人事異動の目的とは?フローやスムーズに進めるためのポイントを解説 COLUMN

公開日:2022.12.05

更新日:2022.12.05

人事異動の目的とは?フローやスムーズに進めるためのポイントを解説

「人事異動を担当することになったが、進め方がわからない」
「異動の旨を、本人にどのように伝えていいのか悩んでいる」

どの企業でも当たり前のようにおこなわれている「人事異動」。通例化している施策だからこそ、人事異動の目的や適切なフローが社内でまとめられていない企業も意外に多いようです。

この記事では、人事異動の目的やメリット、デメリット、正しい進め方などを解説します。人事異動を初めて担当する方や、スムーズに人事異動をおこないたいと思っている方は、ぜひ参考にしてください。

目次

人事異動とは

人事異動とは
人事異動とは、企業が従業員に命じ、その配置や地位を変更することです。そもそも人事異動という言葉に明確な定義はありませんが、一般的には「社員の配置や地位、勤務条件を変えること」と認識されています。

人事異動は一年を通しておこなわれるものですが、日本企業では事業戦略や組織戦略が変わる、年度末や決算期のタイミングに実施されることが一般的です。人事異動を大別すると「企業内の人事異動」と「企業間の人事異動」のふたつに分けることができます。

  • 企業内の人事異動:企業内部における職位や部署の変更を意味する人事異動
  • 企業間の人事異動:出向・転籍など、グループ企業間で実施される人事異動

 

このように、組織内の小さな異動から組織を超えた大がかりな異動まで、人事異動には目的に応じてさまざまな形態が存在します。

人事異動の目的

人事異動の目的
多くの企業人にとって身近な人事異動について、あらためて本来の目的を確認していきましょう。

組織の活性化

部署間異動によって互いに新しい人材を迎え入れることで、組織の新陳代謝や活性化が期待できます。

部署のメンバーが長年固定されていると「人間関係が広がっていかない」「新しいアイデアが生まれにくくなる」などの現象が起こりやすくなります。その結果、組織が活性化せず、企業の競争力が下がってしまう事態を招きかねません。

このような事態を避けるために、組織の改編やそれにともなう人事異動をおこない、組織の活性化を狙います。組織の活性化を狙う場合は、「対象組織に欠けている人材(刺激になる人材)」や「企業方針を象徴する人材」などが対象者になることが多いでしょう。

人材の最適配置・育成

今より力を発揮できる人材配置や、よりスキルを伸ばす育成目的のためにも、人事異動は有効です。

人材の適性を見極めて配置転換することで、これまで成果を出せていなかった人材が、新しい環境で能力を発揮できるようになるケースもあります。もちろん、今活躍している人材に対し、さらなる成果を期待して抜擢することも人事異動の目的のひとつです。

いずれのケースでも、適材適所の配置をおこなうタレントマネジメントの一環として、人事異動は効果を発揮するでしょう。

特にゼネラリストを育成する方針の企業では、人材開発のためにジョブローテーションが盛んに実施されます。人事異動を定期的におこない、さまざまな環境を経験させることで、人材は多面的なスキルを身に着けられるでしょう。

人事異動のメリット

人事異動のメリット
人事異動をおこなうことで期待できるメリットを、企業視点・従業員視点で解説します。

企業にとってのメリット

企業にとってのメリットは、「戦略を遂行しやすい組織の実現」「組織の風土改革」「社員のモチベーションアップ」など数多くあります。

例えば、次のような効果が期待できます。

  • 人事異動によって経営戦略に応じた新しい組織体制を作る
  • 組織の風土改革を人事異動によっておこなう
  • 力を発揮しきれない社員を人事異動によって復活させる

 

効果的な人事異動を実施することで、従業員側から「転職せずとも社内での異動を通じてキャリアアップできる」と考えてもらえるため、従業員の定着率アップも期待できます。

従業員にとってのメリット

従業員にとっての人事異動のメリットは「キャリアアップ・スキル開発」「新しいコミュニティ形成」などが挙げられます。

人事異動で新しいチームや部署に配属されて、未知の業務を担当することで、新たなスキルや経験を得ることが期待できます。スキルアップや経験値の増加により、より広い範囲で自身のキャリアを考えられるようになるでしょう。

また、特定の部署で仕事をしていると、人間関係も固定されがちです。人事異動を通じて新しい人間関係を築くことは、会社員として人脈を広げるメリットにつながります。

人事異動のデメリット

人事異動のデメリット
人事異動はメリットだけでなく、デメリットもあります。しかしあらかじめ対策をおこなえば、解消できることもあります。

企業にとってのデメリット

人事異動による企業側のデメリットは大きく2つあります。
1つ目のデメリットが、人事異動にともなう業務引継ぎの手間が発生することです。

人事異動が実施されると、前任者から後任者へ業務を引き継ぐことになります。
引継ぎ期間に業務ストップという時間のロスが発生するのはもちろんのこと、うまく引継ぎができなかった場合は、異動後の業務に支障をきたしてしまうでしょう。

