ダイバーシティ&インクルージョンとは?企業での取り組み事例を紹介 COLUMN

公開日:2021.09.08

更新日:2021.09.08

ダイバーシティ&インクルージョンとは?企業での取り組み事例を紹介

近年、人手不足の解消や消費者の多様なニーズへの対応のためにダイバーシティ&インクルージョンへの注目が集まっています。ただし、人事担当の方の中にもダイバーシティ&インクルージョンについて詳しく理解できていないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、ダイバーシティ&インクルージョンの意味や主な取り組み、企業での事例などを紹介します。

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目次

ダイバーシティ&インクルージョンとは?

ダイバーシティ&インクルージョンは、「ダイバーシティ=多様性」と「インクルージョン=受容」を組み合わせた考えです。企業におけるダイバーシティ&インクルージョンの活動や注目される背景について紹介します。

多様な人材が活躍できる場を作る活動

ダイバーシティ&インクルージョンとは、組織において多様性を重視し個々の違いを受け入れた上で、組織の活動にその違いを生かしていこうという考え方です。この考え方を企業内に浸透させることによって、国籍や人種、年齢、性別などが異なる多様な人材が集まる組織で、お互いを受け入れながら成長し、新たなサービスや価値を創造できます。女性活躍推進やシニア層の活用などがダイバーシティ&インクルージョンの代表的な取り組みとして挙げられます。

ダイバーシティ&インクルージョンが注目される背景

日本においてダイバーシティ&インクルージョンが注目される背景には、少子化によって労働人口が減少し、幅広い層から労働力を確保する必要性が出てきたことが挙げられます。幅広い層から労働力を確保するためには、高齢者や障がいを持つ人などの多様な人材を活用する考え方(=ダイバーシティ)とそれらの人材の能力が発揮できるように組織の一体感を生み出す取り組み(=インクルージョン)の両輪が必要となり、これらを組み合わせたダイバーシティ&インクルージョンという概念が広がっていきました。

さらには、消費者ニーズの多様化もダイバーシティ&インクルージョンの促進が求められる要因の一つです。従来の働き手だけでは多様化した社会のさまざまなニーズに対応できず、企業としての競争力も低下してしまいます。こういった課題への対策として、社内に多様な価値観や考え方を持つ人材を雇用する動きも見られます。

ダイバーシティ&インクルージョンの主な取り組み5つ

ダイバーシティ&インクルージョンは、主な取り組みとして以下の5つが挙げられます。ここでは、それぞれの取り組みの内容やメリットなどを紹介します。

【1】女性が活躍できる環境整備
【2】障がい者の雇用促進
【3】外国籍人材の雇用促進
【4】シニア層の活用
【5】LGBTQへの配慮

【1】女性が活躍できる環境整備

ダイバーシティ&インクルージョンの代表的な取り組みとして挙げられるのは、女性活躍のための環境整備です。女性ならではの視点から新たな商品開発やサービスのアイデアが期待でき、消費者の多様なニーズにも対応しやすくなります。ダイバーシティ&インクルージョンを実践する企業では、女性管理職を増やす取り組みや結婚・出産後でも仕事を続けられるように、柔軟な働き方ができる制度の整備を実施しています。

2016年に施行された女性活躍推進法でも、常時雇用する社員が301人以上の企業に対して女性社員の活躍に関する状況や課題を把握し、その状況・課題を踏まえてより働きやすい環境を整備するための行動計画の提出を義務付けています。2022年4月1日からは、対象企業が101人以上の企業に拡大します。ただし、300人以下の企業は努力義務です。

【2】障がい者の雇用促進

ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みとして、障がい者の雇用促進も挙げられます。障がい者雇用は労働力確保に加えて、障がい者の視点からバリアフリーに配慮したオフィス・店舗づくりやユニバーサルデザイン商品の開発などを実施するときに大きな力となることが期待できます。ダイバーシティ&インクルージョンの一環として、企業によっては、障がい者の資格取得の支援制度や社内に障がい者向けの相談窓口の設置などを実施しています。

なお、国でも障がい者雇用促進は喫緊の課題としており、障害者雇用促進法で企業に対して雇用する社員の2.3%に相当する障がい者の雇用の義務付けや、助成金による支援をしています。

*参考:厚生労働省|事業主の方へ|障害者雇用のルール|1.障害者雇用率制度

【3】外国籍人材の雇用促進

ダイバーシティ&インクルージョンの一つである外国籍人材の雇用促進は、労働力の確保に加えてビジネスのグローバル化に対応するためにも重要です。グローバル化したニーズに応えるには、日本的な慣習に囚われない視点が求められます。一方で、文化が異なり、外国籍の人材と共に働くことに慣れてない日本企業で、外国籍人材に活躍してもらうのは簡単ではありません。外国籍人材の社員が安心して就労できるように職場環境の整備や社会生活上の適切な支援が必要です。企業によっては、優秀な外国籍人材と出会うために、海外の就活イベントに参加するケースもあります。

