エンジニア採用の動向
経済産業省の「IT人材需給に関する調査」によると、2018年の段階でエンジニアを含むIT人材が22万人不足しており、2030年には最大79万人のIT人材が不足すると予測されています。ここでは、エンジニア採用の現状を紹介します。
需要と供給のバランスが合っていない
DXの推進やIT技術の発展によりエンジニアを必要とする企業が増える中、エンジニアの人口は需要に追いついていません。
厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和3年9月分)について」によると、ハローワークにおけるエンジニア(正社員)の有効求人倍率は1.46倍です。また、dodaが提供する「転職求人倍率レポート」における2021年7月時点での技術系(IT・通信)の転職求人倍率は9.17倍となっており、これらのデータからもエンジニアが不足していると分かります。
エンジニア獲得が困難になっている
エンジニア獲得が難しくなっている理由として、「需要と供給のアンバランスによる獲得競争の激化」に加え「エンジニア業務の専門性の高さ」も挙げられます。
エンジニアと言っても、以下で挙げるように業務領域が細分化されており、それぞれで必要なスキルや経験が異なります。専門性が高いが故に人事担当者は現場のニーズを把握するのが難しい状況になっています。
エンジニアの種類 | 業務内容 |
---|---|
システムエンジニア | コンピューターシステムの提案、設計、開発、テストまでに携わる。 |
プログラマー | 仕様書をもとにプログラミングを行う。 |
インフラエンジニア | サーバーやネットワーク、クライアント端末などのインフラの設定・管理を行う。 |
ネットワークエンジニア | ネットワークシステムの設計・構築・運用・保守を専門的に行う。 |
フロントエンドエンジニア | ユーザーが直接見たり、触れたりする部分を開発する。 |
バックエンドエンジニア | ユーザーの目に見えないサーバーやデータベースなどの処理を担当する。 |
データベースエンジニア | データベースの設計・開発・運用・保守を行う。 |
制御・組み込みエンジニア | 家電製品や産業用機器などに組み込まれるソフトウェアの設計・開発を行う。 |
ゲームエンジニア | 家庭用ゲームやスマートフォンアプリのゲーム開発を行う。 |
採用担当者がエンジニアの知識や経験がない場合、現場のニーズを正確に把握できず、自社に必要な人材の獲得が難しくなります。人事担当者は自身の知識を増やしたり、最新情報に更新したりするため、自社エンジニアとの連携が必要です。
エンジニア採用成功のために社内ですべきこと
エンジニアを採用するためには社内で対策を講じる必要があります。ここではエンジニア採用を成功させるために社内ですべき3つの対策について、実施すべき背景やメリットを紹介します。
ペルソナを設計し人材要件を見直す
ペルソナを設計し人材要件を見直すと、自社に必要なスキルや経験が明確になります。エンジニア採用を進めても「そもそも応募が集まらない」「応募があっても求めるスキルを持っていない」などの悩みがある場合、人材要件が適切に設定できていない可能性があります。エンジニアの市場価値が高まっている中で、給与水準や待遇を適切に設定しなければ応募は期待できません。
そこで役立つのが採用ペルソナです。採用ペルソナは、採用したい人物の年齢や性別、スキル、経験などの情報を具体化したものです。採用ペルソナを設計すると、業務に必要な言語やスキルなどの採用基準が統一されミスマッチを防ぐ効果が期待できます。ペルソナ設計について詳しくは「採用活動におけるペルソナの作り方 メリットや具体例を紹介」で解説していますのでご覧ください。
社内のエンジニアに協力を依頼する
社内エンジニアに採用活動に協力してもらうと、エンジニア採用の成功が近づきます。例えば、ペルソナ設計に関わってもらい、エンジニアのニーズを満たした求人内容を作ったり、面接や面談に参加してもらい、エンジニアの視点から求職者が自社にマッチするかを見極めたりすることが可能です。マネージャーやリーダーを目指しているエンジニアは、チームの今後や後継者の育成に興味を持っているため、積極的に参加してくれます。
働きやすい環境を整備する
働き方改革が進み、働きやすさを重視して企業を選ぶエンジニアが増えているため、企業はエンジニアが働きやすい環境を整備する必要があります。日経BP社の技術系媒体が実施した「エンジニア転職意識調査」によると、エンジニアが転職で重視する点は、給与、やりがいに次いで、「休日・休暇」「労働時間」といったワークライフバランスに関する項目が上位となっています。
