管理職の役割・研修が必要な理由
管理職研修の必要性について、管理職の役割をもとに多くの企業に共通する2つの理由を解説します。
方針・課題設定が必要なため
管理職には、任された組織の将来や役割を自ら考えて、方針・ビジョンや課題設定する役割があります。一般社員に組織の方針を策定する経験はほぼありません。そのため、あらためて管理職研修で組織方針や課題設定をするノウハウを学び、日々のマネジメントに展開する必要があるのです。
実務管理が得意で、方針策定よりも細かい業務マネジメントに長けている管理職の人ももちろんいます。その場合でも、日々の業務判断でより所となる組織方針がなければ、対応が場当たり的になりがちです。むしろ組織の方針や課題設定が具体的であれば、日々の業務は部下自身の判断に委ねることも可能になります。
プレイヤーから管理職へ転換するため
管理職は、自ら手を動かすプレイヤーではなく、組織を動かすマネジメントが求められます。メンバーを育成することで組織業績を上げていくプロセスは、これまでプレイヤーだった人には視点の切り替えが難しいといわれています。そのため管理職研修を実施し、管理職視点に転換してもらう必要があるのです。
管理職自身がプレイヤーだった頃の我流のマネジメントにこだわってしまい、組織成果につながらないケースはよく見かけます。特にテレワーク環境下で入社する社員も増えていく状況では、過去の勘や経験だけに頼ってマネジメントをするには限界があります。働き方が変化する時代だからこそ、研修でマネジメントの原理原則を体得し、目標達成に向けて効果的に組織を牽引することが求められるのです。
管理職研修の目的
管理職研修を実施する目的を、昨今の環境も踏まえてもう少し具体的に掘り下げます。
組織の生産性向上
管理職には、組織の生産性を最大限に高めることが求められます。近年は少子高齢化の影響もあり、企業は限られた人材リソースで成果を出すことが求められています。そのため、いかに組織の生産性を高められるかが喫緊の課題です。
管理職は部下一人ひとりのモチベーションや業務進捗を管理する立場なので、組織の生産性にも大きな影響力を持ちます。だからこそ、研修を通じて管理職にチームマネジメントの能力を身につけさせることで、組織全体の生産性向上を図ろうという目的があります。
人材のモチベーションアップ
管理職には、組織メンバー一人ひとりがモチベーションを高めて働けるよう配慮する必要があります。組織メンバーのモチベーションは、管理職によって左右されるといっても過言ではありません。
近年は社員の労働観や働き方が多様化しているため、部下への動機づけをする方法も一様ではなくなり、マネジメントは非常に難しくなっています。また、昨今はリモートワークの浸透によってコミュニケーションが減少し、社員の帰属意識や愛社精神も希薄化してきているのが現状です。
そのため、研修を通じて、部下の多様な働き方・価値観に対応したモチベーションの高め方を習得する必要があるのです。
企業としての競争力確保
企業として競争力を上げるためには、経営層と現場をつなぐ管理職の役割は非常に大きいでしょう。現在は市場の国際化や消費者ニーズの多様化などにともない、企業にとって変化の絶えない時代となっています。
企業が時代に合わせて成長していくには、いかにスピーディーに経営判断を下し、現場を迅速に変革させられるかが重要です。そのため、管理職研修で管理職の現場への方針浸透力を高め、組織としての競争力を高める狙いもあるのです。
管理職研修の種類
一言で管理職研修といっても、管理職の階層によって目的や内容は異なります。代表的な3つの管理職研修を紹介します。
新任管理職研修
新しく就任した管理職に対して、管理職としてのマインドを醸成させ、必要なスキルを習得してもらう研修です。管理職としての心構えや、具体的なマネジメントに必要な人事評価やメンバーの育成方法を学ぶ内容が中心となります。
企業によっては社長や役員などからの訓話を交えるなど、管理職としての意識醸成に重きが置かれる場合もあるでしょう。新任管理職研修では、管理職として自信をもち、自組織のマネジメントができることを目的としています。
中間管理職研修
