2023年の転職市場動向と2024年の中途採用見通し
ここでは、リクルートワークス研究所「中途採用実態調査(2023年度上半期実績、2024年度見通し正規社員)」をもとに、2023年の中途採用動向と2024年の見通しを紹介します。
(※参考・引用)株式会社リクルート リクルートワークス研究所:「2024年度見通し 正規社員 | 中途採用実態調査」
6割が充足していない | 2023年における中途採用動向
2023年度上半期では、中途採用市場は引き続き活発であったものの、必要な人数を確保できなかった企業が58.5%と約6割の企業が採用人数を充足していない結果となっています。「確保できた」企業の割合と「確保できなかった」企業の割合の差(中途採用確保D.I.)で見ると、「全体」で△19.3%ポイントですが、業種別では、金融・保険業以外の業種で中途採用確保D.I.はいずれもマイナスです。特に、「飲食店・宿泊業」は△33.9%ポイント、「運輸業」で△28.8%ポイントと、全体的に人材確保難に陥っていることが見て取れます。
ますます激化する売り手市場 | 2024年の見通し
2024年の中途採用の見通しは、「増える-減る」のポイントで全体で+18.4%ポイントと採用意欲の高まりがうかがえます。従業員規模別でも、「1000人未満」で+16.4%ポイント、「1000人以上」で24.5%ポイントと、従業員数にかかわらず採用人数を増やす企業が多いことが明らかです。
業種別に見ると、「飲食店・宿泊業」は+32.9%ポイント、「運輸業」は+26.0%ポイント、「小売業」は+24.3%ポイントと、人手不足が顕著な業種で採用意欲が特に高いことが明らかになっています。
中小企業でも進む異業種・異職種採用
人手不足を背景に、多くの企業が異業種・異職種からの中途採用を進めています。リクルートワークス研究所の【異業種・異職種採用を実施・予定している企業の割合と、前年比較】の調査によると、「既に取り組んでいる」企業が31.9%、「今後取り組む予定」の企業が18.0%で、合わせて49.9%の企業がこの取り組みを進めています。特に「飲食店・宿泊業」での取り組みは66.5%、「運輸業」では61.2%、「小売業」では54.8%と、人手不足が顕著な業種で高い割合を示しています。
2024年卒の新卒市場動向と2025年卒の新卒採用見通し
次に、リクルートワークス研究所「採用見通し調査(新卒:2025年卒)」をもとに、2025年卒の新卒採用動向と見通しを紹介します。
(※参考・引用)株式会社リクルート リクルートワークス研究所:「ワークス採用見通し調査(新卒:2025年卒)」
充足率は7割強を割る | 2024年卒における新卒採用動向
2024年卒における「新卒採用充足率」は74.7%と、2014年卒以降、前年に続き、もっとも低い結果となっています。
従業員別に見ると、「5000人以上企業」の充足率は90.3%、「1000~4999人企業」は93.5%、「300~999人企業」は80.8%、「5~299人企業」は60.0%と、従業員規模が大きいほど充足率が高い傾向にあります。大半の従業員規模で充足率が減少していることも確認できます。
業種別では、「建設業」が49.1%ともっとも低く、前年比17.9%ポイント減少しています。その他、「製造業」は前年比△4.8%ポイント、「サービス・情報業」では前年比△3.1%ポイントとそれぞれ減少している一方、「金融業」は前年比+9.2%ポイントと増加しています。
引き続き高い採用意欲 | 2025年卒の見通し
2025年卒の新卒採用見通しでは、採用を増やす企業が15.6%と昨年の15.5%とほぼ横ばいの一方、減少する企業は4.8%と前年の3.6%から増加しました。結果的に、「増える-減る」のポイントは+10.8%ポイントと前年比で1.1%ポイント減少しています。
従業員別に見ると、全ての従業員規模で「増える」が「減る」を上回っています。具体的には、「5000人以上の企業」は+18.0%ポイント、「1000人以上の企業」は+16.3%ポイント、「1000人未満の企業」は+9.0%ポイントとなっており、従業員規模が大きいほど採用意欲が高いことが示されています。
知っておきたい新卒採用におけるインターンシップの実施見込みと規模別の目的
続いて、リクルートワークス研究所:「ワークス採用見通し調査(新卒:2025年卒)」をもとに、新卒採用におけるインターンシップの実施見込みと規模別の目的を説明します。
(※参考・引用)株式会社リクルート リクルートワークス研究所:「ワークス採用見通し調査(新卒:2025年卒)」
大手企業の半数実施!?インターンシップ(タイプ3)の実施見込み