繁忙期や業務プロセスなどを考慮したうえで、人事異動ができる組織状態なのかを見極めるとともに、引継ぎ期間も見越したゆとりのある内示をするよう注意してください。

2つ目のデメリットが、人事異動によって社員のモチベーション低下が発生するリスクです。

会社としてはよかれと思っていたとしても、本人としては望まない異動であったといったケースです。一時的なモチベーションダウンのみならず、最悪の場合、退職にまで発展しかねません。

本人へ説明する際には、異動の理由や新たな異動先での期待をきちんと伝え、モチベーションを低下させないように留意しましょう。

従業員にとってのデメリット

従業員にとってのデメリットは、個人によりさまざまですが、おおよそ環境変化がネガティブに働く場合に起こりがちです。

例えば、異動先が自分の希望と違う場合のモチベーションダウンです。
勤務地変更がともなう人事異動では、通勤経路や通勤時間の変更など、プライベートにも影響する可能性があります。転居をともなう転勤ともなれば、配偶者の仕事調整や子どもの転校も避けられません。

近年コロナ禍でリモートワークを始めとする自由な働き方が進んだ影響で、NTTグループやAIG損害保険などで、望まない転勤を廃止する動きが広がっています。
2022年実施のある調査では、働く人の64%が「転勤は退職のキッカケになる」と回答していることもあり、今後はさらに転勤には配慮が求められるでしょう。
参考:転勤に関する意識調査【エン・ジャパン】

また、職種や職場環境の変化は、心身にも負担があります。
本人が前向きに取り組んでいる場合でも、新しい環境は前向きな刺激がある一方で、新しい仕事を覚えるだけでなく人間関係の構築も同時におこなわなければなりません。もし新しい職場での関係構築がうまくいかない場合、メンタルヘルスに影響を及ぼす恐れもあります。

人事異動シーズンが終わって安心するのではなく、異動者の定着がスムーズに進んでいるか、異動後はしばらく注意深く様子を見守るようにしてください。

人事異動のフロー

人事異動のフロー
人事異動は、安易な思いつきや場当たり的におこなうものではありません。適切な4つのフローを確認し、事前にきちんと準備するようにしましょう。

現状調査・ヒアリング

事業戦略が見直される時期に近づいてくると、方針や組織構成の検討が始まります。その際、各部門の要望や意向を収集するようにしてください。

「人材を増やしたい」「退職意向がある人材を異動させたい」などの現場の情報を集め、それらの情報を事業成長や組織運営の観点から精査していきます。

各部門の責任者にヒアリングすることが一般的ですが、気になる部署があれば現場社員などその時々に応じて情報収集先を変えるようにしましょう。

異動者の決定

異動者の決め方は、各社によって異なりますが、多くの場合は経営会議に代表される会社の最高意思決定ボードで決定されます。

人事としては、前章の現状調査・ヒアリングで収集した情報をまとめ、人事異動の可否が判断できる情報提供を心がけましょう。

「候補者一覧」の単なる情報提供ではなく、異動元と異動先の組織の状態、対象者のこれまでのキャリアや実績、異動により予測されるメリット・デメリットなど、多角的な情報提供が望ましいです。

情報提供の際、異動対象者は同一フォーマットに整えるようにしましょう。最近はタレントマネジメントに特化したHR系SaaSシステムを活用すると、自動的に情報がフォーマットに収まるので効率が上がりやすくなります。

異動候補者への打診・通知

対象者への異動の打診や通知は、直属の上司からおこなうことが一般的です。そのため、異動の際にはまずは候補者が在籍している部署の上司に、異動させたい理由や異動先で任せたいミッションなどを伝えましょう。

もし候補者から承諾を得られない場合は、承諾できない理由を上司経由もしくは本人から丁寧に確認したうえで、経営側に差し戻します。

人事異動を命じる権利が就業規則で定められている場合、原則として本人は人事異動を拒否できません。異動拒否について従業員側の意向や意見をどの程度まで汲み取るかは、最終的には企業の方針によって変わります。

人事発令

異動が決定したら、異動元・異動先などの関係部署に周知していきます。
異動先の部署ではその人を受け入れるための準備があるので、時間的な余裕も含めて丁寧に進めていきましょう。

