採用力強化のための3つの課題
―2019年12月にプロジェクトがスタートしましたが、それ以前はどのような課題をお持ちでしたか。
(大場さん)当時、採用担当だった私は採用強化策としてリクルーター制度の導入を進めていました。それまでも現場の社員には採用活動に最大限協力してもらっていましたが、みんなにとって採用は主業務ではないので、自分の仕事だと捉えることは難しい。採用メンバーである現場社員に「自分たちも採用担当の一人なんだ」という当事者意識を持ってもらうこと、その上で採用成功のためにリクルーター全員で課題感を共有し、同じ方向を向くことが必要だと考えていましたが、その思いをきちんと伝えることができていませんでした。ふたつめの課題は、求める人物像の言語化と共有です。「いままで気付かなかったことを見つめて、新しい常識を創っていく」というのが私たちの会社の流儀です。だからこそ好奇心・探求心を持ち、柔軟に挑戦しつづける人材を採用したいと思っていましたが、「こういう人を採りたいんだ」というイメージを全社的に解像度高く共有することもできていませんでした。
また、自社の魅力を学生にうまく伝えきれていないことも課題に感じていました。もともと人や社風はとても魅力的で、それが学生の志望動機にもなっていました。社員たちも、学生から「御社の魅力はなんですか?」ときかれると、「社風です」と答えていましたから。でもそれだけではダメなんですよね。事業戦略や仕事内容について、もっと具体的な答えを求めている学生との距離が縮まらないんです。
当時の課題をまとめると、「ビジョン実現のために必要な人材要件の再定義」「欲しい人材に振り向いてもらえる自社の魅力の再発見」「新卒採用において“人で勝つ”ためのリクルーターの育成」ということになりますね。
最初は偶然の出会いでしたが、採活力の話を聞き「まさにこれだ!」と。
―クイックとの出会いについて教えてください。課題解決のパートナーとして選んでいただいた決め手はなんでしたか?
(南さん)私も大場も、ずっと採用についてモヤモヤした気持ちを抱えていました。その解決策を探しに人事関係の展示会に出かけましたが、これといったものに出会えず、もう帰ろうと思っていた矢先に偶然、クイックの福島さんに声をかけられたんです。そこでついぼそぼそと当時の悩みをこぼしてしまったところ、福島さんから「クイックの支援の考え方」の話を聞いて、まさにこれ!と思ったんです。
当時リクルーター制を導入しようと動き始めていたものの、なかなかメンバーと思いや意識の共有ができずにいました。クイックさんは「採活力ワークショップ」という研修で現場を巻き込み、対話を通して合意形成をしていくという手法で、しかもコンセプト設計だけじゃなく、それをメンバーが実行できるようにロープレやトレーニングまで行ってくれるというんです。まさに当時の私たちの課題にジャストフィット。クイックさんなら同じ課題意識を持って伴走してくれる。きっとうまくいく。そう直感して、次の日に早速、大場にも話をきいてもらいました。すると大場も大賛成。すぐにコンサルティングを進めてもらうことにしました。
採用コンサルティングの会社は確かに他にもたくさんあります。でもクイックさんはもともとリクルートの代理店として採用広告事業で長年の実績を持ち、採用実務にも長けています。ここまで現場の実情に詳しい会社はないと思いました。またこれは私の考えですが、コンサルタントが自分で苦労をしないと、良いコンサルティングはできないと思っています。その点、福島さんは一緒に汗をかいてくれそうな匂いが漂っていました。社内体制の改善も含めて採用活動全体のコンサルティングをお任せできるのは、クイックさんの他にはありませんでしたね。
社員がビジョンや仕事の魅力・楽しさを自分の言葉で語りはじめました。
―一緒に取り組んだプロジェクトについて教えてください。
(南さん)目指したのは社員一人ひとりが採用の当事者となり、会社全体で採用に取り組む「全員採用」の体制づくりです。クイックさんには採用マーケット分析や採用戦略設計だけでなく、現場を巻き込んだ実行支援までサポートいただきました。その中核となる「採活力ワークショップ」は、リクルーターとなる社員に計3回の研修を行うというパッケージで、
- 【1日目】一緒に働く仲間について考える
- 【2日目】自社の魅力について考える
- 【3日目】自社の魅力を言葉で発信する