政府の就活ルール見直しにより、2025年卒から「汎用的能力・専門活用型インターンシップ(タイプ3)」が導入され、採用直結型インターンシップが可能になっています。
リクルートワークス研究所の調査によると、「全体」では27.6%が実施済・実施予定であることが確認できます。従業員規模が大きい企業ほど実施率が高く、「5000人以上企業」は53.5%、「1000~4999人企業」は39.3%、「300~999人企業」は32.0%、「5~299人企業」は17.7%です。業種別では、「建設業」が37.5%、「製造業」が33.7%と特に高い実施率を示しています。
「汎用的能力・専門活用型インターンシップ(タイプ3)」を詳しく知りたい方は、「インターンシップの内容どうする?事例や企画、25卒以降のルールも解説!」の記事を参考にしてください。
大手企業は理解促進、中小企業は専門人材アプローチ!?企業規模別インターンシップの目的
汎用的能力・専門活用型インターンシップ(タイプ3)の主要実施目的は、「全体」として最も多いのが「学生の企業や仕事への理解促進」で65.8%です。次に「専門人材への早期アプローチ」が21.0%、「学生のスキルや適性の評価」が9.3%と続いています。業種別では、「流通業」が「学生の企業や仕事への理解促進」で最も高い77.8%を記録しており、他の業種も60%以上です。従業員規模別では、規模が大きい企業ほどこの目的が高く、一方で規模が小さい企業では「専門人材への早期アプローチ」の割合が高い傾向にあります。
中途採用によくある採用課題
激化する採用市場を乗り切るには、採用課題への対応が不可欠です。ここでは、中途採用によくある採用課題を紹介します。
設定した人材要件が高すぎる
設定する人材要件が過度に高い場合、応募者が集まらないなどの問題が生じることがあります。
具体的には、必須スキルと歓迎スキルを明確に区別せずに、求めるスキル全てを提示すると、全ての条件を満たす求職者が見つかりにくくなり、結果として応募者が集まりにくくなるリスクがあります。特に、高度な技術や専門知識が求められる職種においては、厳しい条件が候補者不足を引き起こす原因となることもあるでしょう。企業は採用市場の動向を踏まえ、求めるスキルセットに対する期待を適切に調整し、必須スキル(MUST条件)と歓迎スキル(WANT条件)に採用基準を区分し、人材要件を設定することが重要です。
適した採用チャネルを選定していない
中途採用の場合、採用ターゲットに適した採用チャネルを選定していないと、応募が集まりにくい傾向があります。
特に、専門能力やニッチ分野の知識を求める場合は、ナビサイトや求人広告では「集まりにくい」「人材要件を満たす人材がこない」といった状況に陥りやすいでしょう。採用ターゲットの志向性やニーズを把握し、ターゲットに合った採用活動を行うべきです。例えば、専門職の採用の場合、業界固有のジョブフェアに参加するほか、ダイレクトリクルーティングやヘッドハンティングなど、自社の状況に合わせて採用チャネルを検討してください。
ワントゥワン型の採用手法を取り入れていない
ナビサイトや求人広告など、従来型のマス型の採用手法だけに頼りすぎると、自社の採用ターゲットにマッチした求職者を集められないリスクがあります。
ダイレクトリクルーティングなど、個別アプローチによるワントゥワン型の採用手法であれば、採用ターゲットに対して直接アプローチが可能です。そのため、より質の高い応募者を確保しやすく、自社にマッチした人材を集めやすいため、採用のミスマッチを防ぐことができます。また、リファラル採用では、社員のネットワークを活用することで、信頼性の高い人材を採用できるメリットがあります。
中途採用における採用手法を詳しく知りたい方は、「【2023年版】採用手法12選を徹底解説|最新トレンドや選定ポイントも紹介」、中途採用の課題を知りたい方は「採用課題とは?見つけ方や一覧、採用フローを徹底解説!【チャート図付】」の記事をそれぞれ参考にしてください。
新卒採用によくある採用課題
続いて、新卒採用によくある採用課題を紹介します。
選考早期化に対応できていない
新卒採用市場では、政府の就活ルール見直しによって採用直結型インターンシップが解禁され、選考の早期化傾向が加速しています。
こうしたなか、企業はリソースの不足や世代にマッチした採用手法に対応できないケースがあります。特に、中小企業は人事部門のリソースが限られ、早期選考に対応するための迅速な対応が困難です。選考早期化に対応するには、効果的な採用ツールや採用のAI活用を検討するなど、限られたリソースで効果の高い採用手法を模索することが重要です。
採用のAI活用を詳しく知りたい方は、「採用のAI活用とは?プロセス・目的別活用法や導入フローを徹底解説!」の記事を参考にしてください。
十分なインターンシッププログラムを実施できていない
