「人材ポートフォリオ」とは?注目されている理由と実行方法 COLUMN

「人材ポートフォリオ」とは?注目されている理由と実行方法

採用難易度が高まる昨今において、自社社員の活躍は非常に重要となっています。
自社人材の状況を正しく把握し、状況改善していくために必要な概念として人材ポートフォリオがあります。
本記事では人材ポートフォリオのメリットや作成のためのフレームワークをご紹介します。

目次

人材ポートフォリオとは?

人材ポートフォリオとは、企業が事業を進めていくうえで必要な人材情報について分析・整理したものです。

●どのような人材が ・・・職種、能力やスキル、適性、性格、実績、仕事の姿勢や志向
●どのタイミングで ・・・時期
●どこに      ・・・従業員の所属先、役職、ポジション
●どの程度必要か  ・・・人数

人材ポートフォリオを作成することにより、事業成果を出すために必要な人材・人材配置が明らかになります。

人材ポートフォリオの作成が注目されている理由

人材版伊藤レポート

2020年に経済産業省が「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書〜人材版伊藤レポート〜」を発表し、その後、続いて2022年5月には「人材版伊藤レポート2.0」を発表しました。

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参考:持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書~ 人材版伊藤レポート ~
参考:人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~ 人材版伊藤レポート2.0~—————————————————————————————————————————

特にレポート2.0内では「3つの視点・5つの共通要素」という枠組みに基づいて、それぞれの視点や共通要素を人的資本経営で具体化させるための工夫を示しています。

政府の機関が人的資本経営を推進する意向を示すことで、企業や業界全体の耳目を集めることとなりました。

人材活用に関する重要性の高まり

近年の日本の雇用体制の特徴として、少子化の進行と終身雇用制度の崩壊が挙げられます。

(出典:令和4年版 少子化社会対策白書 全体版(PDF版)

上のグラフから見て取れる通り、2020年以降、とくに若い層の人口が減っていくと予測されています。
採用においては、生産年齢である若者が減少することにより、企業の採用難易度は高まります。

また、終身雇用制度の崩壊により、従業員は以前よりも転職することへのハードルが下がりました。

そのため、人材の定着や育成の難易度は高まり、効果的な人材配置や能力開発支援が重要となっております。

このような観点において、人材ポートフォリオは、競争力を維持・強化するための戦略的な手段として注目されています。

キャリア・働き方の多様化

1985年の男女雇用機会均等法の施行以降、女性のさらなる社会進出の高まりや、女性が職場での活躍やリーダーシップの役割を果たすことが増えてきております。

また、労働者派遣法の導入によって正社員以外の人材も貴重なリソースとして積極的に活用されるようになりました。

同様に、個人のライフプランに合わせて柔軟な働き方を選択する方々が増加しており、遠隔地勤務制度の導入など、新たな労働スタイルが広く浸透しています。

現在のVUCA(不確実性、不安定性、複雑性、曖昧性)の時代においては、人材のキャリアの感じ方や業務量、職務能力、契約の形態などが多様化の傾向を示しています。

このような環境下において、従来のような担当職から管理職へと昇格させるなどの単純なモデルでは対応ができなくなってきています。

企業は人件費を抑えつつ継続して成果を上げていくために、より丁寧な人事マネジメントを行っていく必要があります。

それには、等級、評価、報酬の各制度との整合性を図りつつ、人材間の関係性を規定し、より事業運営に利するポートフォリオの組成を行うことが重要となってきます。

人材ポートフォリオを作成するメリット

企業が人材ポートフォリオを作成するメリットは次のようなものが考えられます。

最適な人材配置ができる

人材ポートフォリオを作成することにより、部署単位・チーム単位でどのような人材が何人必要なのかが明確になります。

必要な人材が可視化されることにより、貴社に在籍している人材の最適配置が可能となります。

これにより、必要人材の充足を達成できるだけでなく、自身の経験や強みを活かして働ける従業員のモチベーションや生産性の向上が期待できます。

結果として、離職率の低下や事業目標の達成を実現することが可能となります。

自社社員のスキル・タイプが明確になる

人材ポートフォリオ作成のため、アセスメントやジョブローテーションを実施しながら社員一人一人のスキルやタイプを明らかにすることが必要です。

そのため、人材ポートフォリオ作成の過程で自社社員のスキルやタイプが整理され、これまで明らかではなかった特性や能力に気づく機会になり得ます。

自社社員への理解が深まることにより、最適な人材配置がより正確にできるだけでなく、人材育成や採用計画への活用が可能となります。

面接の質が高まる

人材ポートフォリオを事前に整理することにより、面接時に問うべき質問や実施すべき評価が明確になります。

また、求める人材像が明確になることで条件に合致する候補者をより正確に特定できるため、貴社の魅力を求職者に対してより明確に伝えることが可能となります。

これにより、求職者への魅力訴求がより精度の高いものとなり、採用成功の可能性が高まります。

これらのメリットにより、企業は人材ポートフォリオを有効な採用ツールとして活用し、優秀な人材を発掘し、採用プロセスを効率化することが期待されています。

人材ポートフォリオの作成方法

人材ポートフォリオは、「事業戦略の策定」をした上で作成することが非常に重要です。

なぜなら、事業戦略を踏まえない人材ポートフォリオでは企業の方向性と人材活用が合致せず、本質的な価値を組織に提供することが難しくなるからです。

ここから、人材ポートフォリオの作成方法をご紹介します。

自社に必要な人材を分類する

人材ポートフォリオを作成する際は、自社に必要な人材をグループごとに分類することから始めます。
一般的な分類方法は、以下のようなフレームワークを活用することです。
以下、代表的なフレームワークをご紹介します。