組織の中間に位置し、ミドルマネジメントと呼ばれる階層に実施する研修です。内容は企業によってさまざまです。スキル開発のような内容もあれば、マネジメントスタイルのチェックをおこなう場合もあります。
同じポジションの管理職が集まって、共通のテーマで議論することが多いのが中間管理職研修の特徴です。お互いの考え方や経験をシェアするなかで、各管理職のマネジメントスタイルに問題点がないかを確認します。
上級管理職研修
一般的に部長研修と呼ばれる、役員になる手前の役員候補者を対象とした研修です。上級管理職は経営に近く、管理する組織が複数あることから組織目標は広範囲にわたります。
経営への影響も大きいため、管理職が組織の枠組みにとらわれず、経営者目線で物事を考えられるようになることが、上級管理職研修の目的です。他社や自社を分析することで、目の前の組織マネジメントだけでなく、企業のあるべき方向性を考える思考を養う内容が一般的です。
管理職研修におすすめの内容
バリエーションが多い管理職研修ですが、どの企業でも取り入れられることが多いおすすめの内容を紹介します。
マネジメント基礎研修
マネジメント基礎研修とは、初めて管理職に就任した人に向けて、基本的なマネジメントを習得してもらう研修です。管理職として自身に期待されている役割について理解したうえで、基礎的な部下育成やリーダーシップなどのスキルを学びます。
その他、基本的な労務管理の知識や就業規則など、管理職として知っておくべき知識を学ぶケースも多いでしょう。管理職として求められる知識やスキルは広範囲にわたるため、新任管理職が受講する際は、2〜3日間で集中的に実施する企業も少なくありません。
キャリア開発研修
キャリア開発支援研修とは、管理職に部下のキャリア形成を支援するためのスキルを習得させる研修です。終身雇用の崩壊が叫ばれる今、部下のキャリア自律を支えることは管理職にとって重大な課題です。組織メンバーの得意分野だけでなく、今後身につけたいキャリアを引き出すためのスキルを体得します。
具体的には、キャリアの棚卸しや個人の強みをもとに、将来のキャリアをイメージするキャリアデザインの設計プロセスを研修で学びます。また、個人のキャリア開発だけではなく、「女性活躍推進」や「多様な部下のマネジメント」など、自社が注力しているテーマを取り扱う場合もあります。
キャリアデザインは、管理職に限らず汎用的に活用できるスキルなので、管理職自身にも得るものがあるでしょう。
コンプライアンス・リスクマネジメント研修
コンプライアンスやハラスメントをはじめ、経営リスクを防止するための研修です。管理職に組織内のリスクを予防・早期発見させることで、企業としての信頼性も高めやすくなるでしょう。具体的な研修例としては、法令順守の姿勢やコンプライアンス違反の基準を学ばせる「コンプライアンス研修」、パワハラやセクハラの防止方法を教示する「ハラスメント研修」などがあります。
また、部下のメンタル不調を早期にケアするための「メンタルヘルス研修」も、リスクマネジメントの一環として重要性が高まっています。
チームビルディング研修
チームビルディング研修とは、マネジメントだけでなくチーム全員が力を出し合う組織を作るための研修です。たとえば、部下の多様な価値観に対応するための手法を教示する「ダイバーシティマネジメント」や、会議で参加者の意見を引き出す「ファシリテーション」などのテーマについて学びます。管理職のチームビルディング能力を高めることで、チームの結束力を高め、組織全体のパフォーマンス向上をはかりやすくなるでしょう。
組織マネジメント研修
組織マネジメント研修とは、管理職の役割である業績管理や目標設定、人事評価の手法を習得する研修です。組織マネジメントのプロセスやルールを学ぶ実務的な内容もあれば、部下へのフィードバック方法など実践的な内容を学ぶこともあります。大がかりな人事制度改定をおこなった際に、管理職のみが新制度の運用を学ぶ研修も組織マネジメント研修の一環です。
管理職研修を実施する手順
人事部門主導で管理職研修を企画~実施する際の、標準的な手順をご紹介します。
現状の課題・研修の目的設定
