改正健康増進法違反の罰則は?改正による変更点を解説 COLUMN

2021.09.08

2022.02.17

改正健康増進法違反の罰則は?改正による変更点を解説

2020年4月1日より改正健康増進法が全面施行され、望まない受動喫煙を防止するために屋内は原則禁煙となり、事業主や管理者は受動喫煙防止のための対応が必要となりました。しかし、どのような対応をすべきか分からない、違反したらどうなるか分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?この記事では、改正健康増進法に違反したときの罰則や変更点などについて解説します。

目次

改正健康増進法に違反した場合の罰則

2020年4月1日、改正健康増進法が全面施行され、事業主や管理者には望まない受動喫煙防止のためにさまざまな措置を講じることが義務化されました。ここでは、違反した場合の罰則について解説します。

最大50万円の過料が課せられる

改正健康増進法に違反した場合、違反者には最大50万円の過料が課せられる可能性があります。過料とは犯罪とまではならないものの、法律秩序を維持するために制裁と課される罰則です。

そもそも健康増進法とは、国民の健康増進を目的としてさまざまな措置を講じることを約束した法律です。これまでに複数回改正されており、受動喫煙防止措置について新たなルールを盛り込んだ改正法が2020年に全面施行されました。改正健康増進法で押さえておきたいポイントは「2.改正健康増進法の変更点」で詳しく解説しています。

以下では、改正健康増進法違反によって過料が課される可能性のある義務内容をまとめています。

義務対象 義務内容 過料
すべての人 紛らわしい標識の掲示
標識の汚損などの禁止
50万円以下
禁煙場所での喫煙の禁止 30万円以下
施設などの管理権原者 喫煙器具・設備などの撤去 50万円以下
喫煙室の基準適合 50万円以下
施設要件の適合
(喫煙目的施設のみ)
50万円以下
施設標識の掲示 50万円以下
施設標識の除去 30万円以下
書類の保存
(喫煙目的施設・既存特定飲食提供施設のみ)
20万円以下
立入検査への対応 20万円以下

なお、過料の金額は都道府県知事の通知に基づき、地方裁判所の裁判手続きにより決定します。

違反した場合に罰則が適用されるまでの流れ

改正健康増進法への違反時は、基本的に3つの段階を経て罰則を受けることになります。1段階目は違反の発覚で、都道府県知事からの指導や勧告、命令を受けるのが2段階目です。その後の改善が見られない場合に3段階目として過料が課されます。

各都道府県には、従業員や近隣住民向けに相談窓口を設置しており、そこに通報があって違反が発覚するケースがあります。義務内容によっては、さらに細かく段階を踏むものもあり、以下のように流れが変わります。

義務違反時の対応

改正健康増進法の変更点

ここでは改正健康増進法について、事業者が押さえておくべき変更点を解説します。

屋内は原則禁煙

改正健康増進法の施行によって多くの利用者がいる施設等の屋内は原則禁煙になりました。会社の事務所や飲食店など(第二種施設)にも屋内原則禁煙が適用されます。病院や児童福祉施設、学校など(第一種施設)は、子どもや患者に配慮が必要であり、敷地内は屋内・屋外どちらも原則禁煙です。ただし、屋外で受動喫煙防止に必要な措置がとられた場所に喫煙場所を設置できます。

喫煙を認める場合喫煙専用室などの設置が必要

改正健康増進法の施行で屋内は原則禁煙となりましたが、2人以上が利用する施設を表す第二種施設や喫煙目的施設では各種喫煙室の設置が認められています。ここでは、第二種施設や喫煙目的施設で喫煙可能にするために設置できる喫煙室の種類やそれぞれの規定について紹介します。

喫煙専用室

喫煙室専用室は、第二種施設内の一部(事務所、工場、飲食店、旅館、ホテル、など)に設置可能で、喫煙室内では紙タバコと加熱式たばこともに喫煙が許されています。ただし、飲食などの喫煙以外のサービスは提供できません。喫煙室内に自動販売機を設置するのもNGです。

加熱式たばこ専用喫煙室

加熱式たばこ専用喫煙室は、第二種施設内の一部(事務所、工場、飲食店、旅館、ホテル、など)に設置可能で、名前の通り加熱式たばこのみ喫煙できます。喫煙専用室とは異なり、飲食などの喫煙以外のサービス提供も可能です。

喫煙目的室

喫煙目的室は、喫煙目的施設内の全部または一部に設置可能です。喫煙目的施設とは、喫煙を主たる目的としている施設を指します。喫煙目的室内では、喫煙の他に飲食などの喫煙以外のサービス提供も許されています。

