スカウト型採用とは
スカウト型採用とは、企業から求職者に直接アプローチをする採用方法のことです。
「ダイレクトリクルーティング」と呼ばれるケースもあります。
雇用条件・募集職種などを企業が公開し、求職者から企業にアプローチをする「公募型採用」とは逆の方法となり、求職者が自分の経歴・スキルを公開し、それらの情報を見て企業側から求職者にメッセージを送ることが特徴です。
求職者は企業から届いたスカウトメールを読み、興味を持ったら面談や選考などのステップに進むことになります。
従来は、職務経験がある中途採用場面で主に用いられていた手法ですが、昨今は新卒採用でもスカウト型採用を活用する企業が増えています。
スカウト型採用が注目される背景
スカウト型採用が注目された背景として、企業間で人材獲得競争が激化していることが挙げられます。
少子高齢化の影響で労働人口が減少するなか、中途採用においても新卒採用においても、人材の取り合いは避けて通れません。優秀な人材であれば、なおのこと人材獲得競争は過酷になります。
他社との差別化を図るひとつの手段として、求職者に直接アプローチをかけるスカウト型採用が注目されているのです。
スカウト型採用のメリット
すでにスカウト型採用を導入している企業から、よく聞かれるメリットを3点紹介します。
欲しい人材に直接アプローチできる
スカウト型採用では、自社が求める人材に対して直接アプローチできる点がメリットです。
求人サイトに募集要項を掲載しているだけでは、必ずしも自社が欲しい人材からの応募が集まるわけではありません。
また、自社の理念や社風を丁寧に伝えて興味喚起できた人材がいたとしても、その人からの応募がなければ、コミュニケーションをとることすらできません。
一方でスカウト型採用の場合は、企業側から求職者にメッセージを送るため、少なくとも自社の考え方など、一段階深い情報提供ができるチャンスを得られます。
さらに、スカウト型採用であれば、入社後のミスマッチ防止の効果も期待できるでしょう。
事前のやり取りで仕事のプロセスや企業文化などをきちんと伝えることで、自社を深く理解してもらえるからです。
転職潜在層にも働きかけられる
スカウト型採用では、転職への興味はあるものの活動にはいたっていない「転職潜在層」へのアプローチも可能となるのが利点です。
転職サイトや転職エージェントの人材データベースにとりあえず登録だけをしている人材は、「よい話があれば、転職を検討したい」と考えていることが多いでしょう。
自分からは積極的に企業探しや応募というアクションを取らない層にアプローチするためには、スカウト型採用が適しています。
転職潜在層は思わぬ逸材との出会いが期待できるだけではく、他社と競合する可能性が低くなるのもメリットです。
採用コストが抑えられる
ピンポイントの人材だけにアプローチをするスカウト型採用は、大規模に募集をする採用活動と比較すると、採用コストを抑えることができます。
公募型採用の場合、募集サイトへの掲載費コストがかかるうえに、応募者への対応などのマンパワーもかかってしまいます。
たとえば、SNS採用とスカウト型採用を組み合わせることで、採用担当者の労力のみで採用活動をおこなうことができます。
自社サイトに採用ページさえ作っておけば、SNSのメッセージ機能で自社サイトの応募フォームに促すことで、スムーズに応募の受付まで担えます。
仮に外部のスカウト型サービスを活用する場合は別途費用がかかるものの、総じて的を絞ったコストの投下がスカウト型採用の特徴といえるでしょう。
スカウト型採用のデメリット・注意点
メリットの多いスカウト型採用ですが、あらかじめ考慮しておきたい注意点もあります。
ここでは代表的なスカウト型採用のデメリット・注意点を3点お伝えします。
個別対応のためのパワーが発生する
スカウト型採用では、個別の候補人材に応じた対応が必要になるため、そのためのパワーが発生することになります。
公募型の採用活動では、求職者側が応募フォームに記入をしてエントリーをするため、基本的に採用担当者は「待ち」で問題ありませんでした。
しかしスカウト型採用では、最初のアプローチが企業側になるため、能動的にアプローチをしないと、採用活動がスタートしないも同然です。
人材データベースやSNSなどでの候補者検索、スカウトメッセージの作成など、個別のアプローチをおこなうための手間は、あらかじめ負荷を覚悟しておくべきでしょう。
採用担当者に責任がかかる
スカウト型採用の成果は、採用担当者の人材を見極める眼や、アプローチのための文章力やコミュニケーション力に左右されがちです。
最初のアプローチがうまくいかないと、候補者の母集団すら形成できないことになるため、採用担当者の責任はどうしても重くなってしまいます。
また、人依存の採用手法となるため、採用担当者が変わると採用成果が左右されるケースも少なくありません。
人依存を回避するためには、候補人材の見つけ方の言語化や、スカウト文章のテンプレート化など、なるべくスカウト型採用のノウハウを形式知化することがおすすめです。
大人数の採用には不向き
スカウト型採用は、多数の人材を募集するような大規模採用には、適しにくい手法でしょう。
スカウトの成功率を上げるには、求職者の経歴や希望職種・条件などを深く読み込んだうえでアプローチする必要があります。