研修企画の一歩目は、自社の現状課題を踏まえて研修の目的を設定することです。たとえば、同じ「チームビルディング研修」を実施するとしても、組織の男女比や年齢構成によって管理職に求められるマネジメント手法は少なからず異なります。また、経営戦略や事業方針に合わせて、管理職に任せるべき役割も変わってくるでしょう。そのため、毎年実施している研修であっても、自社の状況や時代の変化に合わせてカリキュラムを改善する姿勢が重要です。
カリキュラムの策定
次に、設定した課題にふさわしいと思われるカリキュラムを検討しましょう。自社で実施する場合は、独自の内容になるよう検討します。外部に依頼する場合は、実施したいカリキュラムに強い研修会社を探しましょう。内容そのものも重要ですが、実施形態(必要時間、実施時期、集合形式なのかオンラインなのか、など)にも留意が必要です。たとえ必要な研修であっても、繁忙期の時期に数日間も管理職を拘束してしまうことは、管理職や現場からの反発が予想されます。
実施・振り返り
研修を実施したあとは、必ず目的に照らした振り返りをおこなってください。具体的には、研修オブザーブ(見学)をして当日の状況を確認する、研修実施後アンケートを取る、などで研修の成果を確認します。振り返り結果をふまえて、次年度の研修内容の検討に反映しましょう。
管理職研修の実施時期
新任管理職の場合は、就任から1ヵ月以内を目安に研修実施をします。遅くなりすぎると、組織のスタートもその分遅延するからです。少なくとも、期初の目標設定をする前までには管理職研修を実施しましょう。その他の研修は、研修時期に決まりはありません。目的に応じて、適切な時期におこなってください。一般論としては、企業の繁忙期や期末などは避ける方が無難です。
管理職研修を成功させるポイント
ここまで管理職研修の概要についてお伝えしてきましたが、最後に研修を成功させるポイントを3点お伝えします。
課題設定や目的は具体的にする
課題や目的はなるべく具体的に、かつ言語化することがおすすめです。管理職に案内する際に漠然とした課題や目的設定では、参加する意義を感じてもらえません。参加者によってモチベーションが異なると、研修全体の雰囲気にも影響が出てしまいます。課題や目的を具体的にしておくと、振り返りもしやすくなるため、次年度以降の研修企画にも活用しやすくなります。
マインド・スキルの両面からアプローチする
マインド・スキルの双方が身につくような研修内容にすることも、管理職研修の成果を高めるポイントです。「フィードバック研修」を例にすると、座学でフィードバックの重要性を教示したり、ワークショップで自組織の課題を話し合わせたりすることで「マインド」の醸成ができます。
さらにロールプレイングで動機づけの方法を実践させることで、フィードバックに関する「スキル」の習得につなげられます。マインドだけでなく実践的なスキルも学べるカリキュラムであれば、管理職も学んだことをより現場で活かしやすくなるでしょう。
受講者からフィードバックをもらう
研修に参加した受講者にヒアリングして、生の声としてフィードバックをもらうことも研修のブラッシュアップには有効です。フィードバック次第では、タイミングを見てフォローアップ研修の実施も推奨されます。
管理職研修で得た知識や体験が実務で活かされたとしても、時間が経てば陳腐化したり忘れられたりするからです。アンケートを作成したり、管理職や中間管理職が対話したりなど、自社の都合に合わせて適切なフィードバック方法で実施してください。受講者からのフィードバックはもちろんのこと、人事担当は研修後の管理職の動きを見守る観点は忘れないようにしましょう。
まとめ
経営と現場をつなぐ管理職への研修は、企業の競争力をも左右する重要なイベントです。企業の状況によって管理職に習得させるべき能力は変わるため、最適な研修内容を選ぶようにしましょう。また、総合的な企業の競争力に目を向けるなら、管理職以外の階層に対する研修メニューとの整合性も考えるべきポイントとなります。
どの層に何の研修を実施するかを検討したい場合は、弊社の研修体系図の資料をぜひご活用ください。新人から経営層にいたるまで、どのような研修を実施すべきかが網羅されているため、自社の強化ポイントが見えてくるでしょう。
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