多くの場合、正式な辞令を交付する前に、異動について内示を進めます。
仕事の引き継ぎや転居など、異動をスムーズに執りおこなうための準備期間を用意するためです。
目安として1ヵ月前から1週間前に内示する企業が多いでしょう。

最終的には公式な「人事発令」として、全社広報をおこないます。センシティブな情報でもあるため、広報前の情報漏洩や情報の記載ミスには細心の注意を払うようにしてください。

人事異動の対象者の決め方

人事異動の対象者の決め方
人事異動の対象者の決め方は、さまざまな角度で検討が進められます。

一般的には、以下の観点で対象者の候補を絞り込んでいきます。

  • 人材の資質
  • 年齢
  • 在職年数
  • 健康状態
  • 階級・職位
  • 勤務態度を含めた人事評価
  • 賞罰
  • 人間関係
  • 休暇取得状況
  • 保有資格
  • 採用試験の成績
  • 昇任試験の成績

 

「本人からの希望」「上司・組織希望」だけでなく、従業員の勤務態度・保有する経験やスキル・職場での人間関係など、さまざまな角度から人物を評価し、異動の可否を検討します。

人事異動の時期

人事異動の時期
人事異動は通常、年間を通しておこなわれます。しかし、部署異動や転勤、昇進などの人事異動は9月末・3月末の年度末、決算期末におこなわれることが多い傾向にあります。

事業戦略の見直しにともなう組織構成の変更が生じる時期だからです。また、節目や切りのいいタイミングで人事異動の旨を伝えられるほうが、社員にとっても動きやすく、気持ちを新たにしやすいメリットがあります。

3月や9月に人事異動を決定した場合、その後の期首である4月1日付け、または10月1日付けで人事発令を執りおこなうことが一般的です。

人事異動をスムーズに進めるポイント

人事異動をスムーズに進めるポイント
人事異動は従業員にとっても関心が高いだけに、慎重に進めることが重要です。スムーズに人事異動をおこなうために、大きく2つのポイントを押さえるようにしましょう。

事前のヒアリングを入念におこなう

異動理由や異動先の状況など、事前に十分なヒアリングをおこなってください。
社員一人ひとりの要望や組織の状況を把握できていれば、スムーズに人事異動をおこないやすくなります。

不十分なヒアリングや不確かな情報で人事異動をおこなってしまうと、組織にも本人にも悪影響を及ぼす可能性があります。
人事異動を検討し始めるタイミングに限らず、普段から定期的に組織の状態や社員が希望するキャリアなどをヒアリングしておくことが大切です。

事前のヒアリングをもとに人事異動をおこなうことで、さらに人事部門への信頼感が増し、日常的に情報が入りやすくなることも期待できます。

通知の際は理由・根拠をきちんと伝える

通知の際に気を付けたいのが、ポジティブかつ具体的な異動理由や根拠を伝えることです。

まずは、これまでの本人の経験を踏まえ、新しいポジションで期待することをポジティブに伝えましょう。そのうえで、決定に至った理由や根拠を伝えることで「自分は会社から期待されている」という気持ちになり、モチベーションアップにつながっていきます。

理由や根拠を説明しないと、なぜ自分は異動になったのか、という不安な気持ちが膨らんでしまいます。

人事異動の目的は、異動先で今よりも活躍してもらうことです。たとえ本人の課題克服のためであったとしても、理由を説明することで前向きな気持ちで仕事に取り組めるでしょう。

人事異動を実施する際の注意点

人事異動を実施する際の注意点
人事異動で最も避けたい事態は、労使間でトラブルが発生するケースです。
労働契約法や男女雇用機会均等法などの規定を確認し、労使ともに不利益の少ない人事異動の実現について努力しなくてはなりません。
例えば、知っておくべき主な法規定として、下記3つが挙げられます。

  • 男女雇用機会均等法 6条
  • 労働契約法 14条
  • 育児・介護休業法 26条

 

従業員にとってあまりにも不利益が大きい場合、使用者の人事異動命令が適法か否か、裁判所で争われることがあります。判断基準の多くは判例にあるため、心配な場合はいくつか有名な過去のケースを確認しておくとよいでしょう。

まとめ

まとめ
人事異動は、現在の組織構成員のままで組織の活性化や人材開発が期待できる人事施策のひとつです。

上手に活用できれば、企業にも従業員にもメリットはありますが、人事異動がもし失敗してしまうと、組織にも従業員にも大きなダメージが及んでしまいます。

特に、一従業員の視点では「望んでいない人事異動」はショックが大きく、場合によって労使トラブルにも発展することも考えられます。労使トラブルが心配な方は、事前に「よくあるトラブル集」をご一読いただき、入念な準備をするようにしましょう。

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