というメニューでした。その中で、これまで「ウチの魅力は社風ですかねぇ」といっていた社員が、自社の採用に本気で向き合い、自分の言葉で理念やビジョン、仕事の魅力や楽しさを語り始めたんです。最初は最前線で採用にかかわるリクルーターのみを対象にしていましたが、その変化を目の当たりにして、全社員に拡大することを決定しました。結局2年半をかけて、計3回のワークショップを4グループで実施。役員向けの面接官研修なども行い、すべてが完了したのは2022年の5月でした。
■ワークショップの様子
結果、自社の採用についての理解が進み、一人ひとりが自分の役割を認識して本気で取り組んでくれるようになりました。私たちの採用ターゲットはどんな人か、その人に何を、いつどんなタイミングで、どのように伝えるか。目的を理解し、納得感を持って取り組むことで、こんなにも行動が変わるのかと驚きました。「未来ビジョンから採用戦略を構築するコンサルティングセッション~全員で積極的に議論を尽くし、自社の魅力を自分の言葉で話せるようになる採活力研修~」。まさにタイトル通りの結果を得られました。
暗雲を吹き払う福島さんの質問。問いかけ方一つで空気が一変。
―取り組みの中で印象に残っていることはありますか。
(大場さん)採活力のワークショップは1クール3回で、初日は「一緒に働く仲間について考える」というテーマです。つまり「求める人材要件」について議論するのですが、ここでは毎回、暗雲が立ち込めます。メンバー間のディスカッションが「素直で、一緒に働いていて気持ちがいい人」みたいな内容になり、そこから先へ進まない。このまま空中分解するんじゃないかと思うくらい、苦しいスタートになります。
そんなとき、福島さんがファシリテーターとして助け船を出してくれます。例えば「100周年に向けて、みなさんはどんなビジョンを描きますか?その実現のためにどんな人をバディとして迎え入れたいですか?」という問いを場に投げてくれたりするんです。すると参加メンバーの視座や視点が変わり、議論の質も一変します。素直とか気持ちいいとかじゃなく、「こんな知識・スキル・思いを持った人と働きたい」というようにどんどん具体化。結果、現場からのボトムアップで求める人材要件をアウトプットできました。
自分たちで納得感を持って人材要件を設定できると、その人に何を、どう伝えるかも明確になりますね。3日目の「自社の魅力を言葉で発信する」では、それがグループとしてA4用紙15枚にも及ぶシートになっていました。初日の暗雲からは考えられない変化です。変化といえばもう1つ。福島さんが「学生が会社訪問の際に、エレベーターやトイレで会社の人に会ったり話したりしたことが動機形成につながることもある」という話をしてくれました。以降、社員がお客様と接するのと同じくらい、応募学生に対して丁寧に接してくれるようになったんです。
これなら欲しい学生を口説ける。その体制と自信が整いました。
―今回のプロジェクトで得られた成果について教えてください。
(南さん)たくさんあったと思いますが、いちばんの成果は自社の採用力に自信を持たせてくれたことですね。ウチには採用力があるという自信が、事業においても「人で勝てる」という自信に繋がりました。さらに採用の勝ち筋のスキームができたことで、大場は採用の仕事を若手に任せ、社内大学の設立準備などの教育の仕事に取りかかることもできました。クイックさんにお願いしていなかったら、いまでも採用活動に七転八倒していたと思いますよ(笑)。
またワークショップを通じて、社員たちは集合研修というものにも前向きに取り組んでくれるようになりました。誰しも「研修」と聞けば受け身になってしまいがちですが、「自分たちが主体」という意識に変わり、楽しんで学ぶ文化が生まれました。
今後、社内大学という学びの場をつくっていくわけですが、そこにも自信を持って取り組んでいけそうです。そして人で勝てるという確信を得たいま、「新しい風呂文化を創る」というビジョン実現に向けた企業としてのブランディング計画を本格的に始動させたいと思っています。
引き続き理念・ビジョンの浸透、社内教育などを手伝ってほしい。
―今後、クイックに期待することはありますか。
(大場さん)このプロジェクトを通して、私や南も大きな学びを得たと思っています。私の場合は仕事が楽しくなりましたね。日々の仕事をよりよくするためには、目の前の仕事だけに視野を絞ってはダメ。時には自分のキャリアを振り返ったり、未来に目を向けて何がしたいかを考えたりする時間も大事。そう気づいたことで少し余裕ができ、いまの仕事の意味や魅力を見つめ直すことができたんだと思います。