「朝が苦手だからフレックスタイム制の企業が良い」「移動時間がもったいないからリモートワークができる企業が良い」など考えているエンジニアが一定数いることを踏まえ、応募者が働きたいと思える環境を整えてください。
また、育児休暇や短時間勤務などライフイベントに合わせた働き方ができる体制の整備も重要です。採用活動で選ばれやすくなる上に、エンジニアの離職を防ぐ効果も期待できます。
【媒体別】エンジニア採用に活用できる媒体の特徴
エンジニア採用をする上で、媒体の活用は欠かせません。ここでは、5つの媒体の特徴やメリットについて解説します。
求人サイト
求人サイトは、未経験者の新卒採用から経験者の中途採用までエンジニア採用に幅広く活用できます。求人情報の掲載に費用がかかる掲載広告型と、採用できたときに費用が発生する成功報酬型の2つがあります。
求人情報を掲載するとエンジニア職に毎回一定数の応募がある企業は、掲載広告型がおすすめです。掲載広告型の求人サイトでは、固定料金で一定期間求人情報を掲載できます。複数人採用できれば採用単価を抑えられる点がメリットです。ただし、期間が限られているため、求人情報を出すタイミングを誤ると、採用につながらず料金が無駄になるケースもあります。
成功報酬型は、スキルや経験のあるエンジニアをピンポイントで採用したい企業におすすめです。成功報酬型の求人サイトでは、求人情報を掲載しているだけでは費用がかからず、長い時間をかけて人材を見極められます。ただし、成功報酬型の中には、選考がスタートした段階で費用が発生するタイプもあるので、導入前に料金形態の確認が必要です。
ハローワーク
ハローワークは、就職困難者に対して職業紹介をする厚生労働省の機関です。求人情報の掲載に費用がかからないため、採用コストを抑えたい企業におすすめです。ただし、求人倍率の高止まりしている現状では、経験のあるエンジニアがあえてハローワークを利用することはほとんどありません。しかし、ハローワークでは、IT関連の職業訓練を受講する求職者も多いため、若手の未経験採用を検討される場合は、チャネルの一つとして活用が可能です。
エージェント(人材紹介会社)
エージェント(人材紹介会社)は、企業と求職者の間に入って両者のマッチングを手伝います。選考にかける人的リソースが少ない企業やエンジニア採用に慣れていない企業で活用できます。エンジニア採用でエージェントを活用するメリットは、自社で必要な言語やスキル、経験などを伝えると、登録者の中から条件に合った人材をピンポイントで紹介してもらえる点です。採用選考の負担が減り、ミスマッチの防止も期待できます。
人材派遣サービス
人材派遣サービスの特徴は、派遣会社と労働者が雇用関係を結ぶ点です。給与や福利厚生は派遣会社が負担し、業務の指揮命令は自社が行います。エンジニアの教育体制が整っていない企業や欠員補充のためにすぐに人材が欲しい企業で活用できます。期間やポジションを限定して即戦力を獲得できるため、教育や採用にかかるコストの削減が可能です。
ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングは、企業が直接求職者にアプローチする方法です。スカウトメールやSNS、リファラル採用などが該当します。応募を待っているだけでは出会えない、転職潜在層のエンジニアにもアプローチできる点や採用にかかる金銭的コストを抑えられる点がメリットです。ただし、ダイレクトリクルーティングの実施には手間がかかります。エンジニア採用のノウハウが確立されており、人的リソースに余裕のある企業で活用できます。まだエンジニア採用のノウハウが確立されていない企業でも、中長期的に取り組むことでノウハウが蓄積されるため、ダイレクトリクルーティングに挑戦するのも一つの手です。
エンジニア採用に特化した媒体10選
エンジニア採用に特化した10の媒体を「求人サイト」「エージェント」「人材派遣サービス」の3つのカテゴリに分けて紹介します。
求人サイト
求人サイトは、エンジニアをなるべく早く採用したい企業におすすめです。転職顕在層が多数登録しているため、短期間で採用できる可能性があります。
求人サイトを選ぶときは、登録ユーザー層を確認し、自社の求める人材の登録数の多いものを選んでください。気になる人材に積極的にアプローチしたい方は、スカウトメールの機能がついた求人サイトがおすすめです。
dodaエンジニアIT