なお、喫煙目的室にはその場の利用目的に応じて「喫煙を主目的とするバーやスナック」「店内で喫煙可能なたばこ販売店」「公衆喫煙所」の3種類に分類でき、種類によって提供できるサービスに制限があります。

喫煙可能室

喫煙可能室は、特定の飲食提供施設の全部または一部に設置可能で、喫煙と飲食の提供ができます。特定の飲食提供施設とは、2020年4月1日時点で現存する飲食店、資本金5,000万円以下、客席面積が100平方メートル以下の3つをすべて満たしている施設です。喫煙専用室や加熱式たばこ専用室の設置が事業継続に影響を及ぼすことに配慮して喫煙可能室の設置を可能としています。

標識の掲示が必要

改正健康増進法の施行によって、喫煙可能な設備がある施設では指定された標識の掲示が義務となりました。紛らわしい標識や汚損した標識を掲示していると罰則の対象になります。なお、標識を掲示する場所は、喫煙室の出入口および施設の出入口と規定されています。各種喫煙室の標識は以下のとおりです。

【喫煙室の出入り口に掲示する標識】
喫煙室の出入り口に掲示する標識

また、施設に各種喫煙室があると示す以下の標識の掲示も必要です。

【施設の出入り口に掲示する標識】
施設の出入り口に掲示する標識

20歳未満の喫煙エリアへの立入禁止

改正健康増進法の施行によって、20歳未満の方は喫煙目的でなくても喫煙エリアへの立ち入りは一切禁止となりました。20歳未満の方を立ち入らせた場合、施設の管理権原者は都道府県知事からの指導・助言の対象となります。また、20歳未満立入禁止の表示も必要です。

▼20歳未満立入禁止の表示例
20歳未満立入禁止の表示例

従業員への受動喫煙防止対策の実施

改正健康増進法の施行によって、各施設の管理権原者は従業員の受動喫煙防止のために措置を講じることが義務となりました。管理権原者とは、消防法上で管理の権限を有する者としており、建物の所有者や建物の賃借人を指します。受動喫煙を望まない従業員が喫煙エリアに立ち入らなくても働けるように、オフィス内の動線や勤務フロアの分担などの工夫が求められます。

受動喫煙防止対策への支援

受動喫煙防止対策を実施するための支援策として助成金が厚生労働省によって準備されています。受動喫煙防止対策における助成金制度は受動喫煙防止のために施設の整備をするときに活用できます。助成金の受給できる対象者は、労災保険の適用を受けており、かつ中小企業事業主であることです。以下は助成金受給対象の早見表です。

業種 常時雇用する労働者数 資本金
小売業 小売業、飲食店、配達飲食サービス業 50人以下 5,000万円以下
サービス業 物品賃貸業、宿泊業、娯楽業、医療・福祉、複合サービス(例:協同組合)など 100人以下 5,000万円以下
卸売業 卸売業 100人以下 1億円以下
その他の業種 農業、林業、漁業、建設業、製造業、運輸業、金融業、保険業など 300人以下 3億円以下

*出典:厚生労働省|受動喫煙防止対策助成金職場の受動喫煙防止対策に関する各種支援事業(財政的支援)
*注:「労働者数」か「資本金」のどちらか一方の条件を満たせば、中小企業事業主と認められる

助成金を受け取るには、工事実施前に交付申請書を、工事実施後に事業実績報告、請求書を所轄の労働局に提出しなければなりません。喫煙室の設置や改修にかかった経費の2/3(上限100万円)を受給できます。ただし、分割払いや親会社の支払いなどの場合は助成金を受給できません。

また、労災保険の適用を受けておらず、受動喫煙防止対策助成金を受給できない事業主向けには、受動喫煙防止対策の推進に活用できる生衛業受動喫煙防止対策助成金も用意されています。

まとめ

改正健康増進法の全面施行により、事業主や管理者は望まない受動喫煙防止のために喫煙室の設置や標識の掲示などの対応が必要になりました。これらの対応を怠り、改正健康増進法に違反した場合最大50万円の過料を課される可能性があります。助成金の活用もできるため、受動喫煙防止対策に取り組んでください。

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コピーライター、人事(採用担当)を経て、大手人材会社でディレクターとして、クリエイティブ企画や経営戦略にひもづいた人材採用・活用のコンサルティング業務などに従事。現在はIT企業勤務の傍ら、マーケティング・人材採用の領域を専門に中小企業支援を行っている。

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