今後も社員一人ひとりの仕事を、より楽しく魅力的にしていきたい。その結果として会社をもっと良くしていきたいと思っています。でもきっと日々の業務に忙殺されてしまうこともあります。そんなとき、クイックさんにはまた、これまでを振り返ったり将来を見たりする時間を共有してほしいですね。そして引き続き理念やビジョンの社内浸透、社内教育の体制づくりなどをお手伝いいただきたいと思っています。
変化のタイミングの企業さんに特におすすめしたいですね。
―クイックをどんな企業におすすめしたいですか。
(南さん)実はこのプロジェクトの最中、日ポリ化工では経営者が交代し、第二創業期ともいえる変革のときを迎えました。モノづくりのカリスマ的な先代から、ロジカルな経営を目指す現社長へ。二人とも技術者ですが、かなりタイプが違うので社内も劇的に変わりましたね。ちょうどこの時期に社内の意思統一を図るのにも、クイックさんとのプロジェクトが役立ちました。
研修2日目は「自社の魅力について考える」というテーマでした。もちろん目的は採用なんですが、私はこの場を自社のインナーブランディングにも活用させてもらっていました。研修の中で面接の練習をしたんですが、ここでは社員が面接担当となり学生に向けて会社の魅力を語ります。すると会社発信だった事が自分事に変わって、一人ひとりの中に深く浸透するんです。
経営者の交代や事業継承などで社内が変わる。新しい理念やビジョンを掲げたけど、なかなか社員に広がらない。新卒社員には入社時にある程度説明できるけど、中途採用の社員の理解が深まらない。そんな企業さんにはクイックさんのプロジェクトをおすすめしたいですね。採用成功とともに、全社員が思いを共有するいい機会になると思います。
プロジェクトレポート
プロジェクトのサマリー
クイックでは、採用戦略において比較的短期間でかつ効果的に改善に取り組める“採用活動”に注目した採用設計フレーム「採活力®」をベースに採用戦略コンサルティングをご提供しています。再現性高く成果を出すことができるフレームワークではあるものの、決して型どおりではなく、各社の課題や社内事情に合わせて最適な道筋をお客様と一緒に考えていくことを大切にしています。
日ポリ化工様は、業界の優良企業であるものの学生からの知名度は低い。またマーケットの採用難易度があがったとしても採用基準はむしろ高くしたい。そんな課題をお持ちでした。そこでリクルーター制を導入し、採用活動において強みを発揮しようと計画されていたところから、クイックの支援がスタートしました。
当初の課題は「リクルーター育成」
新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの企業が2020年からの採用活動・採用設計の見直しを強いられました。説明会や面接のWeb化が加速し、学生目線からすると企業の風土や人・組織が見えづらく、入社の意思決定も困難になっています。そんな中、日ポリ化工様は人を通して自社の風土や仕事の魅力をより深く納得度高く伝えようと、リクルーター制度の導入を進めておられました。これは絶好のタイミングだったと思います。
日ポリ化工様が目指したリクルーター制度は、全社員が採用活動の当事者となり、全社をあげて採用に取り組む「全員採用」の体制です。面接や面談を行うことはもちろん、採用には直接関係のないオフィスや喫煙所などでも、常に「応募学生に見られる立場」を意識して日々の仕事に取り組むというものです。
しかし、これまでは採用設計がほぼ行われていない状況でした。また学生接点で強みを発揮していくためには現場のメンバーの協力が必須。そこでクイックでは、採用の最前線に立つメンバー(経営陣、現場責任者/面接官、若手リクルーター)を巻き込んで、一緒に採用戦略をつくりあげるワークショップ型のプロジェクトをご提案しました。
■ご提案の全体像
■採活力レポート
候補者体験をつくりだす人づくり