❶人材タイプ

(出典:Works 40 戦略的HRMを生み出す「人材ポートフォリオ」を基にクイックが作成)

マネージャー型  ・・・組織内でチームを指導し、業績向上や目標達成を担当する人材
エグゼクティブ型 ・・・組織の方針や戦略の策定、その執行を推進する人材
オペレーター型  ・・・特定のタスクを実行し、日常的な業務を遂行する人材
スペシャリスト型 ・・・特定の専門分野において深い知識やスキルを持つ人材

❷戦略タイプ

(出典:Works 40 戦略的HRMを生み出す「人材ポートフォリオ」を基にクイックが作成)

X軸 ・・・「既存の仕組みを利用した価値提供」か「新しい価値を持つ商品・サービスの供給」か

Y軸 ・・・「顧客ニーズを商品やサービスに反映させる」か「自社商品・サービスを用いて顧客ニーズを満たす」か

❸「創造-安定」×「結果-調和」

❸「感性-論理」×「外向-内向」

❹その他

自社社員を分類する

作成した人材ポートフォリオと比較して、自社の人材が現在どこに分類されるかを当てはめていきます。

はじめに、人事部門のデータベースや組織内の情報を使用して、従業員のスキルや能力、経験、役割などの従業員データを収集します。

データ収集において注意すべきなのは、人間の主観や勘による分類は限界があり、バイアスの影響もあることを考慮することです。
実際、働く人の6割以上は人事評価制度に不満(アデコ「『人事評価制度』に関する意識調査」)があります。

こうした問題を避けるため、主観的な評価のみに頼るのではなく、客観的かつ信頼性の高いデータを活用することが重要です。

具体的には、適性検査などの客観的で信頼性の高いデータを使用することがおすすめです。
適性検査は採用試験だけでなく、従業員の育成や配属にも活用され、客観的かつ科学的な分類を実現する手段となっています。

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理想と現実のギャップを比較する

企業の業務遂行において、理想と現実のギャップを比較し、適切な人材配置を実行することは重要です。

理想的な配置人数に対して人材が不足している場合、業務に支障が生じる可能性があります。
特に、定型業務と管理業務を比較すると、マネジメント人材が極端に不足していると、定型業務の適切な管理が難しくなる可能性が発生します。

一方、マネジメント人材が十分にいる場合でも、勤務年数の短い若手人材が不足していると、将来的に人材不足が課題となります。
その場合、10〜20年の視点で考えた際、若手層の採用や育成が重要であることが示唆されます。

そのため、あるべき人材ポートフォリオを現状と比較することが大切です。

人材ポートフォリオの活用方法

人材ポートフォリオの改善方法は一般的に以下の4つです。

・ 配置転換(例:部署の異動や出向、転勤など)
・ 採用(例:新卒採用や中途採用、派遣社員の活用、アルバイトの採用など)
・ 退職や解雇(例:役職定年制度の導入や早期退職の推奨など)
・ 人材育成(例:研修の充実や目標管理、人事評価の導入など)

これらの施策を組み合わせながら最適な人材配置を実現します。

しかし、退職や解雇による人員調整は、日本の企業においては法的・文化的に難しいといえるでしょう。
また、育成や配置転換による変化は、それにかかるコストや労力、また実現可能性の観点から現実的ではない場合が多いです。

そのため、上記4つの中では採用が最も影響力が大きく現実的な施策であると言えます。

ここで気を付けなければならないのが、当然ですが、「誰を採用するか」です。
自社の文化や方針への調和がなければ企業にマイナスな影響を与えかねません。

そのため、まずどんな人材が必要なのか社内で統一見解を持ち、設定したターゲットに対して適切な採用コミュニケーションを提供することです。

また、採用して終わりではなく、採用後の早期活躍のため、研修や面談など定期的なフォローを実施することが肝要です。

クイックができること

クイックでは、採活力というサービスを活用して企業様の人材ポートフォリオ作成後の採用活動をご支援することが可能です。

「採活力」とは、ワークショップやインタビューをベースに求める人材要件・自社らしさを言語化し最適な採用設計・社内の認識を統一させるサービスです。

これにより、人材ポートフォリオ作成により整理された理想と現実のギャップ解消を実現するための採用戦略を策定します。

また、採活力の特徴は、経営・人事・現場のそれぞれの視点を取り入れている点です。
これにより、「新しい人材像が欲しいが社内にモデルとなる人物がいない」などの問題も解消されます。

このように三者三様の意見を取り入れた人材像を新たに設計することで、採用活動全体の一貫性を担保し、最適な採用設計を構築することが可能です。

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