で明確にした採用ターゲットにとって、自社のどんな点が魅力に感じてもらえるかを考えます。
考える手順としては、ひとまず採用ターゲットのことは忘れて、まずは自社の魅力を思いつくだけ書き出してしまう方法がお勧めです。書き出したあとに、その内容と採用ターゲットを照らし合わせて内容をしぼり込みます。
【関連情報】自社の魅力を整理するためのシート⇒ダウンロードページへ
魅力に感じてもらえる要素が見つからない場合の対処方法
一番良いのは、働き方なり待遇なりを改善することで、採用ターゲットにとって魅力的な企業に変化することです。
もしそれが難しい場合は、採用ターゲットを考えるSTEP2に戻って、求める条件を緩和することをお勧めします。
※魅力の整理は、自社で実施するのが最も難しいパートです。
第三者の目を借りることで、意外な魅力を発見できる可能性もあります。
⇒初回相談無料です:こちらよりお気軽にご連絡ください
STEP4. 採用競合と自社を比較しポジショニングを明確にする
STEP3で導き出した「魅力」が、採用競合との比較に耐えうるのかをシビアに判断します。
とはいえ、会社の魅力と言うのは、スマホの料金プランのように一律の横並びで比較できるものではありません。現時点でとくに採用競合がいないのであれば、このステップは省略いただいても構いません。
こんな場合は、競合比較が必要
過去の採用実績から、特定の採用競合が原因で内定辞退が増えていることが明らかな場合は、競合との比較を実施することをお勧めいたします。
STEP5. コンテンツ制作・公開・運用
誰に何を伝えるべきか明確になったところで、改めてコンテンツについて考えます。
以下、一般的な採用サイトのコンテンツ例を再掲します。
誰に何を伝えるかが明確であれば、各コンテンツについて、どんなポイントに気をつけて制作すべきか、何を伝えるべきかを判断するのは、それほど難しくはないと思います。
採用ターゲットがイメージできていると、社内の誰のインタビュー記事を掲載すれば喜んでもらえるか分かるはずです。プライベートの写真も、どんなテイストの写真を選べば求職者に響くか想像できるはずです。
<採用サイトのコンテンツ例:再掲>
・社員のインタビュー記事
・経営者の考え方が伝わる記事
・働き方に関する取り組みや制度
・社内で実施している勉強会などの情報共有
・プライベートも含めたスタッフの写真 など
上記のコンテンツは、可能であれば網羅しておいて損はありません。求職者から見て死角になる部分を極力減らすことを意識してください。求人内容の透明性が高くなればなるほど、求職者のセルフスクリーニング(自ら応募可否を判断すること)と志望度は高まります。
また、オウンドメディアは立ち上げて終わりではなく、応募率や選考の結果など、実際の運用データをもとにして情報をブラッシュアップしていくことで、さらに成果を高めることも可能です。
※IndeedやGoogle for jobsからのアクセスを得るためには、各々に対応したサイト制作をする必要があります。弊社でもサイト制作を承っております。よろしければご相談ください。
⇒お問い合わせページへ
コンテンツ事例
最後に弊社の採用サイトを例に、コンテンツの例をご紹介します。
事業内容が違えば採用課題も違うため、他の企業にそのまま転用できるものではありませんが、参考までに。
社員のインタビュー記事
実際にはこの3倍くらいのロングインタビュー記事になります。
なぜ入社を決めたのか。仕事のやりがいは何か。将来、自分はどうなっていきたいのか。3つの観点で先輩社員が語ります。
どうなりたいから入社するのか。
どんな成長をしたいから入社するのか。
目的意識をもった人に入社をしてもらいたいという意図から、こんなインタビュー記事を掲載しています。
経営者の考え方が伝わる記事
ゼネラルマネージャーによる求職者へのメッセージです。
プロフェッショナル性を追求できる環境であること、ユーザーファーストの開発姿勢であることをPRしています。
クリエイティブ関連の企業の方は共感していただけると思いますが、この2点は求職者を惹きつけるために欠かせないスタンスです。このことを顔出しで事業責任者が表明することに価値があります。
働き方に関する取り組みや制度
ワークライフバランス制度について、実際に制度を利用した社員のインタビューも交えて紹介しています。
企画営業職として勤務していた人が、産休の復帰後も同じ企画営業職に就いていること、また、復帰後にマネージャーに昇格していることなどを例に、女性が長く活躍できる職場であることを伝えています。
社内で実施している勉強会などの情報共有
勉強会ではありませんが、事業部ごとに社内の教育制度について紹介しているページです。
新人からリーダー、マネージャーまで階層別の研修プログラムについて説明しています。教育制度については興味を持つ学生さんが多いため、新卒採用では必ず説明すべき事項です。サイトに書いていないと、研修がないと思われてしまう可能性があります。
プライベートも含めたスタッフの写真
クラブ活動の写真を掲載しています。
スーツ姿の写真からは一転、社員の自然な笑顔を見ることができるので、人間関係や社風など、会社の雰囲気を多少なりとも感じていただけるコンテンツになっています。
まとめ
弊社の事例をご覧いただいて「えっ、こんな普通の内容で良いの?」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
はい、普通のコンテンツで良いんです。
大事なのは、自社が採用したいと思う人たちが、「どんな働き方を望んでいて」「どんな仲間と働きたいと思っているのか」といった想いをくみ取ること。そして、会社としてできる限りその想いに答えていくことです。
シンプルですし、王道ですが、経営に近いお立場の方ほど、この大変さが身に染みて感じられることと思います。
しかし王道だからこそ、オウンドメディアリクルーティングはすべての企業が取り組むべきだと我々は思いますし、採用のスタンダードになっていくと確信もしています。
オウンドメディアリクルーティングに取り組みたい企業様へ
解説させていただいた通り、オウンドメディアリクルーティングは、ステップ1~5でお伝えした以下の内容が成功の鍵となっております。
①任せる職務・必要な素養を明確にする
②任せる職務を踏まえた上で、採用ターゲットを明確化する
③自社の魅力について整理する
④採用競合と自社を比較しポジショニングを明確にする
⑤コンテンツ制作・公開・運用
弊社では上記の内容をサポートする、採用コンサルティングサービスを行っております。
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