ワークショップでは採用に関わる全員が一堂に会して「求める人物像」「自社の魅力」をディスカッション。そこで生まれた「全員で導き出したアウトプット」をベースに、エントリーから内定承諾までの「候補者体験」を設計しました。候補者体験設計とは、学生の<認知>→<興味・関心>→<共感・理解>→<比較・不安解消>→<決意>という意識変容プロセスごとのあらゆる接点にバリューを組み込み、候補者のエンゲージメントを高める体験を意図的に設計していくということです。最終的には社員一人ひとりが学生との接点の中で、仕事のやりがいや意味、会社の魅力などをそれぞれの実体験と紐づけ、自分のことばで語れるようにブラッシュアップしていきました。
一般的に、知名度の低い企業の新卒採用での勝ち筋は、緻密な「候補者体験設計」とその実行力にかかっています。学生の志望度が高い状態から接点を持てる会社でない限り、最初の接点=志望度が低い状態から、段階的に志望度を高めていく工夫が必要なのです。日ポリ化工様では、<興味・関心>以降のフェーズにおいて、誰が、いつ、何を、どのように伝えていくのかを設計し、リクルーターが「人メディア」となり学生の共感を高め、選ばれる会社になることを目指しました。
■候補者体験設計
対話を通じて意味づけされたストーリーを冊子に
ワークショップでは、まずそれぞれのメンバーが自社の魅力を自分自身のストーリーとして語ります。続いて他の参加者が感想を述べ、意見を交換。そんな対話の中で、ストーリーの新しい意味づけや価値が自然と生まれていきました。
これらのストーリーをインタビュー記事として再構成し、日ポリ化工様が大事にされている「考え方」「独自性」「らしさ」を体感できる冊子「STORY BOOK」を作成して学生に配布しました。実際に「STORY BOOK」を受け取った学生からは、「社員が仕事に没頭する姿勢から、日ポリで仕事をすることに対する共感が生まれて心が動いた」、「働いている先輩の様子や想いが味わえた」といった声が聞かれたそうです。
この取り組みでは、参加者それぞれが本人も気づいていなかった自分の存在意義や、仕事の意味を再認識することも少なくありませんでした。それが仕事への新たな原動力となり、組織活性にもつながっていきました。「自社の魅力やユニークさにあらためて気付くことができ、誇りを持てるようになった」という声をお聞きできたことは、私にとっても非常に嬉しい瞬間でした。
■STORY BOOK
採用活動から入社までを貫く一貫したコンセプト
当初、リクルーター育成としてスタートしたプロジェクトでしたが、初回を終えたところで日ポリ化工様から「自社の採用活動を知ることで、受け入れる側としての姿勢にもいい影響がある。採用活動で学生に伝えている魅力を、入社後に出会う先輩社員たちも同じように理解し語れるようになることで、一貫した入社前&入社後の体験に繋がる」との意見をいただきました。そこで入社後のオンボーディングを意図した施策として、採用に直接かかわらない方も含め、全社員向けに追加でワークショップを実施することになりました。
プロジェクトの途中で社長の代替わりという大きなターニングポイントがあり、後半のグループのプログラムには代替わりを機に策定された新たなビジョンを、新社長から共有していただく場を設けました。しかし「ビジョン浸透のための研修」と銘打ってしまうと社員も身構えてしまいます。そこで採用活動研修の一環としてプログラムに組み込んだところ、抵抗感なく自分事として受け入れてもらえました。最終的には参加した全社員が、「日ポリ化工のリクルーター」として大切にすべき12か条を理解し、「全員採用」に共感して行動してくれるようになりました。
外部のコンサルタントの価値は、課題の整理、知見やアイデアの提供のほかにもうひとつ、客観的にその会社のことを見られる点にあると思っています。ふだん自社で働く中で当たり前になっていることでも、外部から客観的に見ると、物凄く魅力的な材料になるケースもあります。このプロジェクトを通じて、社員の皆さんにはたくさん自社の魅力に気付いていただくことができました。「より自社を好きになった」「仕事が楽しくなった」という声を多数いただきました。そしてここを起点に、会社が一枚岩になって未来をつくっていこうと動き始めたのが印象的でした。
日ポリ化工様の次なる成長へ、さらなる躍進へ、これからも伴走支援していけるのが楽しみです。
■「日ポリ化工のリクルーター」として大切にすべき12か条より
このプロジェクトの担当コンサルタント
株式会社クイック コンサルタント 福島 淳史
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