求職者一人ひとりへのアプローチは手厚くせざるを得ないため、アプローチできる人数には限界があるのです。
そのため、数十名単位の大規模な採用活動は、スカウト型採用との相性がよくありません。
大人数の採用をおこないたい場合は、社内の対応体制の増強、あるいは求人媒体での募集を平行しておこなうようにしましょう。
スカウト型採用に向いているケース
ピンポイントに人材を狙いにいくスカウト型採用ですが、どのようなケースが向いているのでしょうか。
ここでは代表的な2つのケースを紹介します。
専門性が高い人材を採用したい場合
一般的に、専門性が高い人材を採用したい企業は、スカウト型採用に向いているといえます。
ITエンジニアや、特定分野の研究・開発職などが代表的な職種です。
また、大型プロジェクトのプロマネ経験者など、特殊な経験を求める場合もスカウト型採用との相性はよいでしょう。
専門性が高い職種は、元々の労働人口が少ないうえに、今の企業からも手厚い待遇を受けていることが予想されるため、なかなか転職マーケットに姿を現しません。
したがって、「これぞ!」という人材を見つけたら、スカウト型採用で相手の心情をほぐすようなアプローチを続け、候補者を振り向かせるプロセスが有効になります。
自社のペースで人材の見極めをおこないたい場合
応募側のペースではなく、自社のペースで人材の発見から見極めなど一連の採用活動を進めたい場合は、スカウト型採用が向いているでしょう。
欠員補充などの緊急を要する採用ではなく、よい人が見つかった場合に採用したいというケースでは、よりスカウト型採用が適しています。
重要ポジションの採用であればあるほど、人材サーチや見極めには時間がかかるものです。そのようなケースでも、スカウト型採用であれば、決まった面接フローなどにとらわれることなく、自社あるいは求職者のペースで進めるなど、進め方のカスタマイズも可能です。
自社と相手の状況で臨機応変に採用を進めたい場合は、スカウト型採用は利便性が高い採用手法といえるでしょう。
スカウト型サービスを選ぶポイント
スカウト型採用は自社のみでも実施は可能ですが、仮に外部のスカウト型サービスを活用する場合のポイントをお伝えします。
料金体系は適切か
スカウト型採用サービスの料金体系は、おおよそ以下の2パターンです。
- 年額・月額などで利用料金が決まっている「定額制」
- 採用成功人数によって料金が定められる「成功報酬制」
あらかじめ、希望する採用人数に対してどの程度の費用がかかるのかを調べ、予算内で収まるかは検討しておきましょう。
また、基本メニューにどの範囲までのメニューが含まれていて、どこからがオプションサービスになるかは、各社によって異なります。
自社がスカウト型採用サービスに期待したい業務範囲を明確にし、不明な点は事前に質問をしておくようにしてください。
ターゲット人材の登録が多いか
募集したい人材の登録が多いサービスなのかどうかは、非常に重要なポイントです。
どれだけ登録者数が多くても、自社が求める人材の登録人数が少ないのであれば、人材発掘の時点で苦戦が予想されます。
昨今では「ハイクラス特化型」や「IT人材特化型」など、業界特化型といわれるような人材登録サービスも増えてきました。
スカウト型採用で募集したい職種・必要経験・人材要件などをあらかじめ明確にし、利用するスカウト型サービスでの登録実績を調べるようにしましょう。
スカウト型採用を成功に導くポイント
最後に、スカウト型採用を成功させるためのポイントをお伝えします。
欲しい人材像を明確にする
採用活動全般に共通することでもありますが、スカウト型採用ではとりわけ欲しい人材像の明確化は大事なポイントです。
「明るい人材」「優秀な人材」のように曖昧な人材要件では、人材を探す基準として活用しにくいのはもちろんのこと、相手の心に響きやすいメッセージも作りにくくなります。
「求めたいスキルや経験」「どのような人物像が望ましいか」は、言語化したうえで採用関係者と共有し、一定の基準でスカウト型採用を展開できるようにしましょう。
一人ひとりにあわせたスカウトメールを送る
スカウト型採用で特に重要になるのが、ファーストコンタクトとなるスカウトメールの内容です。
定型文のテンプレート文章では、相手の心を動かすことはできません。
「なぜあなたに注目したのか」「今回のポジションにどのような期待があるのか」など、読み手の状況を汲んだうえでの個別メッセージを送ることが、スカウト型採用の真髄です。
スカウトメールの返信が、スカウト型採用のスタート地点の母集団となります。メールの反応率を上げることは、スカウト型採用の成否を分かつポイントといえます。
自社の魅力や風土紹介などの文章はある程度は定型化しても構いませんが、相手に合わせてカスタマイズする文章は、知恵と工夫を施すようにしましょう。
まとめ
今回は、最近さまざまな企業で実施されている「スカウト型採用」を取り上げました。
個別のアプローチとなるため、それなりのパワーがかかる採用手法ですが、自分が見つけた人材を自らアプローチして採用に結び付けるのは、大変やりがいがある採用手法といえます。
スカウト型採用のノウハウが、採用担当者個人だけでなく組織的なものとなるよう、ナレッジマネジメントにも配慮しながら進めるようにしましょう。
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