dodaエンジニアITは、ITエンジニアに特化した求人サイトです。ITエンジニア、ものづくりエンジニアならではの検索項目が設定されており、自社にマッチした求職者を見つけやすいメリットがあります。また、業界専任の担当者がつき、業界最大級の膨大なデータをもとに採用を成功させるための選考の進め方や、ターゲットに伝えるべき情報などのアドバイスを受けることができます。
Forkwell Jobs
Forkwell JobsはIT・Webエンジニアに特化した求人サイトです。求人情報を掲載して応募を待つことも、データベースから条件にマッチした人材を探しスカウトメールの送信もできます。また、スカウトメールがスパムメールにならないように文面を作成できるため、エンジニアがストレスを感じにくく、高い開封率と返信率が強みとなっています。
マイナビ転職 エンジニア求人サーチ
マイナビ転職エンジニア求人サーチは、ITエンジニアとものづくりエンジニアに特化した求人サイトです。「用いる言語・スキル」「携わる業種・領域」「担当する業務」などの軸で検索でき、マッチングの精度の高さが強みです。
IT転職チャレンジャー
IT転職チャレンジャーは、Webやスマホ、ゲーム業界で働くエンジニアに特化した求人サイトです。スキルチャレンジプランというプランが特徴的で、登録すると通常プランでは見られない、応募者のスキル情報が記載されたシートを見られるようになります。スキルから応募者を見極められることに加え、優秀でモチベーションの高い人材と接触できる機会を作れる点がメリットです。
type
typeは、エンジニアを採用したい中小IT企業向けの求人サイトです。エンジニア採用のノウハウを詰め込んだパッケージプランがあります。エンジニア採用を熟知した専属担当がつき、ターゲット選定や自社の強みの分析、広告運用などのサポートを受けられます。
Green
Greenは、IT・Web系人材の経験者採用に特化した求人サイトです。経験やスキルから候補者を探すことができます。成功報酬型で、料金が一律なので採用コストを抑えられます。
エージェント(人材紹介会社)
エージェント(人材紹介会社)は、採用基準に沿って人材を紹介してくれるため、求めるスキルや経験を持つエンジニアからなかなか応募が集まらない企業におすすめです。
エージェントを選ぶときは、エンジニア採用の知識や実績のあるエージェントが在籍しているかを確認してください。
レバテックキャリア
レバテックキャリアは、ITエンジニア・デザイナー専門のエージェントです。採用課題から必要な条件を整理した上で、正社員・契約社員・業務委託など、採用ニーズに合わせた人材を紹介してもらえます。
G Talent
G Talentは外国人ITエンジニア専門のエージェントです。日本語が堪能なバイリンガルの人材から、最先端のIT技術を持つ人材まで、自社の社風やニーズにマッチした外国人エンジニアを紹介してもらえます。
人材派遣サービス
人材派遣サービスは、急に人員が必要になった企業におすすめです。自社のニーズに沿って即戦力のエンジニアを短期間で派遣してもらえます。
エンジニアは業務領域が細分化されているため、自社で必要なスキルを持ったエンジニアが登録しているかを確認してください。
ちなみに、派遣形態には雇用期限がある登録型派遣、長期間雇用し続ける常用型派遣、正社員として雇用することを前提とした紹介予定派遣の3種類があります。事前に自社の状況を考慮して、どの派遣形態を利用するかを選ぶことが必要です。
パソナテック
パソナテックは、46,000人を超えるエンジニアが在籍する人材派遣サービスです。自社の要望に合ったスキルを持つエンジニアを、一人から複数人まで柔軟に派遣してもらえます。また、エンジニアが本来のパフォーマンスを発揮できるためのサポート体制が整っている点が強みです。
パーソルエクセルHRパートナーズ
パーソルエクセルHRパートナーズは、機電系からIT系まで幅広くエンジニアが在籍する人材派遣サービスです。下流工程から上流工程までこなせる人材がおり、各工程に応じて適切な人材を派遣してもらえます。また、エンジニアが働き続けられる環境の実現をミッションに掲げており、20年以上の経験のあるベテランや子育てや介護でブランクのある人材の派遣を積極的に実施しています。
まとめ
将来的にさらなる人手不足が懸念されるエンジニア。エンジニアの採用を成功させるためには、社内エンジニアの意見を踏まえて働きやすい職場環境を整える、人材要件を整理するといった対応が必要です。その上で、適切な媒体を選択してエンジニアの確保を目指してください。
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