【4】シニア層の活用

シニア層の活用もダイバーシティ&インクルージョンの取り組みの一つです。中には、スキルや経験を豊富に持っている人材もいて、人手不足の解消はもちろん、新人社員の教育への貢献も期待できます。企業によっては、雇用していた社員に継続して働いてもらえるように再雇用制度の整備や定年制度の廃止などの取り組みを実施しています。

ちなみに、2021年4月に施行された改正高齢者雇用安定法では、65歳までの雇用確保が義務、65歳から70歳までの雇用確保が努力義務と定められました。国の政策としても、シニア層の積極的な活用が推進されていることが分かります。

【5】LGBTQへの配慮

性的マイノリティであるLGBTQへの配慮もダイバーシティ&インクルージョンでは欠かせません。社員同士で多様な価値観を認め合っている、尊重される企業では、ビジネスの競争力も高くなりやすいと言えます。そのため、LGBTQといったマイノリティを受容することは、グローバル化し高い競争力が求められる近年のビジネス環境では重要な要素です。

これまでの日本企業では、そもそも性的マイノリティに対する理解が乏しいケースが多く、雇用を促進する前にLGBTQといったマイノリティへの理解を深めるための取り組みが必要です。こういった理解がない職場だと、当事者は安心して働けず、場合によっては退職する可能性があります。企業によっては、LGBTQの差別禁止を社内規定に明記したり、理解促進のためのセミナーやイベントなどを実施したりしています。

企業でのダイバーシティ&インクルージョン事例

日本ではさまざまな企業がダイバーシティ&インクルージョンに取り組んでいます。ここでは企業が実施している事例を紹介します。

女性リーダーを増やす活動|日本IBM

日本IBMでは、1998年よりリーダーポジションで活躍する女性を増やすことを目的としたJapan Women’s Council(JWC)という独自の活動をしています。JWCでは主に働き方改革に関する提言を行っています。社内で結成されたJWCの提言によって、以下のような人事制度が導入され女性が働きやすい職場が整備されています。

・育児・介護との両立を支援する在宅勤務制度
・キャリアビジョンを描くためのメンター制度
・1か月労働時間を6割、8割にできる短時間勤務制度
・コアタイムなしのフレックス短時間勤務制度
・本社内に保育所を開設

さらに女性社員や管理職、課長級以上の割合を増やすために継続的なリーダーシップ開発研修や若手女性社員向けのキャリアについて考えるワークショップの実施などを行っています。

1店舗1人以上の障がい者を雇用|ファーストリテイリンググループ

ファーストリテイリンググループでは、1店舗1人以上の障がい者雇用の実施と障がい者雇用研修に取り組んでおり、2020年の国内の障がい者雇用率は4.71%と日本の法定雇用率の2.3%を大きく上回っています。1店舗1人以上の障がい者雇用については、2012年度以降はほぼ達成しています。また、店長や社員を対象として障がい者雇用に関する研修を実施し障がいを持つ社員のパフォーマンス向上を目指しています。

外国人社員が働きやすい環境づくり|カシオ

カシオでは、外国人社員が入社後に長く働き続けられるように外国人社員の声を聞いた上で以下の取り組みを実施しています。

・外国人社員が母国に帰るための特別休暇を3年に1度のペースで付与
・お祈りするための個室を社内に整備
・外国人社員の日本語能力向上支援
・食堂メニューへの英語表記
・宗教や食文化に対応するため、食堂メニューに使用している肉のイラストを記載

これらの取り組みによって外国人社員が抱える宗教や言葉の壁などの不安を解消でき、早期の離職や労働意欲低下を回避することにつながっています。また、外国人社員の個々の能力を発揮しやすく、成果にも結びついています。

定年年齢を引き上げスキル継承|大和ハウスグループ

大和ハウスグループでは、やる気のあるシニア層が活躍できる環境を整備し、社員の育成や人脈・スキルの継承などを行いさらなる発展を目指しています。高齢者雇用安定法の改正に伴い、2013年度から定年年齢を65歳に引き上げました。さらに2015年度からは65歳での定年後も再雇用するアクティブ・エイジング制度を創設しています。