就活ルールの見直しによってインターンシップのあり方が大きく変わったほか、リソースの不足もあり、十分なインターンシッププログラムを実施できない企業も多いでしょう。特に、中小企業ではリソース不足から、効果的なインターンシップを企画・運営するのが困難です。十分なインターンシッププログラムを実施するには、採用ターゲットのニーズを捉え、効果的なプログラムを企画設計することが必要です。
効果的なインターンシッププログラムの作り方を詳しく知りたい方は、「インターンシップの内容どうする?事例や企画、25卒以降のルールも解説!」の記事を参考にしてください。
自社の魅力を打ち出せていない
会社の魅力は、求職者にとって企業選定の重要な判断基準のひとつです。
自社に所属しているとその魅力が見えづらく、「自社に魅力なんてない」と否定的に感じることが多いです。しかし、「魅力は引き出せるもの」であることを念頭に、さまざまな視点から会社の魅力を見つけ出し、作り出すことが重要です。企業の魅力を適切に打ち出すことで、競合他社に打ち勝ち、採用ターゲットを効果的に集めることが可能です。
会社の魅力の出し方を詳しく知りたい方は、「会社の魅力を出すには?8つの切り口と魅力の見つけ方フレームワークを解説!」の記事を参考にしてください。
採用課題への取り組み方
続いて、採用課題への取り組み方を解説します。
ロジックツリーの活用
ロジックツリーを用いて採用プロセス全体の課題をツリー状に展開し、原因究明するアプローチが有効です。このツールを活用することで、企業は採用活動の各ステージで発生する問題を明確にし、それに対する具体的な解決策を導くことができます。ロジックツリーは、特に複雑な問題に対して、構造的かつ戦略的なアプローチを提供し、効果的な改善策を導き出すのに役立ちます。
採用フローの再構築
採用フローの再構築は、企業が直面する多くの採用課題を解決する鍵となります。
企業は採用フローを詳細に検討し、不要なステップを削除または簡略化することで、よりスムーズかつ迅速な採用が可能になります。また、デジタルツールやAIを活用することで、リソース不足などの根本的な採用課題の解決に繋がります。これにより、採用担当者は戦略的なタスクに集中でき、全体的な採用活動の向上が期待できるでしょう。
採用課題の取り組み方を詳しく知りたい方は、「採用課題とは?見つけ方や一覧、採用フローを徹底解説!【チャート図付】」の記事を参考にしてください。
中途・新卒別おすすめ採用手法一覧
最後に、中途・新卒別に、おすすめ採用手法を紹介します。
中途におすすめ採用手法
中途採用手法は、一律的なアプローチをする「マス型」と、個別的なアプローチをする「ワントゥワン型」の全てが対象となります。なかでも、ワントゥワン型の「リファラル採用」と「アルムナイ採用」は、中途採用を前提とした採用手法であり、多様な採用チャネルがありますので、自社の採用ターゲットに効果的な採用手法を検討しましょう。
【マス型】
- 就職ナビサイト
- 人材紹介
- 各種イベント
- クリック課金型
- ハローワーク
- 自社採用サイト
- ミートアップ
- ソーシャルリクルーティング
【ワントゥワン型】
- ダイレクトリクルーティング
- リファラル採用
- ヘッドハンティング
- アルムナイ採用
新卒におすすめ採用手法
新卒採用は、中途採用とは異なり、マス型の採用手法が主となります。
学生の大半が登録するリクナビなどの就職ナビサイトは、欠かせない手法といえるでしょう。また、近年では、攻めの採用手法としてダイレクトリクルーティングのニーズが高まっています。そのため、自社の採用ターゲットに適した採用手法を選定することが重要です。
【マス型】
- 就職ナビサイト
- 人材紹介
- 各種イベント
- クリック課金型
- ハローワーク
- 自社採用サイト
- ミートアップ
【ワントゥワン型】
- ソーシャルリクルーティング
- ダイレクトリクルーティング
採用手法について詳しく知りたい方は、「【2023年版】採用手法12選を徹底解説|最新トレンドや選定ポイントも紹介」の記事を参考にしてください。
まとめ
本記事では、中途採用と新卒採用における採用市場の動向と見通しのほか、採用課題や取り組み方、おすすめ採用手法を解説しました。
採用市場は常に変化しており、企業は柔軟で戦略的なアプローチが必要です。中途採用ではターゲット候補者に最適なチャネルで効果的にアプローチすること、新卒採用では学生との早期関係構築とインターンシップが重要になります。本記事を参考に、最新の採用市場を捉え、採用ターゲットに適した採用手法に取り組みましょう。
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