ヘッドハンティングとは
ヘッドハンティングとは、企業が希望する人材を採用マーケットのなかから見つけ出し、アプローチする採用手法のことです。
数ある採用手法のなかでも、「攻め」の要素が強い方法といえます。
進め方としては、ヘッドハンティング企業や個人のヘッドハンターに人材サーチを依頼するケースもあれば、企業の人事部門自らサーチするケースもあります。
ヘッドハンティングを成功させるためには、アプローチした人材の転職希望度合いや提示条件など、さまざまな変数が絡み合うため、繊細な舵取りが必要になります。
スムーズに採用が決まるケースはまれで、多くの場合は交渉や話し合いのプロセスを経て、最終的な入社の意思決定をしてもらいます。
いずれにしても成功の暁には、希望するポジションで活躍が期待できる人材を得ることができる手法といえるでしょう。
ヘッドハンティングが注目される背景
近年は、企業側にも個人側にも、ヘッドハンティングは普及しつつあります。
ヘッドハンティングが近年注目されている背景を2つほど紹介します。
人材の流動化
ヘッドハンティングが注目される背景のひとつとして、転職者数の増加が挙げられます。
総務省の統計によると、2019年の転職者数は351万人と過去最多になるほど、人材の流動化が進んでいるのです。
参考:増加傾向が続く転職者の状況 ~ 2019 年の転職者数は過去最多 ~
終身雇用制度が崩壊した昨今では、一昔前のような「1社で定年まで」というスタンスの会社員は減少しています。
このような背景を受けて、たとえ現在は転職活動をしていなくても、ヘッドハンティングのアプローチを受ければ「話だけでも聞いてみよう」と思う会社員も増えているのです。
したがって、ピンポイントに狙った人材にオファーをかけるヘッドハンティングの効果が上がりやすくなっているといえます。
企業の人材不足
企業の深刻な人材不足も、ヘッドハンティングが注目される背景のひとつです。
近年は少子高齢化の影響で採用売り手市場が続いているため、よほどの人気企業でない限り、計画通りに人材を採用できない企業が大半でしょう。
ヘッドハンティングは、転職サイトやエージェントなどに登録していない「転職潜在層」の人材にもアプローチが可能です。
企業は転職希望者からの応募を待つだけではなく、能動的に人材を獲得することができるため、ヘッドハンティングを活用するようになっています。
特に経営幹部や重要プロジェクトなど企業の要職ポジションほど、質を重視して採用を進められるヘッドハンティングが重宝されているといえるでしょう。
ヘッドハンティングの種類
欲しい人材に直接アプローチするヘッドハンティングですが、企業の人事部門が主導でおこなうケースと、ヘッドハンティング企業が主導でおこなうケースがあります。
各々の違いを説明していきます。
企業が直接スカウトをおこなう
企業の人事もしくは現場の社員が、欲しい人材を見つけてスカウトをおこなうケースです。
この場合、サーチの対象は転職サイトの登録者の場合もありますが、かつての取引先相手や友人・知人などさまざまなケースが考えられます。
仕事で接点があった人材にアプローチをする場合、一般的に「引き抜き」と呼ばれることもあります。
実際の仕事ぶりを知る人材を採用できるため、早い段階からの活躍が期待できます。また採用される人材も取引先企業の仕事の進め方や企業風土をわかっており、採用ミスマッチが生じにくい点も魅力でしょう。
ただし、あまりに不義理なヘッドハンティングをおこなってしまうと、取引先企業との信頼関係を失いかねないため、注意が必要です。
ヘッドハンティング企業に依頼をする
従来のヘッドハンティングのメジャーな方法は、外部のヘッドハンティング企業に業務を依頼するやり方です。
ヘッドハンティング企業によって対応範囲は変わりますが、おおよそ以下のような業務を依頼できます。
- 希望する人材の発掘
- 人材との交渉
- 面談の設定
ヘッドハンティング企業に依頼する際の料金体系は、「事前に一定金額を支払い委託するケース」か「採用が実現したあとで成果報酬を支払うケース」のいずれかが一般的です。
人事部門の負担の軽減はメリットですが、外部支払いが発生するため、希望する人材が採用できた際のリターンと費用対効果を検討することが必要になるでしょう。
ヘッドハンティング企業の分類
次にヘッドハンティング企業の2つの分類について紹介します。
サーチ型
サーチ型のヘッドハンティングとは、ヘッドハンティング企業に所属するヘッドハンターが独自ルートで人材を探し出すサービスです。