LGBTQに関する社内外の活動|JAL

JALではLGBTQの社員に配慮して、法律上の結婚をしている社員に適用する制度を同性パートナーにも適用できるようにしています。また、LGBTQの理解促進のために社内研修の実施はもちろん、社外に向けても理解促進のためのセミナー・イベントを実施しています。2019年にはJAL LGBT ALLYチャーター便を運行し、社会のLGBTQの理解促進に貢献したと、任意団体「work with Pride」から高い評価を受けています。

仕事と家庭の両立を支援|LIXIL

LIXILでは、社員が能力を発揮し、いきいきと働けるように仕事と家庭の両立を支援する制度の充実や組織風土づくりのために以下の取り組みを実施しています。

・テレワーク制度
・時間単位有給休暇
・出産や育児、介護、配偶者の転勤などで退職した社員の再雇用
・延長保育料補助や認可外保育施設の利用料補助
・男性社員向けの出産・育児休暇

特に男性社員向けの出産・育児休暇の取り組みは、日数を拡大し取得方法を柔軟にしたことで利用者が増加しました。

ダイバーシティ&インクルージョンの課題と対処法

ダイバーシティ&インクルージョンの課題として、「多様な人材が働きやすい環境が整っていない」「既存社員から受け入れられない」の2つが挙げられます。ここでは、それぞれの課題と対処法を紹介します。

多様な人材が働きやすい環境が整っていない

日本の企業ではダイバーシティ&インクルージョンの推進を阻害する要因として、環境が整っていないケースが挙げられます。以降で、ダイバーシティ&インクルージョンの実現に必要な環境を紹介します。

制度の整備

ダイバーシティ&インクルージョンを推進するためには、評価や働き方の制度を多様な人材に受け入れられるように整備する必要があります。例えば、評価制度のケースでは、個人の能力やスキル、貢献度を軸にする、といったことです。年齢や勤続年数に応じて評価が上がる年功序列制度だと、外国人社員にとっては不満の原因になりかねません。評価制度を見直し、昇給・昇進基準が明確になればモチベーションの維持や人材の定着などの効果が期待できます。

ほかにも働き方に関する制度では、テレワーク制度時間単位有給休暇制度の導入などの多様な働き方につながる制度の整備も大切です。

職場環境づくり

ダイバーシティ&インクルージョンの推進には、多様な人材にとって働きやすい職場環境づくりも重要です。働きやすい職場環境が整備されれば、人材の定着につながります。カシオが実施しているメニュー表記の工夫やお祈り部屋の設置は良い例です。他にも、障がいを持つ社員やシニア層が利用しやすいようにオフィスをバリアフリー化する、小さなお子さんがいる社員が子育てしながら働けるよう、保育所をオフィスに併設するなどの取り組みをしている企業もあります。

コミュニケーション方法の工夫

ダイバーシティ&インクルージョンでは、国籍や年齢など幅広い人材を受け入れるため、コミュニケーションに食い違いが生じやすく、コミュニケーション方法の工夫が必要です。企業では、外国人社員との言語の壁を解消するため、各部署に外国語を話せる人材を配置したり、障がいを持つ社員とは障がいの種類や程度に応じて対応してもらう業務や教え方を工夫したりといった取り組みを実施しています。コミュニケーションが活発になると、生産性の向上や社員満足度の向上などが期待できます。

既存社員から受け入れられない

ダイバーシティ&インクルージョンの課題には、多様な人材が既存社員に受け入れられないことも挙げられます。既存社員の中には従来の企業文化から脱せない人や、無意識のうちに偏見を持った言動を取る人もいるため、タイバーシティ&インクルージョンの必要性や推進によるメリットを理解してもらう取り組みが必要です。

既存社員が多様な人材を受け入れるためには、研修を実施しダイバーシティ&インクルージョンの理解を深めるのが効果的です。研修には社員だけでなく経営陣も参加すると、会社として本気で取り組む姿勢を示せるので社員の意識変容が期待できます。

まとめ

ダイバーシティ&インクルージョンとは、組織において多様性を重視し個々の違いを受け入れた上で、組織の活動にその違いを生かしていこうという考え方です。お互いを受け入れながら成長し、新たなサービスや価値を創造することができ、働き手不足や消費者のニーズの多様化などに対応できると注目されています。ただし、ダイバーシティ&インクル―ジョンを社内に浸透させるためには、職場環境整備や社内の理解促進などが必要です。

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監修/中森規仁(中小企業診断士)

コピーライター、人事(採用担当)を経て、株式会社クイックに入社。ディレクターとして、求人広告や採用企画(採用プランニング・採用ツールのご提案)に携わる傍ら、経営戦略にひもづいた人材採用・活用のコンサルティング業務にも従事。2018年より本メディアの編集・執筆も兼任。

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