具体的には、各社の人事情報、SNSや業界専門誌、業界に詳しい人物などのルートから、依頼された企業の要望に合う人材を探していきます。
適している人材が見つかれば、ヘッドハンターが本人と連絡をとり、最初のアプローチをおこないます。
ある程度条件が折り合って、本人も前向きな気持ちであれば、企業との面談をセッティングする流れとなります。
登録型
登録型のヘッドハンティングとは、転職エージェントが持つプラットフォーム上で、人材と企業をマッチングするサービスです。
求職者は転職エージェントの会員となり、自身の経歴・役職・スキル・希望条件などの情報を登録します。
登録者が企業の求める人材像に近かった場合、転職エージェントから本人へ面談を打診するという流れが一般的です。
登録型の場合は本人が能動的に登録しているため、サーチ型と比べると面談までは進みやすいでしょう。
ヘッドハンティングをする際の注意点
仮にヘッドハンティング企業に依頼をする場合、あらかじめ認識しておいたほうがよい注意点について紹介します。
通常の転職エージェントよりコストがかかる
ヘッドハンティング企業への依頼は、通常の転職エージェントよりもコストが高くなる傾向にあります。
採用が決まった際に支払いをする「成功報酬」制だったとしても、依頼をした時点でリテーナーフィーが発生する企業が大半でしょう。
リテーナーフィーは、ヘッドハンターがターゲットを探す活動費や、本人に送るレターの制作費などに使われるため、採用コストが割高になるといわれています。
ただし、難易度が高い求人の場合は、求人媒体に掲載するなど時間や費用をかけたとしても、なかなか採用に至らないことも想定されるでしょう。
欲しい人材が長期間獲得できずにいると、事業成長の機会ロスを生む可能性があります。
その場合は多少コストをかけてでも、ヘッドハンティング企業を活用したほうが、費用対効果が高くなる場合もあります。
採用までの時間が長期化しがち
ヘッドハンティングは、人材のサーチからスタートするため、採用までの時間は長期化しがちです。
求める人材の条件が厳しければ厳しいほど、該当人材を見つけ出す期間が長引く傾向もあります。また、本人が転職潜在層である場合は、長い時間をかけながら、本人の気持ちを変化させるプロセスも必要です。
一概にはいえないものの、依頼してから4~6ヵ月程度がヘッドハンティングの期間と認識しておくとよいでしょう。
そのため、欠員補充や急募のポジションの採用においては、適さない採用手法といえます。
ヘッドハンティングに向かないケース
最後に、ヘッドハンティングという採用手法に不向きなケースを2つお伝えします。
該当する場合は、本当にヘッドハンティングをすべきかどうか再検討が必要かもしれません。
欲しい人材像が曖昧
ヘッドハンティングの手法では、求める人材像が曖昧な場合、人材発掘のプロセスでかなりの難航が予想されます。
特にヘッドハンティング企業に依頼する場合は、事前に求める人材像については「人柄」「必要な経歴・経験」「求めるスキル」など、細かいヒアリングがなされます。
このターゲティングが曖昧であると、ヘッドハンターが人材を探し出すことができない、あるいは、間違った人材を探し出すリスクがあるからです。
求める人材像と同様、採用した人に任せるポジションやミッションが曖昧なケースも、本人の気持ちを振り向かせられないリスクが予想されるでしょう。
転職希望者が多い職種
転職マーケットで、希望者が多く集まる職種もヘッドハンティングには不向きでしょう。
具体的には「営業職」「オペレーション職」など、どの業界でも必ずあるような職種やポジション、または「業界やスキルを問わない職種」などが該当します。
このような就労人口が多い職種は、まずは人材紹介サービスなどの一般的な採用手法を用いて求人活動をおこない、それでも欲しい人材が見つからない場合は、ヘッドハンティングを活用するというステップがおすすめです。
まとめ
今回はヘッドハンティングの基礎的な概要について紹介しました。
欲しい人材に直接アプローチできるパワフルな採用手法ですが、コストが割高になる、長期化しやすいなどの注意点もあります。
会社としての重要ポジションや採用難易度が高い職種など、ヘッドハンティングに適した採用案件の際に、活用を検討してみるとよいでしょう。
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